「きりひと讃歌」のモンモウ病の原因

佐藤和美

 「きりひと讃歌」のモンモウ病は、作品が発表された頃と現在とでは、その原因が違ってきている。

 それでは最初はどのような原因だったのだろうか。引用してみよう。
「木村くんっ あの砂粒に20ミリレムの放射能がっ」
「そんなバカな!
 核物質などあるはずがないだろう?」
「みろ! コンピューターの結果なんだ ケイ質砂岩でわずかなナトリウムとリンを含んでいる…… これが沈殿物の内容なんだが十五、六コのビンを調べたところ………
たった一つにわずかなガドリン石に似た物質を抽出した こいつが放射能を出しているらしい」
(中略)
「原子番号は62か!? 82以上の元素でなきゃ放射線は出さんのだろう?」
「ところがそうでもないんだ 放射性元素でもごく例外としてカリウム40とかサマリウム147などは原子番号は小さい」
「するとこいつは放射性元素のひねくれ屋なんだな?」
 これがどのように書きなおされたのだろうか。以下に引用する。
「木村くんっ あの砂粒にプルスを出す結晶体がっ」
「ふざけるなよ
 振動する 結晶など あるもんか!」
「見ろ! コンピューターの結果なんだ ケイ質砂岩でわずかなナトリウムとリンを含んでいる…… これが沈殿物の内容なんだが十五、六コのビンを調べたところ………
たった一つにわずかなガドリン石に似た物質を抽出した こいつがお互いに衝突してプルスを生じるらしい」
(中略)
「そんなものがあの砂粒にまじってるからといって……」
「こいつらはごく微粒子で衝突しあってプルスを出しているらしい そのプルスが細胞に影響する……としたらどうだ」
「それが内分泌腺か何かの組織に刺激をあたえて……」
 「火の鳥・望郷編」や「サイボーグ009・移民編」でもそうだが、マンガの世界では放射能による奇形はタブーなのだろうか。

(1998・10・31)


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