間違いだらけの「地名の世界地図」+「人名の世界地図」

2000年12月に文藝春秋から発行された文春新書の21世紀研究会編「地名の世界地図」は間違いだらけです。さあ、みんなで「地名の世界地図」の間違いを見つけましょう!



地名の世界地図

佐藤和美 (2000/12/24 08:51)

文春新書の新刊です。
21世紀研究会編「地名の世界地図」

ちょっとめくってみたんですが、まちがいが目立つ本です。
文藝春秋みたいな大出版社でも、こんな本出すんですね。
買わないほうがよさそうな本です。
アイヌ語を重点的に、疑問点をあげてみました。
(幽霊(ゴースト)アイヌ語バスターズ!)

P75
「白ロシア」が「ロシア語でビエロロシア、そして独立した現在は、スラブ語でベラルーシ「白ロシア」である、」
(この文章を書いた人ってロシア語とスラブ語の関係がわかってるのかな? ここでは「スラブ語」ではなく「ベラルーシ語(白ロシア語)」を使うべきでしょうね。仮名表記だけど「ビエロ」でいいの? ロシア語わかる方フォローお願いします。)

P76
「樺太」の語源は「江戸時代、ここに中国人が多く住んでいたので唐人(からと)とよばれていた」から
(おい、おい。(^^);)

P108
アイヌ語「ワッカ」の意味は「飲み水」
(正しくは「水」)

P108
アイヌ語「フルー」の意味は「赤い」
(正しくは「赤い」は「フレ」)

P108
江別の語源はアイヌ語「エ・ペツ(胆汁のような色の川)」
(「エ」にそんな意味ない!)

P109
斑鳩の語源はアイヌ語「イカルカ(山の頂、物見をするところ)」
(「イカルカ」なんて単語はない! 単語に区切ってない! 幽霊アイヌ語のいつものパターン。「インカルシinkar-us-i」(「札幌地名行」参考のこと)のことを言いたいのかな?)

P110
富士山の語源はアイヌ語起源だといわれることがある。
(「富士山の語源はアイヌ語の「火」?」(1999/09/07)参考のこと)

P110
「クリル島は、千島アイヌ語のクル(人)がロシア語化したものだ。」
(なにを根拠にこう言いきるの?)

P110
千島の語源はアイヌ語「チカップ(日の出る所)」
(「チカプ」は「鳥」。「太陽」は「チュプ」。「チシマ」と「チカップ」じゃ「チ」しか同じじゃないぞ。古くは蝦夷ケ千島という言葉があったので、「千島」は「多くの島」くらいの意味だと思いますけど。)

P110
アイヌ語「エトゥロ(鼻、先端)」
(「エトゥ」が「鼻、先端」)

P110
アイヌ語「フ(所)」
(「フ」にそんな意味ない! 「プ(者)」の間違い?)

P110
ロシア語「スク(川辺の渡場集落)」
(ロシア語「スク」にそんな意味あるの?)

P110
「樺太の場合は、北緯五〇度線がアイヌ語地名の北限であるとの興味深い報告もある。」
(北緯五〇度線は昔の日露の国境(ポーツマス条約できまった国境)だけど、ほんとにそんな報告あるの?)



Re: ビエロロシア

松茸 (2000/12/24 18:01)

->佐藤和美さまへ:

> P75
> 「白ロシア」が「ロシア語でビエロロシア、そして独立した現在は、スラブ語でベラルーシ「白ロシア」である、」
> (この文章を書いた人ってロシア語とスラブ語の関係がわかってるのかな? ここでは「スラブ語」ではなく「ベラルーシ語(白ロシア語)」を使うべきでしょうね。仮名表記だけど「ビエロ」でいいの? ロシア語わかる方フォローお願いします。)

 手元の辞書類(1980年代のもの)でのロシア語表記はどれも"Белоруссия"(アクセントは"у")となっています。
 ロシア語での"е"の音価は /je/ なので、「ビエロ」を否定しさることはできませんが、「ビエロロシア」は明らかに誤りですね。
# なお「ロシア(ロシヤ)」の綴りは"Россия"。

> P110
> ロシア語「スク(川辺の渡場集落)」
> (ロシア語「スク」にそんな意味あるの?)

 そういう単語は辞書に載っていません。「クルスク」「オムスク」などの地名につく<−スク>のつもりかも知れませんが。



地名の世界地図

田邉露影 (2000/12/24 18:41)

>佐藤和美さん
> 文春新書の新刊です。
> 21世紀研究会編「地名の世界地図」
>
> ちょっとめくってみたんですが、まちがいが目立つ本です。

面白そうですね、
「フィンランド」の語源なんてのは、
どのように記述されているのでしょうか?

ひょっとして、
「森と湖の国」かな?



(無題)

Nupkes (2000/12/24 22:07)

  佐藤和美さん
>富士山の語源はアイヌ語起源だといわれることがある。
 初出は、ジョン・バチェラーですよね。岩波が今でも発売している『アイヌ・英・和辞典第4版』にもHujiはHuchiで、火を意味し等とかいてありますから、今でも信じる人がいるのでしょうね。
ジョン・バチェラー『アイヌ地名考』にもFuji no yamaは、Hunch Unchi-nupriと記載していますから、影響は大きいですね。
 今でも、バチェラーの影響を受けたアイヌ語地名解が、あちらこちらで発表されています。
 どうしたら良いのでしょうね。
 以前、やはりバチェラーの影響を受け、地名「落合」は、アイヌ語由来と記載したものを読んだことがあります。その方は、札幌の某大学で、北海道庁の補助金を受けある調査をしている方ですから、だれも疑いません。当然、わたくしが間違いを指摘しても聞く人はいません。
 21世紀も、バチェラーの亡霊が徘徊するのでしょうか。あきらめるしかないようですね。



フィンランド

佐藤和美 (2000/12/25 22:14)

田邉さん
>> 文春新書の新刊です。
>> 21世紀研究会編「地名の世界地図」
>> ちょっとめくってみたんですが、まちがいが目立つ本です。
>面白そうですね、
>「フィンランド」の語源なんてのは、
>どのように記述されているのでしょうか?
>ひょっとして、
>「森と湖の国」かな?

当たり!
まるごと引用します。
「自称はフィンランド語でスオミSuoma「沼沢地」。フィンランドは英語訳。fen「湖沼」とlandで「湖沼の国」を意味する。」
「Suoma」はミスプリントかな?
「フィン」は「スオミ」の英語訳だそうです。(^^);

「地名の世界地図」には参考文献に牧英夫編著「世界地名ルーツ辞典」(創拓社)があげてあるんですが、その本には
「フィン人なる人種名は、2世紀のギリシアの地理学者プトレマイオスの地理書にも記されている古いものである。しかし、その語源は知られていない。」
と書いてありますねぇ。(^^);
「地名の世界地図」の著者達は参考文献にも目をとおしてない、または無視した?
一般的にトンデモ系の人たちは語源不明を嫌がるみたいだから、それを連想してしまいます。
いいすぎかな?



(無題)

田邉露影 (2000/12/27 01:51)

> 「自称はフィンランド語でスオミSuoma「沼沢地」。

……(^_^;;。

詳しくいうと確かに、
suomi の語はフィンランド人にとっても、
意味がよくわからないのだそうですが、
suomi に「沼」という意味があったという説は、
あるには……あります。
(確かウラル祖語の *su- が
 「沼」だとか聞いたことが……)

しかし「人」であったという説もあり、
そちらの方が民族の自称としては、
少なくとも私には説得力があるように思えます。

> 「Suoma」はミスプリントかな?

フィンランド語の辞典は持っていませんので分かりませんが、
検索したところ
http://www.elite.net/%7Erunner/jennifers/language.htm
に用例がありましたから、
英語か何かかもしれません。

> 「フィン」は「スオミ」の英語訳だそうです。(^^);

この辺は田中克彦派的な言い方に置き換えると、
 社会的・経済的に権威を持っている言語である
 「英語」を交えると、
 まったく初めての人が見た時に、
 妙な説得力を与えてしまう、
ということなのでしょう。

ちなみに英語語源辞典を見たところによると、
どうやら fen と finn は関係がなさそうですね。

英語の finn がラテン語では fenni であるのに、
fen の方は印欧祖語では *pen- に遡ることができ、
両者の間には f - p とグリムの法則が働いていますから、
少なくとも同時期に入ってきた単語ではないでしょうね。

……断言できませんけど(^_^;;;。

> 「フィン人なる人種名は、2世紀のギリシアの > 地理学者プトレマイオスの地理書にも記されている古いものである。
> しかし、その語源は知られていない。」
> と書いてありますねぇ。(^^);

ちょっと話は外れますが、
この文献の「人種」という用語にも、
疑問の余地はあります。
「民族」とすべきでしょう。

> 「地名の世界地図」の著者達は参考文献にも
> 目をとおしてない、または無視した?

う〜ん、非常にステレオタイプな物言いをしますと、
この手の書籍の「参考文献」って、
限りなく装飾に近いですよね。

確かに自分の有利な部分を抜き出して、
それをまとめるというのは、
非常に重要な技術だとは思います。

しかし、その結果に出てくるものが、
一方的な偏見だけによるものならば、
参考文献なんて初めから読まなければいいのに……と思います。

> 一般的にトンデモ系の人たちは語源不明を
> 嫌がるみたいだから、それを連想してしまいます。
> いいすぎかな?

語源不明を嫌がるというよりは、
トンデモ系の人々にとって、
不明なものを説明する、という行為が
萌えるのでしょう。



フィンランドの語源

佐藤和美 (2000/12/27 12:58)

フィンランドの語源を検索してたら新説(?)を見つけました。
「フィン」は「ハンガリー」の「ハン」などと同じくフン族の「フン」が語源だそうです。
なにを元ネタにしたのかわかりませんけど、語源の世界も百花繚乱ですね。
ま、最終的に正しいかどうか判断するのは各自ですか。



君にも書ける「地名の世界地図」

松茸 (2000/12/27 18:53)

 トンデモ本は好きなので、「地名の世界地図」を買ってしまいました。(^^;
 地名の語源・語義の記述がでたらめなのは佐藤様ご指摘の通りですが、その他の「一般常識」の水準でも決定的にトンデモない。
 最初の「はじめに」に、もうこんな問題点が。(すぐ指摘できるものだけ挙げます):

「一九三九年九月一日、東西国境を越えて突如攻め込んできたナチス・ドイツ軍、ソ連軍によって、ポーランドはたった三週間で占領、分割されてしまった。[後略]」

……<言葉>とは関係ないですが、ソヴィエトの参戦は9月17日、ポーランド軍の壊滅が決定的になった後。

「古代ギリシア人は、アフリカのベルベル人をバルバロイ(言葉が通じない人=野蛮人)とよんだ。[後略]」
……「バルバロイ」は異民族一般に使われた蔑称で、特定の集団の呼称ではない。

「[前略]ウラジオストックと名づけられたこの都市名の意味するところは、「東方を征服せよ」なのである。[後略]」
……過去ログ2000/01にもあるように、こじつければ「東方を支配せよ」とはいえるものの、「征服」は解釈過剰。
# p.82では、同じ語構成の「ウラジカフカス」に「カフカス人の占領地」という意味を当てています!
 この調子で、素人目にもすぐわかるウソが延々と書かれています。単純な誤記らしいものも多く、専門の研究者の書いたものとは思えません。
# 「22世紀研究会」を結成して批判本を書こうかな、と半分本気で思います。(^^;



re: フィンランドの語源

田邉露影 (2000/12/27 19:58)

> 「フィン」は「ハンガリー」の「ハン」などと同じく
> フン族の「フン」が語源だそうです。

これもまた面白いですね。
確かに俗説でそういうのは存在するそうですが……。


佐藤さん、そしてメンバーの方はすでにご存じだと思いますが、
ハンガリー人の自称は Magyar [マジャル] です。

それでは「ハンガリー」というのは何かというと、
ラテン語の ungar から来ているそうですが、
ラテン語でなぜこのように名づけたかは、
詳しいことは分からないようです。

h がついた理由も色々と考えられていますが、
これも決定的な証拠は無いようです。


> なにを元ネタにしたのかわかりませんけど、語源の世界も百花繚乱ですね。
> ま、最終的に正しいかどうか判断するのは各自ですか。

語源に関してはキリがないですからね。
思い込みが一般化するのにもそれほど時間がかからないみたいですし。

ここ1年で、興味深かったのが、
DVDという用語でして、
DVDが映像部門で活躍しているのが目立っているせいか、
Digital Video Disk の略だと認識されていることが多いですね。

たしかに“Versatile 「万能」”という用語は
なじみの薄い単語ですし、
電子万能円盤っていうと万能包丁や万能鍋みたいで、
妙な生活観が浮き彫りとされて、
おもわず今夜は湯豆腐にしてみたくなったりしてしまいますが……。



re: 君にも書ける「地名の世界地図」

田邉露影 (2000/12/27 20:03)

話が外れますが、
http://bosei.cc.u-tokai.ac.jp/~haruta/indexj.html
というインチキ本を意外と真面目に分析したサイトがあります。

本場といえば「と学会」がありますが。


ただ、トンデモ本のレトリック手法って、
けっこう眼を凝らして見てみると、
面白いものが多いので、
それほど私はトンデモ本に悪意は持っていません。



RE:君にも書ける「地名の世界地図」

佐藤和美 (2000/12/28 17:00)

この本って、ページ数から見て問題点が500以上はありそう。
「22世紀研究会」、おもしろそうですね。



地名の世界地図

佐藤和美 (2001/01/05 09:32)

文春新書の「地名の世界地図」に関してですが、
きのう、文藝春秋へメールを送りました。
松茸さんの書き込みも参考にさせていただきました。
送った内容はここです。
さて、どんな返事が来るかな?



地名の世界地図(文藝春秋へのメール)

佐藤和美 (2001/01/04)

はじめまして、佐藤と申します。

12月に発行された文春新書の21世紀研究会編「地名の世界地図」ですが、あまりにもまちがいが多いので、ちょっと言わせてもらいます。

関川夏央「司馬遼太郎の「かたち」」(文藝春秋刊)のP205に「マルコポーロ」事件のときに司馬遼太郎が半藤一利に「半藤君、一体文春はどうなっちゃたんだい」と言ったというエピソードが出てますが、今回のこの本を見て、私も「一体文春はどうなっちゃたんだい」と言いたい気分です。新書という一般読者が手に取りやすい本でまちがいだらけとは一体どういうことなのでしょうか。

本を開いてすぐの「はじめに」からして、まちがいだらけです。

「一九三九年九月一日、東西国境を越えて突如攻め込んできたナチス・ドイツ軍、ソ連軍によって、ポーランドはたった三週間で占領、分割されてしまった。」

年表を見ればすぐ確認できますが、ソ連の参戦は9月17日です。

「古代ギリシア人は、アフリカのベルベル人をバルバロイ(言葉が通じない人=野蛮人)とよんだ。」

「大辞林」にはこうあります。
バルバロイ
[(ギリシヤ)barbaroi]
〔わけのわからない言葉をしゃべる者の意〕古代ギリシャ人が異民族一般に対して用いた蔑称。

「バルバロイ」は異民族一般に使われた蔑称で、特定の民族を指した蔑称ではありません。

「ギリシア文化を模範としたローマ人は、その地で出会った言葉の通じない部族をバルバロイとよんだのである。その名は、ドイツ南東部の地方名としていまも残っている。ババリア(バイエルン)である。」
「バルバロイ」と「ババリア」が似てると思ったのでしょうか。
ところでこの本にはスペルが書いてないですね。
「barbaroi」、「Bavaria」
「バルバロイ」と「バヴァリア」、これなら似てないのがわかります。
それと、「地名の世界地図」には参考文献に牧英夫編著「世界地名ルーツ辞典」(創拓社)があげてありますが、この本の「バイエルン」の語源にも「バルバロイ」のことは一言も出てきません。「地名の世界地図」の著者の方々は参考文献にちゃんと目をとおしているのでしょうか?

「バルバロイ、野蛮人という名をもつお菓子、ババロアである。」
「ババロアbavarois」は「ババリア地方風の菓子」の意味ですね。
(「カタカナ語辞典」三省堂)
「ババリア」が「バルバロイ」と無関係なら、自動的に「ババロア」も「バルバロイ」と無関係です。

私はアイヌ語地名を研究しているので、以下アイヌ語関係のまちがい・疑問点をあげます。

P76
「日本でサハリンを「樺太」と書くのは、江戸時代、ここに中国人が多く住んでいたので唐人(からと)とよばれていたことによる」
江戸時代、樺太に中国人が多く住んでいたというのは初めて聞きます。ここまで言い切るからにはたしかな証拠があるのでしょうね。その証拠を是非見せていただきたいと思います。

P108
「稚内(ヤム・ワッカ・ナイ「冷たい飲み水の川」のヤムの省略されたもの)」
アイヌ語「ワッカwakka」の意味は「飲み水」ではなく、「水」です。「冷たい飲み水の川」と「冷たい水の川」ではだいぶニュアンスが違ってきます。
P108
「江別(エ・ペツ「胆汁のような色の川」)
アイヌ語「エe」に「胆汁のような色」という意味はありません。

P108
「古平(フルー・ピラ「赤い崖」)」
アイヌ語で「赤い」は「フレhure」です。

P109
斑鳩の語源は「アイヌ語の「イカルカ」(山の頂、物見をするところ)がその語源だとする研究者がいるのだ。」
アイヌ語に「イカルカ」なんて単語は存在しません。いいかげんな説を載せないでください。
アイヌ語地名の「研究者」にはいいかげんな説を書く人が後をたたない状態です。
アイヌ語をわからない人がそのいいかげんな説を孫引きする。
そしてまちがったアイヌ語地名解は増殖していくわけです。
「地名の世界地図」もそれに力をかしてしまったわけですが。

P110
「富士山もアイヌ語起源だといわれることがある」
ここでバチェラー辞書を引き合いに出してますが、バチェラー辞書はまちがいだらけで有名な辞書です。著者の方々はご存じないのでしょうか。
また、富士山の語源に関して、金田一京助は次のように書いています。
(「北奥地名考」1932年)
「若し語原が、説者のいう如くアイヌ語のhuchiであったならば、国語にクヂ(またはクジ)となっていた筈で、国語にハ行音でフジとなる為には、その語頭音は必ずやpかfでなけれだならない。それは上代の国語の音には[h]音がなく、外国の[h]音はこれが為にみな[k]音に取り込まれる例であったからである。現今のフジであるからとて、huchiをその語原に見立てたのは、国語の音韻史を無視した失考だった。」
いまさら「富士山もアイヌ語起源だといわれることがある」なんて、書かないでいただきたいと思います。

P110
「千島そのものも、アイヌ語のチカップ(日の出る所)に由来する」
アイヌ語「チカプcikap」は「鳥」。「太陽」は「チュプcup」。「東」は「チュプカcupka」「チカップ」がなんで「日の出る所」になるのかわからないですね。「チカップ」(日の出る所)って「チュプカ」(東)のまちがい? 著者の方々がアイヌ語を知らないのがよくわかります。「チシマ」と「チカップ」じゃ「チ」しか同じじゃないですよ。それで「由来する」なんて言ってていいんですか? 古くは蝦夷ケ千島という言葉があったので、「千島」は「多くの島」くらいの意味じゃないでしょうか。

P110
「択捉はエトゥロ(鼻、先端)とフ(所)」
「エトゥetu」が「鼻、先端」で、「エトゥロ」という単語は存在しません。
アイヌ語「フhu」に「所」という意味はありません。

P110
「樺太の場合は、北緯五〇度線がアイヌ語地名の北限であるとの興味深い報告もある。」
ほんとにそんな報告があるんですか? 私は聞いたことありません。本当にそんな報告があるのなら是非見せていただきたいと思います。北緯五〇度線はかつての日露国境ですが、なにか勘違いしてませんか?


わずか数ページでこれだけのまちがい・疑問点があります。全体ではどれほどのまちがい・疑問点が含まれていることか。なにも知らずにこの本を読んだ人が、まちがい・疑問点に気づかず、事実として記憶してしまったらどうするのでしょうか。「現実の文春」の名が泣くというものでしょう。

今後この「地名の世界地図」をどうするのか、是非、返事をいただきたいと思います。



地名の世界地図

佐藤和美 (2001/01/06 12:48)

文藝春秋へ送ったメールが、受け付け部門から新書編集部へ転送されたそうです。
思ったより早く返事がくるかな?



「地名の世界地図」経過

佐藤和美 (2001/01/12 18:34)

文藝春秋からきのうメールがありました。
著者と文献を調べなおし中とのことです。
返事はもうすこし時間がかかりそうですね。



地名の世界地図

佐藤和美 (2001/01/16 15:46)

「地名の世界地図」が1/15付けで三刷出てました。
売れてるんですねぇ。(^^);
早く「君にも書ける「地名の世界地図」」書かないとダメかな?



地名の世界地図

佐藤和美 (2001/02/16 12:35)

「地名の世界地図」ですが、文藝春秋から返事来ないですねぇ。
このまま返事なしになるのかな?
1/20付けで4刷、ますます売れてる。
売れてるから、内容はどうでもいいのかな?

「地名の世界地図」の著者は「歴史学、文化人類学、考古学、宗教学、生活文化史学の研究者たち」だそうですけど、語学者、言語学者はいないんですね。

著者たちは横の連絡なしで勝手に書いてるようだから、同じものでも語源がちょっとずれてる。
今回はそのへんを追っかけてみました。
(以下のような内容で、もう一回だけ文春にメールを送りました)

まずは、メコン、メナムの語源です。

P200
東南アジアのメコンMekong川はタイ語のメナムMenam(川)とコングkong(大きな)で、「大きな川」である。

P261
メナムはタイ語メmae「母」とナムnam「川」で「母なる川」。

P261
メコン川Mekong「大きな川」。ミャンマー名、ラオス名のメコンはタイ語のme「川」と中国語kong「江」からなる。

タイ語では「メ」も「ナム」も「メナム」も「川」なんですかね。
それに中国語(普通話)の「江」は「jiang」ですね。


次はジャカルタの語源です。

P136
ジャカルタDjakarta(勝利の城塞)という意味をもつ。

P196
ジャカルタ(インドネシア)「勝利の都市」。

P264
サンスクリット語でジャイア・ケルタJaiakerta「勝利の地」

「城塞」、「都市」、「地」正しくはどれなんでしょうね?
「Djakarta」、「Jaiakerta」どっちのスペルが正しいんでしょうね?
なんで「ジャイア・ケルタ」ってしてるのに、「Jaia kerta」ってしないんでしょう?


モスクワの語源は?

P73
モスクmosk(沼沢地)とフィン語のva(水)で「沼沢地の川」を意味する。

P258
ナモスコに由来する。前置詞naとMoskva「モスクワ川」で「モスクワ川のほとり」。「モスクワ」そのものには「沼沢地」という意味がある。


セーヌ川の語源のスペルは?

P46
ケルト語のsog(ゆったり)とhan(川)で「ゆったりと流れる川」

P200 ケルト語でSeine(ゆったりと流れる川)だ。


バビロンの語源のスペルは?

P23
バビロニアの名は、Babili(神の門)に由来

P146
バビロンBabylonもバベルも同じアッカド語のbab(門)とel(神)からなり


カルパティアの語源のスペルは?

P44
古代スラブ語のコルバトCorwat(山脈)に由来している。

P235
古代スラブ人の言葉でchorvat、あるいはchrbat「山脈」に由来する。


なんか、頭がクラクラしてきそう!



間違いだらけの「地名の世界地図」

佐藤和美 (2001/02/17 17:37)

「地名の世界地図」、文春から返事のメール来ないですね。
もう、返事はあきらめました。
ということで、「地名の世界地図」の間違い募集します!
「地名の世界地図」を笑いとばしましょう。

今までの書き込みは以下に集めてあります。
間違いだらけの「地名の世界地図」



「地名の世界地図」の笑えるネタ?

佐藤和美 (2001/02/17 17:38)

さて、笑えるかな?

サルディニア島の語源は?

P15
サルディニアはサルドSardo(足跡)、その島に初めて上陸したことを記念した名がつけられた。

どうです、笑えますか?
つまんない?
よく世界中の地名がサルディニアにならなかったですね。(^^)


次は算数の問題

P14
前二二五年頃……  千三百年後……  一五三三年

「前」の意味がわかってないようで……



『地名の世界地図』の修正箇所

松茸@22世紀研究会 (2001/02/17 20:58)

 近くの本屋に「第四刷」が平積みになっていました(売れているらしい)。めくり読みしたところ。若干「改善」が見られるようなので、購入済みの初刷と比較するため買ってしまいました(780円+税)。

 まず、「はじめに」のポーランド戦についての記述が、
初刷:「一九三九年九月一日、東西国境を越えて突如攻め込んできたナチス・ドイツ軍、ソ連軍によって、ポーランドはたった三週間で占領、分割されてしまった。」
から
第四刷:「一九三九年九月一日、国境を越えて突如攻め込んできたナチス・ドイツ軍、そしてソ連軍によって、ポーランドはたった四週間で占領、分割されてしまった。」
に修正されています。

 また、p.75〜76の「カラフト」の語源も、
「江戸時代、ここに中国人が多く住んでいたので唐人{からと}とよばれていたことによるが」
だったのが
「一八〇九年、間宮林蔵によってサハリンが島だと確認される以前、沿海州まで勢力を及ぼしていた清の一部と考えられていたため唐太とよばれていたからのようで」
に差し替えられています。
# これを「改善」といえるか、はなはだ疑問ですが。
 その他、アイヌ語地名に関する記述にはかなりの変更があります。

 しかし、これら佐藤様のメイルにある箇所をのぞけば、修正された記述はいまのところ発見できません(ひとつだけ、巻末の国づくしで、カナダが「中央アメリカ」にあった(^^;のが「北アメリカ」に移っている、のを確認)。指摘にもとづいて訂正したものを商業出版したのなら、せめて礼状(メイル)の一本くらい送るべきでしょうね。
# それどころか、「千島」の語義(p.110)は佐藤様の丸写しなので、著作権料を請求で
# きるかもしれません。



RE:『地名の世界地図』の修正箇所

佐藤和美 (2001/02/18 16:24)

松茸さん、ありがとうございます。
奥付だけ見てて、内容は見てなかったです。
まさか、こっちに連絡なしで修正するとは、思いもしませんでした。
それにしても文春のやりかたはムカツクなぁ。
このままですむと思うなよ>文春

松茸さん
>「一八〇九年、間宮林蔵によってサハリンが島だと確認される以前、沿海州まで勢力を及ぼしていた清の一部と考えられていたため唐太とよばれていたからのようで」
># これを「改善」といえるか、はなはだ疑問ですが。

「唐」の説明にはなってても「太」の説明にはなってませんよね。

>その他、アイヌ語地名に関する記述にはかなりの変更があります。

幽霊アイヌ語バスターズとしてはまあまあ成功だったのかな?

あしたでも本屋に行って、4刷の内容確認してみます。



『地名の世界地図』の方向感覚

佐藤和美 (2001/02/18 16:25)

松茸さん
>カナダが「中央アメリカ」にあった(^^;

『地名の世界地図』の著者は方向オンチなようで。

P28
南半球にあっては、太陽はいつも右手に見えることになる。

これってなにをいいたいんでしょう?
東西南北、どっちを向いてる?
太陽は東から昇って西に沈むのを知らないのかな?
小学生にもバカにされそうな、意味不明の文章ですね。

P22 イズミールの北にあるレスボス島

小アジアにあるイズミールの北に、エーゲ海にあるレスボス島がある?
地図で見ると北西なんですけどねぇ。北西は北だと言われればそれまでですけど。

P25
もともとのオデッサは黒海東岸のブルガリアに建設されていた。

ブルガリアが黒海の東岸ねぇ……
やっぱ、方向オンチなようで。



RE:『地名の世界地図』の修正箇所

佐藤和美 (2001/02/19 21:27)

もう一回だけ、文春の窓口にメールを出しました。
新書編集部は出しても無視されるでしょうから。

2/5 5刷
2/10 6刷
売れてるなぁ。(^^);

文春新書で21世紀研究会編『人名の世界地図』って本、出てました。(^^);

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

佐藤と申します。

文藝春秋ってずいぶん失礼でいいかげんな出版社なんですね。
文春新書「地名の世界地図」1刷でこちらが指摘した間違いを、4刷で修正して
おいて、こちらに連絡もなしですか。
それにこちらの指摘した以外にも多くの間違いがあるのに、それはほったらか
し。そんな無責任なマネはやめたほうがいいですよ。

一つだけ例をあげましょう。

1刷P110にはこういう文章がありました。
「千島そのものも、アイヌ語のチカップ(日の出る所)に由来する」

それに対して私はこう書きました。
「アイヌ語「チカプcikap」は「鳥」。「太陽」は「チュプcup」。「東」は
「チュプカcupka」「チカップ」がなんで「日の出る所」になるのかわからない
ですね。「チカップ」(日の出る所)って「チュプカ」(東)のまちがい? 著
者の方々がアイヌ語を知らないのがよくわかります。「チシマ」と「チカップ」
じゃ「チ」しか同じじゃないですよ。それで「由来する」なんて言ってていいん
ですか? 古くは蝦夷ケ千島という言葉があったので、「千島」は「多くの島」
くらいの意味じゃないでしょうか。」

それが4刷P110ではこうなりました。
「また、千島そのものも、もともとアイヌ人がチュプカ「東」、つまり「東の
島々」と読んでいたものと、のちに北海道を含めて漠然と「蝦夷が千島」という
名称がもちいられていたことから、列島を千島とよぶようになったと考えられ
る。ちなみに、「蝦夷が千島」は多くの島、といった意味であった。」

こういうことをしておいて、こちらには連絡なし。
そういうことを文春はやったわけです。

新書編集部の担当者などでなく、もっとちゃんとした責任者から説明していただ
きたいですね。
「地名の世界地図」に謝辞を載せてもらいたいくらいです。
金一封ももらいたいくらいですね。
校閲料くれれば、校閲してもいいですよ。
返事は一週間待ちます。それを過ぎたら返事はこないものと判断します。

なおこの件に関しての経緯は私のHP・掲示板で公開してますので。そのつもり
で。



RE^2:『地名の世界地図』の修正箇所

田邉露影 (2001/02/19 23:38)

>佐藤さん
私も(トンデモ本として)注文してみました。
もう入荷済みとのことなので、
ひょっとしたらヨーロッパ系では、
ご協力できるところもあるかもしれませんね。

ただ、佐藤さんの文春へのメール、
あまり穏やかなものではないですね……(^_^;。
少々びっくりしました。

まあ、せっかくメールを出されて、
間違い箇所まで指摘したのに
なしのつぶてでは、
確かにお怒りはごもっともでしょうけれども。
(これって盗用ですからねぇ)

どちらにしろ動向が気になります。

ところで下宮忠雄先生の『ヨーロッパの言語の旅』は
もうお読みになられましたか?

あの本はヨーロッパについて書いてある本ですが、
『地名の世界地図』や『人名の世界地図』と違って、
きちんとした言語学者の書いた本ですから信頼性もありますし、
エッセー調に楽しく読めて面白いですよ。




RE^3:『地名の世界地図』の修正箇所

なかむら (2001/02/20 00:46)

久しぶりに来ました。
お怒りごもっともです。僕も以前、ある翻訳書で、原文一行をぬかして訳している
のを指摘したら、出版社からはなんの音沙汰なしで、版が変わったら直ってました。
別にお金とか何が欲しい訳じゃなくて、ありがとうございました、だけでいいんだ
けど、釈然としないですよね。

さて、辞典を編集している友人の話によると、出版社にはいろんな電話がかかって
くるとのこと。大概、この記述はおかしいとか、なんでこうなるのか、とからしい
のですが、きちんと対応していると言ってました。メールなどではなく、お時間が
あれば直接電話された方がいいかと思います。
文芸春秋の場合、きちんと対応してくれるか保証はできませんが。。。(爆)

下の文芸春秋に送られたメールを読みましたが、かなりいやみたらたらですね。
たんなる難癖だと思われて、相手にされないかもしれませんよ。



「地名の世界地図」経過

佐藤和美 (2001/02/22 12:42)

文春からメールきました。

佐藤和美wrote
>新書編集部の担当者などでなく、もっとちゃんとした責任者から説明していただきたいですね。

メール、送ってきた人は「地名の世界地図」の発行者みたいです。
(奥付の発行者と同じ名でした。新書編集部の部長さん?)
「ちゃんとした責任者」ですね。(^^);
一応、あやまりモードなので、少しは気分がすっきりしました。

著者が変更執筆中だそうです。(24日完成予定)
どんなレベルで修正がかかってるかな?

文春新書編集部とは一度会おうかと考えています。

経過はまた報告します。



『地名の世界地図』のアブない記述

松茸@22世紀研究会 (2001/02/22 22:16)

佐藤和美様曰く:
> 文春からメールきました。
 [中略]
>一応、あやまりモードなので、少しは気分がすっきりしました。
……なんか煽ってしまったようで、気にかかっておりましたが、とりあえずおめでとうございます。

> 著者が変更執筆中だそうです。(24日完成予定)
> どんなレベルで修正がかかってるかな?
……出版されるのは4月以降でしょうね。
 当然、佐藤様に改訂版が「贈呈」されるものと期待しております。


 さて、改訂版が出るということで、現行版の間違い探しの意味も薄れましたが、純粋に言葉関係のお笑いネタを一つ:

セントクリストファー・ネイビス Saint Christopher and Navis
 [中略]セントクリストファーは、コロンブスが一四九三年に到達したその日が航海の守護神「聖クリストファルスの祝日」だったため。[後略]」
   (p.227)

……「クリストファルス」って、まさか、"Christophallus"?
 「守護聖者」ではなく「守護神」ですし、やっぱりこれはキリスト教とは関係ない、□□崇拝の異教による名前、なんでしょうか?



Re:クリストフォルス

坂梨 (2001/02/23 08:52)

『プログレッシブ英和中辞典 第3版』 小学館1998には
Christopher,Saint
聖クリストフォルス(?−250ごろ):旅行者,水夫などの守護聖人.
とあります。
どうやら男根とは関係ないようですね。



RE:『地名の世界地図』のアブない記述

佐藤和美 (2001/02/23 12:30)

「レスビアン」の語源です。

P22
「イズミールの北にあるレスボス島は、女性の同性愛がさかんだったというのでレスビアンの語源になった」

レスビアンのさかんだった島ねぇ。
そんな島行きたくない。(^^);

「大辞林」からです。

レスビアン [lesbian]
〔レズビアンとも。女性をたたえた詩で名高いギリシャの女流詩人サッフォーの生地レスボス島から〕女性の同性愛者。レズ。→サッフィズム

サッフィズム [sapphism]
女性の同性愛。サフィズム。レスビアン。〔女流詩人サッフォーがエーゲ海のレスボス島に住み、少女を集めて詩や音楽を教えていたことから生まれた俗説による〕

サッフォー [Sapphō]
(前612頃-?) 古代ギリシャの女流詩人。エーゲ海のレスボス島生まれ。若い女性の個人的な体験をもとに、簡明で率直な詩を数多く書いた。後世長く愛好されローマの詩人に大きな影響を与えた。パピルス文書の断片・古典著作家の引用が現存。サッポー。


こういう間違いって本人は思い込んでるだろうから、気がつきにくいですよね。
はたして著者は気づくかな?



Re:「レスビアン」の語源

坂梨 (2001/02/23 14:13)

佐藤さん

確かに佐藤さんが引用された部分(「レスボス島は、同性愛が盛んだった」)
は舌足らずのところがありますが、かといって
完全に事実誤認とも言えないと思います。www.m-w.comでlesbianを引くと
2 [from the reputed homosexual band associated with Sappho of Lesbos] : of or relating to homosexuality between females
とでていますが、要するに「サッフォーの同性愛サークル」という発想が
「サッフォーの住んでる島の女性はみんな同性愛」という発想に発展したわけですから。
もちろんここでサッフォーに触れていないのは片手落ちであるとは思います。



Re:「レスビアン」の語源

佐藤和美 (2001/02/23 16:30)

「大辞林」の「サッフィズム」の項の「女流詩人サッフォーがエーゲ海のレスボス島に住み、少女を集めて詩や音楽を教えていたことから生まれた俗説による」ってやつですね。

「イズミールの北にあるレスボス島は、女性の同性愛がさかんだったというのでレスビアンの語源になった」

これのいちばん字数の少ない修正は

「イズミールの北にあるレスボス島は、女性の同性愛がさかんだったと思われたのでレスビアンの語源になった」

こんなもんでどうでしょう。



Re:「レスビアン」の語原

田島照生 (2001/02/24 00:49)

「レスボス島」の件に関しましては、完全な事実誤認でもないと思います。
そもそもサッフォーがmuse(Divine Poesy)として神格化される以前から、
「同性愛」はレスボス島の一風習として認識されていたのですから、
完全な俗説だ、と切り捨てるのは却って危険です。その蓋然性を認めつつ、
「女性の同性愛がさかんだった『という』」と伝聞調にしているのですから、
これは修正する必要はないとは思いますが。



「地名の世界地図」経過

佐藤和美 (2001/02/24 10:25)

電話連絡がつきました。
文春から間違いリストが送られてくるそうです。
それをチェックしてから、文春側とご対面ということになります。
来週後半ぐらいには会いたいと考えています。



百済――『地名の世界地図』から

面独斎 (2001/02/25 09:33)

問題になってる『地名の世界地図』(文春新書) ですが、佐藤さんや松茸さんに影響されて、私も売り上げに貢献してしまいました (不覚!)。

私が買ったのは第 5 刷ですが、その 116 ページに、古代朝鮮の百済・新羅・高句麗の三国に関連して、次のようにあります。

「その三国のうち、最初に滅亡した百済は、韓国語では「ペクチェ」と発音するが、日本では「大村」を意味する朝鮮の古語を訓読して「くだら」と読まれている。」

おかしな記述ですね。「朝鮮の古語を訓読」するとどうして「くだら」になるのでしょう。「大村」を意味する語を「訓読」すれば、やはり「おおむら (おほむら)」あたりになりそうなものですが。

大辞林には《「くだら」は日本における称で、大村を意味する古代朝鮮語によるという》とあり、おそらくこの説のことを言いたかったのでしょう。もっとも、この説自体にも議論の余地はあろうかと思われますが。



『地名の世界地図』の音読み・訓読み

佐藤和美 (2001/02/27 12:42)

面独斎さんもいよいよ『地名の世界地図』のデバッグ開始ですか。(^^)

『地名の世界地図』の音読み・訓読みネタからひろってみました。

P111
「韓国の首都ソウルは「みやこ、首都」を意味する固有の韓国語であり、漢字にあてはめることはできない。」

「都」でも「首都」ではあてはめればいいと思いますけど。
訓読みっていったいなんだかわかってるのかな?

P269
英語名Chinaは、前二二一〜二〇六年に中国をはじめて統一した秦の音読みChinに、接尾辞の-aがついたもの。

「秦」の(日本での)音読みは「シン」ですよね。
因みに中国での漢字の発音って音読みっていう?



「地名の世界地図」経過

佐藤和美 (2001/03/01 12:30)

今夜、文春と会うことになりました。

送られてきた手紙を読んでの印象は「間違い・疑問の多さを認識してるのか?」です。
こっちが気がついてるのはメールで二回送った分だけじゃないんだけど。
こっちが気がついて文春に伝えてない個所だけでもまだ四、五十個所(?)はありそうなので、
話したらビックリするんじゃないかな。



「地名の世界地図」経過

佐藤和美 (2001/03/03 11:52)

おととい、文春と会いました。
こちらの気がついていたことは、一通り話しました。
(もらった名刺は「文春新書編集局長」となってました)
4時間弱だから、けっこう長く話してましたねぇ。
これで何週間か後には修正版もでることでしょう。
1、4刷は自分で買いましたが、今回は6刷をもらいました。
修正版ももらえるでしょうから、「地名の世界地図」は4冊になるという快挙(?)ですね。

2月から始めたページ「間違いだらけの「地名の世界地図」」は間違いだらけでなくなった時点で削除ですね。(伝言板のログは残りますけど)



「地名の世界地図」はトンデモ本ではなくてデタラメ本?

田邉露影 (2001/03/07 01:32)

「地名の世界地図」をついに手に入れました。

……何て言うか、
やっぱりあの本はトンデモ本というより
デタラメ本ですね。

私はむしろ「21世紀研究会」の責任者にあってみたいですわ。
無知丸だしです。

佐藤さん、今度、
機会があったら連れて行ってくださいね(笑)。


……グチだけこぼしても仕方がないので、
とりあえず、ぱっと見て目立った問題点を
箇条書きにして挙げてみます。
(例も書きますがあまりに多いので、
 代表例だけ挙げます)

1. 特殊アルファベットの表記に完全に無知なこと。
(例:p.237 “Island” I の上にアクセント記号)

2. 読み方が間違えている。
(p.243 「デンマーク語ではケーベンハウン」……キワドイですね。
    多分、デンマーク学者はそうは書かないでしょう)
 p.244 「自称はノルゲ」 現代語では「ノリエ」)

3. 信憑性のない歴史資料をさも定説のように扱っている。
(pp.65-67 「ダキアローマ史観」 この資料って、
      どこから手に入れたのか気になります)

特に言語学の人間としては
1. の特殊アルファベットに関しては、
特に怒りを感じます。

パソコン通信・インターネットなど、
まだまだ混沌状態にある環境ならば、
これも仕方がないと言えますが、
本となれば話は別です。
(大体、フォントがあるんですから
 少々努力すれば印刷できるはずです)

これらの記号は日本語で言えば、
濁点と同じくらいの重要な意味を持っています。

これは日本人に限らず、
特殊アルファベットを持たない英米の人々にとっても
非常に分かりにくいことなのかもしれませんが、
(彼らも特殊アルファベットは
 置きかえる傾向にありますからね)
これら特殊アルファベットや装飾符の有無で、
弁別的に単語の意味や働きが
変わってしまう可能性があるのです!

……でも、例えば次のように反論する方も
いらっしゃるかもしれません。

|ドイツ語で Buch「本」は複数では Bu:cher です。
|(:は前の母音のウムラウト記号の意)
|これらは発音を区別するためのもので、
|大きな意味では取り除いても、
|意味には関係がない。

しかし、それならば、
英語で foot を feet と敢えて表記するのも、
問題があるはずです。
(o が e に変化したのはウムラウトの影響)

また、スウェーデン語では a'ka「乗る」と
(a'はÅのように o を上に乗せる、の意)
aka「??」では意味がまったく異なってしまいます。

a'ta「引き受ける」<--> a:ta「食べる」
という例もあります。

これらの問題をまったく考慮せずに、
なんの恥じらいもなく、
本という形で出版して頒布させてしまうという行為に、
「地名の世界地図」と題しながらも
「言葉」というものを
非常に軽く見ていてると
感じずにはいられません。


また、巻末の主要著書を見れば分かるのですが、
これらはほとんど二次資料という、
学部論文ですら「不可」が出そうな、
かなり低俗な本と言わざるを得ません。

多分、「原綴だと著者らが思い込んでいる綴り」も
英語辞書か何かからそのまま引っ張ってきたものでしょう。


というわけで、
個人的には編集者・著者らの責任感が無さを
感じずにはいられません。
(私ですらあくまでヨーロッパ系ならば、ですが
 もうちょっとマシな本が書けますよ(^_^;;)


PS
「ダキアローマ史観」については
完全に私の専門とそれていますので、
断片的にしかお話しできないので、
ここで書くのはやめておきますが、
今度、機会があったら触れてみましょう。



「地名の世界地図」

佐藤和美 (2001/03/07 12:59)

「地名の世界地図」は、たたけば、ホコリがでるどころか、
たたけば、ホコリだらけの本?

ただ「地名の世界地図」に関しては、もうこれ以上文春にはなにも言わないつもりでした。
いいたいことはひととおり、言ったし。
そろそろこの本をネタにするのにも疲れを覚えてきたもんで。

私は言語学、歴史ただのアマチュアですけど、それで間違いだらけだとわかるんですから、
専門家が見ればどうなるかわかりきってますよね。

田邉さん
>佐藤さん、今度、
>機会があったら連れて行ってくださいね(笑)。

そのときは、声かけます。(笑)

>また、巻末の主要著書を見れば分かるのですが、
>これらはほとんど二次資料という、
>学部論文ですら「不可」が出そうな、
>かなり低俗な本と言わざるを得ません。

私の「本棚にある本」もろくな本がないので、自分が言われてるみたいです。(^^);


>2月から始めたページ「間違いだらけの「地名の世界地図」」は
>間違いだらけでなくなった時点で削除ですね。(伝言板のログは残りますけど)

なかなか、やめられそうにないかな?



re: 「地名の世界地図」

田邉露影 (2001/03/07 23:52)

>佐藤さん
> 「地名の世界地図」は、たたけば、ホコリがでるどころか、
> たたけば、ホコリだらけの本?

残念ながらそういうことになりますねぇ。
私は購入するまでは
もうちょっとマシな本だと思っていたんですが……。


> ただ「地名の世界地図」に関しては、
> もうこれ以上文春にはなにも言わないつもりでした。
> いいたいことはひととおり、言ったし。

今後、佐藤さんのご意志って、
著者側に伝わるんでしょうか……。

やはり一連のやり取りを見ている限りでは、
その辺は非常に気になります。


> そろそろこの本をネタにするのにも疲れを覚えてきたもんで。

キリがない、ってところですか?

デタラメが多すぎて、
多分、綿密にデバッグ作業をしたら、
一冊の本が出来てしまうでしょうからね……。


> 私は言語学、歴史ただのアマチュアですけど、
> それで間違いだらけだとわかるんですから、
> 専門家が見ればどうなるかわかりきってますよね。

むろん、専門家が見れば
デタラメを見破るというのは、
多くの場合は難しくありません。

また、いわゆるアマチュアでも、
デタラメを見破ることができる、ということでは、
この本はまだタチの良い方なのかもしれませんね。

しかし、それでも何も知らない人を、
非常に簡単に騙せてしまうこと、
それから出版社が名の通った会社であること、
さらに著者が「学者たちを集めて」と、
権威的に振る舞って説得力を高めたことは、
問題性が非常に高いと思います。

「著者を明記しなかったのは、
学会から袋だたきにあうのを避けるためではないか」と
悪意的に解釈せざるを得ません……。


> >また、巻末の主要著書を見れば分かるのですが、
> >これらはほとんど二次資料という、
> >学部論文ですら「不可」が出そうな、
> >かなり低俗な本と言わざるを得ません。
>
> 私の「本棚にある本」もろくな本がないので、
> 自分が言われてるみたいです。(^^);

集めること自体は非常に重要だと思いますよ。

問題は適切な資料を調べ挙げて、
論を展開することなのですが、
……私もそれがきちんと出来ていたら、
某2.5流大学なんかで勉強していないで、
とっくに大学教授になっています(笑)。

ともかく重要なのは
「辞書からの引用は極力避ける」
ということでしょう。
ほとんどは泥沼に陥ります(^_^;。


OEDなんかは非常に丁寧に語源が載っていて、
語源辞典としてのほうが、
利用価値が高いような気がしますが、
それでも専門家の話では
ウラル系はほとんどデタラメなのだそうです。
(こういった編集はほとんど
 英語を中心とした印欧学者が携わっているそうなので、
 無理もないのですが……)


> >2月から始めたページ「間違いだらけの「地名の世界地図」」は
> >間違いだらけでなくなった時点で削除ですね。(伝言板のログは残りますけど)
>
> なかなか、やめられそうにないかな?

とりあえず最新版の訂正箇所が気になりますね。

たとえ、この場で間違いを指摘したとしても、
「権威ある資料」がそう書いてあるのなら、
例え古かったり明らかに間違えていたとしても、
「権威ある資料」の方が採用される傾向が強いです。

ですから事実上、
「これ以上どうしようもない」と感じた時点で、
凍結せざるを得なくなるかもしれませんね。

先のことは分かりませんけれども。



re^2: 「地名の世界地図」

松茸 (2001/03/09 00:29)

 お久しぶりです。

 『地名の世界地図』の間違い探しをやりかけていましたが、のべ500箇所ほどで挫折しました。
# しかも、肝心の「地名の語源/表記」については、ほとんど手が出ない状態。
 田邉さまのおっしゃるとおり、「キリがない」というのが率直な感想です。

> 「著者を明記しなかったのは、
> 学会から袋だたきにあうのを避けるためではないか」と
> 悪意的に解釈せざるを得ません……。
……「学会から袋だたきにあう」ほど間違いが多いこと自体に気がついていなかった、ということでしょう。いや、そもそも、「研究者」を自称していますが、どう考えても著者たちは(自分の無知さえ知らないという意味での)ド素人ですよ。
# まさか「編集部の内部原稿」、ではないでしょうが……。(^^;



「地名の世界地図」直るかな?

佐藤和美 (2001/03/09 13:00)

文春に指摘した中で直るかどうか見物なところをいくつか書きます。

この本のコピーからです。
「ケルト人とアングロ・サクソン人が生き残りをかけて戦ったウェールズ地方は、なぜ「敵地」とよばれ、ウラジオストックは「東方を征服せよ」と名づけられたのか。」

で、このコピーに関してですが、

ウェールズは「敵地」ってなってるけど、本当にこれでいいのかな?
(研究社「英語語源辞典」ではそうなってない)

「ウラジオストック」と「ウラジカフカス」の「ウラジ」の訳し方が違う。
「ウラジ」の意味をロシア語がわかる人に確認したほうがいいですよ、と忠告したんですが。
(著者の中にはロシア語がわかる人はいないようです。)

コピーは変えたくないだろうから、この辺は変更しない?

P111
「韓国の首都ソウルは「みやこ、首都」を意味する固有の韓国語であり、漢字にあてはめることはできない。」

「みやこ」は「みやこ、首都」を意味する固有の日本語であるが、「都」という漢字をあてはめることができる。
てな話をしたんですが、どこまで通じたかな。

P199
「ナイル」の語源は、エジプト語で「ナ」が冠詞で、「イル」が「川」ねぇ。
「ナイル」っていうのは英語の発音によりますが、そのスペルは「Nile」。
「ナ」が冠詞で、「イル」が「川」かどうか知りませんが、
その前に語源を「ナイル」で考えてるのがナンセンスですね。
エジプトではなんと呼んでいたかとか、考えないんでしょうか?

著者はこっちが指摘したところ以外は再点検しそうにないですね。
私は間違いが多いのだから、全面的に見直したほうがいいですよ、といいたいのですが通じないようです。
2回のメールでもこのへんは書いたんですが……

因みに、P115「後一〇八年」が「前一〇八年」になってたら、新しい版ですので。
(こんな間違いなかなかできないですよね)


http://www.fukuishimbun.co.jp/jp/jakusui.html
(福井新聞のページ)から。

「富士山山」などというと笑われる。しかし、多くの世界の川の名には普通名詞としての「川」がそのまま固有名詞として使われている。これに川を付けると富士山山になってしまう▼例えばナイル川。古代エジプト語では川のことをイルという。これに冠詞のナをつけてナイル。ずばり川だ。ナイル川はつまり「川川」ということになる。ラインやエルベ、セーヌも本来は流れや川を意味する▼「アメリカ」の地名はイタリアの航海者アメリゴ・ベスプッチに由来する。なぜ第一発見者のコロンブスの名前が付かなかったのか。アメリゴは四度探検にでかけて、コロンブスより1年早く新大陸を発見したと主張した▼ドイツ人学者がこれを真に受けた。アメリゴはラテン語でアメリカと読む。自著で「アメリカの国」と紹介しこれが広まった。マダガスカルも誤解による命名だ。マルコ・ポーロが東方見聞録に記録したマディガスカルに始まる▼これはアフリカ東部の地名モガディシュのこと。1500年にポルトガルの探検家が実際にマダガスカルを見つけたとき、国王が「これこそ東方見聞録にあるマディガスカルだ」と勘違いして命名した▼「地名の世界地図」(文芸春秋社)にはこんな話がたくさん載っている。日本の地名は漢字からおおよそ見当がつく。しかし、世界の地名や国名の由来はあまり知られていない。それにしても、誤解やミスで付けられた地名が意外に多いものだ。

この本を信じる人もいます。
文春にはよく考えてもらいたいです。
(すなおな(?)人って結構いるもんですね。)
(こういう信じる人達と信じない私達って、どこが違うんだろう?)

この本で世界史の受験勉強すると、落ちますよぉ!(^^)
(もっとも、この本、信じるような人も受験落ちますよ)



「地名の世界地図」各種データと「〜の世界地図」シリーズ

田邉露影 (2001/03/10 02:08)

検索エンジンで調べれば分かることなのですが、
とりあえず「地名の世界地図」情報を書かせていただきます。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166601474/249-4730218-2677948
http://www.books-sanseido.co.jp/wnew_jbest.html
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/search-handle-url/index=books-jp&field-author=21%E4%B8%96%E7%B4%80%E7%A0%94%E7%A9%B6%E4%BC%9A/249-4730218-2677948

で、最後のリンクは
「21世紀研究会」の著作物らしいですが、
 『民族の世界地図』
 『人名の世界地図』
なんて書籍もあるようですね。
後者なんかは佐藤さんの範疇かな?
(以前、話題に出たかも知れませんが)

私は試しに(恐いもの見たさで)買ってみることにします(^_^;。



『人名の世界地図』

佐藤和美 (2001/03/11 11:29)

今度は「間違いだらけの『人名の世界地図』」でもやりますか。(^^)
とりあえずは、10個ピックアップしました。

P22
「Anglro-Saxon」
正しくは「Anglo-Saxon」

P49
「このような命名法は、紀元前3000年頃のインド・ヨーロッパ祖語にまでさかのぼることができるという。」
知らなかった。紀元前3000年頃はまだインド・ヨーロッパ祖語が話されてたんですか。

P96
「前133年頃までのローマ帝国」の図
「前133年頃までのローマ帝国」の範囲と違う。

P115
「シェイクスピアの作品では、『ユダヤの商人』も、」
シェイクスピアの作品に『ユダヤの商人』ってありましたっけ? シャイロックっていうユダヤ人の高利貸しが出てくるようなんですが。(笑)

P138
「「石斧」を意味するケルトという名称は、アルプスの北、ヨーロッパとイベリア半島に住んでいた異民族を、古代ギリシアの地理学者が「ケルトイ」とよんだことによる。」
・ケルトは石斧を使ってた?
・本当にギリシアでケルトを「ケルトイ」と呼んだのか?
・イベリア半島はヨーロッパの一部だと思いますけど。「アルプスの北とイベリア半島に」くらいの表現がいい?

P153
ロンバルド族は「フランク王国をおこす」
『世界史辞典』(旺文社)には、ロンバルド族は「フランク王国のカール1世(大帝)に敗れて、774年併合された」ってあるんですが。フランク王国をおこすどころじゃない。(^^);
『世界史辞典』は最近、長女の「世界史」の勉強用に買ったんですが、思わぬところで役立ってます。

P156
「エドウィンEdwy」
正しくは「エドウィ」?

P224
「新羅の始祖は、天から光に包まれて降ってきたカボチャのように大きい卵から生まれたと言う伝説から、カボチャ(パク)を意味する「朴(パク)」」
カボチャはアメリカ大陸原産で、アジアに来たのは大航海時代になってからですね。この文章はどう解釈したらいいのか? 新羅の頃に「カボチャのように大きい卵」という言い方がなかったのは間違いないですね。

P242
「トウルシノ(垢だらけ)」
正しくは「トゥルシノ」

P244
「第二次世界大戦のインパール作戦、そして映画「ビルマの竪琴」などで、ミャンマーは、日本人にはなじみの深い国だ。」
そういえば、『地名の世界地図』P114には「日本では、韓国の首都というと、いまだに「京城」というイメージが強く残っている。」とありましたねぇ。いったい、何歳の人が書いてる?



re: 『人名の世界地図』

松茸@22世紀研究会 (2001/03/11 17:53)

 デタラメ本と知りつつ、やっぱり買ってしまいました。(^^;

佐藤様曰く:
> P96
> 「前133年頃までのローマ帝国」の図
> 「前133年頃までのローマ帝国」の範囲と違う。
……地図を見る限り、「後133年」の間違いみたいですね。
 いや、そもそも「前133年頃までのローマ」はまだ共和制なんですが。

> P138
> 「「石斧」を意味するケルトという名称は、アルプスの北、ヨーロッパとイベリア半島に住んでいた異民族を、古代ギリシアの地理学者が「ケルトイ」とよんだことによる。」
> ・ケルトは石斧を使ってた?
> ・本当にギリシアでケルトを「ケルトイ」と呼んだのか?
> ・イベリア半島はヨーロッパの一部だと思いますけど。「アルプスの北とイベリア半島に」くらいの表現がいい?
…… http://www.m-w.com/ で、"celt"を引いたら:
| Etymology: Late Latin celtis chisel
| Date: 1715
| : a prehistoric stone or metal implement shaped like a chisel or ax head
となっていました。民族(語族)名とは全然関係なさそうです。
 なお、ヘロドトスの『歴史』(松平千秋訳、岩波文庫)に"Keltoi"が出てくることを確認しました。


 さて、私もネタを追加しておきます:
p.29
「[前略]ラッセルの正式な名称は、バートランド・アーサー・ウィリアム三世・アール・ラッセル Bertrand Arthur William 3rd Earl Russel である。」
……"Russell"の'l'が一つ抜けているのはともかく、"Earl"が「伯爵」の称号であることに気づいていないので、完全な誤訳になっています。
 正確には、「第三代ラッセル伯爵バートランド・アーサー・ウィリアム」ですね。

p.169
「[前略]エラリー・クイーン Erary Queen(本名フレデリック・ダニーとマンフレッド・B・リー)のように二人で一つの筆名という作家もいる。」
……これも"Ellery"の間違い。
 また、「ダニー(ダネイ)」・「リー」も本名ではない(cf. http://www.cityfujisawa.ne.jp/~katsurou/mystery/queen/index.html)。
 ところで、かの『Yの悲劇』は当初「バーナビー・ロス」名義だったはずですが?

 最後に:
p.272
「[前略]なお、さまざまな名前、解釈には定説のないものも多い。お気づきの点については、さらなるご教示をいただければ幸いです。」
……開き直るなぁっ!!



re:『人名の世界地図』

佐藤和美 (2001/03/12 12:53)

>> 「前133年頃までのローマ帝国」の範囲と違う。
> いや、そもそも「前133年頃までのローマ」はまだ共和制なんですが。

失礼しました。(^^);

>P138
>「「石斧」を意味するケルトという名称は、アルプスの北、ヨーロッパとイベリア半島に住んでいた異民族を、古代ギリシアの地理学者が「ケルトイ」とよんだことによる。」
>・イベリア半島はヨーロッパの一部だと思いますけど。「アルプスの北とイベリア半島に」くらいの表現がいい?

その前に、イベリア半島がケルト居住地域かどうかのほうが問題でした。(^^);



はじめまして

青蛙 (2001/03/13 00:35)

佐藤和美さん、皆さん、はじめまして。
私、青蛙と申します。

いやー、こんなにオモシロくてモノスゴくタメになるページがあったとは……。
今まで佐藤さんのページに気づかなかった、自らの不明を恥じるばかりです。
コンテンツを見るたびに「なるほど、そうだったのか」と膝を打つものばかりで
す。まだ全てに目を通したわけではありませんが、本当に参考になります。

それにしても『地名の世界地図』ですか。こんなオイシイ“トンデモ本”があった
なんて……。
早速、近所の本屋を当たったところ、2月5日付の第5刷と2月10日付の第6刷が
ありました。僅か5日で増刷……売れてるんですね〜。佐藤さんによれば、1月15
日付で第3刷、1月20日付で第4刷だとか。(こちらも僅か5日で増刷されてますね)
松茸さんによれば、第4刷には佐藤さんが指摘した箇所の誤記訂正は施されていたと
のこと。それ以前の刷、できたら初刷を手に入れたいですね。売れているのでしたら
古本屋の方が早いかもしれません。

ところで、↑の松茸さんの書き込みには
> # それどころか、「千島」の語義(p.110)は佐藤様の丸写しなので、著作権料を請求で
> # きるかもしれません。
とありますが、そこで説明されていることを佐藤さんが発見して公表しているのであれば
わかりますが、そうでなかったら著作権云々は有り得ないでしょう。
ただここまできたら、修訂版が出た暁には、佐藤さんのお名前を監修者か校訂者としてク
レジットしなければならないでしょうね。



RE: 『人名の世界地図』

ビーバ (2001/03/13 17:54)

 紀元前3000年頃にインド・ヨーロッパ祖語が話されていたというのは、何か 問題あるのでしょうか?



ようやく入手しました

青蛙 (2001/03/14 00:03)

今度は比較的大きな書店に出かけまして、
ようやく『地名の世界地図』を入手しました。
さすがに初刷は無理でしたが、幸運なことに
第3刷を手に入れることができました。比較の
ために一番新しいと思われる第6刷も購入しま
した。私も文春に奉公してしまいました。
『民族の世界地図』も見かけましたが『人名の
世界地図』はありませんでした。新刊書なので
しょうか。

田邉露影さん:
お名前を間違えてしまい申し訳ありませんでしたm(__)m
それから、「辞書からの引用は極力避ける」とご
忠告されていたにもかかわらず、辞書から引いて
しまいました。私、『研究社 英和大辞典』を語源
辞典としても活用しているもので、ご容赦ください。
問題は、そこに書かれていることを鵜呑みにするか
どうかだと思います。
『地名の世界地図』の著者にしても、二次資料に拠っ
ているということよりも、参考文献を無批判に取り込
んでしまったことに問題があったのではないでしょうか。
皆さんのご指摘を見ていますと、それだけではないよう
ですけれども。



ケルト人その他

松茸@22世紀研究会 (2001/03/14 01:43)

佐藤さま曰く:
> その前に、イベリア半島がケルト居住地域かどうかのほうが問題でした。(^^);
……本格的な参考文献を調べる暇がないので、アンチョコから引いておきます。
・"Mycrosoft Encarta 2000"の「ケルト人」の項より抜粋:
「前5〜前1世紀、その影響は現在のスペインから黒海沿岸にまでひろがったが...」
・http://www.britannica.com/ の"Celt"の項より抜粋:
"Their tribes and groups eventually ranged from the British Isles and northern Spain..."
 また、電網上にもたくさんのページが見つかりました。
例:http://www.cofc.edu/languages/celts.html
 しかし、『地名の世界地図』(初刷・第四刷)pp.44〜45の地図には、なぜかイベリアは入っていないですね。いま気がつきました。(^^;


->青蛙さま
 はじめまして。
 ご存知でしょうが、ギリシア語・ラテン語の電網上のリファレンスとしては
http://www.perseus.tufts.edu/cgi-bin/perscoll?collection=Perseus:collection:PersInfo&type=interactive+resource
が有名です。私も重宝しております。
 ところで、もしや、
http://askalabo.virtualave.net/cgi-bin/board2/wforum.cgi
の青蛙さまと同一のお方ですか?



(無題)

田邉露影 (2001/03/14 03:24)

>青蛙さん
> 『民族の世界地図』も見かけましたが『人名の
> 世界地図』はありませんでした。

私の場合、
まだ、手にはしていないのですが、
注文後、すでに入荷はしたみたいなので、
ヒマを見はからって買って来ようかと思っています。


> 田邉露影さん:
> お名前を間違えてしまい申し訳ありませんでしたm(__)m

一瞬分かりませんでしたが、
「田辺」のことですね?
「田邊」という間違いもよく出会います。

でも実は私に限って言うと気にしないタチですから、
どうかお気になさらず使いやすい方でお願いしますね。


> それから、「辞書からの引用は極力避ける」とご
> 忠告されていたにもかかわらず、辞書から引いて
> しまいました。私、『研究社 英和大辞典』を語源
> 辞典としても活用しているもので、ご容赦ください。

この辞書って、
実は英語辞書としてよりも、
語源辞書としての方が
機能している気がしてなりません(笑)。

古ノルド語とか、しっかり載っているんですから。


> 問題は、そこに書かれていることを鵜呑みにするか
> どうかだと思います。
> 『地名の世界地図』の著者にしても、二次資料に拠っ
> ているということよりも、参考文献を無批判に取り込
> んでしまったことに問題があったのではないでしょうか。

おっしゃるとおりですね。


>ビーバさん
> 紀元前3000年頃にインド・ヨーロッパ祖語が話されていたというのは、何か
> 問題あるのでしょうか?

本当のところ、ラリンガルがバリバリに発音されていた時代って、
何年前なんでしょう?
やはり Yahoo! オークションで、
タイムマシンを購入しておくべきでした。


>松茸さん
ラテン語辞書にはこんなのもあります。
http://users.erols.com/whitaker/words.htm



著作権

面独斎 (2001/03/14 05:23)

> 佐藤さんが発見して公表しているのであればわかりますが、
> そうでなかったら著作権云々は有り得ないでしょう。

著作権と特許権を混同してませんか?



RE:『人名の世界地図』

佐藤和美 (2001/03/14 12:55)

『人名の世界地図』
1刷 2/20
2刷 2/25
今回も好調な売れ行きです。
1刷が欲しい人は早めに買いましょう。(^^)


どうも、ネタの使いまわしで、3冊の本を書いてるように思えてしょうがないんですが。
実際の情報量は2冊分くらい? もっと少ないかな?
『地名の世界地図』で間違えてることは『人名の世界地図』でも間違えてる、という副作用もあります。
『民族の世界地図』でも同じ間違いしてるのかな?

「前133年頃までのローマ帝国」の図は
『地名の世界地図』P32、33
『人名の世界地図』P96
両方にあります。
前133年頃のローマの範囲と違う、
前133年頃はローマは帝国でなかった、
ということでしたね。

「ゲルマン民族の移動」の図は
『地名の世界地図』P50、51
『人名の世界地図』P152、153
両方にあります。
なぜか「スラヴ族」だけが「スラヴ人」に、「族」が「人」にかわってる?
図の下の部族の説明を年表等と比較してみるのも一興。



(無題)

青蛙 (2001/03/15 00:33)

今、この伝言板の過去ログを拝見させていただいております。
本当に、参考になるお話がたくさんあって、リアル・タイム
でレスできなかったことが惜しまれます。

松茸さん:
>  ご存知でしょうが、ギリシア語・ラテン語の電網上のリファレンスとしては
> http://www.perseus.tufts.edu/cgi-bin/perscoll?collection=Perseus:collection:PersInfo&type=interactive+resource
> が有名です。私も重宝しております。
情報ありがとうございます。「ペルセウス」ですか、有名ですね。
先般、Metailurus の件で情報を寄せてくださった佐藤さんもネッ
ト検索の達人とお見受けしました。しかしながら、アナクロな私に
は、まだ書籍による検索の方がしっくりしているようです。

田邉露影さん:
> 「田辺」のことですね?
そうです。名前を間違って呼ばれるのは不快ですし、呼ぶ方も失礼
ですから。

> でも実は私に限って言うと気にしないタチですから、
> どうかお気になさらず使いやすい方でお願いしますね。
お気遣い痛み入ります。

> この辞書って、
> 実は英語辞書としてよりも、
> 語源辞書としての方が
> 機能している気がしてなりません(笑)。
おっしゃるとおりです。日本にはレキシコン(古典語辞書)があまりあ
りませんし、あってもベラボーに高価なので、語源辞典としてそれから
専門語辞典として重宝しています。ただ、最新版の第5版にしても初刷
が20年前なので、情報の古さは否めません。改訂が望まれます。

面独斎さん:
> 著作権と特許権を混同してませんか?
おっしゃっている意味がよくわかりません。「先取権」と混同したことは
否定しませんが。確かに著作権は、作品を創作した時点で発生するもので
すが、その創作物を公表しないと効力が発揮されない(できない)のでは
ないでしょうか? 私、特許権については無知なものですから、ご説明い
ただけたら幸いです。

佐藤和美さん:
> 『人名の世界地図』
> 1刷 2/20
> 2刷 2/25
店頭に見られなかったのは売れ切れてしまったため!?
こちらこそ初刷を入手したいので、もう少し探してみましょう。

> どうも、ネタの使いまわしで、3冊の本を書いてるように思えてしょうがないんですが。
> 実際の情報量は2冊分くらい? もっと少ないかな?
某・自称サイエンス・エンターテイナー氏と同じじゃないですか。



Re: 著作権

面独斎 (2001/03/15 06:26)

青蛙さんが「発見」の語をどのような意味でお使いなのか計りかねて、ひょっとして、たとえばアメリカのような先発明主義の特許権の考え方と混同していらっしゃるのではないかと考えたわけです。著作物に「発見」が含まれている必要はありませんからね。

佐藤さんの場合は、『地名の世界地図』の記述に対し学術的な批判を加えたうえでご自身の見解を文書にし、それを専用のページを設けてウェブ上で公表していらっしゃいますから、その時点で著作権が発生しています。



ブッダ(『人名の世界地図』)

佐藤和美 (2001/03/15 12:45)

『人名の世界地図』の最後のページ(P306、P307)はインド人の名前です。
ここからブッダ関連のネタを三つひろってみました。

「ゴータム 「至高の雄牛」。ブッダ「目覚めた人」のもとの名として知られる。」
インドに「ゴータム」っていう名前があるのかどうか知りませんが、ブッダは「ゴータマ」で「ゴータム」じゃないですね。

「スジャータ 「高貴な生まれ」「素晴らしい性格」。ブッダに乳を与えた女性の名。」
「ブッダに乳を与えた」なんて、ポルノですね。(^^);
私の記憶では「乳粥」です。

「ラーフラ 「月食」。この日に生まれたブッダの子。」
ブッダが出家するときに出家のじゃまだというので「ラーフラ」とつけたはずです。「じゃまもの」というような意味だったはずです。月食の話は聞いたことないですねぇ。



著作権その他

松茸@22世紀研究会 (2001/03/15 14:37)

->青蛙さま:
 著作権について、面独斎さまのご説明に補足しておきます。
 公開されない著作物(たとえばEメイルによる私信)にも著作権は存在します(むろん、著作権を法的に問題にした段階で、必然的に「公開」されてしまいますが)。
 たとえば、『地名の世界地図』の原稿は出版以前には当然「公開」されていないので、文春の方で丸ごと盗用し「文春新書編集部編」と銘打って売り出しても著作権法には違反しない、わけがありませんよね。(^^;
 なお、公開されている著作物を「無断引用」するのは著作権法でも認められていますが、「引用であることが判る」「引用元を示す」「みだりに改変しない」といった条件があり、今回の場合はまず該当しません。


 さて、『人名の世界地図』の変な記述を追加しておきます:

p.173〜174
「[前略]八世紀頃にカナダから移住してきたイヌイットが住んでいた島を十世紀に「発見」して、「緑の土地{グリーンランド}」とよんだのは、「赤毛のエリック」とよばれたスカンディナヴィア人である。[中略]
 この極北の地にキリスト教をもたらしたのは、ノルウェーの航海者レイフ・エリクソン Leifr Eriksson である。[後略]」(引用者曰く、ルビは{}で囲んで示しました)
……伝承によれば、レイフ・エリクソンは赤毛のエリックの息子なんですが……。

p.230
「北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)では、一九四九年以降、「日本植民地時代の残滓」である漢字表記を廃止したため、[後略]」
……「封建時代の残滓」の間違い?

p.243
「北海道では、明治五年の戸籍法によって日本名に改名させられ、アイヌの人たちも、一般の日本人のように姓をもつこととなった。しかしつけられた名前は、実にいい加減なもので、血縁関係がなくとも同じコタン(村)のものには同じ名字をつけたり、山の中なので「山中」だとか、名前を考えた日が寒かったので「北風」などということさえあったという。また、元国会議員萱野茂氏で有名になった萱野や貝澤のように、地理や自然環境による命名も多かった。」
……これって、「一般の日本人」の場合もまったく同様だったはずですが? 「いい加減」につけられた珍姓・奇姓を集めた本やWebページもありますね。



『人名の世界地図』

ビーバ (2001/03/15 19:46)

佐藤和美さん:
>「ラーフラ 「月食」。この日に生まれたブッダの子。」
>ブッダが出家するときに出家のじゃまだというので「ラーフラ」とつけたはずです。「じゃまもの」というような意味だったはずです。月食の話は聞いたことないですねぇ。

 インド神話には、太陽や月を食べて日食・月食をおこすとされる「ラーフ」というアスラ(阿修羅)がいて、インド占星術でも蝕星として登場します。ブッダの息子「ラーフラ」の名前もこれと関係あると考えられているらしく、『人名の世界地図』の記述はこれに依ったものでしょう。ただし、「月食」というのでは説明が足りませんが。

 今日、『人名の世界地図』をちょっと立ち読みしてきたのですが、人名の由来がだらだら書いてあって最後まで読み切れるかも分からないので、買いませんでした。人名の由来はけっこう異説が多いので、当てにならないところもありますし(おっと、これは『人名の世界地図』にも書いてあるんでしたっけ?)。
 ページは忘れましたが(前のほう)、ペテロをPeteroって書いてあったのですが、このように表記する言語ってあるんでしょうか? まさかローマ字綴りじゃないですよね。



著作権の件

青蛙 (2001/03/16 00:09)

面独斎さん、松茸さん、著作権の件につきましてご教示いただきましてありがとうござ
いました。

面独斎さん:
> 青蛙さんが「発見」の語をどのような意味でお使いなのか計りかねて、ひょっとして、
> たとえばアメリカのような先発明主義の特許権の考え方と混同していらっしゃるので
> はないかと考えたわけです。著作物に「発見」が含まれている必要はありませんからね。
いわゆる「サブマリン特許」のことですね。そういうわけではありませんが、↓で書き込
みましたように、論文等の「先取権」と混同していたところがありました。

> 佐藤さんの場合は、『地名の世界地図』の記述に対し学術的な批判を加えたうえでご自身
> の見解を文書にし、それを専用のページを設けてウェブ上で公表していらっしゃいますか
> ら、その時点で著作権が発生しています。
松茸さん:
>  公開されない著作物(たとえばEメイルによる私信)にも著作権は存在します(むろん、著
> 作権を法的に問題にした段階で、必然的に「公開」されてしまいますが)。
これも↓で書き込みましたように、公開・非公開にかかわらず、創作が成された時点で著作権
が発生することは存じております。
また、文春側に落ち度があったことを否定するものではありません。『地名の世界地図』の第
4刷が佐藤さんからのメールによる指摘を受けて訂正されたことは、状況から見ても明らかで
すから、紙面のどこかでこのことについて触れるべきでした。
いずれにしましても、誤解を与えるような書き込みをしてしまいましたことを、皆さんにお詫
び申し上げますm(__)m



ラーフ

青蛙 (2001/03/16 01:28)

ビーバさんが書き込んでおられた
>  インド神話には、太陽や月を食べて日食・月食をおこすとされる「ラーフ」というアスラ
> (阿修羅)がいて、インド占星術でも蝕星として登場します。
というのは、以前、田舎の碩学者さんが書き込んでおられた「五星と五曜」(98/08/22 03:18)にある
> また、羅候を加え八曜とする説もあり。
の「羅候(らこう)」のことです。田舎の碩学者さんは“八曜”としていますが、私はこれに「計都(けいと)」を加えた“九曜”として聞いたことがあります。
現在の天文学では、これらは惑星のような実在する天体ではなく、
 羅候=降交点(月が黄道を上(北)から下(南)へ通過するところ)
 計都=昇交点(月が黄道を下(南)から上(北)へ通過するところ)
とみなされています。これらは黄道(太陽の通り道)と白道(月の通り道)との交点に当たり、ここで太陽と月が出くわしたときに日蝕(日食)・月蝕(月食)が起こるわけです。

羅候は「ラーフ」を音訳したものですが、人名のラーフラと関わりがあるかどうかは判りません。



『世界地図』

佐藤和美 (2001/03/16 12:49)

会社の帰りに本屋によるのが日課になってます。
『世界地図』、新しい版が出てました。
『地名の世界地図』7刷 3/5
『人名の世界地図』3刷 3/5

文春への二回目のメール(「地名の世界地図」佐藤和美(2001/02/16 12:35)と同じ内容)は修正されているようです。
ただし修正が適切かどうかが問題です。
いまさら買う気はおこらないので、詳しくは見られませんでしたが。
(矛盾点を指摘するだけじゃなくて、修正方法も教えないとだめ?)

ビーバさん
>ページは忘れましたが(前のほう)、ペテロをPeteroって書いてあったのですが、
>このように表記する言語ってあるんでしょうか? まさかローマ字綴りじゃないですよね。
P15に「ペテロPetero」ってありますねぇ。
考えてみると「ペテロ」ってふしぎな表記ですね。
たぶん日本語訛りなんじゃないかと思います。
で、「Petero」はこの本の著者の創作。
(これは間違いというより、創作に近いと思います。確信犯。)
P293の「ピーター」の項には「ペテロはヘブライ語で「石、岩」。」とあります。
「ペテロ」の語源はギリシア語のはずですが……



ペテロ

佐藤和美 (2001/03/17 17:03)

梅田修「ヨーロッパ人名語源事典」(大修館書店)からです。
「英語名ピーター(Peter)はギリシャ語Petros(石、岩)が語源である。(中略)イエスはシモンにケパ(Kepa:岩)という名を与えた。このケパをギリシャ語に翻訳したのがペトロである。」



人名の世界地図

青蛙 (2001/03/18 00:41)

ようやくにして『人名の世界地図』を入手いたしました。
初刷とはいきませんでしたが、これ以上探すのもしんどい
ので、第2刷で手を打ちました。
ざっと一瞥して気づいた点に、以下のようなものだあります。

p.15
それまで一貫して「ペテロ」であったものが、12行目の末尾
から13行目にかけてだけ「ペトロ」となっています。
(単なる誤植でしょうか)

p.75(図中)
 |[ドイツ]ヨハン Johaann
ドイツでもヨハンは Johann なのでは。発音には「ヨハン」と
「ヨーハン」の2通りがあるようですが、「ヨハーン」ともい
うんでしょうか。

p.91
 |地動説を唱えたニコラウス・コペルニクス Nikolaus Copernicus
 |は、母国のポーランドではミコワイ・コペルニク Mikokaj
 |Kopernik とよばれる。
何を隠そう、『研究社 英和大辞典』でも同じ説明がなされています。
しかし、鈴木敬信『天文学辞典』によれば、コペルニクスの原名(ポ
ーランド語名)は Niklas Koppernigk とあります。
高橋憲一氏の『天球回転論』では、姓に関しては「他の綴りもある」
とあるので、どちらの綴りが正しいとは言えません。更に「ミコワイ」
はコペルニクスの父の名となっています。
(Nikolaus は Nicolaus の誤りかと思われます)

Arfred
p.157の系図の説明では、
 |Alfred の名は Alf-(自然を司る神エルフ)と、-red(指導者)
 |を意味する言葉を組み合わせたものだ。
とありますが、p.158の本文では
 |アルフレッド Alfred のアルフ alf とはこの妖精を意味する名前
 |なので、これに「王」を意味するエド ed がついてアルフレッドは
 |「妖精王」のいうことになる。
となっています。更に、p.275の大索引では
 |「妖精、超自然的存在」と「王」の二つの意味をあわせもつ。
となっていて、一貫性がありません。執筆者が複数のためでしょうか?
研究会としての申し合わせや、編集はどうなっているのでしょう。
1番目の説明にあるエルフって妖精であって「神」とは違うと思うので
すが。もっとも、最近のゲームやファンタジー小説に出て来るエルフは、
人間より長寿で長い耳を持ったヒューマノイドの一種として描かれてい
ますけど。
2番目の説明では、r が説明されていないようですし。
-red は、『英和大辞典』によれば rede (助言、忠告)と同根のようで
す。

p.160
 |Ludwig von Beethoven
→ Ludwig van Beethoven

長くなるのでこの辺で。それにしても、巻末の「大索引」の製版工程におけ
る手抜きは何とかならないのでしょうか。



コペルニクス re:人名の世界地図

松茸 (2001/03/18 01:47)

青蛙さま曰く:
> p.91
>  |地動説を唱えたニコラウス・コペルニクス Nikolaus Copernicus
>  |は、母国のポーランドではミコワイ・コペルニク Mikokaj
>  |Kopernik とよばれる。
> 何を隠そう、『研究社 英和大辞典』でも同じ説明がなされています。
> しかし、鈴木敬信『天文学辞典』によれば、コペルニクスの原名(ポ
> ーランド語名)は Niklas Koppernigk とあります。
> 高橋憲一氏の『天球回転論』では、姓に関しては「他の綴りもある」
> とあるので、どちらの綴りが正しいとは言えません。更に「ミコワイ」
> はコペルニクスの父の名となっています。
> (Nikolaus は Nicolaus の誤りかと思われます)

……コペルニクスの時代の西ヨーロッパでは、〈母語の正書法〉が十分確立していなかったので、人名のつづりに揺らぎが生じているのは当然でしょう。また、現代までに言語そのものが変化していることもあります。
 ただし、問題の『人名の世界地図』は現代の正書法に基づいている(つもり)らしいので、現代ポーランド語の標準的な表記 "Mikolaj Kopernik" でよいと思います。
 Web上でいいページを見つけられなかったので、とりあえず
http://www.uni.torun.pl/
を根拠として挙げておきます。
 なお、"Mikolaj"の'l'は、正確には'?'(Unicode:x0142)ですね。
# Unicode直書きしました。見えない方はご勘弁。(^^;

P.S.
 鈴木敬信『天文学辞典』については、是非とも
http://bosei.cc.u-tokai.ac.jp/~haruta/detarame/keisin2.html
を参照してください。
# もうご存知でしたら m(_ _)m。



Re: コペルニクス re:人名の世界地図

青蛙 (2001/03/18 17:18)

まず前回の書き込みで、

> ざっと一瞥して気づいた点に、以下のようなものだあります。
→ざっと一瞥して気づいた点に、以下のようなものがあります。

> |は、母国のポーランドではミコワイ・コペルニク Mikokaj
→|は、母国のポーランドではミコワイ・コペルニク Mikolaj

の誤りでした。(単なる誤植です)
訂正してお詫びいたしますm(__)m


松茸さん、ご指摘ありがとうございました。やはり手元の資料だけでは限界がありますね。コペルニクスの原名、更にはその原綴りまで記しているものなんてなかなか見つからないものです。原恵氏の『星座の神話』でもカタカナで「ニコライ・コペルニク」とあるだけですから。

> ……コペルニクスの時代の西ヨーロッパでは、〈母語の正書法〉が十分確立
> していなかったので、人名のつづりに揺らぎが生じているのは当然でしょう。
> また、現代までに言語そのものが変化していることもあります。
おっしゃるとおりです。

>  ただし、問題の『人名の世界地図』は現代の正書法に基づいている(つもり)
> らしいので、現代ポーランド語の標準的な表記 "Mikolaj Kopernik" でよいと
> 思います。
http://www.britannica.com/seo/n/nicolaus-copernicus-1/
によれば、Mikolaj Kopernik は松茸さんのご説明のとおりですが、『天文学辞典』に見られる Niklas Koppernigk は、ドイツ語のプロイセン方言形ということらしいです。また、
http://www.astro.uni-bonn.de/~pbrosche/persons/pers_copernicus.html
も参考になりました。「ニコラ(ウ)ス」にはさまざまな綴りがあるようです。
それなら、Nikolaus という綴りもあながち間違いとは言えません。とはいいましても、『人名の世界地図』にあるように“Nikolaus Copernicus”とはならないでしょう。
また、この web ページでは「誤って Kopernikus とも」と説明されていますが、Kopernikus というのはドイツ語式の綴りなのではなかったのでしょうか? この web ページから張られているリンク先も、Kopernikus とあるのはみなドイツ語のページのようですし。


そうなると、『天球回転論』で「父ミコワイ・コッペルニク」とあるのは誤りなのでしょうか? それとも、コペルニクスはミコワイのジュニアだったりして。私が検索した範囲では、さすがにコペルニクスの父にまで言及しているものはありませんでした。



Re^2: コペルニクス

松茸 (2001/03/18 22:42)

 歴史掲示板みたいになって恐縮ですが……。

 ご存知と思いますが、「コペルニクスはドイツ人だ」という主張があります。
 「チンギスハーンは日本人(=源義経)だ」などと違い、かなり根拠があるようです。
 例えば:
 http://www.asahi-net.or.jp/~FL5K-OOT/rekishi.htm
 http://www.blupete.com/Literature/Biographies/Science/Copernicus.htm#fn1
など参照。
 もっとも、当面の『人名の世界地図』の場合:
「母国のポーランドでは」(初刷p.91)
とはっきり断ってありますから、ドイツ語式表記を持ち出す必要は無いでしょう。

> そうなると、『天球回転論』で「父ミコワイ・コッペルニク」とあるのは誤りなのでしょうか? それとも、コペルニクスはミコワイのジュニアだったりして。[後略]
……ご教示いただいたリンクにあった
 http://es.rice.edu/ES/humsoc/Galileo/Catalog/Files/coprnics.html
 http://www.man.torun.pl/Citizens/Kopernik/
によれば、ご想像通りのようです。
# 「いや、実は三世だった」とか。(**;)☆\



『天文学辞典』

青蛙 (2001/03/19 00:19)

松茸さん、いろいろとありがとうございました。おかげさまで、コペルニクスについてより良い情報を得ることができました。

>  鈴木敬信『天文学辞典』については、是非とも
> http://bosei.cc.u-tokai.ac.jp/~haruta/detarame/keisin2.html
> を参照してください。
先回のことといい、松茸さんも疑似科学に興味をお持ちのようで。
上記の web ページ、存じておりました。『天文学辞典』は「トンデモ本」ならぬ「デタラメ本」ですってね。いえ、だからといって全部が全部デタラメということはないでしょうし、先行資料をコピペしただけの、他の同じような辞典類よりも断然に面白いですよ。私は楽しく読ませていただいています。
著編者の鈴木敬信氏は、言葉にも独自の思い入れがおありだったようです。氏に言わせれば、「紫外線」は間違いで「菫外線」が正しいとか、わしゃ「クエーサー」なんて認めない「クアサール」じゃなきゃだめだそうで、先のページで指摘されていた以外でも、いろいろとツッコミどころがあります。美味しいけど毒がある河豚のようなものとお考えください。初版は1986年ですが、現在も増補版が出回っていますので、図書館等で見かけることがありましたら、巻頭の「本書の執筆・編集にあたって」だけでも、ぜひ目を通してみてください。

# この書物の最大の難点は、参考文献が掲げられていないことです。
# 書かれていることの裏付けが取れませんから。



『世界地図』

佐藤和美 (2001/03/19 12:53)

文春から連絡がありました。
『地名の世界地図』の新しい版(8刷?)の見本ができたそうです。
3/1にこちらが伝えた分の訂正が含まれているものでしょう。
木曜日(3/22)の夜に会う予定です。
(>田邉さん、どうしよう)
その後の『地名の世界地図』の手持ちの間違い・疑問点はどうにもまとまりがつかないので、
今回は『人名の世界地図』の判明分を持っていこうかと思っています。
『地名の世界地図』に関してはまとまりしだい(数週間後?)FAXかなにかで送ることになるでしょう。(E-mailは苦手らしいので。)



[[

田邉露影 (2001/03/19 22:03)

> 木曜日(3/22)の夜に会う予定です。
> (>田邉さん、どうしよう)

せっかくお声いただいたのですが、
22日はちょっと無理そうですね。

来られるとしても、
10:00pm 頃になってしまいそうです。

火・金曜日でしたら予定が空いていたのですが……(^_^;。


> その後の『地名の世界地図』の手持ちの間違い・疑問点は
> どうにもまとまりがつかないので、
> 今回は『人名の世界地図』の判明分を持っていこうかと思っています。

私の疑問点としては、
前にも挙げさせて頂きましたが、
大まかには
「辞書の又引きをしていないだろうか?」
「歴史観の解釈に偏りがないだろうか?」
「『ヨーロッパ言語の旅』という著作を知っているだろうか?」
 (……どうせ洋書文献は読んでないでしょう)
を両方の本に関して、
お聞きしたいところです。


> 『地名の世界地図』に関してはまとまりしだい(数週間後?)FAXかなにかで送ることになるでしょう。(E-mailは苦手らしいので。)

あらかじめ著作権・原稿料については
きちんと白黒つけておいた方がいいのではないでしょうか。



『世界地図』シリーズのアブない記述

松茸 (2001/03/21 23:42)

 いいかげんしつこいですが、以下のような記述を〈単純な間違い〉として許容しては呉れない集団も、世界には存在しますので、あえて書きます。
# 一部、佐藤さまへ別途ご連絡した分と重複しています。
# また、最新刷では直っているかも知れません。乞うご容赦。
1) モンテネグロが「一九九〇年には東欧革命の影響で独立を果たした。」 (『地名』p.64〜65)
2) パフレヴィ朝は「[前略]アリアナ Ariana (アーリア人)がペルシア語に転訛したイラン Iran を国名にしたのだった。」 (『地名』p.161〜162。強調は引用者による)
3) 「マホレ島の住民の大部分がキリスト教であり、思想、文化まで西欧化してしまっているので、いまさらアフリカにもどれといわれても引き返せないところまで来てしまっている[後略]」 (『地名』p.192)
4) 地図の問題ですが、『地名』p.163で、「クルディスターン地方」がイラン北部に限られるかのような不正確な表示になっている。
……まだまだありますが、テロにでも遭いたいんですかね、文春は?
 更に:
5) 「ゴルゴダの丘」(『地名』p.148)・「エルサレムのゴルゴダの地」(『人名』p.131)
6) 「デューク Duke (姓)「男爵」。」 (『人名』p.289)
……こんな侮辱をうけた以上、あの人物もすすんで依頼を受けるでしょう。
 というわけで、佐藤さま、明日はくれぐれもお体にお気をつけてください。

# 『民族の……』が一番アブなそうですが、怖くて未読です。


※真面目な追伸
田邉さま曰く:
> あらかじめ著作権・原稿料については
> きちんと白黒つけておいた方がいいのではないでしょうか。
……同感です。
 単純な抗議の投書ならいざしらず、訂正箇所の指摘のため二度も担当編集者と面会して打ち合わせるというのは、事実上の共同編著者ということでしょう。
 向こうは大出版社ですし、なまじヴォランティア精神を発揮する必要はないと思います。

 なお、「21世紀研究会」の著作に関する、今までおよび今後の私の本伝言板への書き込みは、特に断らない限り、私の著作権(仮にあったとして)を一切放棄することを、この場を借りて明らかにしておきます。
# ただし、自分の書いたものを「参考」にして、盗用にならない範囲で新たに文章を起こす権利は、もちろん保留しておきます。(^^;



『世界地図』

佐藤和美 (2001/03/22 12:35)

いよいよ今日ですねぇ。
前回の指摘分がどう訂正されてるか、みものです。

>> あらかじめ著作権・原稿料については
>> きちんと白黒つけておいた方がいいのではないでしょうか。
>……同感です。

田邉さん、松茸さん、ありがとうございます。
今回はこのへんもはっきりさせたいと思います。

>「デューク Duke (姓)「男爵」。」 (『人名』p.289)
>……こんな侮辱をうけた以上、あの人物もすすんで依頼を受けるでしょう。

デューク・トーゴーもバロン・トーゴーに格下げですか。(^^);

http://www01.sankei.co.jp/databox/paper/0101/06/paper/today/book/06boo004.htm
産経新聞書評
『地名の世界地図』
フジ・産経グループは教科書検定でもめてる最中ですけど、『地名の世界地図』は産経好みのネタですね。
こうなってくるとただの間違いじゃすまないですね。

http://book.asahi.com/rev/rev01031401.html
朝日新聞書評
『人名の世界地図』
久世光彦さんの書評
間違いに気がついてないみたい。

http://kyoto.cool.ne.jp/bbs/saland?num=1098&ope=v&page=
「研究会じゃなくて勉強会の間違いじゃないの?」
ナットク!



『世界地図』

佐藤和美 (2001/03/23 12:33)

きのうは、8刷(3/15発行)をもらいました。
でも直しもれがあるようで、9刷が4/7に出る予定だそうです。

なお、ただ働きにはならなくてすみそうです。

さて指摘したところはどうなったかな?

「「地名の世界地図」の笑えるネタ?」(2001/02/17 17:38)
>次は算数の問題
>P14
>前二二五年頃……  千三百年後……  一五三三年
>「前」の意味がわかってないようで……

これがどうなったか。

前二二五年頃……  約千七百年後……  一五三三年

どう思います?
前二二五年から一五三三年は一七五七年なんだけど。
(BC+AD-1 → 225+1533-1 → 1757)
千七百よりも、千八百に近い……
「約」をつけたから、千七百でもいいことにした?

P26
「カンヌCannesは「葦」だから、おそらく当時は葦原が広がる浜辺だったのだろう。」

葦は淡水の岸辺に生えるのではないかとの質問に、こうなってました。
「カンヌCannesは「葦」だから、おそらく当時は葦原が広がる土地だったのだろう」

P32-33
「前133年までのローマ帝国」の図

これは「ローマ帝国の最大版図」に変更になってました。

P44-45
「ケルトの居住地」の図

これは「ローマ軍侵攻以前のケルトの居住地」になり、
イベリア半島の一部、ヴェネツィアのあたりが追加でぬられてます。

「ローマ軍侵攻以前」て、あいまいな表現ですね。
この図も検証が必要かな?

P120
「日本でも大ヒットしたザ・フォーク・クルセイダーズの「イムジン江」は、」

フォークルの「イムジン江」は大ヒットなんかしてないし、レコードだって発売中止になったんだぞ。それにザ・フォーク・クルセイダー「ス」だぞ。
で、これになりました。
「日本でもはやったザ・フォーク・クルセイダースの「イムジン江」は、」

9刷、手に入ったら、またこの本と格闘開始かな?

特殊アルファベットは若干の例外を除いて、使う気ないようです。



re: 『世界地図』

田邉露影 (2001/03/23 14:41)

> 特殊アルファベットは若干の例外を除いて、使う気ないようです。

う〜ん、言語をナメていますね(^_^;。

っていうか佐藤さん、松茸さん、私をはじめ、
膨大な量の訂正があるはずなのに、
高校生の小論文の手直し程度にしか、
文章内容を直していないという根性が凄いです。

著者は素人だし、
まるで泰○社みたい(^_^;;;;。



『世界地図』シリーズに思う

青蛙 (2001/03/24 01:07)

佐藤さんがご報告しておられるところによれば、『地名の世界地図』は3月15日付で第8刷が出ており、さらに4月7日付で第9刷が出るとのことです。田邉さんも指摘しておられますが、文春側は、佐藤さんの web ページの存在と、刻々と(と言っては大げさでしょうか)自社の製品に対するミスが寄せられていることを、どのように受け留めているのでしょうか。

もし、これからもシリーズの出版を続けるつもりであれば、その場しのぎのマイナー・チェンジによる増刷は直ちに止めて、ある程度の期間をおいて、そこに書かれていることを徹底的に吟味し、単なる増刷ではなく、これまでとは全く別の「改訂版」と位置付けて発刊すべきではないでしょうか。そうでなければ、私はこれらの書物に対して、トンデモ本としてすらも「買ってはいけない」と申し上げざるをえません。

それが単独著であったなら、そいつのフライングなんだなと、一連のトンデモは理解できます。ところが、『世界地図』シリーズは9人のメンバーからなる共著書です。それも私のようなド素人ではなく、その道の研究者が9人も寄り集まっているというのに、あの間違いの多さ、まとまりの悪さはどうしたことでしょうか。著作(商業出版)に対してあまりに無責任ではありませんか。改訂版では、佐藤さんに対する著作権がらみのケジメもさることながら、文責を明らかにするためにも、「21世紀研究会」なるグループのメンバーの個人名と略歴を開示するべきだと思います。

それにしても、シリーズにおける間違いは、「21世紀研究会」の面々が参考文献として掲げていたものに既に見られるものなのでしょうか。それとも、彼らがそれを無視して、勝手に創作したものなのでしょうか?

田邉さん:
> まるで泰○社みたい(^_^;;;;。
実名を出して恐縮なのですが、語学がらみで泰○社というは「泰流社」のことでしょうか? 実は私、この出版社が出した書物で参考にしているものがありますので、何か問題があるようでしたら、差し支えない範囲でご教示いただけたら幸いです。



re: 『世界地図』シリーズに思う

田邉露影 (2001/03/24 02:38)

『ゴルゴ13』の第1巻なんて、
ハンガリー人の「セルゲイ」だとか、
凄まじく田舎な「ブダペスト」だとか、
旅行者ビザを発行してもらえばいいのに、
わざわざスキーで不法入国したり……。

また『孔雀王』のアーリア人思想にも驚かされました。
(この本もいかにも誇らしげに、
 トンデモ本を参考文献に挙げています)

……しかし、これらは漫画ですが、
『〜の世界地図』は漫画ではありません。
『文明の衝突』は自分の名前・地位を明記して、
しっかりと面と向かって批判を受けていますけれども、
(確かにあの本はどうかと思います(^_^;;)
『〜の世界地図』は明記されていないために、
それは不可能です。


> 田邉さんも指摘しておられますが、
> 文春側は、佐藤さんの web ページの存在と、
> 刻々と(と言っては大げさでしょうか)
> 自社の製品に対するミスが寄せられていることを、
> どのように受け留めているのでしょうか。

非常に悪い言い方をさせていただきますが、
もしかしたらクレーマーという認識を
しているかもしれませんね。


> ところが、『世界地図』シリーズは
> 9人のメンバーからなる共著書です。
> それも私のようなド素人ではなく、
> その道の研究者が9人も寄り集まっているというのに、
> あの間違いの多さ、
> まとまりの悪さはどうしたことでしょうか。

まあ、文章の論調からして、
非常に稚拙であると言わざるを得ません。


> 著作(商業出版)に対してあまりに無責任ではありませんか。
> 改訂版では、佐藤さんに対する
> 著作権がらみのケジメもさることながら、

実は似たような本って、
意外と多いんですけどね。

例え朝○新聞でも。
(実際ハンガリー関連の記事では
 かなり研究者の反感を買うような
 内容が多いのだそうです)


> 文責を明らかにするためにも、「21世紀研究会」なるグループのメンバーの個人名と略歴を開示するべきだと思います。

同感です。

例えば山川出版社の『新版 世界各国史』シリーズは
非常に懇切丁寧に書いてあり、
適切な研究者の手によって
書かれていることもさることながら、
きちんと個人名と略歴に関して、
巻末に明記してあります。


> それとも、彼らがそれを無視して、勝手に創作したものなのでしょうか?

多分、
「話の面白おかしそうな文献」
から拝借してきたものが、
ほとんどなのじゃないでしょうか。


> > まるで泰○社みたい(^_^;;;;。
> 実名を出して恐縮なのですが、

まあ、もうあの出版社はないですからね。


> 語学がらみで泰○社というは「泰流社」のことでしょうか?

そうです。


> 実は私、この出版社が出した書物で
> 参考にしているものがありますので、
> 何か問題があるようでしたら、
> 差し支えない範囲でご教示いただけたら幸いです。

だいたい一人の著者が、
ラテン語入門、ルーマニア語入門、ハワイ語入門などなど、
計10言語ほどの本を同出版社で出すなんておかしいです。


まあ、十把一絡げにするのも問題があるのですが、
……あの出版社の出している本は、
基本的に信用してはいけません。

著者のほとんどは研究者でも何でもない人や、
似非研究者ですから。

これは裏話ですが、
この出版社から本を出すというのは、
それだけでも烙印になるそうです(^_^;。

もちろん、参考文献にしようしても。


つまり、例の文春の騒動と同じように、
著者も出版社も責任感があまりにも無さ過ぎるんですよ。


ラテン語入門に関しては、
私も目を通しましたが、
明らかにこの著者はラテン文法が分かっていません(^_^;。
多分、違う洋書から拝借してきたものに、
自分風味のスパイスを加えたものでしょう。

また、ハンガリー語に関する同出版社の書籍も、
なんら信頼できるものはないのだそうです。
(ハンガリーが専門の先生から直接確認済み)


そういうわけで、
同出版社を参考にされた部分は、
できるだけ再調査してみた方が良いかと思います。



疲れる修正

佐藤和美 (2001/03/24 10:25)

こういう修正は疲れるなぁ。

『地名の世界地図』P200
「黒海に流れ込む川で共通していることは、インド・ヨーロッパ語族で「川」を意味する接頭辞のDoかDaが必ずついていることだ。ドナウ川Donauもドン川Donも、その意味するところはやはり「川」、ドニエプル川Dneprは「北の川」ということだ。」

私の指摘は「「Dnepr」には「Do」も「Da」もついてない。「DoかDaが必ずついている」の直後に「Dnepr」があるなんて、ちょっとはずかしいですね。「d」、「n」がついてるとしたほうがいいんじゃないですか。」
これがどうなったか。

「黒海に流れ込む川で共通していることは、インド・ヨーロッパ語族で「川」を意味する接頭辞のDoかDaがついていることだ。ドナウ川Donauもドン川Donも、その意味するところはやはり「川」、ドニエプル川Dnepr(dan+apris)は「北の川」ということらしい。」

「必ず」を削除。
「(dan+apris)」を追加。
「だ」を「らしい」に変更。

疲れる修正ですねぇ。
いくら指摘しても無意味なのかなぁ。

田邉さん
>高校生の小論文の手直し程度にしか、
>文章内容を直していないという根性が凄いです。

これもその口ですか。

(「インド・ヨーロッパ語族」?)
(「dan+apris」は何語のつもり?)



re: 疲れる修正

田邉露影 (2001/03/24 11:56)

> これもその口ですか。
>
> (「インド・ヨーロッパ語族」?)
> (「dan+apris」は何語のつもり?)

そのうち同じ段落でも、
意味がまったく通じない文章が出来上がることでしょう。

語源学のようなそれほど売れる見込みのない
「本を出す」ということは、
著者にもそれなりの意気込みが
あるはずなのですが……。



『地名の世界地図』8刷修正点

佐藤和美 (2001/03/25 17:15)

『地名の世界地図』8刷修正点」をまとめました。
8刷でこちらの指摘で修正された箇所は50箇所ちょっとでした。
なお、修正が妥当なものであるかどうかには、ふれていません。



「『地名の世界地図』8刷修正点」更新

佐藤和美 (2001/03/31 14:02)

『地名の世界地図』8刷修正点」を更新しました。
私の指摘した内容と、修正に対する指摘を追加しました。
8刷「黒海に流れ込む川で共通していることは、インド・ヨーロッパ語族で「川」を意味する接頭辞のDoかDaがついていることだ。ドナウ川Donauもドン川Donも、その意味するところはやはり「川」、ドニエプル川Dnepr(dan+apris)は「北の川」ということらしい。」

ドン川って、アゾフ海に流れ込んでたんですね。今まで気がつきませんでした。
黒海じゃないぞ!



近頃の新書のレベル

佐藤和美 (2001/05/02 10:39)

月刊「言語」3月号 「読書日記99・現実と詩と」塚谷裕一 から
「昨年、老舗の出版社の方が、自分で担当された新書を一冊送って下さったことがある。一読、ショックを受けた。「波動」、である。そして「素粒子物理学」、「博士号」、「ノーベル賞」。科学的証明を欠いた虚仮脅かしの連続。典型的なトンデモ本だ。まっとうだった某新書シリーズに、似非科学の話が入ってしまったのである。なぜこんな本を、と当の編集者氏に問うてみたところが、「本当だと信じていました」。」
「こうした出版社における知の危機は、最近とみに感じるところである。その理由の一つは、現在の出版の世界に、科学的な思考法のできる人が極端に少ないことだろう。第二に、最近急に新書の発行元が増えたため、手ぐすねを引いて待っていた似非科学の人たちが、一斉に著者として名乗りを上げたことも大きい。(冒頭の新書も、持ち込み原稿だったそうである)。」

この「科学」、「科学的」というのを他の言葉に置きかえてみるのもおもしろいですね。
例えば、「言語学」、「言語学的」とか。
最近の新書のレベルはこんなものですか。



『地名の世界地図』の元ネタについて

松茸 (2001/05/28 04:01)

 お久しぶりです。
 例の『地名の世界地図』の〈アイヌ語〉の珍解説(の一部)とまったく同じ誤りを冒している本を発見しました。

  『地名の由来を知る事典』 武光誠著 東京堂出版 1997年

 いくつか例を挙げます[原文のルビは{ }で囲って示しました]:

* 稚内
 稚内(ヤム・ワッカ・ナイ「冷たい飲み水の川」のヤムの省略されたもの)
  (『地図』第一刷 p.108)

 稚内{わつかない}市の地名は「冷たい飲み水の川」をあらわす「ヤム・ワツカ[原文のまま]・ナイ」にもとづく。
  (『事典』p.235)

* 古平
 古平(フルー・ピラ「赤い崖」、積丹半島を取り巻く断崖が赤く見えたため)
  (『地図』第一刷 )

 古平{ふるびら}町の地名は、赤い崖をあらわすアイヌ語「フルー・ピラ」をもとにつくられた。そこは積丹{しやこたん}半島北東部沿岸の漁業の町である。海からみた積丹半島をとりまく断崖が赤く見えたために、その地名がおこった。
  (『事典』p.237)

* 斑鳩
 しかしハトは日本中にいるが、「いかるが」という地名は聖徳太子ゆかりの地の他にはみられない。そこで、アイヌ語の「イカルカ」(山の頂、物見をするところ)がその語源だとする研究者がいるのだ。
  (『地図』第一刷 p.109)

 ハトはどこにでもいるが、古代の文献に太子ゆかりの地のほかの「いかるが」の地名は出てこない。そこで「いかるが」はハトにちなむものではなく、アイヌ語にもとづくものだとする説も出されている。それによれば「イカルカ」という「物見をするところ」をあらわすアイヌ語が斑鳩の語源であることになる。   (『事典』p.177)

……直接参考にしたのか、たまたま同じ幽霊アイヌ語本を引いたのかは不明ですが、同系統のものであることは間違いないようですね。



□ 「ダーレン」とは誰だ?

菅佐原英二 (2001/05/28 07:35)

文春新書「人名の世界地図」(P71)に
『冒頭であげた一四の名前の最後にダレンDarrenがあるが、これだけは語源が
不明で、一九六〇年まで、イギリスではまったく知られていなかった名前だと
いう。その突然の流行の背景には、アメリカの人気テレビ番組「ビウィッチド」
がある。日本でも「奥様は魔女」というタイトルで高視聴率をあげたシリーズ
番組だった。日本語の吹き替えでは、魔女サマンサがご亭主を「ダーリン」と
よんでいたが、あれは、「愛しい人」とよびかけるダーリンDarlingではなく、
実はダレンという固有名詞だったのだ。』
と書いてあった。
オールディーズファンとしてはダレンというと、
『恋も涙もさようなら』のジェームス・ダーレンJames Darrenと、フィル・ス
ペクターのクリスタルズにいたダーレン・ラブDarlene Love(のちディオンヌ
・ワーウィックのバックコーラスもつとめた)の二人が思い出される。
ジェームス・ダーレンの本名はJamen Ercolani。ダーレンとしてデビューした
は1959年。Bewitchedが放送されたのは1964年9月17日(終了は19
72年7月1日)。
となると、Darrenの名は当時の若手人気アイドル歌手だったジェームス・ダー
レンが流行の元ではなかったか、とも言えよう。

http://lightning.prohosting.com/~outline/6/bookbbs.cgi



武光誠

佐藤和美 (2001/05/28 12:27)

武光誠って、4月に文春新書から「県民性の日本地図」っていう本だした人ですね。
「県民性の日本地図」ってどんな本かな?
なんかいやな予感が…… (^^);
文春は今度は「XXの日本地図」をシリーズで出すつもりなのかな?



文春新書

佐藤和美 (2001/06/01 12:07)

きのう、帰り際文春から電話があって来週水曜日に会うことになりました。
3回目ですね。
帰りの電車で隣に座っている人の新聞に「文春新書」、「盗用」の字が目につきました。

http://news.yahoo.co.jp/headlines/jij/010531/dom/20560600_jijdomx615.html
http://news.yahoo.co.jp/headlines/jij/010531/dom/18544800_jijdomx679.html
http://news.yahoo.co.jp/headlines/mai/010531/dom/18210000_maidomc027.html

文春も尻に火がついた?



RE:『地名の世界地図』の元ネタについて

佐藤和美 (2001/06/02 09:31)

松茸さん
>直接参考にしたのか、たまたま同じ幽霊アイヌ語本を引いたのかは不明ですが、
>同系統のものであることは間違いないようですね。

『地名の世界地図』P108
「『飢餓海峡』の舞台となった岩内」

『地名の由来を知る事典』P235
「水上勉の小説『飢餓海峡』は、岩内を舞台にしている。」

私にはこれ↑はたんなる偶然には思えません。
(それとも50歳台くらいの人はだれでも「岩内」で『飢餓海峡』を連想する?)

『地名の由来を知る事典』P259
「幸福とよばれたあたりは、もとは幸震(さちない)とよばれていた。それは、地震をあらわすアイヌ語にもとづく地名だ。アイヌの人びとは、地震で荒らされた土地をそうよんだ。
明治二九年(1896)の文献に、はじめて幸震の地名が出てくる。それは、サチの音に「幸」をあて、「ナイ」を意訳して地震の「震」にする形でつくられた。」

武光誠という人はアイヌ語も知らないけど、日本語の古語の「なゐ」(地震)も知らなかったようですね。「なゐ」が地震だと知っていれば、アイヌ語「ナイ」(川)に「震」の字をあてたのも納得できるというものです。



『地名の世界地図』(第九刷)について

松茸 (2001/06/04 22:06)

 訂正のほか、若干新しいネタを追加します。

※ まず懺悔話から。
 以前、〈ボスポラス海峡〉についての記述(p.24):
| [前略]ボース(雌牛)とポロス(渡し場)で、『雌牛の渡し場』。これは、
| ゼウスが妻ヘラの嫉妬から逃すために恋人のイオを雌牛に変身させてこ
| の海峡を渡らせた、という伝説による。
について、以前“bos-, bous は〈雄牛〉なので、間違いではないか?”という疑問を提示しましたが、これは私の完全な勘違いでした。お詫びして撤回いたします。
 とはいうものの、上の説明が通常のイーオーの説話とは食い違っていることも事実ですが。(^^;

※ 上と関連して、p.36の:
|  ところで、エーゲ海の西側エレブ ereb は、やがてエウロペ Europe
| となり、のちにヨーロッパとなった。ギリシア神話では地母神、豊穣神
| とされるエウロペが、牛に化けたゼウスにさらわれ、エレブの地に着い
| たからといわれている。
も、普通は“エウローペーはクレタ島に行き、ミーノースらを産んだ”とされているのと矛盾しますね(フェニキアから見れば、クレタ島も「西側」?)。
# この記述には他にも変なところがありますが、演習問題としておきます。

※ オーストリアについて:
| [前略]しかしオーストリア人は、自国をエスタライヒ Osterreich と
| よぶ。[後略]
 (p.39)
とありますが、ドイツ国でも(というよりドイツ語では) "Oesterreich" とよぶはず。  また、巻末の国尽くしでの解説:
|  自称はゲルマン語系の ost 「東方」と mark 「辺境地」から転訛した
| 「エステライヒ」。[後略]
 (p.239。「エステライヒ」は原文のまま)
では、"Mark" が "Reich" に「転訛」したことになってしまいます。
 p.39の方には "Austria" を介した変化が解説されていますが、"Reich" の意義については(従ってナツィスが "Ostmark" を復活させた理由も)どこにも説明がありません。

※ 温泉ネタ:
 同じラテン語 "aquae" が
 「アクアエ・スリス」(pp.31-32)
 「アクエ・グラニ」(p.33)・「アクエ・セクスティエ」(同頁)
と違うカナ表記になっています。別々のネタ本から丸写ししたのがバレてますね。
 なお、「アクエ・グラニ」の語源について、別の解釈を検索しました(信頼度は不明):
http://www.germanembassy-india.org/news/may97/12gn05.htm
http://www.ohnichi.de/Doitsu/aachen.htm
 また、p.34に:
| [前略]「温泉町」そのままの意味で、スパ(鉱泉)は、[後略]
とありますが、通常は“地名が普通名詞化した”とされるようです。

……まだまだありますが、このくらいで。



RE:『地名の世界地図』の元ネタについて

佐藤和美 (2001/06/04 22:21)

谷川健一「日本の地名」(岩波新書)P213-218
ここにアイヌ語地名のことがちょっとでてます。
「地名の世界地図」P108あたりの柳田国男のことはこの本をネタにしたのかな。



RE^2:『地名の世界地図』の元ネタについて

松茸 (2001/06/05 23:07)

->佐藤さま:
 ご教示ありがとうございます。
 『日本の地名』を確認しましたが、間違いなく元ネタですね。
 それにしても:
|  ともかくも、柳田はアイヌ語地名を白河以北にとどめて考えては
| ない。[中略]そこで私どもは、アイヌ語地名が白河以南にも残存す
| る可能性を原則的に認める必要がある。[後略]
  (『日本の地名』p.216)
という慎重な表現が;
| [前略]彼[=柳田]のこの説によって、アイヌ語の地名が白河以南に
| も残っている可能性が認められるようになってきた。[後略]
  (『地名の世界地図』第九刷 pp.109-110)
に化ける、恐るべき曲解力。(--;

PS. 谷川先生で思い出しましたが、武光誠(敬称略)って、かの『東日流外三郡誌』を一時支持していた人物ですね。



キャプテン・クック(『地名の世界地図』)

佐藤和美 (2001/06/10 17:18)

『地名の世界地図』からキャプテン・クック関連についてひろい出してみました。

P101
「クック諸島は一七七三年にクックが発見したものだが、クック山のほうは本人の記録にみあたらない。一七世紀半ばにオランダ人タスマンが来航したとき、はじめてここを探検したクックの業績を記念して、あらためて山の名に残したものと思われる。」

なんで一八世紀(一七七三年)のことを一七世紀の人が記念に残すんでしょう。不思議な話です。
松茸さんに教えていただきました。
私の指摘で、10刷では直ってるようです。

P101
「クリスマス島は、一七七七年のクリスマスの日に発見された」

P293
「クリスマス島 一七七七年、クックがクリスマスの日に発見したことにちなんで名づけられた。」

http://www.britannica.co.jp/search/item?m=0+1+3&rgid=033558001567
「クリスマス島(中略)1777年クリスマス・イブに J.クックが来航し命名。」

さて、「クリスマス」、「クリスマス・イブ」どちらが正しいんでしょう?

P101
「ニューカレドニアNew Caledoniaのカレドニアとは、クックの故郷スコットランドのローマ占領時代のケルト語で、「森」を意味する。」

P295
「ニューカレドニアNew Caledonia 一七四四年、ここを訪れたクックが、故郷スコットランドの古代ローマ時代の名称カレドニアにちなんで名づけた。カレドニアはケルト語で「森」を意味する。」

「一七四四年」でいいのかな?

『コンサイス外国地名辞典』(三省堂)
ニュー-カレドニア
「1774クックが到達。」

P102には「ヨークシャーの日雇い労務者を父とするクックは」とあります。

http://www.britannica.co.jp/search/item?m=0+1+3&rgid=032224002751
クック
Cook,James
[生] 1728.10.27. ヨークシャー,マートンインクリーブランド

クックはヨークシャー出身のようですね。
これは『地名の世界地図』の著者の人達も知ってるでしょう。「ヨークシャーの日雇い労務者を父とするクックは」と書いてるくらいですから。

『大辞林』
ヨークシャー[Yorkshire]
(1)イギリス、イングランド北東部、ペニン山脈の東麓にあたる地方。

ヨークシャーはイングランドですね。

つまりクックはイングランド出身で、スコットランドの出身じゃない。
「クックの故郷スコットランド」は間違いということになりますね。

「ニューカレドニアNew Caledoniaのカレドニアとは、クックの故郷スコットランドのローマ占領時代のケルト語で、「森」を意味する。」
この文章だと「カレドニア」が「スコットランド」の古名だということがわかりませんね。
この本全体が推敲不足の印象がありますが、これもその一例でしょう。

「ケルト語で、「森」を意味する」って「Caledonia」がケルト語で「森」っていう意味だということでしょうか?
本当に「森」という意味があるのかどうか知らないけど、いいかげんな書き方ですね。
「-ia」がついてますからね。



キャプテン・クック(『地名の世界地図』)

佐藤和美 (2001/06/11 12:45)

キャプテン・クックに関して書き忘れがありました。

P292
「クック山脈Cook「クック船長」。クックの死後、五二年たってから、(一八五一年)、彼を讃えてつけられた。」

『大辞林』
クック[Cook]
(1)〔James C.〕(1728-1779) イギリスの軍人・探検家。1768年から三回太平洋方面の大航海を行い、未知の海域・島を明らかにした。また、オーストラリアの領有宣言を行うなど、その後のイギリスの太平洋方面進出の基を築いた。キャプテン-クック。

クックの死後五二年は、一八五一年じゃないですね。



『地名の世界地図』のスペルミス

佐藤和美 (2001/06/12 12:10)

『地名の世界地図』ですが、まだスペルミスがだいぶ残ってますねぇ。
(松茸さんに教えていただいたものも含まれます)

P20
「ナポリは、英語読みではネープルズNapoles。」

「Naples」の間違い。

P22
「羊皮紙を意味するパーチメント(perchment)は、」

「parchment」の間違い。

P176
「シカゴChikago」

「Chicago」の間違い。

P212
「Godwin-Austin」

「Godwin-Austen」の間違い。

P229
「パナマ共和国Repabulic of Panama」

「Republic」の間違い

P244
「ドイツ連邦共和国(中略)フランス語ではアルマーニュ Allemague。」

「Allemagne」の間違い。

P256
「ドゥシャンペ Dusanbe」

「ドゥシャンベDushanbe」の間違い。

P259
「アナトリア高原 Anatoria」

「Anatolia」の間違い。

P261
「長江Chang Jiang」

「長江Changjiang」

P261
「黄河Huangke」

「河」は「ke」でなく「he」である。

P269
「秦の発音Chinに、」

「秦」のピンインは「qin」



ケルト語の「森」

ふる (2001/06/12 17:17)

>「ケルト語で、「森」を意味する」って「Caledonia」がケルト語で「森」っていう意味だということでしょうか?
> 本当に「森」という意味があるのかどうか知らないけど、いいかげんな書き方ですね。
>「-ia」がついてますからね。

 信憑性のほどは皆目判りませんが、検索エンジンに Scotland, Celt,
forest, Caledonia を入れて引っかかった下記HPのChapter16に、"Coed
Celyddon"という言葉の語源が論じられており、次のような文章がありま
す。

On this premise, it is futile to assume the 'Celi' and 'Cely'
elements in the words, 'Celidonis' and 'Celyddon' could have
derived from the Brythonic Celt word, 'Celli' meaning 'Wood
or Forest' for this would simply repeat what was already known.

 この記述が正しいとすると、"Brythonic Celt"語では、"Celli"とい
うのが森林を意味する語だということになります。このHPでも断定は避け
ている感じですが、カレドニアの「カレ」のあたりが森林に由来する可能
性はあるかもしれません。
 森林という語については、機会があれば諸言語での呼称をちゃんと調べ
てみたいと思っています。

http://www.newagedarkage.freeserve.co.uk/part3.htm



『地名の世界地図』の矛盾

佐藤和美 (2001/06/13 13:42)

『地名の世界地図』は同じ内容をページによって違うことを書いてます。
矛盾しているのをひろいだしてみました。
(松茸さんに教えていただいたものも含まれます)


P14
「チュニスTunisはフェニキアの美の女神タニスにちなんだものだそうだ。」

P286
「チュニジア共和国(中略)首都チュニスの名に由来。フェニキアの女神タニトフ Tanitkhが、アラビア語で読みではトゥノス、フランス語でチュニスと転訛したという。」

P286
「チュニス(中略)タニトフ女神Tanitkhを守護神として祀ったことから、地名もこの女神の名前に由来する。」

「タニス」と「タニトフ」で矛盾している。


P16
「フェニキアは前一二〇〇年頃におこった国だが、」

P16
「ポルトガルのリスボンLisbonも、前一二〇〇年にフェニキア人が建設した都市である。」

P248
「リスボンLisbon 自称はリズボアLisboa。前一二世紀にここを殖民都市としたフェニキア人がアリスイボAlisibbo「良港」と名づけたことによる。」

P248
「マルタ共和国Republic of Malta 前二〇〇〇年頃、フェニキア人が地中海貿易の中継基地とするために入植した。」

「前一二〇〇年」と「前二〇〇〇年」で矛盾している。
フェニキアは「前一二〇〇年頃におこ」ると同時にリスボンも建設したのか。


P27
「ポセイドンの妻リビュエにちなんで」

P291
「ポセイドンの妻リュビア女神」

「リビュエ」、「リュビア」で矛盾。


P39
「エストニアも「東の国」という意味だ。自国ではエスティEstiとよんでいる。」

P239
「自称はエスティEesty。意味は「東の」。」

「Esti」と「Eesty」で矛盾。


P60〜61
「スウェーデンの首都ストックホルムStockholmは、スカンディナビア半島の本土ではなく、氷河によって形成されたフィヨルド(入り江)を利用して建設された。スウェーデン最古のこの町は、一二五五年、メーラレン湖の入り江にある小島に建設され、やがて都市へと発展した。」

P242
「ストックホルムStockholm 一四の島からなる港湾都市。一二五三年、スベリエ人がガラムスターデン島に丸太で城塞を築いたことから、stock「杭」とholm「島」で、「杭の島」と名づけられた。」

建設年が矛盾している。
「ガラムスターデン島」は「ガムラスターデン島」の間違い。


P73
「モスクワMoskvaとはモスクmosk(沼沢地)とフィン語のva(水)で「沼沢地の川」を意味する。」

P258
「モスクワMoskva 一二世紀の呼称、ナモスコに由来する。前置詞naとMoskva「モスクワ川」で「モスクワ川のほとり」。「モスク」そのものには、「沼沢地の川」という意味がある。」

「沼沢地の川」は「モスク」なのか「モスクワ」なのか。以前指摘したところで、修正失敗したみたい。


P99
「一五二六年、スペインの宮廷に仕えていたイギリスの航海士セバスティアン・カボットが、ふたたびこの入り江にたどりついた。そのとき銀の飾りを身につけた先住民に出会ったことから、彼はこの入り江をラプラタ川 Rio de la plata(銀の川)とよんだ。」

P232
「ラプラタ川(中略)一五二六年、イタリア人カボットが河口で銀が産出すると思って命名した。」

「イギリス人」と「イタリア人」で矛盾している。


P99
「一八八三年に独立したとき、スペイン本国の圧政を忘れるため、プラタ(銀)はラテン語で同じ「銀」を意味するアルゼンタムargentumに変えられ、国名はアルゼンチンArgentinaとなった。」

P232
「アルゼンチン共和国Argentine Republic (中略)一八一六年の独立時には、スペイン語で「銀」を意味するラプラタ合衆国だったが、」

独立年が矛盾している。
「ラプラタ合衆国」ってなに?


P99
ブエノスアイレス「一五三五年、この地に最初に移住したのは、スペイン人のペドロ・デ・メンドーサだった。」

P232
「ブエノスアイレスBuenos Aires (中略)一五三六年、スペイン人のメンドーサが建設。

建設年が矛盾している。


P154
「エジプトの首都カイロにも、興味深いエピソードがある。
九六九年、新首都建設予定地でくわ入れ式をおこなう際、」

P276
「カイロCairo 九六八年に建設される。」

建設年が矛盾している。


P246
「ブルガリア共和国Republic of Bulgaria(中略)『大河』を意味するボルガに地名接尾辞-iaがつけられた。」

P251
「ボルガ川Volga 「湿地の川」。スラブ語のブラガvlaga「湿った」に由来する。またはフィンランド語valgeのバルゲ「白く輝く」との説もある。」

「ボルガ」の語源が矛盾している。



Re: 『地名の世界地図』の矛盾

松茸 (2001/06/15 04:07)

 ほんとにキリがありませんねえ。

* キャプテン・クックについて:
 Encyclopaedia Britannicaには;

| James Cook was the son of a farmhand migrant from Scotland.
 (from Cook, James. Early Life(http://www.britannica.com/eb/article?eu=26531&tocid=1514))

| In 1774 Captain James Cook landed at Balade, on the east coast
| of the mainland, and he named the island New Caledonia for his
| native Scotland.
 (from New Caledonia. History(http://www.britannica.com/eb/article?eu=127796&tocid=53937))

とあります。この"native"は〈生まれた場所〉ではなく〈父祖の地〉の意味ですね。だから「クックの故郷スコットランド」は誤訳?


* セバスチャン・カボットについて:
 同じくE.B.(http://www.britannica.com/eb/article?eu=18745&tocid=0)によれば;

| born c. 1476, , Bristol, Gloucestershire, Eng., or Venice
| died 1557, London

だそうで、「イタリア人」である「イギリスの航海士」ということらしいです。
# もちろん、記述に整合性がないのは問題ですが。
# また〈北アメリカ大陸に到達した航海者ジョン・カボットの息子〉
# という説明があった方がよいでしょう。


* スコットランドについて:
 "Caledonia" についての検索の副産物として、スコットランドの古代の住民“ピクト人”についての記述が見つかりました。
 例えば(またまたE.B.(http://www.britannica.com/eb/article?eu=61448&tocid=00)から(^^;ですが);

| Probably descendants of pre-Celtic aborigines, the Picts were
| first noticed in AD 297, ...

 〈ケルト語派に属する〉という反対説もあるようですが、『地名……』pp.44-45の地図でスコットランド全域が「ローマ軍侵攻以前のケルト人の居住地」に含まれているのは、少しまずいかも。

# どれも英国関係なので、信頼できる、と思います。



マゼラン海峡(『地名の世界地図』)

佐藤和美 (2001/06/18 17:53)

『地名の世界地図』のマゼラン海峡の記述にもいろいろ言えそうです。

P202
「一五一九年、アメリカの南端まで来たマゼランは、そこのインディアンが厚い革の靴をはいていたため、「大きな足」を意味するスペイン語「パタゴニア」と名づけた。そしてさらに南へ向かい、東から西への水路に行き着く。のちの「マゼラン海峡」である。」

P232
「マゼラン海峡Magellan 一五二〇年、ポルトガルのマゼランが発見したもの。」

・「アメリカの南端まで来た」のに、「さらに南」へ行けちゃうというこの不思議。

・「インディアン」という言葉を使ってる。この本は例えばP220-221の見開き2ページで山ほど「インディアン」を使ってるけど、これでいいの?

・「マゼラン海峡」って、「東から西」でいいのかな。私には「北東から南西」に見えるんですが。
(ちなみに1刷では「西から東」でした。(^^);)

・『大辞林』には「最狭部3キロメートル」って書いてあるけど、こういうのって「水路」っていう?

・マゼランが「マゼラン海峡」に到達したのは1520年ですね。1519年じゃない。P202(一五一九年)とP232(一五二〇年)は違う人が書いてるのかな?

『大辞林』
マゼラン-かいきょう【―海峡】
南アメリカ大陸の南端とフエゴ島との間にある海峡。最狭部3キロメートル。太平洋と大西洋とを結ぶ。1520年ヨーロッパ人として最初にマゼランが発見し通過した。強風と複雑な水路のため航行が困難。

・P232でも「発見」を使ってますね。この本ではいたるところに「発見」という言葉が使われてますが、直す気ないみたいですね。
P168には「アメリカ大陸発見の真の功労者クリストファー・コロンブス」なんて書いてあったりします。高校生でもこんな文章書かないと思うんですが。
ちなみに第4章のタイトルは「大航海時代が「世界」を発見した」です。


この本の特徴がよくでてる「マゼラン海峡」ネタでした。



『地名の世界地図』のアイヌ語

佐藤和美 (2001/06/20 12:42)

『地名の世界地図』1刷のアイヌ語地名のことは以前書きましたけど、その後のことを書いてなかったですね。

P108
「岩内(イワウ・ナイ「硫黄の多い川」)」

「イワウ(硫黄)」+「ナイ(川)」であり、「多い」という言葉は出てこない。

P109
「古代、アイヌは北日本にも広く分布していたので、アイヌ語の地名は本州にも多くみられる。やはり東北に多いが、関東、関西にもあるとする研究者も多い。」

1刷にあった「斑鳩」、「富士」を削除したのだから、あきらめて「関東、関西にもあるとする研究者も多い。」も削除すればいいのに。それがやだったら、「斑鳩」、「富士」のかわりを出さないとね。

P109
「柳田国男によれば、東日本に分布する堂満や当間(当麻)という地名もアイヌ語起源(トマム、トマン「沼、沼地」)であるという。」

アイヌ語に「トマムtomam」(湿地、泥炭地、沼地)という単語はありますが、当然のことながら「東日本に分布する堂満や当間(当麻)という地名」が全てアイヌ語「tomam」に由来するとはかぎりません。それぞれの堂満や当間(当麻)は沼地だったのかくらいは調べてもらわないとね。
なお「トマン」というアイヌ語はありません。

P109 「彼のこの説によって、アイヌ語の地名が白川以南にも残っている可能性が認められるようになってきた。」

日本全国にアイヌ語地名があるとしたのはバチェラーのほうが古いですね。(幽霊アイヌ語での語呂合わせですけど。)1刷での「富士」のことはバチェラーの説でした。バチェラーを信じてる人はいまだにいます。

P110
「千島列島のクリル島は、千島アイヌ語のクル「人」がロシア語化したものだ。」

なにを根拠にこう言いきるんでしょうか。根拠があるなら見てみたいものです。
「千島アイヌ語のクル「人」」って、北海道アイヌ語でもクル「人」なんだから、「千島」は不要。
「Kuril」の「kur」がアイヌ語なら「il」はなんだっていうのかな?
千島列島にクリル島ってあった? クリル列島の間違い?
(P109の地図は「千島(クリル)列島」ってなってるけど)

P110
「色丹(シコタン)はシ・コタン「大いなる村」(シ「大きな」コタン「村」)」

「大きな村」と「大いなる村」では意味が違いますね。

P110
「国後(クナシリ)はクンネ・(アン・)シリ「黒い島」(クンネ「黒いところ」アン「ある」シリ「島」)である。」

「クンネ」は「黒い」で、「黒いところ」じゃない。
「アン」(ある)は(文法上)不要。

P110
「択捉(エトロフ)はエト・オロ・プ「盛り上がる先のある場所=岬の(多く)あるところ」、つまりエト「鼻、先端」オロ「その所」プ「盛り上がる」が有力のようである。

「エト」は「エトゥ」の間違い。
「プ」に「盛り上がる」の意味はない。
「盛り上がる先のある場所」でなんで「岬の(多く)あるところ」になるのか。
こんな説が「有力」なのか。

P110
「歯舞(ハボマイ)はアプ・オマ・イ「氷のあるところ」(アプ「流氷」オマ「ある」イ「所」)」

「氷」と「流氷」で矛盾している。

P110
「ハポ・マ・イ「母の泳ぐところ(=母なるところ)」(ハポ「母」マ「泳ぐ」イ「ところ」)」

「母の泳ぐところ」がなんで「母なるところ」になるのか?
「母の泳ぐところ」で地名になるのか。ま、たんなる語呂合わせですね。

P110
「ポロナイスク(敷香)は、ポロ「大きい」、ナイ「川」、ロシア語のスク「渡場集落」の合成語で、「大きな渡し場のある村」」

ロシア語「スク」にそんな意味があるのか。
「大きい川の渡場集落」がなんで「大きな渡し場のある村」になるのか。



またまた『地名の世界地図』

松茸 (2001/06/24 21:26)

 本屋では依然として平積みで売られています。某社教科書より、こっちが深刻な問題かも?
# 当初は、『週刊○日』あたりが騒ぐだろうと思っていましたが……。

 さて、小ネタ(重箱の隅)を若干追加します(第九刷を使用しました):

p.14
 「[前略]現在のパレルモPalermoは、古くはパンホルムス。[後略]」
……『コロンビア百科事典』(http://www.bartleby.com/65/pa/Palermo.html)には、
| Lat. Panormus
とあります。
 なお、上の記事にもある通り、シチリア島の"capital." 初刷で「首都」とやったのは、これの誤訳でしょう。

p.38
 「ローマ人が名づけたオケアヌス・オクシデンタリス」
……ラテン語"Occidentalis"の規範的カナ表記は「オ(ッ)キデンタリス」。

p.70
 ポーランドは「一四〜一八世紀には、逆に地の利をいかして勢力を拡大し」
p.247下段
 「一五世紀におこったポーランド王国は」
……矛盾。

p.82
 「エンゲルス(社会主義学者)→ポクロフスク」
……エンゲルスは「学者」だった?
 なお、地名としては、キリル文字表記"Энгельс"(Engjel's)を機械的にカナに写した「エンゲリス」で通用していました。

p.126
 「知恵の神、文殊師利菩薩」
……菩薩を「神」と言ってよいのか?

p.128
 「同じくトルコ系遊牧民の言葉で、チュルク語起源の地名に」
……意味不明。

p.130
 (「女真」のルビが「ジエルチン」)
……「ジュルチン」の誤り。

p.176
 「ジャック・マルクェット神父」
……ここ(http://www.bartleby.com/65/ma/MarquettJ.html)にもありますが、つづりは"Marquette"なので「マルクト」と音写すべき。

p.196
 「イワノボ(ロシア)「イワン大帝の町」。」
……「イワン大帝」って誰? 「イワン雷帝」なら有名ですが。

p.200
 (「ドナウ川」の流域各語でのよび名)
……「ブルガリア語」が抜けている。また、「ロシア語」ではなく「ウクライナ語」を挙げるべき。

p.212
 「ヒマラヤ第三の高峰カンチェンジュンガ」「この山脈[=カラコルム。引用者註]にある高峰K2はヒマラヤ第二の高峰」
……カラコルム山脈はヒマラヤの一部ではない。



こっちも、またまた『地名の世界地図』

佐藤和美 (2001/06/26 12:35)

いつまでもネタを提供してくれるありがたい本ですね。
この本一冊でこれだけネタがあるんだからすごいですね。
文春は指摘されたとこ以外なおす気ないみたいだし。
なおすとこも最小限にしたいみたいだし。
(つまり完全な間違いじゃないと、なおさないということです。)

P54
「彼らが去ったあと、中世にいたっても、」

いつから中世か考えてないようです。すでに中世なのにね。

『大辞林』
ちゅうせい【中世】
「西洋史では、五世紀の西ローマ帝国滅亡から、一四〜一六世紀のルネサンス・宗教改革までの時期をさす。」

P61
「フランク王国が九世紀のはじめに分裂して勢力を弱めると、」

フランク王国の分裂は九世紀中頃で、九世紀はじめじゃない。

『大辞林』
カロリングちょう【―朝】
「843年の王国三分に伴い王統も三分、987年西フランクの断絶により滅亡。」

P74
「一八六〇年に建設されたロシア最東南の都市ウラジオストックは、」

「ウラジオストック」よりも「ナホトカ」のほうが南東にあるのにね。もっと地図をよく見ないと。それにしても「最東南」って、へんな表現。

P90
「一四九七年、ポルトガルの航海者バスコ・ダ・ガマがこの岬をまわり、インドへ到達したのだ。」

出発は一四九七年だけど、インドへの到達は翌年ですね。

『大辞林』
ガマ[Vasco da Gama]
「1497年からの航海でヨーロッパ人として初めてアフリカ大陸南端の喜望峰を回り、大陸東岸を経て、翌年インドのカリカットに達する。」

P97
「結果として、アゾレス諸島の西約二〇〇〇キロ、西経四六度を越えるあたりで新たに線引きされることとなった。」

『大辞林』の「トルデシリャス条約」の項では「ベルデ岬諸島の西方三七〇レグア(約2070キロメートル)」ってなってるけどね。

P144
「前五九七年には、新バビロニアがユダ王国を征服する。」

前五八六年の間違い。

『大辞林』
ユダおうこく【―王国】
「紀元前586年、新バビロニアに滅ぼされ、住民の多くはバビロンに連れ去られた。」

それにしても『大辞林』って、いろんなこと出てますね。



まだまだ『地名の世界地図』(その1)

松茸 (2001/08/09 00:52)

 皆さんいい加減うんざりでしょうが、懲りずに続けます。
# ご存じない方は特集ページをご覧下さい。

 第九刷をテクストとしました。そろそろ新刷に買い替えるべきか? (^^;


p.18:
 「オリンピア[中略]この地名は、ギリシア語ではないがインド・ヨーロッパ語族のものとわかっているので、太古に、はるか東の文化が影響したと考えられるものの、意味などはわかっていない。」
……「意味などはわかっていない」のに「インド・ヨーロッパ語族のものとわかっている」と断言する根性に◎。
 また、「太古に」云々は〈印欧語族の原郷問題〉を念頭においているようですが、この文脈で持ち出すのはまずいのでは? >ご専門のみなさん

p.22:
 「筆記用の革を[中略]ローマ人はペルガメナスとよぶ。」
……Pergamenusの読み損ないだが、「羊皮紙」の意味では女性形Pergamenaを専用するので、二重の間違い。

p.22:
 「音楽、預言などを司る神ミレトス」
……既報の追加ですが、これは「音楽、予言などを司る神アポロンの息子ミレトス」の誤り……いや〈捏造〉ですね、もはや。
・参照 Apollodoros:
http://www.perseus.tufts.edu/cgi-bin/ptext?lookup=Apollod%2e+3%2e1%2e2
 なお、「預言」と「予言」とでは意味がちがう。>青蛙さま

p.23地図:
 「……古代ギリシア人の世界観」というキャプションで、「イストロス川(ドナウ川)」などとしながら、「ドン川」は現在の名のみ。「タナイス川(ドン川)」とすべき。

p.24:
 「ローマ皇帝コンスタンティヌスが」
p.284下段 セントヘレナ島:
 「ローマ皇帝コンスタンティヌスの母へレナ」
……文脈で判るが、同名の皇帝もいるから「〜一世」・「〜大帝」としたい。

p.49:
 「ドイツとポーランドの国境を流れるオーデル川河口付近」
……建前上“国境問題は解決ずみ”になってはいるが、「下流において」「現在の」と限定しないとやはり危ない。

p.63:
 「紀元前一〇〇〇年頃、ボルガ川流域にいた遊牧民オノグル族Onogur」
……もちろん「紀元後」の誤り。

p.70:
 「スラブ人とは、ロシア、[中略]スロベニアなどの国に広く分布する人びとをいう。」
……初刷の「ロシア……スロベニアの人びとをいう」よりは改善されているが、〈定義〉としてはやはりおかしい。
 なお、初刷で「マケドニア」の代わりに「セルビア」が入っていたミスは未訂正。

p.75:
 「西スラブでも端にあるということから、「辺境の国」とよばれたウクライナ」
……ウクライナ語は東スラヴ語に属する。
 “ポーランドなど西スラヴ人から見た呼称”のつもりのようです。



「世界地図」について

佐藤和美 (2001/08/09 12:07)

『地名の世界地図』ですが、5月15日に11刷が出たのを確認してますが、その後の版は見かけないですねぇ。
6月6日に大量に間違い・疑問点を指摘してますので、それが盛り込み済の版が出たら買おうと思ってたのですが。

今、文春のアルバイトで「世界地図」シリーズ第4弾の校正・校閲をやってます。
今回は「地名」、「人名」と違って言葉とは無関係なので、出版されてもこの伝言版で取り上げることはないと思います。
内容は…… ノーコメントです。(^^);



まだまだ『地名の世界地図』(その2)

松茸 (2001/08/11 02:16)

 〈言葉〉と関係の薄い箇所(単純誤記・地図の誤りなど)はオミットしますが、それでもなお……。

p.116:
 「公州を流れる錦江{クムガン}も百済時代には熊津{クムガン}とよばれていた。」
[ルビを{ }で囲んで表示しました]
……「ガン」は「江」の朝鮮式音読みなので、「熊津」に「クムガン」と振るのはおかしい。
 なお、『日本書紀』の雄略紀二十一年三月条に「久麻那利」(古訓「こむなり」)という地名が出てきますが、熊津をこれに当てる説もあります。

pp.191-192:
 「コモロ諸島[中略]地名は、[中略]アラブ人が、自国語でエル・コムルel komr(月)とよんだことによる。」
p.281下段 コモロ・イスラム連邦共和国:
 「アラブ人が、ジェベルdjebel「山」とエル・コムルel komr「月」で「月の山」とした」
……ローマナイズは"kumr"とすべきだろう。定冠詞も"al"がよい?

p.201:
 「リオ・デ・ラス・アマゾナス(アマゾネスたちの川)」
……ギリシア語「アマゾネス」は「アマゾン」の複数形なので重言。
 また、スペイン語だから「アマソナス」と音写すべき?(乞ご教示)

p.223上段 モンタナ:
 「Montana ラテン語でモンタナ「山の多い」」
……『コロンビア百科事典』の"Montana"の項:
http://www.bartleby.com/65/mo/Montana.html
| Montana’s very name is derived from the Spanish word
| montan~a, meaning mountain country.
をはじめ、スペイン語起源説をとる文献もかなりあります。

p.223上段 ロード・アイランド[略]:
……肝心の「州名の語源」が書かれていない!
 オランダ語説や「ロドス島」説があるようです。
# 以上二つ、UEJさまへ。(^^;



月は

massangeana (2001/08/11 15:12)

古典アラビヤ語だと qamar です。「月の山」なら jabal al qamar。
(ローマナイズのしかたにもよるでしょうが...)



Re:まだまだ『地名の世界地図』

青蛙 (2001/08/12 02:23)

松茸さん:
> 皆さんいい加減うんざりでしょうが、懲りずに続けます。
ぜーんぜん、懲りてません。どうぞこれからも存分にお続けください。

> なお、「預言」と「予言」とでは意味がちがう。
辞書を当たるまでもなく
「預言」とは「言を預(あず)かる」こと。
「予言」とは「予(あらかじ)め言う」こと。
ですね。預言の方はキリスト教での宗教用語のようで「神から」と主語がつくようです。
ですから、キリスト教でいう預言者とは「(神から)言葉を預かった者」という意味ですね。って、文字そのままやん。
まあ、預言というと、私なんぞは「モーセの十戒」くらいしか思い浮かばないのですが、これって「汝姦淫するなかれ」(あんさん、えっちなことをしてはいかんよ)といった戒めであって、別に未来のことを言っているわけではないので、必ずしも「預言」=「予言」とはならないんじゃないでしょうかね。英語(prophecy)やフランス語(prophecie)では両方とも同じなのでややこしい。しかも、「預言」を「予言」と言い換えているものもありますし。例えば、『研究社 英和大辞典』(第5版)prophecy の項。

>  「アラブ人が、ジェベルdjebel「山」とエル・コムルel komr「月」で「月の山」とした」
> ……ローマナイズは"kumr"とすべきだろう。定冠詞も"al"がよい?
「月の山」は、正則アラビア語なら英語式で jabal al-qamar (massangeana さんと同じ)もしくは jabalul-qamari ですね。それにしても、“djebel”って、いつごろ、どこの転写でしょうね。

> モンタナ
『研究社 英和大辞典』(第5版)でも
 |Sp. montan~a mountain land
とありますね。そのスペイン語の montan~a が、ラテン語 montana を語源としているのでは?
montana は mons(山、語根は mont-)の形容詞・女性形です。


佐藤さん:
私がこの板で『〜の世界地図』を知ったときは、方々の書店を探してやっと入手したのですが、今ではどこの本屋でも平積みになっています。売れているらしい。

> 今、文春のアルバイトで「世界地図」シリーズ第4弾の校正・校閲をやってます。
今度こそ佐藤さんのお名前がクレジットされるんでしょうか。それとも例の「21世紀研究会」とやらと十把一からげにするつもりなのでしょうか。



州名

UEJ (2001/08/12 12:53)

> # 以上二つ、UEJさまへ。(^^;
松茸さん、ありがとうございます。
ようやくRhode Islandのコインをゲットしたのでホームページを更新しました。
(http://home.att.ne.jp/green/uej/coins/50states/)
オランダ語説というのは私は知りませんでしたが、
www.50states.comには
「Possibly named in honor of the Greek Island of Rhodes
or was named Roode Eylandt by Adriaen Block, Dutch explorer,
because of its red clay. 」
と書いてありました。その他複数のサイトに同様の記述あり。

Montanaの語源に関しては私もスペイン語説をよく耳にしますが、
ランダムハウス英語辞典には
「州名の起源:"mountainous regions"を意味するラテン語の名詞から.」
と書いてあります。
# 「regions」というのは単に地名の語尾「-a」のことを指しているのだろうか?



Re:まだまだ『地名の世界地図』

佐藤和美 (2001/08/12 14:34)

青蛙さん
>> 今、文春のアルバイトで「世界地図」シリーズ第4弾の校正・校閲をやってます。
>今度こそ佐藤さんのお名前がクレジットされるんでしょうか。
>それとも例の「21世紀研究会」とやらと十把一からげにするつもりなのでしょうか。

私は「21世紀研究会」とは無関係です。
こういう本に名前が出てもあまり名誉じゃないですしね。(^^);
ちなみに私のやってるのはフツーの校閲で厳密な校閲ではありません。
出版後に厳密な校閲やったらどうなるかは、私の関知するところではありません。

さて『地名の世界地図』

14ページに「サルディニア島Sardegna」という表記があります。
カナとアルファベットの表記がアンマッチですが、この本のいたるところにカナとアルファベットの表記のアンマッチがあります。このアンマッチに関しては文春はなおす気は全くありません。この件に関してはいくら指摘しても無意味ということですね。

「21世紀研究会」のプロファイリングでもやってみるとおもしろいかな?
「歴史学、文化人類学、考古学、宗教学、生活文化史学の研究者たち」
語学、言語学の関係者はいないですね。
歴史学の研究者はいるようですけど、この伝言板見てる人でこれを信じる人はいるのかな?
ちなみに最近では「オスマントルコ」とは言わず、「オスマン帝国」と表記するそうですね。そんなことは「歴史学の研究者」だったら当然知ってるはずだろうけど、この本では「オスマントルコ」が山ほどでてくる。
それにこの本の西暦は全てチェックしないと信用できない、というすごさ! 「歴史学の研究者」のわけないですね。
203ページに「この紅海を機上から見る機会がたびたびあるが、」ってあるけど、石油買い付けの商社マンか?
で、私のプロファイリングでは、
大学で「歴史学、文化人類学、考古学、宗教学、生活文化史学」を勉強し、今では世界各国にいる商社マンたち
こんなもんでどうでしょう?(^^)



まだまだ『地名の世界地図』(その3)

松茸 (2001/08/13 01:02)

* "al-qamar"
 アラビア文字が読めない(文字を識別できない)もんで、Web上のネタに依拠して書いたんですが……。m(_ _)m
 改めて調べてみたら、コーランの第54章がずばり"Al-Qamar"でした。

* モンタナ州
 州観光局(?)の公式サイトにもラテン語説が出ています。
http://www.visitmt.com/virtualvisitor/faq.htm
 ただし、「スペイン語地名を、州名に採用するときラテン語形に変えた」可能性も捨てきれないので、もっと資料を探してみます。

* サルディニア
 「イギリス England」のような《日本語での慣用+現地での公式地名》とみなせば、何とか許容範囲だともいえますが……。
 でも同頁の“Carthage Nova”は不可ですね。
 また、p.239上段・イタリアの項で「サルディーニャ王国」となっているのも、弁護の余地なし。

* 佐藤さま曰く:
> 203ページに「この紅海を機上から見る機会がたびたびあるが、」ってあるけど、石油買い付けの商社マンか?
……ネタ本の丸写し(『地名の由来を知る事典』他)のおそれもあるので、即断は出来ません。
 (英語以外の)外国語がダメというのは、今時の商社マンとしては少しまずいでしょう。

* ネタの追加です。

p.225下段 [首都]ハバナ:
 「San Cristobal de la Habana「ハバナの聖クリストファ(・コロンブス)」」
……(^^;

p.227下段 セントビンセント・グレナディーン諸島:
 「聖ビンセンチオはブドウ作りの守護神」
……同じページの「クリストファルス」は(指摘されて)直しているのに。
 「守護神」というと、「葡萄酒でもかぶって反省しなさい!」とかを連想します。(^^;

p.230下段 メキシコ合衆国:
 「メヒコとは、アステカ帝国の守護神メヒクトリMexictli「神に選らばれし者」という意味がある」
……下記のページ:
http://department.monm.edu/span326/Axoltl/levinson.htm
によれば、Mexictliの音写は「メシクトリ」。

p.234上段 [首都]アスンシオン:
 「一五三七年、スペイン人のファン・デ・サラサールが建設。正式名は[中略]Nuestra Senora de la Asuncio´n「聖母の昇天祭の日の我が聖母」」
……特殊アルファベットが不統一なのはともかく、疑義がいくつか。
・訳全体にはコメントしません(^^;が、nuestraを「我が」とするのは明らかな誤訳。
・スペイン語人名Juanの音写は「ファン」より「フアン」では?
・コロンビア百科事典の"Asuncio´n"の項:
http://www.bartleby.com/65/as/Asuncion.html
によれば、建設者に異説がある。

p.235下段 [首都]ラパス:
 「プエブロ・ヌエボ・デ・ヌエストラ・セニョラ・デ・ラ・パス「平和の聖母(マリア)のいます、我が新しい町」と名づけた」
……ここでもnuestraを「我が」とした上に、かかり方まで間違い。



Re: コモロ

massangeana (2001/08/14 01:12)

Web をちょっと眺めてみました。

 http://www.ai.org.za/html/Restricted/body_comores.html
 "Their name is a corruption of Jazair al-Komr (Islands of the Moon),
  the name given to them by Arab mariners. "

 http://www.getawaytoafrica.com/gateway_article.asp?FEATURE_ID=215
 "The islands were first visited by early seafaring Arabs who called them
  Djazair al Qamar (The Islands of the Moon), which has since been modernised
  into the French Les Comores and English, Comoros."

 http://www.action-nationale.qc.ca/francophonie/comores.htm
 "Les Arabes nommerent l'archipel Jazayr al-Qamar (les 《 iles de la Lune 》)
  d'ou leur nom actuel de Comores."

 http://www.culture.fr/culture/dglf/ressources/pays/KM.HTM
 によると, 現在のアラビヤ語正式名称は「Jumhuriyat Juzur al Qamar
 al Ittihadiyah al Islamiyah 」, 略して「Juzur al Qamar」

jazair と juzur はいずれも jazira (島)の複数形なので, 「月の島々」みたいなん
ですが... 「月の山」という説もあるんでしょうね, たぶん...

青蛙さん:
>それにしても、“djebel”って、いつごろ、どこの転写でしょうね。
独立前はフランス統治下にあったので, たぶんフランス式なのでしょう。
フランス語では j は摩擦音なので, 破擦音を表すのに dj を使うのは自然だと
思いますし, a が e に近づくこともあったでしょうから, さほど変なつづりと
いうわけではありませんが, ただそれを日本語の本でそのまま使うのはちと奇妙
ですね。



紅海(『地名の世界地図』)

佐藤和美 (2001/08/14 13:26)

『地名の世界地図』から「紅海」ネタです。

P204
「古代エジプト時代、砂漠をいいあらわす言葉はデシュレ(赤)から派生したデシュレトである。砂漠を越えた外国もデシュレトとよばれていたから、砂漠の向こうにある海の呼称は「赤い砂漠に囲まれた海」、つまり「紅海」なのである。
 ギリシア人たちはそれをそのまま意訳してエリュトラErythraeiといい、」

P279
「エリトリアState of Eritrea(中略)紅海の語源となったギリシア語のエリュトレムerythraeum「赤い」に地名接尾辞-iaがつき、「赤い土地」。一八八五年にイタリアが支配下におき、そう名づけた。」

・古代エジプト時代の言葉が語源だという根拠はなにか。古代エジプト時代の言葉は何語のつもりか。

・砂漠は赤いか? 紅海は砂漠で囲まれているか? 「赤い砂漠で囲まれた海」は赤くなくても「赤い海」というのか?

・著者は「デシュレト」が英語の「desert」(砂漠)と関係ありと言いたい?

・著者の中には「Nile」の語源が「ナイルはイル(川)に、ナという冠詞がついただけ、つまり「川」なのである」(P199)と書く人もいます。「古代エジプト時代の言葉」は詳しいようです。(笑)

・ギリシア語が「erythraeum」と「Erythraei」で語形が違う。

・エリトリア「Eritrea」の語尾は「-ia」じゃないけど、それで「地名接尾辞-iaがつき」と言っちゃっていいのか?

・イタリア支配以前に「エリトリア」という地名はなかったのか?

・イタリア支配は1890年から。

『コンサイス外国地名辞典』(三省堂)
「1890以来イタリアの植民地。」

数日前に「それにこの本の西暦は全てチェックしないと信用できない、というすごさ!」と書きましたが、これもその一例ですね。



紅海について

未菜実 (2001/08/14 18:35)

紅海について、載っていたので、参考までに。^^;

「カルタゴ 消えた商人の帝国」
       (服部伸六 現代教養文庫 社会思想社)24p〜26p
--------------------------------------------------------------------------
幻の名著として名高い「十九世紀ラムース辞典」によると、シバの女王の国は「ヒミヤール族の国」とも称していたことが判る。
(中略)
ところでこのヒミヤール(Himyar)という語は、母音をはぶくとHMRという子音になる。セム語の系統の言語では子音だけを書いて母音はない。HMRには現代アラブ語でも「赤い」という色を表しているという話だ(ジャン・マル「フェニキア人と共に」)。そうすると、ヒミヤール人の居住地であった現在の南イエーメンの前面の海を「紅海」(英語でRed sea フランス語でMer rouge)と呼ぶのは偶然ではなさそうだ。
ギリシャ人はこれを「エリトリの海」と称したが、これも赤と関係があるということであり、ギリシャ人がフェニキア人を指して「ポイニックス」と読んだのもやはり赤い色という意味であるらしい。
ゲルハルト・ヘルムの「フェニキア人 古代海洋民族の謎」(関楠生訳、河出書房新社)によると、
「(赤い人びとを意味する)という説が正しければ、これらの新来者は、のちに世界的に名声を博する名を、すでにたいそう早くからつけられていたことになる。ギリシャ語のポイニックスも、はぼ「紫の国から来た人びと」、あるいはもっと簡単に「赤い人びと」と訳することができる。フェニキア人はいずれにせよ、たいていはカナン人と称していた アレクサンドロスがテュロスを征服した時代にもなおかつそうだったのである」とある。
カナーンと言う呼び名も、ヘルムによると、
「低地人を意味するか、もしくはアッカド語のキナフ、すなわち紫から派生したものであるとすれば、赤い人びとを意味する。」ということになる。
いずれにしても、フェニキア人には赤とか紫とかの色がつきまとっていつようだ。
通説によると、フェニキア人はアモリ人がシナイ半島を北上する民族移動の途次、カナーンの地にこぼれ落ちたものがその先祖ということになっている。
シバの女王の民がヒミヤール族と呼ばれて赤い色と関係あるとすれば、フェニキアもカナーンも赤い色とかかわりがあり、フェニキア人の出生の謎は「赤」がキーワードとも考えられそうだ。

--------------------------------------------------------------------------
では、何故、フェニキアと赤もしくは紫が関係するかと言うと、それは染料の「貝紫」がキーワードだと思います。
以下は私のメルマガの予定稿の一部です。
--------------------------------------------------------------------------

★貝紫
古来から、ヨーロッパや日本では紫の色が珍重されてきました。

古代ローマ、ギリシャではアッキガイ科の貝の鰓下腺(さいかせん=パープル腺)から採れる紫色の染料、貝紫が珍重されました。
この紫は、シーザーの紫衣やクレオパトラの帆船などに使われたことで有名ですが、ローマ時代には凱旋将軍のみに許された色で、ローマが帝政になってからは皇帝の色とされました。
一枚のマントを染めるのに15,000個の貝を必要としたと言います。

この、高貴な緋紫の染料のもととなる貝紫を始めたのが、後にフェニキア人(緋紫の人々という意味)と呼ばれる人々です。現在のレバノンあたりに住んでいました。
彼らはアルファベットのもとになった、フェニキア文字の発明者としても有名ですね。後ローマと対決するカルタゴもフェニキアの殖民都市でした。
-------------------------------------------------------------------------



Re: 紅海(『地名の世界地図』)

松茸 (2001/08/15 03:33)

* 紅海
『大辞林』の「紅海」の項:
http://dictionary.goo.ne.jp/cgi-bin/dict_search.cgi?MT=%B9%C8%B3%A4&search=%B8%A1%A1%A1%BA%F7&sw=2
『大英百科事典』の"Red Sea"の項:
http://www.britannica.com/eb/article?eu=109261&tocid=0&query=red%20sea
をはじめ、藍藻の死滅による変色が語源だというのが〈定説〉のようです。
 しかし『地名〜』p.203の「褐色の桂藻」には絶句。

* エリトリア
 どうも〈軍事占領が1885年・法的領有が1890年〉ということらしいです。
 ちなみに、以前に話題になった「バビロン捕囚」も、〈ユダ王国の征服が前597年(第一次捕囚)・イェルサレムの破壊が前586年(第二次捕囚)〉だそうです。  「敗戦の日」も、今日=8月15日(玉音放送・米英軍との休戦発効)か、9月2日(降伏文書調印)なのか、議論がありますね。



色+海

UEJ (2001/08/15 05:17)

以下、広辞苑より、
紅海:一種の藻類のために海水の色が紅を呈することがあるからいう
黄海:黄河の水の流入により黄色を呈する。
黒海:硫化物を含むので黒く見える。

由来は書いていませんでしたが、白海(ロシア北西部にある大湾)というのもあります。



まだまだ『地名の世界地図』(その4)

松茸 (2001/08/16 01:38)

p.255上段 ウズベキスタン共和国:
 「ウズベクの語源は、十五世紀〜十六世紀のモンゴル帝国のひとつで、この地に定住したキプチャク汗国の君主ウズベクの名に由来する」
……民族名の由来としては成立するようですが;
・キプチャク汗国が成立したのは13世紀、ウズベクは14世紀の王であり、時代錯誤。
・ウズベキスタン地域はチャガタイ汗国→ティムール帝国の領土であり、キプチャク汗国が支配したことはない。
# 平凡社『世界大百科事典』の「ウズベク」の項を要約しようとして、失敗した
# ようです(あるいは、孫引きの伝言ゲームか)。

p.269下段 トルコ共和国:
 「トルコはチュルクが英語で転訛したもので」
……『大辞林』の「トルコ」の項:
http://dictionary.goo.ne.jp/cgi-bin/dict_search.cgi?MT=%A5%C8%A5%EB%A5%B3&search=%B8%A1%A1%A1%BA%F7&sw=2
では
| [(ポルトガル) Turco]
となっている。
# あるいは「Turk から Turkey が〈派生〉した」のつもりか?

p.270上段 日本:
 「アルファベット表記のジャパンJapanは、「日の出の国」を福建語でジペンクオJih-pen-kuoとよび、唐代にはクオ「国」を省略してジーペンといったため。」
……二方面に疑義が。
1) 「日本(にほん/にっぽん)」の「(ラテン)アルファベット表記」なら、やはり"Nihon", "Nippon"では?
 一方、「表記」"Japan"だけでは読み方は不確定(ドイツ語なら「ヤーパン」、とか)。
 massangeanaさまではないですが「ラテン文字は英語の独占物じゃないんですよー。」
2) こちらの方が重大ですが、唐代=中古音の時代に「ジペンクオ」「ジーペン」などという音があったのか? また、それが資料として残存しているのか?
 「日本(国)」の初出は(日中ともに)唐代とされているので、それ以前の用例があれば大発見のはずです……。



チェリー(『地名の世界地図』)

佐藤和美 (2001/08/16 10:33)

きのう、本屋で『地名の世界地図』12刷6月30日見つけました。
6月6日の大量指摘はどうも盛り込まれてないようです。

さて「チェリー」の語源です。

P25
「黒海沿岸には、この他にも、古代ギリシア時代に由来する興味深い町がある。現在はギレスンとよばれているが、当時はケラススCherasus(赤い実)とよばれていた。この地方特産の甘くて赤い実のなる林があることで知られていたからである。だからこの木の実も、ケラススとよばれるようになった。それを前七四年、ローマの将軍ルクルスがたいそう気に入り、ローマに持ち帰って栽培するようになって以来、ローマではこの実はケラシア、のちにフランス語でスリーズといった。さらにノルマン系フランス語でシェリーズ、そう、英語のチェリーcherry(サクランボ)である。」

・「ケラススCherasus(赤い実)」と書いてあれば、「Cherasus」という単語が存在して、その意味が「赤い実」だということになるけど。マユツバものですね。

・「ケラスス」が「赤い実」という意味だとしておきながら、「だからこの木の実も、ケラススとよばれるようになった。」とその実の名が地名に由来するかのように書いてるのはいったい?

・ギリシア語では「kerasos」、「Cherasus」じゃない。

・ラテン語では「cerasus」、どうやらこれが「ケラススCherasus」みたいですね。

・俗ラテン語では「cerasia」、これが「ケラシア」ですか。「前七四年」? この西暦あってるのかな? 「前七四年」に俗ラテン語って話されてた?

・フランス語、「ノルマン系フランス語」、英語、どれも「リー」と伸ばしてるけど、「チェリー」っていう日本語訛りにあわせた?

・「ノルマン系フランス語」ね。なぜわざわざ「系」入れてる?



Re: 日本

massangeana (2001/08/17 01:25)

松茸さん:
地名の世界地図,すごい本みたいなので敬遠してます :-)
> 「アルファベット表記のジャパンJapanは、「日の出の国」を福建語で
>ジペンクオJih-pen-kuoとよび、唐代にはクオ「国」を省略してジーペン
>といったため。」

もはやどこからツッコんだらいいのかわかりませんが...
1. 福建語最古の文献は 16世紀のもの。時代錯誤もいいところ。
2. jih-pen-kuo はどう考えても福建語じゃないでしょう。いまのビン南語なら
  jit-pun-kok で,ぜんぜんちがいますね。
  jih の h が入声をあらわしたものだとすると,南京あたりの音でしょうか。
3. おっしゃるように,中国で「日本」という言葉を使ったのは唐代以降でしょう。
4. ジーペンはどうかんがえても現代北京音ですよね。



カリフォルニア(『地名の世界地図』)

佐藤和美 (2001/08/18 08:48)

「カリフォルニア」の語源です。

P96
「中世のフランス詩『ローランの歌』のなかに、カリフォルヌCaliferneという想像上の国が出てくる。一五一〇年頃のスペインの作家モンタルボによるこの物語では、カリフォルヌはインド諸島の奥深くあるカリフォルニアCaliforniaという島になった。」

・この文章では「中世のフランス詩『ローランの歌』」を「一五一〇年頃のスペインの作家モンタルボ」が書いたと受け取れます。著者はいったい何考えてる?

・そもそも『ローランの歌』に「カリフォルヌCaliferne」は出てくるのか?

・後の版で「カリフォルヌCaliferne」は「カリフォルヌCaliforne」に変更されてるようですけど、「Califerne」じゃ「カリフォルヌ」って読めないですよね。

木村正史編著『アメリカ地名語源辞典』(東京堂出版)
カリフォルニア
「州名は1500年頃にスペインのガルシア・オルドニェス(Garcia Ordóñez de Montalvo)が書いた空想物語『エスプランディアンの偉業』(Las Sergas de Esplandián)の中にある California という島にちなんでいる。」
(ネスケの人、フォントが表示されないかもしれませんが、ごめんなさい。)

『地名の世界地図』と『アメリカ地名語源辞典』に書いてあること、ずいぶん違いますね。

UEJさんの「カリフォルニア」の項、まだ見てなかった。(^^);



『地名〜』に関してマルチレス

松茸 (2001/08/19 02:12)

* 日本:
 massangeanaさま、ご教示ありがとうございます。
 やはり「ジパング」は当時(13世紀末)の北京音に由来するものでしょうか?

* Cherry:
http://www.perseus.tufts.edu/cgi-bin/ptext?doc=Perseus%3Atext%3A1999.04.0057%3Aentry%3D%2356739

http://www-ang.kfunigraz.ac.at/~katzer/engl/Prun_mah.html
など、アッシリア語"karshu"を語源とする説も発見しました。
 なお、BC74年説の根拠のひとつとしては、プリニウス『博物誌』の:
http://www.ukans.edu/history/index/europe/ancient_rome/L/Roman/Texts/Pliny_the_Elder/15*.html#102
| Cerasi ante victoriam Mithridaticam L. Luculli non fuere in
| Italia, ad urbis annum DCLXXX. is primum invexit e Ponto,...
があります(ローマ紀元680年はBC74年に相当)。
 もっとも、下記のページ:
http://www.city.sagae.yamagata.jp/cherry/cherry-road.html
のように異説もありますが。(^^;

*『ローランの歌』:
 Google検索で、電子化テクストページ:
http://www.umanitoba.ca/faculties/arts/french_spanish_and_italian/roland3.htm
を発見。"Califerne"が出ています。



アフリカ大陸最南端の岬の名(『地名の世界地図』)

佐藤和美 (2001/08/19 09:55)

P90
8刷「彼らは喜望峰をまわって、羅針盤の針が北東に切り替わる最南端の岬をアガラスAgulhas(針)とよんだ。」

「羅針盤の針が北東に切り替わる」という表現がとても気になります。
一般的には羅針盤の針はつねに南北(磁極の)を指すはずですが。

ところで岬の名です。
9刷「アグリャスAgulhas」
10刷「アグーリャスAgulhas」
こんなことに気がつくのは私くらいのもんでしょう。(^^);



RE:カリフォルニア

GAUCHA (2001/08/19 11:26)

P96
「中世のフランス詩『ローランの歌』のなかに、カリフォルヌCaliferneという想像上の国が出てくる。一五一〇年頃のスペインの作家モンタルボによるこの物語では、カリフォルヌはインド諸島の奥深くあるカリフォルニアCaliforniaという島になった。」

・この文章では「中世のフランス詩『ローランの歌』」を「一五一〇年頃のスペインの作家モンタルボ」が書いたと受け取れます。著者はいったい何考えてる?

私はこの本を読んでいないので、前後関係が分かりません。でもこの部分を読むかぎり

中世のフランス詩「ローランの歌」をヒントにして、1510年にスペインのモンタルボが物語を書いた。その際、モンタルボは、「ローランの歌では」カリフォルヌだった地名をカリフォルニアに変え、インド諸島の奥深くにある島という設定にした。

と解釈できます。



追伸

GAUCHA (2001/08/19 12:11)

もちろん、この文章の前に、モンタルボが書いた物語というのが既に話題として提示されているのだろうと想像してのことです。



RE:『地名〜』に関してマルチレス

佐藤和美 (2001/08/19 16:51)

松茸さん
>*『ローランの歌』:
> Google検索で、電子化テクストページ:
>http://www.umanitoba.ca/faculties/arts/french_spanish_and_italian/roland3.htm
>を発見。"Califerne"が出ています。

オー、ありましたか。私は多分ないだろうと思ってたんですが。(^^);
そうすると、
「中世のフランス詩『ローランの歌』のなかに、カリフォルヌCaliferneという想像上の国が出てくる。一五一〇年頃のスペインの作家モンタルボによるこの物語では、カリフォルヌはインド諸島の奥深くあるカリフォルニアCaliforniaという島になった。」
この文章の
「一五一〇年頃のスペインの作家モンタルボによるこの物語では、」を「『ローランの歌』を基にしたスペインの作家モンタルボにより一五一〇年頃に書かれた物語では、」に替えれば、だいたいOK?
(1510年頃か、1500年頃かという問題はありますが)



まだまだ『地名の世界地図』(その5)

松茸 (2001/08/20 20:52)

->GAUCHAさまへ:
>もちろん、この文章の前に、モンタルボが書いた物語というのが既に
>話題として提示されているのだろうと想像してのことです。
……原本をご覧にならない方には信じられないでしょうが、そういう提示は一切なされていません。
 こういう本が有名出版社から出され、よく売れているというのが、日本の実情なのです。

* "Cobo Das Agulhas"
 公式(?)ページ:
http://www.capeagulhas.org/facts.html
他、「偏角が0になることが語源」という説はありますが、《ヴァスコ・ダ・ガマが命名した》というのは典拠不明。
 ちなみに『理科年表』では、1995年のアグーリャス岬での偏角は−24度程度です。(^^;

* 宗教ネタです。

p.142:
 「「旧約聖書」の「エデンの園」は、実際には、ティグリス・ユーフラテス川の下流にあった町だと考えられている。エデンとは「喜びの町」を意味する。ここを追われた人びとは、カルデアのウルに住んでいたアブラハムに率いられて荒野を旅し、乳と蜜の流れる町と形容されたカナーンに行き着く。」
……コメント不能。
# 「エデン」がヘブライ語で〈喜び〉というのはOK。

p.148:
 「ベツレヘムとは、[中略]ミサ用のパンを用意した家にちなんで名づけられた」
……ユダヤ教に「ミサ」があるのか?

p.151
 「聖戦は、すべてのイスラム教徒に課せられた義務である。」
……「すべての」というと、女性や子供も含んでしまう。

p.206:
 ソドムとゴモラの滅亡についての「この聖書の記述から、死海はSea of Loto(ロトの海)ともよばれていた。」
……やっぱりギャンブルはいけません。(^^)

p.223上段 ユタ:
 「キリスト教の一派、モルモン教徒」
……きわどい。

p.244下段 バチカン市国:
 「十二使徒の一人ペテロを祀るサンピエトロ寺院」
……(^^;

p.258下段 ザグロス山脈:
 「「ザグロス神」。古代ペルシアの復活神の名からとられた。」
……典拠不明。オルフェウス教の神格「ザグレウス」のつもりか?

p.262下段 イスラエル:
 「イスラエル人の祖ヤコブが夢の中で天使と戦い」
……「ベテル」の挿話(『創世記』28章の後半)と「ペヌエル」(同32章後半)とが混線?

p.272下段 マカオ特別行政区:
 「航海の守護聖女といわれた阿媽{あま}を祀る阿媽閣廟」
……こっちこそ「守護神」にしてほしい。



Re: ジパング

massangeana (2001/08/21 18:25)

松茸さん:
>やはり「ジパング」は当時(13世紀末)の北京音に由来するものでしょうか?

これは「東方見聞録」の話でしょうか。東方見聞録はよく知らないのですが, 異本が
非常にたくさんあり, 固有名詞の表記が諸本で大きく異なっているため, もとの綴り
がどうだったかはよくわからないと聞きました。日本らしき島の綴りも Cipangu や
Chipangu や Zipangu などいろいろあるようで, どれが本来の意図だったのやら...
かりに Zipangu だとしても, どう発音したのかよくわかりません。「ツィパング」の
つもりだったのかも。そもそも東方見聞録の原文が何語で書かれていたのかも正確に
はわからないようですし。

どう読ませるつもりだったのかがわからない以上, 中国語のどの方言の音に基くか
正確にわかりようがない, というのが正直なところではないかと思いますが, まあ
ニパングやイパングでないので, 「日」をジのように発音する北方の方言に由来と
考えるのが妥当なのでは。

下の場所にイタリア語版テキストがあり, Zipangu になっていますが, もとになった
本が何なのか書いてない... [155, 156 章が Zipangu の話]

http://www.provincia.ps.it/privati/bberti/behaim/milione/map.htm



ちょっと訂正

massangeana (2001/08/21 18:32)

>ニパングやイパングでないので, 「日」をジのように発音する北方の方言に由来と
>考えるのが妥当なのでは。
この部分はよく考えずに書いてしまいました。「…北方の方言に由来すると考えても
おかしくない」程度にしておきます。



Re^2: ジパング

松茸 (2001/08/22 13:29)

 massangeanaさま、重ねがさねのご教示ありがとうございます。

 『東方見聞録』の平凡社東洋文庫本(1971)の訳注によると;
・パリ国会図書館本(「イタリア語がかった中世フランス語」で記述)
  Chipngu
・グレゴワール本(フランス語訳)
  Sypangu
・ゼラダ本(ラテン語訳)
  Cipingu
・ラムージオ本(イタリア語訳)
  Zipangu
だそうです。
 たしかに「ジパング」よりも「シパング」「チパング」「ツィパング」の方が適切のようですね(東洋文庫本では「チパング」を採用)。(^^;

 なお、「北京音」と想像したのは、「倭」「日本」ではなく「日本国」をとっていることから、元朝政権の周辺の人物をインフォーマントにしたのでないか、と考えたこともあります。
# あるいは、いったんモンゴル語化されたものの音写か?

PS. こういうページを発見:
http://luggnagg.com/va/amazon/OED/OED-CDROM2.html

http://www.bartleby.com/61/67/J0016700.html



ストックホルム(『地名の世界地図』)

佐藤和美 (2001/08/25 18:14)

「ストックホルム」ネタです。

P242
「ストックホルムStockholm 一四の島からなる港湾都市。一二五三年、スベリエ人がガラムスターデン島に丸太で城塞を築いたことから、stock「杭」とholm「島」で、「杭の島」と名づけられた。」

・「丸太で城塞を築いた」って、どんな城塞か見てみたいもんですね。そりゃ「杭の島」じゃなくて、「丸太の城」だぞ!

『コンサイス外国地名辞典』(三省堂)
ガムラ-スターデン島
「スウェーデンの首都ストックホルム市外中央にある小島。」

・「ガラムスターデン島」と「ガムラ-スターデン島」。これは単純なミスですね。

P61
「一二五五年、メーラレン湖の入り江にある小島に建設され、」

「一二五三年」と「一二五五年」で建設年が矛盾してますね。



ストックホルム

田邉露影 (2001/08/25 18:46)

> ・「丸太で城塞を築いた」って、
> どんな城塞か見てみたいもんですね。
> そりゃ「杭の島」じゃなくて、「丸太の城」だぞ!

というか、ちょっとこの説自体、信用できないかも。

北欧関係の授業では丸太を商業利用したって習ったしσ(^-^;)。
(って、それを教えた先生も信用できない人なんですけどね)


> ガムラ-スターデン島
> 「スウェーデンの首都ストックホルム市外中央にある小島。」
>
> ・「ガラムスターデン島」と「ガムラ-スターデン島」。これは単純なミスですね。

訳すと「古い街」ですね。


> 「一二五五年、メーラレン湖の入り江にある小島に建設され、」
>
> 「一二五三年」と「一二五五年」で建設年が矛盾してますね。

……専攻した割には私も知りませんけど(コラコラ!!)、
山川出版から『北欧史』なんて書籍が出てますよ。



ポルトガル

みるく (2001/10/05 21:56)

はじめまして。
さっそくなんですが、ポルトガル(国名)の語源が知りたいのです。
よろしくお願いします。



RE:ポルトガル

未菜実 (2001/10/05 22:29)

建国が現在のポルトガル第2の都市ポルトを中心とした地域のポルタスガレ伯領 Portus Gale だったことに由来します。ラテン語の portus 「港」と gale 「穏やかな」で「穏やかな港」の意味だとか。



RE:ポルトガル

UEJ (2001/10/05 23:02)

ランダムハウス英語辞典にはちょっと違った説が載っていましたので引用。
 Portugal
 [<後期ラテン語 Portuscale=Portus(Douro川北岸の港町;<ラテン語 portus 港)+Cale(同南岸の港町)]
Caleの名がgaleから来ている可能性もありますが。

これを調べている時にちょっと面白い単語を発見。
 Portugoose=(1人の)ポルトガル人
 [GOOSEとその複数形geeseとの言葉遊びから, PORTUGUESEの単数形を仮想させたもの]
なんだそうです。

> syunkaさん
私は語源付の辞書としてはランダムハウスを愛用しています(↓)。
Web上の英英辞書でも語源が載っているものがあります。
http://ebook.shogakukan.co.jp/catalog/rf/srdw.html



Re^2:ポルトガル

松茸 (2001/10/06 19:26)

 Web上では、"Portus Cale"説が圧倒的です。
http://www.bartleby.com/65/op/Oporto.html
http://www.britannica.com/eb/article?eu=108423&tocid=93710
http://school.discovery.com/homeworkhelp/worldbook/atozgeography/p/441200.html
http://www.google.co.jp/search?q=cache:PzBbk5ybeno:latin.about.com/library/weekly/aa102400d.htm+Portugal&hl=ja
など。
 なお、"cale", "gale"に似たラテン語で「穏やかな」という意味のものはないようです。
 また、上記『コロンビア百科事典』のページには"duke of Portucalense"とあるように、「ポルタスガレ*伯*領」というのも疑問の余地があります。

 ところで、かの『地名の世界地図』(^^;にも:
「[前略]その建国が、現在のオポルトを中心とした地域のポルタスガレ伯領Portus Galeだったことに由来する。その名はラテン語のportus「港」とgale「穏やかな」で、「穏やかな港」。[後略]」 (p.247下段)
とありました。
 "portus"を「ポルタス」と英羅ちゃんぽん読み(?)していることから見ても、未菜実さんご紹介の資料(と同系統のもの)を孫引きしたと思われます。お手数ですが、資料名・編著者などをご教示お願いします。m(_ _)m



ポルトガルについて

みるく (2001/10/07 01:13)

レス、頂いた方、ありがとうございました。
古い国の名前だと、諸説あるんですね。
誰が最初に名付けてたんでしょう。
タイムマシーンがほしいです。



RE:ポルトガル(地名の世界地図)

佐藤和美 (2001/10/07 13:44)

牧英夫編著『世界地名ルーツ辞典』(創拓社)からです。
ポルトガル
「イベリア半島にある共和国。イスラム勢力の支配下にあったこの地方は、11世紀にヨーロッパ人によって再占領され、1095年、現在のオポルト市を中心とする地方が、ブルガンディ伯アンリーに伯爵領として与えられた。オポルト市は、当時のラテン語地名をポルタスカラとかポルタスガレPortus Cala,Portus Gale「温暖な港」と称し、伯爵領も主都名にちなみポルタスガレ伯領と呼ばれた。その後、伯爵領は拡張され、12世紀には独立して王国となった。
 古名ポルタスカラは、ラテン語のポルタスportus「港」と、カラcala>caleo「温暖な」の合成地名である。これが転訛してポルタスガレになり、また現名のポルトガルになった。」

『世界地名ルーツ辞典』は『地名の世界地図』の「主な参考文献」にも載ってる本です。
でも、どこまで参考にしてるかわかりません。
『世界地名ルーツ辞典』のカナ表記はあまりあてにならないようですが、語源説はだいたい複数載ってるので、そこが『地名の世界地図』と大きく違う点でしょう。

元ネタで使ってそうな箇所では、こんなのがありました。

『地名の世界地図』P292
クック山脈
「クックの死後、五二年たってから、(一八五一年)、彼を讃えてつけられた。」

『世界地名ルーツ辞典』
クック山
「1851年にクック山と命名された。クックはニュージーランドを探検してイギリス領土としたが、この山についての記録は残しておらず、死後52年たってからつけられた地名という事実を合わせ考えると、彼を讃え記念しての地名であろう。」

『大辞林』
クック[Cook]
(1)〔James C.〕(1728-1779) イギリスの軍人・探検家。1768年から三回太平洋方面の大航海を行い、未知の海域・島を明らかにした。また、オーストラリアの領有宣言を行うなど、その後のイギリスの太平洋方面進出の基を築いた。キャプテン-クック。

1779+52=1831
クックの死後52年は1831年
こんな間違いマネするな!!
(元ネタにしてる証拠としてはこれ以上のものはないでしょう。1779+52の計算を間違える(?)人はそう多くはないでしょうから。)

それにしても、「彼を讃え記念しての地名であろう」が「彼を讃えてつけられた」ねぇ。



クック山、クック山脈

佐藤和美 (2001/10/08 11:23)

書きもらしてました。

『地名の世界地図』
クック山脈

『世界地名ルーツ辞典』
クック山

これは「クック山」のほうが正しいですね。

なんで「山」と「山脈」を間違える?



”メキシコ”という国名の由来?

葉月 (2001/10/13 14:24)

はじめて投稿いたします。
先日子供から”メキシコ”ってなんでメキシコっていうの?と質問され、
ほんとに答えに窮してしまいました。
少し調べてみたのですが、アステカの異称でメシカという呼び方があり、
それが由来らしいのですが、
そうなるとその”メシカ”とは何ぞや?と私のほうが気になってしまった次第です。
どなたかご存知の方がいらしたら、おしえてください。



RE:メキシコ

未菜実 (2001/10/13 15:05)

アステカ帝国の守護神メヒクトリ Mexictli 「神に選ばれし者」が由来のようです。



RE×2:メキシコ

未菜実 (2001/10/13 15:09)

下に書いたら、
松茸 (2001/08/13 01:02)さんの、まだまだ『地名の世界地図』(その3)
に載っているんですね。問題の本の。^^;



ありがとうございました

葉月 (2001/10/13 17:57)

おそくなりましたが、未菜実さん
ありがとうございました。
『地名の世界地図』に載っていたとは
ぜんぜん気が付きませんでした。
また、精進いたします。



RE^3:メキシコ

松茸 (2001/10/14 02:44)

-> 葉月さまへ:
 過去ログ(http:///www.asahi-net.or.jp/~hi5k-stu/europe/sekaitimei.htm)をご覧になればおわかりでしょうが、『地名の世界地図』の記述は間違いだらけで、レファレンスとして信頼できません。
 万一お子さんが読んで*覚えてしまったり*すると悲惨なことになりますので、念のため。(^^;

PS.
 「メヒコ」については、「月のうさぎのへそ」という語源説もあるようです:
http://www.indians.org/welker/mexmain1.htm


-> 未菜実さまへ:
 前回もおうかがいしましたが、ソースをご教示していただけないでしょうか?
 嫌味や皮肉ではなく、あくまで『地名〜』の元ネタ探しということで、お願いします。m(_ _)m

PS. 「地名の〜」でWeb検索したところ;
http://homepage2.nifty.com/osiete/s500.htm
なるページを発見。『地名〜』巻末の国づくしの丸写しが載っています。
 さて、もう一冊典拠となっている本「小学館編『世界の国旗全図鑑』」を検索したら;
http://www.books.or.jp/ASP/detail.asp?no=1997277824&title=%90%A2%8AE%82%CC%8D%91%8A%F8%91S%90%7D%8A%D3&se=&ttp=KANJI&sei=&mei=&atp=KANJI&ymin=&ymax=&c1=&c2=&type=&syuppan=%8F%AC%8Aw%8A%D9&isbn1=&isbn2=&isbn3=&isbn4=&disp=100
 で、その内容の抜粋らしいものが;
http://www2.netwave.or.jp/~ynoguchi/bunka10.htm#bunka10-150
……何か、どっかで見たような……。
 辻原康夫氏の著書は『地名〜』の参考文献に四冊も挙がっていますが、どうも同じネタを使いまわした本を複数の出版社から出しているようですね。



『地名の世界地図』のアイヌ語

佐藤和美 (2001/10/21 10:04)

「北海道のアイヌ語地名」に「『地名の世界地図』のアイヌ語」を追加しました。

「『○○○○』のアイヌ語」シリーズ第3弾です。
6/20の書き込みを中心にして、若干手直ししたものです。
伝言板でだいたい書いてたことですが、ケジメのつもりでこのようにまとめてみました。



地名の世界地図

佐藤和美 (2001/12/16 10:37)

久しぶり、『地名の世界地図』です。

12月20日は何の日?
はい、『地名の世界地図』出版一周年記念日で〜す!
これを祝って追加しました。
『地名の世界地図』批判 PART1 Ver.1.00
(材料は13刷(2001年9月25日発行)です。)

「カンタベリー」のスペルは?
「アビシニア」の意味は?
「マレー」の語源は何語?
さあ、あなたも『地名の世界地図』で勉強しましょう。(笑)



Re:地名の世界地図

松茸 (2001/12/17 02:24)

 発売後一年、いまだ、読むたびに新たな〈発見〉が……。(^^;
# 新しい刷が入手できない(都心の大書店に行かないとだめか?)ので、第九刷より。
# 太字は引用者による強調です。

・方向音痴シリーズ:

p.32:
「現在のドイツ南西部を流れるライン川上流」
p.33:
「現在のドイツ南西部、[中略]町はドイツ語でアーヘンAachenとよばれるようになった。」
……どう考えても「南西部」とは言えない。
 そもそも、ライン川の源流はスイスにあり、「上流」では独仏国境になっているはず。
 『地名の世界地図』と題しながら、仏名「エクス=ラ=シャペル」について沈黙するのも不審。

p.52:
「スカンディナビア半島の南にあるゴトランド島」
……誤りとは言い切れないが、「スカンディナビア半島の南にある」というと、普通、デンマーク領ボルンホルム島のような場所を指さないか?
 また、スウェーデン語の音写は「ゴトランド」でいいのか?(未確認)

p.63:
「アルバニア Albania という地名を辞書で引いてみると、[中略]バルカン半島北東部にある国名[中略]とある。」
……どういう辞書だ?

【中央アメリカ】の項の中に;
p.226下段 サンピエール島・ミクロン島:
「一六七〇年、西インド諸島をめぐる英仏の争奪戦で、フランスが要塞を建設。[後略]」 ……実は、これらはニューファンドランド島のすぐ南にある小島。
 そして;
p.229下段 バミューダ諸島
……北緯33°, USAノースカロナイナ州の真東にあるんですが。
 やっぱり、時空間がひずんでいる?



「ゴトランド島」

田邉露影 (2001/12/18 11:40)

>松茸さん
元綴りは Gotland なんで、
まあいいんだと思います。

Go:taland (o:はoウムラウト)のように
g+前舌母音の場合は
gは口蓋化して[j]になるので、
こちらは「イェータランド」のようになります。



Re^2:地名の世界地図

青蛙 (2001/12/19 00:42)

佐藤和美さん:
「『地名の世界地図』批判 PART1 Ver.1.00」アップご苦労様です。そうですか、もう出版一周年なんですね。それにしても、13刷もしていてまだこんなに間違いがあるんですねぇ。仰っているご指摘はもっともです。文春もいいかげんに、小手先だけの誤魔化しはやめていただきたいものです。困ったことに、1年の間にこのトンデモ本を参考にしたり推薦しているものがけっこう出てきてるんですよね。
そう言えば、私が以前重箱の隅を突付いた本があったのですが、昨年こっそりマイナー・チェンジしてました。全面改訂してくれってお願いしていたのに。昨年、同じ出版社から出た別の本の重箱を突付いたところ、著者の方から「なんて失礼な奴だ」とお怒りの手紙をいただきました。まあ、私も筆が滑りすぎたと反省していますが、間違いは間違いですからね。その後どうなったのか、出版社から音沙汰はないので、そのうち県都の大型書店を覗いてみることにします。

松茸さん:
> # 新しい刷が入手できない(都心の大書店に行かないとだめか?)
当地でも、自称「21世紀研究会」の『〇〇の世界地図』シリーズ4部作はどこの書店でも見られるようになりましたが、いずれの増刷分も一桁で、最新刷(13刷)どころか二桁の増刷分も目にしたことがありません。地方はツライ。



最近の『地名の世界地図』

佐藤和美 (2001/12/20 08:33)

特殊アルファベットですが、ちょっとづつ増えてるようです。

P102
ソシエテSociété諸島

P237
アイスランド Ísland

P243
ケーベンハウン Kφbenhavn

訂正されてるところも同じようにちょっとづつですが増えてるようです。

P44
「ケルトCeltとは、その意味が、「石おの」であるように、古代人の名称である。」→「ケルト人Celtとは、言葉をはじめとした共通の文化的特質をもつ人々の名称である。」

P64
「クルナ・ゴラ」→「ツルナ・ゴラ」

P115
「漢四郡を楽浪郡に置いてからは」→「漢四郡の一つとして楽浪郡を置いてからは」

P138
「交跡」→「交趾」

P204
「Russhoe More」→「Russkoe More」

P241
「ジェベルdjebel」→「ジァバルjabal」

P245
「ハンガリー共和国……一九八九年、共和制に移行」→「ハンガリー共和国……一九八九年、共産党独裁が終了」

P256
「開放」→「解放」

etc

なにぶん訂正が牛歩なもんで、新しい間違い・疑問点の個所を見つけるスピードのほうが早そう。

それにしても1刷以降何カ所くらい修正になってるのかな?
(アイヌ語とかババロアのところは数え方に困るけど。)
この本のビリーバー(信じてる人)で古い版を持ってる人はご愁傷様です。
あ、今でも古い版売られてるんですね。正誤表なしで。

ところで「オスマン・トルコ」という言葉ですが、『世界史事典』(旺文社)にはこうあります。
「これまでオスマン-トルコ帝国と記述されることが多かった。しかし近年の研究で、君主(スルタン)がトルコ人でイスラーム国家だが、多民族と多宗教を包摂し、高級官僚も民族・宗教の別なく登用したところから、単にオスマン帝国と記述されるようになった。」
私は6月にこう指摘してます。
「最近では「オスマントルコ」は「オスマン帝国」と表記する。(最近の「世界史」の教科書でも見てみればいい。)」
『常識の世界地図』1刷(2001年9月20日発行)では「オスマン帝国」を使用。
『地名の世界地図』13刷(2001年9月25日発行)では「オスマン・トルコ」を使用。
『地名の世界地図』では「オスマン帝国」に変更する気がないようですね。
知ってて直さないということです。



Re:方向音痴(地名の世界地図)

佐藤和美 (2001/12/23 08:03)

私も方向音痴のネタを一つ。

P50-52
「ローマ帝国の繁栄にも陰りがみえはじめた頃、ドナウ川から黒海沿岸にかけて住んでいた西ゴート族は、ウラル山脈の西側に拠点を置いていたフン族がボルガ川を渡って侵入してきたため、ドニエプル川を東から西に越えてローマ帝国内に逃げ込んでいった。」

・「ドナウ川から黒海沿岸にかけて住んでいた」って、ドナウ川は黒海に流れ込んでるんですが。

・「ドナウ川から黒海沿岸にかけて住んでいた」のが、どうして「ドニエプル川を東から西に越え」られるんでしょう?



イムジン河

佐藤和美 (2001/12/31 18:22)

今年の紅白はキム・ヨンジャが「イムジン河」を歌うんですね。
この歌がTVで放映されるなんて、そういう時代になったんですねぇ。

『地名の世界地図』P120では「イムジン江」って書いてるけど、歌の題名としては「イムジン河」ですね。
今年は『地名の世界地図』に追いかけられた一年だったけど、締めもこの本のネタで締めるとしましょう。



アルバニア(地名の世界地図)

佐藤和美 (2002/01/05 12:03)

松茸さん
>p.63:
>「アルバニア Albania という地名を辞書で引いてみると、[中略]バルカン半島北東部にある国名[中略]とある。」
>……どういう辞書だ?

ホントにどんな辞書なんでしょ?

この部分て1刷ではこうですね。
「アルバニア Albania という地名を辞書で引いてみると、バルカン半島北東部にある国名[中略]とある。」

「[中略]」の部分が増えてたんですね。1刷で間違い探ししてたんで全然気がつきませんでした。その内容は「トルコ語で「山脈」を意味する」

ところで次のページの1行目にはこうあります。
「アルバニアとは、雪の色であるアルブスalbus(白)とラテン語の地名接尾辞-iaからなる言葉である。」

238ページにはこうあります。
「アルバニアとは「白い土地」。一般的には、白い石灰岩性の地質から、ラテン語のalbus「白」が語源と考えられている。」

わざわざ「トルコ語で「山脈」を意味する」なんて入れなけりゃよかったですね。

で、どういう辞書?


この件に関してバージョンアップしました。
『地名の世界地図』批判 PART1 Ver.1.01



文?春?

クマ (2002/01/06 18:06)

はじめまして。五十二歳、自営業です。
ベストセラーなのに、未だ明かされない「21世紀研究会」に疑問を抱き、検索した結果ここに辿り着きました。“間違いだらけの「地名の世界地図」+「人名の世界地図」”に書き込みの皆様、有り難う御座います。娘(受験生、世界史選択)に読ませる前で助かりました。副島隆彦さんも嫌いな「文?春?」なのに迂闊でした。



ジパング

hananaha (2002/01/08 18:47)

Japanの語源はマルコロポーロのジパングからきているのでしょうか?もしそうなら何語なんでしょうか? 教えてください。



Re:ジパング

佐藤和美 (2002/01/09 14:59)

hananahaさん
>Japanの語源はマルコロポーロのジパングからきているのでしょうか?もしそうなら何語なんでしょうか? 教えてください。

「日本」の中国での発音がマルコ・ポーロによってヨーロッパに伝えられたのが「Japan」の語源ですね。

詳しくはこれを読んでみてください。
「Re: ジパング」massangeanaさん(2001/08/21 18:25)



Re: ジパング

massangeana (2002/01/09 18:19)

Japan は直接「ジパング」とは結びついていないようです。16世紀のポルトガル人がマレー語の Jepang / Japang (日本) を借用した, という OED などの説明が正しいのでしょう。実際 16世紀にはジャパンとジパングの両方を別の島として記述してある地図もあります。

この件については海野一隆「地図に見る日本」(大修館書店,1999)が入手しやすくてかつおもしろいです。

もちろんジャパンもジパングも元をたどれば「日本」という字の中国語での発音に由来します。

>「Re: ジパング」massangeanaさん
読み直したらちょっと変なところがあったので訂正します。
(2001/08/17) [jih-pen-kuo について]「jih の h が入声をあらわしたものだとすると,南京あたりの音でしょうか」とかきましたが, 単に現代北京音をウェード式ローマ字でつづっただけですね。



三年目の『地名の世界地図』

松茸 (2002/01/12 17:38)

 毎度毎度この本の話ばかりで、忸怩たるものがありますが、読んでくださる方もいらっしゃるので、ぼつぼつ書いていきます。
# ようやく第十三刷入手(店員さんに頼んで、在庫から最新刷を探していただきました)。

* 恒例、方向音痴シリーズ:
p.18:
 「オリンピア Olympia (オリュンポス Olympos)は、[中略]オリンピック発祥の地である。」
……実在の"Olympos"はテッサリアにある山で、ペロポネソス半島の"Olympia"とはぜんぜん別の土地。

p.26:
 「エーゲ海と、その海岸線沿いにあるフェニキア」
……(^^;

pp.131-132:
 ティムールは「東アジア、インド、中国へと軍を進めていった。
 しかし一四〇五年にティムールが死ぬと、たちまちティムール帝国は衰えてしまった。」
……佐藤さまも書いておられますが、「*東*アジア」は「*西*アジア」の誤りですね。
 また、ティムールは中国(明)に「軍を進め」る途上で没しており、交戦はしていません。
 なお、ティムール没後、大きな対外征服がないというだけで、「たちまち……衰えてしまった」といえるかは疑問。

p.202:
 「地中海、大西洋、紅海、インド洋を経てアジアに行く海路」
……「海路」どうやって大西洋から紅海に行くのか?

p.211:
 「アルプス、エベレスト[ママ]、ロッキー[中略]これらの高峰が形成された過程は、いずれも大陸移動による大地の衝突、褶曲によるもので」
……いったいどんな大陸が北アメリカと「衝突」してロッキー山脈ができたというのか? まさか、かの「失われた大陸ムー」?

 最後に、遅くなりましたが、"Gotland"に関してご叱正いただきました田邉さま、ありがとうございます。m(_ _)m



地理(地名の世界地図)

佐藤和美 (2002/01/13 17:58)

P37
「これらの国々のなかでも、ギリシアからエジプトにかけての地中海東部沿岸の国々、とくにシリア(現在のトルコ南東部からレバノン、イスラエル、ヨルダンを含む)については、レバントLevantとよぶようになった。レバントとはフランス語で「(太陽が)昇る」ということ、つまり地中海の東にある地域ということから名づけられたものである。」

いくつか疑問はありますけど、とりあえずは「トルコ南東部」って何?

P139
「マレー半島の、七千以上もの島からなるフィリピンも」

間違いとは言えないのかもしれませんが、違和感を覚えます。
「日本の東にあるハワイ」っていう言い方もあり?

P159
「メキシコ第二の都市グアダラハラは(中略)マドリード北部の町の名に由来する」

『コンサイス外国地名辞典』(三省堂)には「マドリード北東54km」とあります。

P102
「太平洋の島々はオセアニアOceaniaとなづけられているが、(中略)その大洋州はさらに細分化されてミクロネシア(小さな島々)、メラネシア(黒い人の島々)、ポリネシア(多くの島々)と名づけられている。」

オーストラリアのこと忘れてるようですね。オーストラリアは大陸で「島々」じゃないし、ミクロネシア、メラネシア、ポリネシアのどこにも属しません。



月の魔力(地名の世界地図)

佐藤和美 (2002/01/16 12:15)

「地名の世界地図」2001/12/10 14版 出てました。

「地名の世界地図」P204
「ちなみに渤海とは、漢字の意味をそのままとると、「波がわき立つ海」。干満の差が大きい、波が荒いようすをあらわした名前である。」

渤海って月の潮汐力が特別に働いて、干満の差が大きいんですかね?(笑)



作文の時間(地名の世界地図)

佐藤和美 (2002/01/17 12:03)

「地名の世界地図」にはなかなかユニークな文章が載ってます。
さて、問題です。以下の文章を推敲してみましょう。
答えはありません。(^^)

P73
「しかし一三世紀には、ナポレオン、ヒトラーに屈しなかったロシアが、中央アジアのモンゴル人によって、東からその国土を侵略されはじめた。」

P136
「タイのことをしばしばシャムShamというのは、このシャーンに由来する。西洋ではミュージカル「王様と私」の原作が『アンナとシャム王』であり、またシャム猫などのように、こちらの名前もまた健在である。」

P166
「U.S.$はアメリカ合衆国政府が発行している貨幣、U.S.Armyはアメリカ軍のことだが、通常アメリカとよんでいるアメリカ合衆国United States of Americaは、合衆国the United Statesの名でとおっている。」



三年目の『地名の世界地図』R

松茸 (2002/01/18 16:50)

 やかましいことを言いだすとキリがないので、特に面白い(情けない)間違いを選んで挙げていきますが、それでも相当あります。(^^;

p.76:
「オホーツクもアムール川流域の町の名にちなんだものだ。
 ロシア東南部のツングースの言葉オホータ Okhota (川)で、「川の町」。」
……どう考えても、オホーツク市は「アムール川流域の町」ではないですね。方向音痴シリーズに追加。
 また、ツングース語派に属するエヴェン語が語源という説はあるが;
http://www.webnews.gr.jp/aota/00_0208_book6.html
エヴェン民族の主要な居住地は「ロシア東南部」(沿海州/アムール川流域のことだと好意的に解釈する)ではない。

p.101:
「なぜか「天国にいちばん近い島」とよばれるニューカレドニア島」
……森村桂の同名小説はベストセラーになったし、映画化もされている。

p.141 写真キャプション:
「エルサレム(イスラエル)
中央右のドームが、ムハンマド(マホメット)が昇天したというイスラム教の聖地「神殿の丘」に建てられたエル・アクサ・モスク。」
……写っているのは「岩のドーム」。(^^;

p.149:
「イブラーヒームが[中略]のちにイスマイールを使徒として遣わすことを神に誓った」
……「使徒」はキリスト教(ないし某アニメ)の専用語だと思うが?
 なお、長音を使うなら「イスマーイール」とすべき。

PS. 「渤海」について:
 潮の干満は《月および太陽の潮汐力に励起された定常波》なので、境界条件によってかなり複雑な挙動を示しますが、手もとの『理科年表』で調べた限りでは、黄海や東シナ海沿岸と比べて渤海の「干満の差が大きい」とは言えないですね。



Re: 使徒

massangeana (2002/01/18 22:47)

信仰告白は日本語では「アッラーの外に神はなし。ムハンマドは神の使徒なり」というのが普通ではないでしょうか。(使徒 = ラスール)

日本ムスリム協会 日亜対訳注解聖クルアーン
19.54. またイスマーイールのことを,この啓典の中で述べよ。本当にかれは約束したことに忠実で,使徒であり預言者であった。

だそうです。

http://www.isuramu.net/kuruan/kuruan/19.html#54



天国にいちばん近い島

佐藤和美 (2002/01/19 10:14)

松茸さん
>「なぜか「天国にいちばん近い島」とよばれるニューカレドニア島」
>……森村桂の同名小説はベストセラーになったし、映画化もされている。

去年、文春と会った時にそのことを指摘したら、森村桂のことにはふれたくない、というようなことを言ってました。理由は聞きませんでした。



おわびと訂正

松茸 (2002/01/20 08:05)

* 「使徒」:
 massangeanaさま、またまたご叱正いただき、ありがとうございます。
 信仰告白の訳は「預言者」の方しか知りませんでした。
 ムスリムの方々にお詫び申し上げます。m(_ _)m
 一応、辞書等は確認したのですが……:
http://dictionary.goo.ne.jp/cgi-bin/jp-more_print.cgi?MT=%A4%B7%A4%C8&ID=a4b7/08961200.txt&sw=2

* 森村桂:
佐藤さま曰く:
> 去年、文春と会った時にそのことを指摘したら、森村桂のことにはふれたくない、というようなことを言ってました。理由は聞きませんでした。
……「ふれたくない」のなら、なおさら「なぜか」などと書かなければいいのに、と思いますが……。
# それとも、遠まわしの嫌味なのか?
 なお『天国に〜』は「小説」ではなく「紀行文」ですね。訂正いたします。m(_ _)m

* 懲りずに追加:
p.21:
 「ペルガモンでは、ヒツジなどの動物の革[ママ]をなめして両面が使える羊皮紙を発明し」
……羊皮紙そのものはペルガモン王国成立以前から使われていた。特に「両面が使える」ものを「発明」したという意味だが、これでは判りにくい。
 なお、以下によれば、羊皮紙は〈なめしがわ〉ではないそうです。(^^;
http://contest.thinkquest.jp/tqj1999/20208/lesson/youhishi.html
 『コロンビア百科事典』でも"untanned"としていました:
http://www.bartleby.com/65/pa/parchmen.html

p.27:
「サハラ沙漠以南に黒人の国があることを知ったギリシア人は、そこをアイトスオプシア(アイトス「陽に灼けた」とオプス「人、顔」に地名の接尾辞 -ia をつけて「陽に灼けた人の国」)とよんだ。」
p.188:
「エチオピア Ethiopia は、ギリシア語の aitos (日に焼けた)と ops (顔)と地名接尾辞の -ia からなる。[中略]古代ギリシア人がサハラ沙漠以南を漠然とエチオピア(アイトスオプシア)とよんでいたという歴史がある。」
p.275下段 エチオピア高原:
「「陽に灼けた人の国」。ギリシア語の aitos 「陽に灼けた」 ops 「人、顔」と地名の接尾辞 -ia からなる。」
p.279上段 エチオピア連邦民主共和国:
「ギリシア語の aitos 「日に焼けた」と ops 「顔」に地名接尾辞の -ia からなる。古代ギリシア人はサハラ沙漠以南を漠然とエチオピア(アイトスオポス)とよんでいた。」
……一冊の本に同じような記述が四回も出てくること自体が問題ですが;
・そもそも「アイトスオプシア」「アイトスオポス」なるギリシア語の用例があるのか?
cf. "Aithiops":
http://www.perseus.tufts.edu/cgi-bin/ptext?doc=Perseus%3Atext%3A1999.04.0057%3Aentry%3D%232329
・"aitos"は"aithos"の誤りだろう。
http://www.perseus.tufts.edu/cgi-bin/ptext?doc=Perseus%3Atext%3A1999.04.0057%3Aentry%3D%232332
・"ops"に「人」の意味があるのか?
http://www.perseus.tufts.edu/cgi-bin/lexindex?lookup=o)/y&lang=Greek
・漢学的に「陽に灼けた」という文字づかいは妥当か?



スペル(地名の世界地図)

佐藤和美 (2002/01/21 12:05)

P56
「サクソン人による有名な地名は、ピューリタンがアメリカ大陸に向けて出航したサウサンプトンSouthamptonがある。South(南)とホムトンhumtun(開拓地、領地)で「南の開拓地」である。」

「ホムトンhumtun(開拓地、領地)」ってなんなんですかね?
英和辞典で「humtun」、和英辞典で「開拓地」、「領地」を見ても見当たらないんですが。

P213
「シシャパンマShisha Spangma」

「パンマSpangma」の「S」ってなに?



Re: 使徒

massangeana (2002/01/22 00:49)

>「預言者」の方
「預言者」はナビーの訳としているようですね。信仰告白ではラスールといっているので「使徒」の方がいいようです。

>一応、辞書等は確認したのですが……:
日本がいかにイスラム教になじみがないか, ということのあらわれでしょうね。
手持ちのアラビヤ語聖書を見てみたのですが, キリスト教の「使徒」もアラビヤ語ではラスール, つまりイスラム教の使徒と同じ語を使っていました。



Re: シシャパンマ

massangeana (2002/01/22 00:58)

>「パンマSpangma」の「S」ってなに?

チベット語では古くは子音が 2つも 3つも続くことがあったのですが, 現在では一つ以外脱落してしまっています。ローマ字で写すときは発音しない子音もそのまま書きます。
手元のチベット語辞書によると「シ(shi)」=死, 「シャ(sha)」=肉, 「パン(spang)」=草原・牧地, 「マ(ma)」は接尾辞です。これで「ムギが枯れ、ウシ・ヒツジが死ぬところ」というのはやや大胆かも。(綴りが正しかったとしての話ですが)



三年目の『地名の世界地図』S

松茸 (2002/01/23 01:03)

p.54:
「北ヨーロッパで使われた無骨な手書き書体はゴシック体として、本書にも使われているが」
……UEJさまの『コトバ雑記』第92話「ホントにフォント」より:
http://www.wedder.net/kotoba/font.html
|  15世紀の中頃にドイツの「Gutenberg(グーテンベルク)」がヨーロッパで
| 初めて活版印刷を発明した時に用いた書体は、アルファベットにひげ状の装飾
| を施したいわゆる亀の甲文字でした[中略]。本来はこのドイツ文字こそが
| 「Gothic(ゴシック)」と呼ばれたフォントでした。[中略]
|  20世紀になるとアメリカで、セリフ(フォントを構成する線の端にある飾り)
| の無い書体、サンセリフが開発されます。ローマン体よりもさらにシンプルな
| このフォントはその創作者によって「Alternate Gothic(オルタネート・ゴシ
| ック=ゴシックに代るもの)」と命名されました。この長い名前の前半部分が
| 略されたのが今日ゴシック体と呼ばれているフォントで、「MSゴシック」もそ
| の仲間というわけです。
[引用に際し適宜改行を挿入しました]
# 見落としてました。m(_ _)m

・懲りずにアラブ/イスラムねたです。(^^;
p.37:
「第一次世界大戦後、オスマン・トルコ帝国から独立したヨーロッパ南東部の国々は、[中略]近東に含まれることを拒んだ」
……「第一次世界大戦後、オスマン・トルコ帝国から独立した」のはアラブ諸国である。
# あるいは「第一次世界大戦後」は「独立」ではなく「拒んだ」にかかるのか?

p.151:
「メディナは、アラビア語でアル・マディーナト・アン・ナビ(定冠詞 al とマディーナト madinat 町、アン・ナビ an nabi 預言者)で、「預言者の町」を意味する。メディナは、そのうちのマディーナト(町)が転訛したものだ。」
……語末のタ・マルブータの処理に失敗。
 また、定冠詞"al"の表示法が、他の箇所(一様に「アル」と転写)と不統一。



こんなのがまだ未訂正(地名の世界地図)

佐藤和美 (2002/01/27 10:48)

P248
「マケドニア(中略)一九九一年、クロアチア、セルビアとともに独立。」

「セルビア」?
こういう文章みるとなさけなくなりますね。
書いた人も書いた人なら、校正・校閲もいいかげんってことですね。

P265
「ピョンヤン(中略)紀元前からの古い都市であり、四二七年には高句麗の都として繁栄した。」

当然の事ながら、四二六年や四二八年はどうだったかという疑問がわいてきます。年表みる気もおこらないけど。ま、推敲の問題ですか。

P222
「ペンシルバニア」

一般的には「ペンシルベニア(ペンシルヴェニア)」ですね。
それにしても、なんでアメリカ合衆国だけ州まで書いてあるんですかね?

P213図
「キルギスタン」

他のページは「キルギス」なのに、ここはなぜか「キルギスタン」。
「'91キルギスタン共和国として独立。'93現国名となる」(「コンサイス外国地名事典」三省堂)
なるほど、この図は1991年or1992年のものだったんですね。(笑)



『地名の世界地図』第十三刷での「修正」について

松茸 (2002/01/28 22:08)

* USA の Delaware 州の記述
p.169地図:
「デラウエア」
p.170上図:
「デラウエア」
p.181:
「英語の地名が一四州ある(デラウエア、[中略])。」「デラウエア州ドーバー Dover」
p.219地図:
「デラウエア」
p.221上段 デラウエア:
「バージニア植民地の初代総督トーマス・ウエスト、ドゥ・ラ・バール卿の称号 Lord de la Warr を英語化した「デラウエア」にちなんだもの」
p.302(索引):
「デラウエア」
……口頭では「で・ら・う・え・あ」と五拍で発音することが多いので、誤りとは言いがたいものの、地名のカナ表記としては「デラウェア」で定着していますね。
 それはともかく、第九刷ではp.169・p.221・p.302は「デラウェア」だったのが、第十三刷で「デラウエア」に統一されています。(^^;
# 同じく、「ウエスト」も「ウェスト」でしょう。

* アフリカの分割(p.187地図)
 教科書などによくある図です。
 初刷の《トーゴがスペイン領》とか《「ベチュアランド」と誤記》とかは、さすがに修正されていますが;
・「南アフリカ連邦」(1910年成立)がある上、リビアがイタリア領になっている(1912年10月にオスマン帝国から割譲)。一方、モロッコにおけるスペイン領(勢力圏)が1912年11月までのものになっているので、1912年10月ごろの地図と思われます[これらは初刷から変わらず]。
 それはそれでいいのですが、第十三刷では新たにキャプションが加えられ「19世紀末/植民地化されたアフリカ」となりました。(^^;
 さらに;
・エジプト領だったシナイ半島については、帰属が無表示になった。
 《シナイ半島はアジアの一部であってアフリカに含まれない》ということでしょうが、紛らわしい(オスマン領/英直轄領と誤解されるかもしれない)ですし、そもそもこういう瑣末な点に配慮する前に、すべきことが他にあると思いますが。(^^;
 なお、初刷から引き継いでいる問題点としては;
・図中の「フランス領スーダン」は「フランス領西アフリカ」の間違い(「フランス領スーダン」とは現在のマリに相当)。また、アルジェリアは「フランス領西アフリカ」に含まれないし、今のチャド・ガボン・赤道アフリカも仏領コンゴ(現在のコンゴ共和国)と共に「フランス領赤道アフリカ」という別グループをなしていた。
・「西南アフリカ」は「南西アフリカ」とするのが普通。
・「ケープタウン植民地」は都市名「ケープタウン」のつもりだろう。
・アルジェリアとリビアとの国境線が1912年ごろのものとは違う(現在のものになっている)。
・ヴィクトリア湖などは描かれているのにチャド湖がない。
などを確認[まだあるかも (^^;]。



自己レスです。 Re:『地名の世界地図』第十三刷での「修正」について

松茸 (2002/01/30 02:33)

* p.187地図に関して追加:
 「(英領)スーダン」の範囲がおかしい(現在のケニヤ・ウガンダを含んでいる)。
……「まだあるかも」と予防線を張っておいたのですが、ほんとにありました。m(_ _)m

* 〈言葉〉関係の問題点:
p.79:
「ツァーリッツァ川(王女の意)[中略]ツァーリツィン(王女の町)」
……"царица"(tsaritsa)は「王女」ではなく「女王」(女性のツァーリ、あるいは男性ツァーリの妻)。
 アクセントの位置に気を取られて、肝心の意味の方を見落としてました。(^^;

p.84:
「スペインのカスティリーヤ(城塞)王国」
p.91:
「スペイン・カスティリーヤの女王イサベル」
……つづりは"Castilla." のばすなら「カスティーリヤ」(あるいは「カスティーリャ」「カスティーヤ」)とすべき。
http://www.m-w.com/cgi-bin/dictionary?va=Castilla
http://www.bartleby.com/65/ca/Castile.html

p.222下段〜p.223上段 メリーランド:
「イギリス国王チャールズ一世の王妃アンリエッタ・マリア Henrietta Maria の名にちなむ。」
……カナ表記の典拠が不明。確かに彼女はフランス生まれだが、(近代)フランス語なら「アンリエット・マリー Henriette Marie」だろう。



ウェールズ(地名の世界地図)

佐藤和美 (2002/01/31 12:20)

カバー折り返し
「ケルト人とアングロ・サクソン人が生き残りをかけて戦ったウェールズ地方は、なぜ「敵地」とよばれ、」

「生き残りをかけて戦った」?
ケルト人は負けたかもしれないけど、「生き残」らなかったわけじゃないですね。

P48
「そのなかでウェールズWalesとは、アングロ・サクソン時代からの地名でwealas(敵)、つまり敵地という意味だから、」

「スタンダード英語語源辞典」(大修館書店)にはこうあります。

Wales
「ウェールズ《Great Britain島南西部の地方、首都Cardiff》[古英語Wealas《複》「外国人」。ウェールズの住民はイギリス人から見て外国人であったことからこう呼んだのであろう。ベルギー南東部のワロン人Wallonも同源。]」

「敵」と「外国人」で、ずいぶん違いますねぇ。



フランス語のport(地名の世界地図)

佐藤和美 (2002/02/07 12:06)

P290
「ポートルイスPort Louis 一七一五年、フランス人、船長デュフレーヌ・ダルセルが、ポートPort「港」とルイ一四世のLouisにちなんで「ルイ王の港」と名づけた。」

フランス人だったらフランス語のはずだけど、「ポートPort」じゃ英語ですね。

P229
「ポルトープランスPort au Prince フランス語のポルトport「港」プランスprince「王子」で「王子の港」。」

じゃ「ポルトport」でいいのか?
(「ポルport」ですね。)



も?っとヘンだぞ、『地名の世界地図』

松茸 (2002/05/25 17:12)

 と学会会長=山本弘氏の掲示板;
http://8319.teacup.com/hiroshi15/bbs
での、5月22日づけの山本氏の書き込みです:
[前略]
|  青蛙さん、こんにちは。
|
| >『人名の世界地図』
| >『地名の世界地図』
|
|  やばっ、僕もすっかり信じてました(^^;)。「面白い本だよ」って、
| 人に推薦したりもしてたし……うわー、どうしよう。
|  科学やSFやアニメや特撮についてデタラメな解説をした本だっ
| たら、すぐに間違いに気がつくんだけど、歴史や言語学は僕の守備
| 範囲外です。だから、そうした本にもっともらしいことが書いてあっ
| たら、ついつい信じちゃいます。
|  うーん、トンデモ本に騙される人の心理が分かる気がするなあ。
  [適宜改行を補いました]
……ひろりんよ、お前もか!
 しかし、青蛙さまはいつもレスもらえていいなぁ……。

* 方向音痴ネタの追加(第十三刷より)
p.56:
「ラグビー発祥の地とされるバーミンガム南西の都市ラグビー Rugby。」
……「南東」あるいは「東」の間違い。

p.79:
「ウラル山脈の南にひとつの都市が建設された。そこは、王妃エカチェリーナ一世の名にちなんで、エカテリンブルグ Yekaterinburg (エカチェリーナの都市)と名づけられた[後略]」
……「東(側)」の間違い。『魏志』倭人伝か?

p.162:
「アフガニスタン、パキスタン、[中略]カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン。これら西南アジアの国々の「?スタン」は」
……パキスタンは「南アジア」、カザフスタンなどは「中央アジア」とするのが普通。

p.165 写真キャプション:
「1609年、オランダ西インド会社のハドソンが探検。」
……1609年には「オランダ*西*インド会社」はまだ存在しない(1621年免許、1623年創立)。
 また、ハドスンの第三次航海はオランダ*東*インド会社の依頼を受けて行なわれたものだが、本人が社員であったわけではない。



ペルシア(地名の世界地図)

佐藤和美 (2002/05/26 13:03)

>……ひろりんよ、お前もか!
山本さんほどの人でも信じちゃうなんて、『地名の世界地図』って、実はすごい本だったんですね。

「『地名の世界地図』批判PART1」は100キロバイトちょうどにまとめたので、PART2も100キロバイトちょっどにしようと思ってたんですが、息切れしてしまいました。

私も久しぶりにやってみましょう。
(松茸さんのネタとダブってるところがあるかもしれません。)

160ページからペルシア・イランのことが書いてあります。

「騎馬民族の国ペルシア」

ペルシアは「騎馬民族の国」だった?

「ペルシスの名の語源となったパールスparsには「馬に乗る人」という意味があるから、」

「pars」のスペルはあってるのか?。
「pars」に「馬に乗る人」という意味があるのか?

P161-162
「そこで、自分たちが中央アジアから南下し、やがてヨーロッパに広がっていったアーリア民族の一つであることをアイデンティティとするため、アリアナAriana(アーリア人)がペルシア語に転訛したイランIranを国名にしたのだった。サンスクリット語でaria,arya(高貴な、偉大な)という意味である。」

この文章はつっこむところがいろいろありそうです。

・印欧語族はどこから来たのか? 中央アジアから来たのか? どうもこの本の著者達はそう言いたいようですが。
・「中央アジアから南下し、やがてヨーロッパに広がっていった」って、どういうルートを考えてるのかな? 中央アジアからインド・イランあたりに南下し、そこからヨーロッパへ?
・「やがてヨーロッパに広がっていったアーリア民族の一つであることを」このアーリア民族の使い方は疑問ですね。
・「アリアナ」は何語だと言いたいのか?
・サンスクリット語「aria,arya」がペルシア語に入ったと言いたいのか? サンスクリット語とペルシア語が近縁な言葉なのを知らないのかな?
・「アリアナAriana」は「アーリア人」という意味か? 「Arian」(アーリア人)+「a」(地名接尾辞)だと思うが。

それにしても、これくらい気楽に文章書いてたら、1冊の本なんか簡単に書けちゃうんでしょうねぇ。



も〜っとヘンだぞ、『地名の世界地図』(一行知識風)

松茸 (2002/05/26 22:57)

 くだくだしいコメントなしでも楽しい(怖い)箇所をセレクトしてみました:

p.129:
「一二世紀半ば、チンギス・ハンがあらわれるまで」
p.130:
「一二世紀が終わる頃、モンゴルのなかからあらわれた指導者テムジン」

p.166:
「アメリカ大陸も、イギリスの支配下にあった。」

p.176:
「四六番目に独立した州オクラホマ」

p.190:
「アメリカ、アフリカ,アジア、ユーラシア、オーストラリアの、いわゆる五大陸」

p.237下段 ローヌ川:
「「流れの速い水の川」。ラテン語の古称ロダヌス川 Rhodanus に由来する。ロダヌスは、ケルト語の rho「速い」da「川、水」nus「川、水」からなる。」

p.270下段 パキスタン・イスラム共和国
「ウルドゥー語の pak「清らかな」とペルシア語の地名接尾辞 -stan でパキスタン(イスラム教徒のみの清らかな国)ともいわれる。」

p.271上段 マナーマ:
「アラビア語で「休職所」」




西南アジアとか

massangeana (2002/05/26 23:42)

>西南アジア
「西南アジア研究会」のページには:
 http://www.bun.kyoto-u.ac.jp/w-asia/soci.html#rule
 西南アジアとは西アジアおよび南アジアを指す。
とあるから, パキスタンも西南アジアでいいのでしょう。



こんなものも

青蛙 (2002/05/27 00:05)

松茸さん:
> * 方向音痴ネタの追加(第十三刷より)
まだまだ、叩けば幾らでもホコリが出てきますね。<『地名の世
界地図』

先日、コンビニで世界博学倶楽部・地図が10倍楽しくなる『「世
地名」なるほど雑学辞典――地域名・国名・都市名の由来にまつ
わるオモシロ知識』PHP研究所 (PHP文庫)・2002 を見かけ
ました。二匹目のどじょうを狙う『地名の世界地図』の便乗本で
すね。
著者は↑のように匿名ですし、参考文献も掲げられていないので
信用するのは極めて危ない。書かれていることも、どこかで見か
けたような記述がチラホラと。
興味がおありの方は、最寄のコンビニ・書店まで。『地名の世界
地図』との比較対照もまた一興かと。



中東の範囲(地名の世界地図)

佐藤和美 (2002/05/27 21:49)

38ページ
「さらに今日では、中東という言葉は、東はイランをも含めたイスラム諸国をさすために使われるようになったため、いまではエジプト、スーダンはもちろん、リビアから、イギリスよりも西にあるモロッコなど、北アフリカのすべてのイスラム地域をさすようになったのである。」

・イスラエルはイスラムじゃないから、中東じゃないのか?
・モロッコが中東?



も〜っとヘンだぞ! 『地名の世界地図』(その2)

松茸 (2002/05/31 03:32)

* 「西南アジア」
 いろんな定義があるようです。
http://jiten.www.infoseek.co.jp/Kokugo?pg=result_k.html&col=KO&qt=%A4%CB%A4%B7%A4%A2%A4%B8%A4%A2&sm=1
http://www3.johac.rofuku.go.jp/world/
 「とするのが*普通*」としたところを汲んで下さい。(^^;

* 『「世界地名」なるほど雑学辞典』
 既に買ってたりします。『地名の世界地図』と一字一句同じ文章が出てきたりして、なかなか*楽しい*本でした。
# 直接引用ではなく、同じネタ本を使ったための一致でしょう。

* ネタの追加です(引用は第十三刷より)
 すでにご存知かも知れませんが、ご容赦。
p.75:
「「サハリン」は、満州の人々が、アムール川(黒龍江)のことをサハリヤン・ウラ Sakhaliyan、「黒い川」とよんでいたのを」
p.76:
「中国語でアムール川を黒竜江というのは、古語「鯨川」に由来する。」
p.200:
「アムール川 Amur は「黒い川」」
p.251下段 アムール川:
「「川」。ツングース語のアマール amar「川」による。中国名ヘイロンチャン(黒龍江)は、満州語サハリエン「黒い」とウラ「江」が中国語化したもの。」
……コメント不能。(^^;
 本格的なマンチュー語の辞書は調べていませんが、以下のページ:
http://msnhomepages.talkcity.com/IvyHall/anzhu/manchu_s.htm
によれば、「黒い」の音写は「サハリヤン」の方がよさそう。

p.92 コロンブスの第一次航海に関して:
「イスパニオラ島でカニブという凶暴な人喰いの噂のある人びとの話を聞き、「カリブ」と名づけてしまった。当時、『東方見聞録』の影響はそれほど大きかったのだろう。ポルトガル人たちは、とにかく中国沖に到達したと思い込んでいたわけで」
……
1) 『東方見聞録』に「カリブ」が出てくるのか?
# 《チパングに食人慣習がある》といった記述はある。
 なお、コロンブスは、最初の航海の時点ではまだ『東方見聞録』を読んでいなかったともいう。
http://clinamen.ff.tku.ac.jp/Moss/Japan.html
http://clinamen.ff.tku.ac.jp/Moss/Colon_Marco.html
2) コロンブスはジェノヴァ生まれ、船団はスペインが派遣した。なぜ「ポルトガル人」が出てくるの?

p.129:
「その匈奴も前一世紀に後漢との攻防で南北に分裂し」
……「前一世紀」には後漢はまだ存在しない。
 ちなみに、初刷では「後一世紀には漢の武帝に敗れて南北に分裂し」でしたね。(^^;

p.166:
「コロニー colony[中略]その語源も、農民(coloni)を意味するラテン語にあるという。古代ローマ時代、ローマやその周辺地域が農地不足、労働力不足におちいり、食料の獲得に危機感をもったローマ人たちが、遠方の地に農民を送り、自らの支配下においたからである。」
……ラテン語"colonus"の複数主格"coloni"が"colony"に転化したと言いたいようだが、直接の語源は"colonia"からだろう。
 「労働力不足」なのに「遠方の地に農民を送」る余裕があったのか?



匈奴……(地名の世界地図)

佐藤和美 (2002/05/31 21:53)

1刷
「その匈奴も、後一世紀には漢の武帝に敗れて南北に分裂し、」

去年、私は「漢の武帝は後一世紀の人ではない」って指摘しました。

8刷
「その匈奴も、前一世紀には漢の武帝に敗れて南北に分裂し、」

そのちょっと後、高校世界史の勉強したんですが、その本にはこう書いてありました。

『詳説世界史』(山川出版社)
「匈奴の圧迫をうけた漢では高祖が匈奴に敗れて和親策をとったが前2世紀後半には武帝が反撃にでて、匈奴を北にしりぞけ、西域にも進出した。このため匈奴は内陸貿易の利を失っておとろえ、前1世紀なかごろ東西に分裂した。匈奴が中国文化の影響をうけ鉄器時代に入ったのは、このころからである。東匈奴は漢と結んで西匈奴をカザフ草原に破った。
 こうして1世紀なかごろ、匈奴は南北に分裂し、南匈奴は後漢にしたがい、一部は長城付近で農耕生活に入った。北匈奴は1世紀末に後漢の攻撃をうけ、一部はイリ地方からカザフ草原をへて西進した。」

この部分を文春に見せました。

で、現在は、
「その匈奴も前一世紀に後漢との攻防で南北に分裂し、」

でも、
・「前1世紀なかごろ東西に分裂」
・「1世紀なかごろ、匈奴は南北に分裂」
この本の著者は一体どっちのことを書きたいんだろう?



こんなにヘンだぞ!『地名の世界地図』ドッカ〜ン!

松茸 (2002/06/08 21:02)

 引用は第十三刷からです。

p.160:
(アケメネス朝ペルシアは)「ギリシアとは、エジプトを通じて、それも紅海とナイル川を結ぶ運河を開いて交易をおこなっていた。」
……小アジア・メソポタミア経由の交易はなかったの?

p.160:
(同じくアケメネス朝が)「前四八〇年、サラミスの海戦でアテナイに敗れたため」
……アテナイ勢が主力ではあったものの、戦ったのはギリシア諸国の連合部隊である。
# 第一次ペルシア戦争の「マラトンの会戦」と混同?

p.241上段 ザグレブ:
「ハンガリー語の接頭辞ザ za「後ろの」とグレブル grebl「堀」で、「堀の後ろの町」。」
……「za「後ろの」」は*スラヴ語*(クロアチア語含む)の前置詞ではないか?
 (語源解釈を認めたとしても)「堀の内」と訳すべきだろう。

p.250下段 ルクセンブルク大公国:
「自称はリュクサンブール。」
……ルクセンブルクには公用語が三つ(いわゆる「ルクセンブルク語」・フランス語・ドイツ語)あるが、「自称」としてはルクセンブルク語での呼称「レッツェブルク」を挙げるべき。
http://www.bartleby.com/65/lu/Luxembou.html

p.262上段 イエメン共和国:
「自称はヤマン yaman。これはアラビア語で「右側」を意味する。メッカのカーバ神殿に向かって右側、すなわち南の沙漠地帯を古くはヤマンとよんでいたため。」
……どこから見て「向かって右側」?
 なお;
http://www.bartleby.com/61/roots/S404.html
によれば、ヘブライ語"yamin"にも「右」「南」の意がある由で、「カーバ神殿」云々はコジツケと思われる。
# 詳しい方、フォローいただければ幸いです。



リヒテンシュタイン(地名の世界地図)

佐藤和美 (2002/06/09 16:31)

250ページ
「リヒテンシュタイン公国 Principality of Liechtenstein
 一七一九年、神聖ローマ帝国の皇帝が、ハプスブルグ家の貴族リヒテンシュタイン公にこの領地を与えたのが国の起源。リヒテンシュタインは、ドイツ語で「輝ける城壁」。」
「[首都]ファドゥーツ Vaduz ラテン語のvadus「谷、底」に由来する。ライン川沿岸の谷間の町だったため、そう名づけられた。」

「輝ける城壁」ってなんかいかがわしい訳ですね。
どんな城壁なんだ?
「現代独和辞典」(三修社)からです。
liechten 該当なし。
lichten 1.2 明るくする。 2.1 (空が)明るくなる、晴れてくる
steinに「城壁」という意味は見当たらない。
「liechten」を「輝ける」なんて訳していいの?

http://www.britannica.co.jp/search/item?m=0+1+0&rgid=126606004691
「1719年にシェレンベルクとファドゥーツの2貴族領がリヒテンシュタイン家のもとに統一され,」

「一七一九年、神聖ローマ帝国の皇帝が、ハプスブルグ家の貴族リヒテンシュタイン公にこの領地を与えたのが国の起源」

ずいぶん違いのある文章ですね。

「ライン川沿岸の谷間の町だったため、そう名づけられた」
これもなにを言いたいのか、どうもよくわからないですね。
そもそもファドゥーツは谷間の町なのか? (じゃないようですね。)

「研究社羅和辞典」から。
vadus
=vadum

vadum
1 浅瀬;浅い水、浅い海。 2 (大洋・河川の)底。

「谷、底」っていう訳でいいの?



民族の世界地図

佐藤和美 (2002/08/10 10:55)

久しぶりに21世紀研究会の本、読んでるところです。
『民族の世界地図』16刷(文春新書)

とりあえず言葉ネタを10コほど。

P7
「メキシコ大使館観光省」

メキシコ大使館には観光省がある?

P29
「諺文(おんぶん)」

「オンモン」でしょう。

P33
「韓国民」

「韓国国民」でしょうね。

P40
「ちなみに「ラテン語」は、古代ローマ帝国の共通語で、中世、ローマ教会によるキリスト教の布教とともにヨーロッパに広まった言語のことだ。」

「中世、ローマ教会によるキリスト教の布教とともにヨーロッパに広まった」だって。
そうするとローマ教会はルーマニアにルーマニア正教布教に行ったのかな。(笑)

P44
「アメリンド(先住民族)語族」

そんな語族あるのか?

P59
「漢字とそれから生まれた仮名文字、そして一五世紀に創案された世界でもっとも効率的な表音文字ハングルだけが、古代の近東に発祥したアルファベットの表記体系とは、別に存在しているのである。」

「だけが」と言われるとちょっとね。
とりあえず「トンパ文字」。

P91
「ミャンマーはバラモン教の最高原理「清浄」に由来するといわれる。」

同じ著者の『地名の世界地図』14刷 P273にはこうあります。
「ビルマ語でミャンマー myanma「強い人」。サンスクリット語のムランマ mranma「強い」に由来する。」

P93
「ちなみにタミル語は、言語学者の大野晋氏が日本語の起源との説を唱えている。」

大野晋は言語学者じゃないだろ。
「タミル語は、日本語の起源」ってヘンな言い方。

P98
「印欧(インド・ヨーロッパ)語族とは、(中略)おそらく中央アジアを故郷にもつとされるその人々は、欧米人に代表されるコーカソイドの祖と考えられ、」

印欧語族の源境は中央アジアに決まり?
人種と語族がごっちゃまぜ。

P98
「ペルシアから改名したイランの国名には「高貴なアーリア人」の意味があり、」

「高貴なアーリア人」っていったい?
「アーリア」の意味は『地名の世界地図』14刷 P162にはこうあるが。
「サンスクリット語で aria,arya(高貴な・偉大な)という意味である。」



帰ってきた『地名の世界地図』(第一話)

松茸 (2002/08/18 00:31)

 『民族の〜』は、入手はしていますがツンドクなので……。(^^;

p.82(以下すべて第十三刷より。最新刷では直ってるかも):
「スターリン山(共産主義峰)→ イスマイル・サマディ山(聖イシュマルの山)[タジキスタン]」
p.213上図:
「イスマイル・サマディ山」
p.214:
「イスマイル・サマディ山 Ismail Samadi (聖なるイシュマエルの山)」
……最近ようやく(^^;気づいたんですが、これは「イスマ(ー)イ(ー)ル・サ(ー)マ(ー)ニ(ー)」の間違い。サーマーン朝の君主の名にちなんだものだそうです:
http://members.tripod.com/~khorasan/Miscellaneous/Pamir.htm
 「サーマーン」に「聖なる」といった意味があるかは未調査ですが、仮にそうだとしても、人名を意訳するのはおかしいですね。

・その他小ネタ
p.264上段 インドネシア共和国:
「ギリシア語の Indos「インド」と nesos「島々」からなる。」
p.297上段 ミクロネシア連邦:
「ギリシア語のミクロ mikro「極小」[ママ]とネソス nesos「島々」に地名接尾辞がつけられたもの。」
……"nesos"は単数の「島」。
http://www.perseus.tufts.edu/cgi-bin/lexindex?entry=nh%3Dsos

p.272上段 ベトナム社会主義共和国:
「一八世紀末に安南国のグエン・ホック[ママ]・アイン帝が越南にしたといわれている。ちなみに「安南」とは、八世紀頃に中国の支配下におかれ、[中略]アンナン「南は安し→安南」とよばれた。一九四五年に、ベトナム。[以上]」
……
1) グエン・フック・アイン(阮福映)が即位したのは1802年:
http://www.nguyen-trong.com/histoire/dynastie_nguyen.htm
2) 漢文文法からも、一時「鎮南」とされたことから見ても、「南を安んず」とすべきだろう。
3) 1945年9月、ホー・チ・ミンらが「ヴェトナム民主共和国」独立を宣言しているが、旧宗主国フランスが直ちに認めたわけでないのは周知の通り。



「〜の世界地図」相互比較

佐藤和美 (2002/08/18 12:48)

『民族の世界地図』、一応読み終わりました。
で、気がついたんですが、「〜の世界地図」を相互比較したらどうなるんだろうということです。

比較には以下を使用。
『民族の世界地図』16刷
『地名の世界地図』14刷
『人名の世界地図』1刷

ミャンマー

『民族の世界地図』P91
「ミャンマーはバラモン教の最高原理「清浄」に由来するといわれる。」

『地名の世界地図』P273
「ビルマ語でミャンマー myanma「強い人」。サンスクリット語のムランマ mranma「強い」に由来する。」


ベドウィン

『民族の世界地図』P108
「「ベドウィン」という言葉も、「町ではないところに住む人」という意味のバドウという語のフランス語訛だといわれている。」

『地名の世界地図』P267
「シリア沙漠はアラビア語では、バーディア「草地性の沙漠」とよばれ、そこに住む遊牧民は「バダウィ」、のちにこれが訛って「ベドウィン」という名称が生まれたという。」


アルメニア

『民族の世界地図』P183
「アルメニアとは、古(いにしえ)の族長アラムの名に由来する。」

『地名の世界地図』P252
「もともとアルメニア人はハイ族といい、伝説では、前一九世紀頃、カスピ海南沿岸に住んでいた。このなかから、英雄アルメネケArmenakeが一族を率いて独立し、アルメニア族を名乗ったといわれている。」


オハラ

『民族の世界地図』P238-239
「『風とともに去りぬ』のスカーレット・オハラの「オハラ」は「賢明なアイルランド人の末裔」という意味がある。」

『人名の世界地図』P278
「オハラO'Hara(姓)「ハラ」の息子。ハラは「苦い、鋭い」という意味。」


サンボ

『民族の世界地図』P241
「黒人に対する侮蔑語サンボ(ザンボという奴隷制時代、黒人の出身地として有名だったザンビアに由来)」

『人名の世界地図』P271
「この言葉のもともとの由来は、スペインが植民地としていた西アフリカ地方にあると考えられている。それは、セネガル・フラニ語のサンボSambo(叔父さん)、北ナイジェリア・ハウサ語のサンボSambo(二番目の息子につける名前)、そしてコンゴ語のンザブNzambu(サル)にあるのではないかと考えられている。これらはいずれも、黒人たちが使っていた言葉だった。
 しかし「サンボ」のルーツについては諸説があり、決定的なものがまだないというのが正直なところである。」


これだけでも、どういう本かわかっちゃいますね。
弁解の余地はないですね。

何ヵ月後かには、「『民族の世界地図』批判」UPしたいなと思ってます。



日付変更線

佐藤和美 (2002/08/18 20:20)

『地名の世界地図』P293
キリバス共和国
「各島が赤道、日付変更線にまたがって散在している珍しい環境にある。」

http://www.polepole-isl.com/islanders/traveler/endo/xmas_03/top.html
キリバス共和国は赤道付近に東西4,000km、南北に2,000kmの広大な海の領土を持っている。その間を日付変更線が横切っているのだが、国の中で日付が変わるのは不便だと言うことで、領土にそって日付変更線を大きく迂回させる決定を5年程前に行った。

いやー、一冊の本を書くというのは、なかなか難しいですね。
21世紀研究会は、そういうこと、わかってるのかな?



iroiroto

青蛙 (2002/08/19 01:28)

松茸さん、お久し振りです。
『地名の世界地図』へのツッコミご苦労様です。

【イスマイル・サマディ山】
「聖なるイシュマエルの山」はまだしも、「聖イシュマルの山」
なんてことは絶対にあり得ません。「聖〇〇」というのはキリス
ト教における聖人のことですから。キリスト教と対立しているイ
スラム教徒がそんな表現をするはずがないですよね。
…って、「イスマ(ー)イ(ー)ル・サ(ー)マ(ー)ニ(ー)」の誤り
とは(^^;

>  「サーマーン」に「聖なる」といった意味があるかは未調査ですが、仮にそうだとしても、人名を意訳するのはおかしいですね。
「サーマーン朝の君主の名にちなんだもの」という松茸さんのご
説明からすると、「サーマーニー」は「サーマーン」のニスバ
(関連形容詞)かと思われます。関連形容詞というのは、英語の
名詞 Japan に対する形容詞 Japanese のようなものです。と
すれば「サーマーンの(王)イスマイルの峰」という意味になる
でしょうか。

【ミクロネシア連邦】
> ギリシア語のミクロ mikro「極小」
英語の形容詞 マイクロゥ micro(極小の、もちろんギリシア語源)
と勘違いしてません。ギリシア語の形容詞 mikros,-on,-a はただ
「小さい」という意味しかないのに。
> ネソス nesos「島々」
「島々」なら複数形 nesoi(ネーソイ)ですか。


佐藤さん:
連中、全然反省していないようですね。
> 何ヵ月後かには、「『民族の世界地図』批判」UPしたいなと思ってます。
楽しみにしてます。




帰ってきた『地名の世界地図』(第二話)

松茸 (2002/08/20 03:19)

->佐藤さま:
“おかしな説明を書く→専門家からクレーム→次の著作/増刷分にそれを反映(丸写し?)”
というケースもあると思われます(「千島」の例もあるし)。

> いやー、一冊の本を書くというのは、なかなか難しいですね。
……同感です(自戒を込めて)。
 同様に、p.217上段には;
「二〇〇〇年三月の時点で、[中略]国連加盟国はツバル、バチカン市国、スイス連邦の三国を除き、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を加えた一八八カ国。」
とありますが、時点を明示しているので〈誤り〉ではないものの、ツバルは2000年9月――『地名〜』出版以前――に国連に加盟しています。
# 来月(2002年9月)にはスイスも加盟しますね。新刷にどう反映される(されない)か、楽しみ。(^^;

->青蛙さま:
> > ギリシア語のミクロ mikro「極小」
> 英語の形容詞 マイクロゥ micro(極小の、もちろんギリシア語源)
> と勘違いしてません。ギリシア語の形容詞 mikros,-on,-a はただ
> 「小さい」という意味しかないのに。
……[ママ]としたところを汲んでください。(^^;
 むしろ「インド」のほうが問題で、ギリシア語"Indos"は地名ではなく「(一人の)インド人(男性)」の意味ですね:
http://www.perseus.tufts.edu/cgi-bin/ptext?doc=Perseus%3Atext%3A1999.04.0057%3Aentry%3D%2350513
 ちなみに、p.134で:
「インドとヨーロッパの最初の出会いは、前三二五年[ママ]、ペルシアを越えてやってきたアレクサンドロス大王のギリシア軍がインダス川に到達したときだった。大王はサンスクリット語で「川」をあらわすヒンドゥ hindu[ママ]にちなんで、その川をインダス Indus と名づけた。その命名によって、この地方がインド Indo とよばれるようになったのだ。」
としていますが、アレクサンドロス大王の約百年前に著されたヘロドトスの『歴史』にも"Indos"が使われています。

* 小ネタ追加
p.142:
「アブラハムにはサライという妻があったが」
……「サラ」とすべき。どうしても「サライ」にしたければ夫の方も「アブラム」になる。

p.212:
「この山が、ゴドウィン・オースチン山 Godwin-Austin [ママ]とよばれるのは、[中略]イギリスの探検家オースチンの名による。」
……この人、実は「ゴドウィン=オースチン」全体が姓。
http://www.bartleby.com/65/go/GodwinAH.html

p.232下段 ブエノスアイレス:
「船乗り達が守護神マリアに」
……またまた「守護神」。見落としてました。m(_ _)m



イワン

佐藤和美 (2002/08/21 13:53)

チョー・カメレス。

「またまた『地名の世界地図』」松茸さん 2001/06/24 wrote
>p.196
> 「イワノボ(ロシア)「イワン大帝の町」。」
>……「イワン大帝」って誰? 「イワン雷帝」なら有名ですが。

イワン3世が大帝で、イワン4世が雷帝のようですね。
ただ「イワノボ」がどっちのイワンに由来するのかはわかりませんが。

イワン3世
http://www.britannica.co.jp/search/item?m=0+1+0&rgid=009278004523
イワン4世
http://www.britannica.co.jp/search/item?m=0+1+0&rgid=009282009872



帰ってきた『地名の世界地図』(第三話)

松茸 (2002/08/23 13:12)

* 「イワン大帝」
 あわてて参考書を確認したところ、イヴァン三世は"Иван Великий"(英訳は"Ivan the Great")と確かに呼ばれていますが、この人は正式には「ツァーリ」を名乗らなかった(ルーシの君主ではじめて「ツァーリ」を公式の称号にしたのはイヴァン四世)ので、「大*帝*」とはいえない、ということらしいです。
# ではなんと呼ぶべきか? (^^;

PS.イヴァノヴォについてのページを発見:
http://www.museum.ru/museum/Ivanovo/ivnv1_I.htm
| Ivanovo is first mentioned in the chronicles in 1561.
[snip]
| The village was in possession of tsar Ivan Grozny (the Terrible).
……イヴァン三世とは関係が薄そうです。
# 「イワン雷帝の町」といえるかはまた別の問題ですが。

* ネタ追加
p.86:
「ポルトガル人は、さらに南への航海を続けた。それと同時にアフリカ西海岸沿いに北上してくる海流や風から逃れて帰還する航路探しに躍起になった。」
[強調は引用者による]
……文脈上、この「アフリカ西海岸」とはギニア湾以北らしいが、ここでは「海流や風」は南下している。

p.208:
「古代史のなかで、もっとも沙漠にかかわった人びとはイスラエル人だろう。
 「旧約聖書」にあるように、エジプトから脱出して約束の土地をめざした契約の民は、モーゼとともにシナイ半島の荒地からネゲブ沙漠に迷い込み、四十年もの間、彷徨い続けることになった。まずそのシナイは、古代メソポタミア語のシン shin (月)に由来する。[後略]」
……
1) 「古代史のなかで」「沙漠にかかわった人びと」はいくらでもあるのに、たった「四十年」さまよっただけ(^^;のイスラエル人を「もっとも沙漠にかかわった」とするのはなぜか。
2) 「古代メソポタミア語」とは何か? 「古代メソポタミア」で用いられた主要な(文字)言語として、シュメール語と「アッカド語」(アッシリア語とバビロニア語)という、系統的に全く異なるものがあったことは、常識だろう。
3) バビロニアの月の神「シン」は"Sin"である。
http://dictionary.goo.ne.jp/cgi-bin/dict_search.cgi?MT=%A5%B7%A5%F3&search=%B8%A1%A1%A1%BA%F7&sw=2



イワノヴォについて

楡ノ家楠丸 (2002/08/24 09:09)

イワノヴォ (Иваново) について、文法的な説明を少々。
 ロシア語では所有関係を表すのに 「生格」 という格を使います。これは、英語の所有格、ドイツ語の2格と同等のもので、ドイツ語同様に所有する対象の名詞のあとに置きます。
 そのいっぽうで、使われることは稀ですが、名詞・固有名詞からは 「〜の」 という意味を持つ 「物主形容詞」 というものをつくることができます。大雑把に言うと、語尾に、男性名詞なら -ov を、女性名詞なら -a を -in に変えることでできます。ロシア人の姓の大半を占める、-ov, -in に終わるものは、まさしくこれです。
 イワノヴォ (イヴァーナヴァのほうが原音に近い) は、イワン4世(雷帝)が、妻の弟に下賜した土地ということで、そのことを銘記するために、「イワンのもの」 を意味する、名詞化した物主形容詞 Ivanovo の名をつけたのだと思います。Ivanovo は Ivanov という物主形容詞の中性形ですが、これはイワノヴォがもともと 「村」 だったからです。村はロシア語で selo (село) という中性名詞なので、地名も中性なのです。ロシア語では、しばしば、省略されている名詞の性が、名詞化された形容詞の性を決定することがあります。



人名の世界地図

佐藤和美 (2002/08/24 18:55)

『人名の世界地図』は1刷しか持ってなかったんですが、本屋で11刷を見つけたんで買ってしまいました。
この掲示板で書き込んだこと、けっこう直ってますね。
柳田理科雄と違ってちゃんと修正してますね。
21世紀研究会はエライですね。(笑)

1刷「ちなみに、ラッセルの正式な名称は、バートランド・アーサー・ウィリアム三世・アール・ラッセル Bertrand Arthur William 3rd Earl Russel である。」

11刷「ちなみに、ラッセルの正式な名称は、Bertrand Arthur William 3rd Earl Russell である。」

こういう変更も経過を知ってないと意味がわかりませんね。

ということで、

ブロンテ三姉妹の長女は誰?
エラリー・クイーンの二人の本名は?
モーセは口に割礼してた?

さあ、行ってみましょう!!

『人名の世界地図』批判 Ver.0.90

(Ver.1.00って言えるほどの内容じゃないもんで、Ver.0.90ってしました。)



(無題)

いばら (2002/08/26 02:58)

佐藤さん、お久しぶりです。
『人名の世界地図』批判、拝読しましたがひとつ気になったことがありまして。

P150
11刷「ウォルト・ディズニーの本名ウォルター・イライラス・ディズニー
Walter Elias Disneyは、…(中略)…ディズニーという姓はフランスの
カルヴァドス県のイズグニー(イジーナの地所)出身という意味だからだ。」

はて、なぜ「イズグニー出身」が「ディズニー」なのかな?とちょっと疑問に思ったのですが、
もしかしてこのイズグニーってIsignyのことなのではと思います。
だとしたら発音は「イズニー」になります。
フランス語のgnはnの右に長いしっぽの付いたような発音記号で表される音ですので。
イズニー出身の(d'Isigny)で発音はディズニー。これならなるほど、と思うのですが。
執筆した方は自分で書いていて「?」と思わなかったのでしょうか…



ディズニー

佐藤和美 (2002/08/27 16:54)

いばらさん、情報ありがとうございます。
次回のバージョンアップのときに、参考にさせていただきたいと思います。



しつこく「世界地図」

佐藤和美 (2002/09/05 13:02)

会社の帰りにJR上野駅の中にある本屋によくよるんですが、
『民族の〜』、『常識の〜』、『イスラームの〜』がヒラヅミになってて、
『地名の〜』、『人名の〜』は見あたらない。
これって、なにか意味があるんだろうか?
『地名の〜』、『人名の〜』をみんなが気がつかないうちに絶版にしようとしてるとか。
考えすぎかな?


『民族の世界地図』P55
「ヘブライ語は、実際には、学者や聖職者によって細々と継承されていた。だが、少なくとも話し言葉としては、二千年近く忘れ去られていたのだから、やはり奇跡の復活といってもよいだろう。」

と書いておきながら、

同 P226-227
「ユダヤ人にはヘブライ語という共通の言語があったために、どこに行っても不自由がなく、それが成功につながったというわけだ。」

と平然と書いてしまう神経が信じられない。


『民族の世界地図』P234
「アルファベットの起源とされるフェニキア文字」

同じ本のP57の図「文字の伝播経路」では「古代エジプト」→「シナイ」→「カナ−ン」→「フェニキア」っていうルートになってるけど、それで「起源」なんて言葉、使っちゃっていいの?
この「アルファベット」は「ラテン文字」の意味で使ってるのかな?


『民族の世界地図』P284
「ホメイニ師は当初、国王によって追放され、トルコ、イラク、そしてフランスに亡命しており、イスラム暦で一四〇〇年にあたる西暦一九七九年に帰国した。」

『イスラームの世界地図』P116
「そして、アラブ、イスラーム世界にとって新しい百年のはじまりである一九七九年を迎える。」

「一四〇〇年」が「新しい百年のはじまり」か?

それとそれ以前に、『イスラームの世界地図』29ページにグレゴリオ暦とイスラーム暦の対応表があるんですが、それによれば、ホメイニ師の帰国したのはイスラーム暦の一三九九年みたいですけどね。


この著者達の書くものは矛盾だらけですね。



『民族の世界地図』批判

佐藤和美 (2003/01/13 16:25)

『民族の世界地図』批判 Ver.1.00」を追加しました。



も一つ

青蛙 (2003/02/03 00:04)

最近では、ヨーロッパ人名などのキリル文字表記の話題がとても面白いです。
日本における外国語のカタカナ表記に通じるところがあって興味深いです。
佐藤さん、大変でしょうけど独立したページ・コンテンツにしてみてはいか
がでしょうか。

先日、思いがけずに『地名の世界地図』の初刷をゲットできました。『人名の
世界地図』の初刷もみつけたのですが、いざ購入しようとしたら、既になくな
っていました。いえ、売れたんではありません。そこの本屋、新書の既刊分を
撤去して最新刊しか置かなくなったためです。T〇TAYAのバカヤロー!!
ところで、これらの最新版は、佐藤さんの「『民族の世界地図』批判 Ver.1.00」
にあるように、
・『地名の世界地図』……14刷(2001.12.10)
・『人名の世界地図』……11刷(2002.1.20)
というところでしょうか。増刷も既に頭打ちのようですから、そろそろこの辺
で手を打っておきましょうか(田舎ではなかなか最新刷が出回りません)、絶
版になる前に。真・改訂版は出そうもありませんし。それにしても、文春には
随分と奉公したこと。



民族の世界地図

佐藤和美 (2003/08/15 17:05)

「言葉の世界」以外で初めて「○○の世界地図」を批判してるページをみつけました。
『民族の世界地図』の韓国・朝鮮関連の批判が掲載されています。

間違いの多い本
http://www.asahi-net.or.jp/~fv2t-tjmt/daisanjuunanadai



地名の世界地図

佐藤和美 (2003/08/16 13:26)

松茸さん
>久しぶりに『地名の世界地図』ネタの作業をしているのですが、

こちらも、7月末に「空想科学研究室」(http://freebbs.around.ne.jp/article/w/wnova/)で青蛙さんの書き込みをみかけて、久しぶりに作業を再開しました。
とりあえずはページの統廃合といままでの変更点を追加しようかなと考えてます。

129ページ
1刷「その匈奴も、後一世紀には漢の武帝に敗れて南北に分裂し、北匈奴は後漢に滅ぼされ、」
8刷「その匈奴も、前一世紀には漢の武帝に敗れて南北に分裂し、北匈奴は後漢に滅ぼされ、」
14刷「その匈奴も、前一世紀に後漢との攻防で南北に分裂し、南匈奴は後漢に降伏、」

「後一世紀には漢の武帝」とか、「前一世紀に後漢」とか、なかなか楽しいですね。

33ページ、「アーヘン」のスペルがいつのまにか、「Archen」から「Aachen」に修正されてるとかも、まとめておくことにしましょう。



地名の世界地図

佐藤和美 (2003/08/27 10:08)

『地名の世界地図』関連の統廃合を行ないました。
『地名の世界地図』批判 Ver.2.00
↑これに一本化します。
今までの内容に若干のプラスアルファを行なっています。



『地名の世界地図』ネタ追加

松茸 (2003/08/28 23:26)

 第十三刷を使用しました。最新刷では直っているかもしれませんが、ご容赦。

p.21:
「トロイア Troia は、ギリシア人が[中略]名づけたものだ。現在ではベルガマ Bergama とよばれるこの町の郊外には」
……トロイア遺跡からベルガマまでは直線距離で100km以上ある。

p.82:
「クイビシェフ(国家計画委員会委員長)→サマラクイビシェフカ→スボボドヌイ」
……旧「クイビシェフ」は現在「サマラ」。「サマラ-クイビシェフカ」と称した事実は確認できず。「スヴォボドヌィ」に至っては絶句(宇宙基地と間違えている?)。

p.96:
「現在のアメリカにあるプエルト・リコ」
……現在のプエルト・リコはアメリカ合衆国の一部(自治領)なので、間違いではないが……。

p.104:
「オランダ人[中略]はオーストラリアの西岸に上陸し、そこをニューオランダと名づけた。」
……「ニューオランダ」とは何語?
# 「ニュー」も「オランダ」も日本語の形態素とはいえるが
# 地名の訳語に使うのは慣用に反するのでは?

p.104:
「オランダ南部の町ゼーランド Zeeland (海の地)にちなんで、ニューゼーランド Nieuw Zeeland と名づけた。」
……ゼーラントは「町」ではなく「地方」である。
 やかましく言えば、オランダ語の音写は「ニーウ・ゼーラント」だろう。

p.104:
「一八世紀半ばには、大陸の名も古代の伝説の地名を復活させてオーストラリアになった」
p.292下段 オーストラリア:
「一八〇一年に地図を製作していた英国人マティウ・フリンダースがこの名[=オーストラリア。引用者註]をイギリス海軍省に提案した。」
……「一八世紀半ば」に「復活」した名を、改めて「一八〇一年」に提案したのか?
 英語の男性名"Matthew"は「マシュー」だろう。

p.118:
「金剛山[中略]最高峰の毘廬峰」
……漢字表記は「毘盧峰」ではないか?

p.127:
「内モンゴル自治区のフホホトは、[中略]明代に漢族に征服され「帰化城{クイホア}」と改名されて中国に組み込まれた。」
……そのような事実はない。
# アルタンハンの時代は、いわゆる「北虜南倭」で、明は守勢に立っていたはず。
http://www.geocities.co.jp/CollegeLife/2887/altan.html

(続く)



『地名の世界地図』ネタ追加 (2)

松茸 (2003/08/28 23:27)

p.243上段 ブラチスラバ:
「十世紀のボヘミア王ブラチスラウスの名にちなむ。[中略]一六世紀半ば〜一八世紀、オスマン・トルコ帝国の支配下にあったとき、代理首都として繁栄。」
……「十世紀の」ヴラティスラフ一世は、「ボヘミア公」であって「ボヘミア王」ではない。
http://www-personal.umich.edu/~imladjov/BohemianRulers.htm
 また、ブラティスラヴァがオスマン帝国に支配されたことはない。「一六世紀半ばにブダペストがオスマン帝国に支配されてから、一八世紀末まで、ハンガリー王国の代理首都として繁栄」のつもりだろう。

p.248上段 マケドニア Republic of Macedonia:
……正式国名は「マケドニア旧ユーゴ(ー)スラヴィア共和国」(Former Yugoslav Republic of Macedonia) である:
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/macedonia/kankei.html

p.263下段 インド:
「大叙事詩『マハー・バーラタ(偉大なるバーラタ王)』」
……切らずに『マハーバーラタ』とするのが普通。
 「バーラタ王」ではなく「バーラタ族」ではないか?

p.280上段 ヤウンデ Yaounde:
「現地の言葉エフォンド語で「落花生」。」
……アクサンテギュを使って"Yaounde´"とすべきだろう。
 「エフォンド語」は「エウォンド語(Ewondo 他異綴り多し)」の誤記か?

p.281下段 ヤムスクロ:
「初代大統領ウウェ・ボワニ大統領の伯母が住んでいたので、ヤムスクロ「伯母の村」とよばれ、それがそのまま地名になった。」
……"Houphoue:t-Boigny"(:は分音記号の代用)のカナ表記は「ウフエ=ボワニ」だろう。
 「大統領」が重複している。
http://mapage.cybercable.fr/afy/Histoire/genese.htm
によれば、"Yamoussou"は、ウフエ=ボアニの*大おば*の実名である。

* 質問です:
p.164:
「カザフスタン[中略]などは、もともとは「〜スタン」という接尾辞をもっていたのである。
 しかし[中略]アフガニスタン、パキスタンといったイスラム教徒の国があったため、ソビエトは[中略]あえて「スタン」を省略させ、カザフ共和国、ウズベク共和国とさせたのである。」
……旧ソ連では(建前上は)ロシア語が連邦の単一公用語だったわけではないので、各共和国の民族語での公式自称がどうだったかを言わないと意味がないはずですが、当時の資料はちょっと調べがつきません。
 詳しい方、ご教示願います。m(_ _)m

 あ、それから、「米領バージン諸島」は元デンマーク領でいいみたいです。(^^;
http://www.vinow.com/general_usvi/history/index.php



中央アジアの〜スタンについて1

にれのや (2003/08/29 03:14)

【стан について】
■松茸さま。以下にソ連邦時代の15共和国の 「正式名称」 と 「口語の略称」 をあげてみます。
各項目の構成は
(0) 日本語の正式名称
  ロシア語の正式名称
   その国の主要民族の民族名の形容詞
→日本語の口語略称  ロシア語の口語略称

【Aグループ】
(1) ロシア・ソヴィエト連邦社会主義共和国
  Российская СФСР
   русский (Российский は 「ロシアの」)
→ ロシア Россия [ラッ 'シーヤ]
(2) エストニア・ソヴィエト社会主義共和国
  Эстонская ССР
   эстонский エストニア人の
→エストニア Эстония [エス 'トーニヤ]
(3) ラトヴィア・ソヴィエト社会主義共和国
  Латвийская ССР
   латвийский ラトヴィア人の
→ラトヴィア Латвия [ 'らートヴィヤ]
(4) リトアニア・ソヴィエト社会主義共和国
  Литовская ССР
   литовский リトアニア人の
→リトアニア Литва [りト 'ヴァー]
(5) ベロルシア・ソヴィエト社会主義共和国
  Белорусская ССР
   белорусский ベロルシア人の
→ベロルシア (白ロシア) Белоруссия [ビェら 'ルッシヤ]
(6) ウクライナ・ソヴィエト社会主義共和国
  Украинская ССР
   украинский ウクライナ人の
→ウクライナ Украина [ウクラ 'イーナ]
(7) モルダヴィア・ソヴィエト社会主義共和国
  Молдавская ССР
   молдаванский モルダヴィア人の
→モルダヴィア Молдавия [マる 'ダーヴィヤ]
(8) グルジア・ソヴィエト社会主義共和国
  Грузинская ССР
   грузинский グルジア人の
→グルジア Грузия [グ 'ルージヤ]
(9) アルメニア・ソヴィエト社会主義共和国
  Армянская ССР
   армянский アルメニア人の
→アルメニア Армения [アル 'ミェーニヤ]
●日本語国名=ロシア語口語国名
●ロシア語口語国名≒民族名+ия



中央アジアの〜スタンについて2

にれのや (2003/08/29 03:15)

【Bグループ】
(10) アゼルバイジャン・ソヴィエト社会主義共和国
  Азербайджанская ССР
   азербайджанский アゼルバイジャン人の
→アゼルバイジャン Азербайджан [アジェルバイッ 'ぢゃヌ]
→(アゼルバイジャニヤ) Азербайджания [?]
●日本語国名≒ロシア語口語国名
●ロシア語口語国名=民族名、もしくは民族名+ия

【Cグループ】
(11) カザフ・ソヴィエト社会主義共和国
  Казахская ССР
   казахский カザフ人の
→カザフ φ
→カザフスタン Казахстан [カザふス 'タヌ]
→(カザヒヤ) Казахия [?]
(12) ウズベク・ソヴィエト社会主義共和国
  Узбекская ССР
   узбекский ウズベク人の
→ウズベク φ
→ウズベキスタン Узбекистан [ウズビェキス 'タヌ]
→(ウズベキヤ) Узбекия [?]
(13) トルクメン・ソヴィエト社会主義共和国
  Туркменская ССР
   туркменский トルクメン人の
→トルクメン φ
→トルクメニスタン Туркменистан [トゥルクミェニス 'タヌ]
→(トルクメニヤ) Туркмения [?]
(14) タジク・ソヴィエト社会主義共和国
  Таджикская ССР
   таджикский タジク人の
→タジク φ
→タジキスタン Таджикистан [タッぢキス 'タヌ]
→(タジキヤ) [まれ] Таджикия [?]
(15) キルギス・ソヴィエト社会主義共和国
  Киргизская ССР [発音は -гисск-]
   киргизский キルギス人の
→キルギス φ
→(キルギジヤ) Киргизия [?]
→キルギスタン Киргизстан [キルギス 'タヌ]
●日本語国名≠ロシア語口語国名
●ロシア語口語国名=民族名+ия または +стан

■松茸さんが問題にしているのは、【Cグループ】ですね。ソ連邦時代にも、いちいち 「なんたらかんたらССР(エスエスエル)」 なんて面倒で言いませんから、口語では 〜стан, 〜ия で済ませていたはずです。
 アゼルバイジャンは、昔も今も、アゼルバイジャニスタンとは言いません。他の中央アジアの国は、みな、〜スタンと呼んでいましたが、キルギスだけは、キルギジヤのほうがよく使われていたように思います。もっとも、現在のキルギスの正式名称は Кыргызстан ですが。
 中央アジアの国々の名前に стан がついていなかったのは
     【日本語の問題です】
ロシア語とは関係ありません。



印欧語 および スタン

にれのや (2003/08/30 03:43)

■Maniac C.どの。バリショイ・サンキュー。
わざわざ、引用していただいて、註までつけていただいて…… いやいや。でも、やっぱりよくわからない。やっぱり、書店で注文して、1ページ目から勉強します。白水社のHPで見ると、品切れではないようだ。
 しかし、不思議に思うことは、印欧語について、日本人が書いた入門書がまったく見当たらないことである。日本には、エキスパートがいないのかしらん?
■〜スタンについて。
きのうの、もと、ソ連邦のスタン系共和国の書き込みについて。[?] とした国名の発音が判明しました。ロシア語では、-ия がロシア語的な接尾辞であり、-(и)стан がチュルク・ペルシャ的な接尾辞です。
     (1) -ия (-ija) アクセントは語幹のアクセントの位置をたもつ。ロシア語的響きのある地名。
     (2) -(и)стан (-(i)stan) アクセントはつねに -стан にある。チュルク語的・ペルシャ語的な響きのある地名。
■ -ия vs -стан。Cグループの国名について、ロシアの検索エンジンで、どちらの語尾が多いか多数決をとってみました。
     (1)カザフ
Казахстан 1,699,656 (99.98%) |||||||||||
Казахия    310 (0.018%)
Казахистан 12 (0.0007%)

     (2)ウズベク
Узбекистан 818,920 (99.88%) ||||||||||
Узбекия    858 (0.1%)
Узбекстан 115 (0.014%)
     (3)トルクメン
Туркменистан 466,060 (73.2%) |||||||
Туркмения    170,116 (26.7%) |||
Туркменстан 111 (0.017%)
     (4)タジク
Таджикистан 563,356 (99.5%) ||||||||||
Таджикия     2,917 (0.52%)
Таджикстан  90 (0.016%)
     (5)キルギス
Киргизстан 56,185 (14.4%) |
Киргизия    334,051 (85.6%) |||||||||
Киргизистан 196 (0.05%)
 意外なことに、キルギスに関しては、Киргизия キルギジヤが、圧倒的に優位でした。また、トルクメンについても、Туркмения トルクメニヤが、かなり使用されています。
■ -(i)stan の語源。
また、-(и)стан の語源についてですが、あたしの知る限りでは、これはペルシャ語の接尾辞
     -esta:n, -sta:n
だと思います。ペルシャ語では、これは 「場所」 を表す接尾辞で、「国名」、「地域名」 などを派生することもできますが、単純に
     gol (バラ) → golesta:n (バラ園)
のように、普通の場所を表す名詞もつくり出すことができます。今いちど、地図を開いて、-(i)stan のつく地名を拾ってみてください。イランを中心に広がっているのがわかります。
■アゼルバイジャンのソ連邦時代のアゼルバイジャン語の呼称がわかりました。
     通称 Аз{еの逆さ}рбаjч{Uの底の部分を|でチェックした文字}ан
     正式名称 上記に ССР をつける
■以上、スタンばなしでした。



Re:『地名の世界地図』ネタ追加

佐藤和美 (2003/08/30 18:54)

松茸さん
> あ、それから、「米領バージン諸島」は元デンマーク領でいいみたいです。(^^;

あー、そうなんですか、早速、修正しなくちゃ。
本来なら複数の資料で確認しないとダメなんでしょうねぇ。
参考資料にしてる『世界史事典』(旺文社)、『コンサイス外国地名事典』(三省堂)、にも間違いは含まれるので、個人的に間違い点を一覧にしようかなとか思いはじめてしまいました。
ちなみに『コンサイス外国地名事典』にはところどころに地名の語源が載ってるんですが、言葉が中心の本じゃないからこんなもんか、とか感じてます。



いろいろ

松茸 (2003/09/02 23:25)

* 「〜スタン」
 にれのや師匠、ご教示ありがとうございました。
……といいたいところですが、(^^; ロシア語での表現については、私の手元の乏しい資料でも、《政治単位としての共和国名(民族名+ССР)》と《地域名称(しましば「〜スタン」)》とが区別されて用いられたことは十分判りますので、「各共和国の民族語での公式自称」をお伺いしたものです。
 あと、些細なことですが、短期間ではあっても"Карельская ССР"が存在したことを追加しておきます。



ソ連時代のチュルク系・ペルシャ系共和国の名称

にれのや (2003/09/05 03:15)

【旧ソ連邦における 「チュルク系・ペルシャ系」 共和国の正式名称と通称――ソ連邦時代と現在について、ロシア語と民族語で】
というようなおどろおどろしいタイトルをつけてみました。どうでしょう、松茸さん。
■以下は、(1)ロシア語正称、(2)ロシア語通称、(3)民族語正称、(4)民族語通称の順に記載します。なお、特殊な文字が多いので "*" をつけて、下に文字の形を説明しました。また、ロシア語正称の ССР は、"Советская Социалистическая Республика" の略です。

■カザフ
(1)Казахская ССР
(2)Казахстан【ソ連邦・中央アジアおよびザカフカースの 「チュルク系・ペルシャ系民族が基幹をなす」 国家のソ連邦時代の名称――ロシア語と基幹民族の言語により、正称と通称を】захстан
(3)К*азак* Советтик Социалистик Республикасы
(4)К*азак*стан
→К*, к*=【кの右下に ц の右下のセリフのごとき 「ツメ」 をつける】 IPA の [q] に相当する子音。
→この文字は、ネット上では、【къ】【?】【q】 で代用されている。 →現在もキリール文字表記で、(4) を国名に使う。

■ウズベク
(1)Узбекская ССР
(2)Узбекистан
(3)У*збекистон Совет Социалистик Республикаси
(4)У*збекистон
→У*=【Уの上に Й のごとき 「皿」 をのせる】
→この文字は、ネット上では、【У】 で表記されている。
→1990年代にラテン文字化された (後述)。ラテン文字表記は
  O'zbekiston

■トルクメン
(1)Туркменская ССР
(2)Туркменистан, Туркмения
(3)Туркменистан Совет Социалистик Республикасы
(4)Туркменистан
→1990年代にラテン文字化された (後述)。ラテン文字表記は
  Tu{+¨}rkmenistan
→u の上に "¨" がついているのは間違いではない。キリール文字表記【у】=ラテン文字表記【u{+¨}】。

■キルギス
(1)Киргизская ССР
(2)Киргизия
(3)Кыргыз Советтик Социалистик Республикасы
(4)Кыргызстан
→現在もキリール文字表記で、(4) を国名に使う。ラテン文字表記は Kyrgyzstan。

■タジク
(1)Таджикская ССР
(2)Таджикистан
(3)Республика Советии Социалистии Точ*икистон
(4)Точ*икистон
→ч*=【ч の右下に ц の右下のセリフのごとき 「ツメ」 をつける】
→現在もキリール文字表記で、(4) を国名に使う。

■アゼルバイジャン
(1)Азербайджанская ССР
(2)Азербайджан
(3)Азе*рбаjч*ан Совет Сосиалист Республикасы
(4)Азе*рбаjч*ан
→е*=【е の逆さま】
→ч*=【ч の U の部分の 「底」 に 「|」 (短い縦棒) でチェックを入れた文字】
→1990年代にラテン文字化された (後述)。ラテン文字表記は、
  Aze*rbaycan
→e* はキリール文字時代と同じ。[dз] を表す "c" は誤綴ではない。トルコ語に準じたもの。

■ウズベク語、トルクメン語、アゼルバイジャン語のラテン文字化について。
これらの言語がラテン文字化されたことは、新聞などでごぞんじかもしれない。しかし、ネットなどで調べてみればわかるが、ラテン文字はほとんど使われていない。一部には、ロシアからの独立の象徴として 「輝かしいラテン文字化」 が行なわれたかのように解釈する向きもあるが、現実はどうもそうではないらしい。何しろ、半世紀にわたってキリール文字が使われてきたことを考えれば、一朝一夕にラテン文字化が徹底されるはずもない。これら3つの国でラテン文字を使っているのは、
   役所と教科書だけ
という状態らしい。一般の出版物はほとんどキリール文字を使っているとのこと。ネットの書き込みでも、キリール文字とラテン文字が交錯するが、キリール文字のほうが多数派である。
■なお、現在のそれぞれの正式の国名は、「ソヴィエト」 と 「社会主義」 の2語を取っ払って、「共和国」 だけを残したものである。



いろいろ

松茸 (2003/09/07 21:53)

* 「ソ連時代のチュルク系・ペルシャ系共和国の名称」
 にれのや師匠、今度こそ本当に(^^;ありがとうございます。
 「あえて『スタン』を省略させ」は事実誤認(誇張)ということで決着ですね。

 旧自称+文字政策についての類型が、近隣のおもな同系民族(語派)の関連で分類できる

カザフ、クルグズ:テュルク語派――新疆
タジク     :イラン語派――イラン
他三国     :テュルク語派――トルコ

のは偶然でしょうが、面白いですね。



フホホト(地名の世界地図)

佐藤和美 (2003/09/14 09:40)

松茸さん
>p.127:
>「内モンゴル自治区のフホホトは、[中略]明代に漢族に征服され「帰化城{クイホア}」と改名されて中国に組み込まれた。」
>……そのような事実はない。
># アルタンハンの時代は、いわゆる「北虜南倭」で、明は守勢に立っていたはず。

「コンサイス外国地名事典」(三省堂)にはフホホトは「明末に中国の支配下に入り、」とありました。アルタンハンよりはあとの時代ということだと思います。「明末」でも「明代」には違いないということで。

松茸さんの引用してる後にこういう記述がありました。
「その四十年後(一九五四年)、内モンゴル自治区へ編入され、もとの名前、つまり民族的名称フホホトが復活したという歴史がある。」
「コンサイス外国地名事典」にはこうありました。
「1947 内蒙古自治区となり、'54 フホホトに復活。」



Re:フホホト(地名の世界地図)

松茸 (2003/09/17 06:55)

 後金(後の清朝)がフホホトを占拠したのは「明末」(1634年)なので、「明末に中国の支配下に入り」は間違いとはいえませんが、「明代に*漢族*に征服され」は明らかにウソです。
 「1947年」については当方の見落としです。(^^;



Amazonの書評(地名の世界地図)

佐藤和美 (2003/09/18 22:57)

Amazonに『リアル鬼ごっこ』の書評を見に行ったついでに『地名の世界地図』の書評を投稿してきました。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4166601474/ref=sr_aps_b_/249-6341413-0017927

地名の世界地図 文春新書

★☆☆☆☆ 間違いの多い本, 2003/09/12
レビュアー: 佐藤和美   千葉県

ずいぶん間違いの多い本ですね。

高校生程度の世界史の知識でも十分間違いを指摘できると思います。

「その匈奴も、前一世紀に後漢との攻防で南北に分裂し、南匈奴は後漢に降伏、」(129ページ)
前一世紀に後漢が存在しないのは高校生でもわかります。

「一五二六年、ティムールの直系の子孫で、チンギス・ハンの血をひくといわれるバーブルはインドに侵入し、ムガール帝国をおこす。この帝国は約二世紀にわたって続いたが、」(132ページ)
ムガル帝国は1526年から19世紀まで続いたんだから、なんで「約二世紀」なのか?

あと、矛盾する記述も多いですね。

「国名のマレーシアは、マレー半島の名にちなんだもので、そのマレーには、インド南部のドラビダ語でマラヤ(山地)という意味がある。」(P138)

「マレーシア Malaysia サンスクリット語のmalaya「山地」に由来する。」(P273)

マラヤはドラビダ語、サンスクリット語どっちなんだ?

このようにいろいろな間違いが多い本です。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

Amazonてマイナス評価の書評も載せるんですね。
無視されるかと思ってたんですが。
『地名の世界地図』がどういう本かを知る人が増えるといいんですが。



ハンガリー(地名の世界地図)

佐藤和美 (2003/10/11 16:55)

『地名の世界地図』63ページ
1刷「しかし、そこに住むことになったマジャール人は、他からどうよばれようと、今日でも自称は「マジャール」であり、国名はマジャール・オルスザック Magyar-orszag(マジャール人)である。
 マジャールとは、ムガール(モンゴル人)が転訛したものと考えられ、ペルシア語で「強い人」を意味する。彼らがアジアからの移住者であることは、その名前の表記が私たちと同じように姓から書くことからもわかる。
 マジャール人は、騎馬民族としての攻撃力をいかしてドイツなどに勢力を拡大したが、やがてドイツでは中世騎士団が組織され、九五五年にはドイツがマジャール人に勝利した。しかし、彼らの別称ウイグールUigurs(おそらくウイグル地方からやってきたと思われていたので)が、やがてオグルOgre(人食い鬼)という怪物の語源になるほど、ヨーロッパ人に強い恐怖心を与え続けた。」

ここに一体いくつの間違いが含まれてるのか、自分の実力確認にチャレンジするのもいいかも。

14刷「しかし、そこに住むことになったマジャール人は、他からどうよばれようと、今日でも自称は「マジャール」であり、国名はマジャーロルサーグ Magyarország(マジャール人)である。
 マジャールとは、一説では、ムガール(モンゴル人)が転訛したものと考えられ、ペルシア語で「強い人」を意味する。彼らがアジアからの移住者であることは、その名前の表記が私たちと同じように姓から書くことからもわかる。
 マジャール人は、騎馬民族としての攻撃力をいかして東フランク王国などに勢力を拡大したが、やがてヨーロッパでは騎士団が組織され、九五五年にはマジャール人に勝利した。しかし、彼らは紀元前一〇〇〇年頃、ボルガ川流域にいた遊牧民オノグル族Onogurとかかわりのあったウゴル族Ugrianの一派であったことから、それがやがてオグルOgre(人食い鬼)という怪物の語源になるほど、ヨーロッパ人に強い恐怖心を与え続けた。」

大分変更されてるようですが、さてさて……。

1刷「マジャールとは、ムガール(モンゴル人)が転訛したものと考えられ、ペルシア語で「強い人」を意味する。」
14刷「マジャールとは、一説では、ムガール(モンゴル人)が転訛したものと考えられ、ペルシア語で「強い人」を意味する。」

「マジャール」ペルシア語由来説に関しては14刷では「一説では」が追加されてますが、『地名の世界地図』でさえ、「一説では」を追加せざるをえなかったということでしょうね。



re:大連

松茸 (2004/03/02 18:44)

*『地名の世界地図』第十三刷pp.126-127より。{ }はルビです:

「逆に漢字名が先で、満州語に後から変化したものに大連がある。大連は、はじめ、青泥窪{チンニワ}と呼ばれていたが、満州人の進出によってダリン(港、岸)に改められた。そのため李鴻章の時代に漢字名も大連{ターリアン}とされたのだ。その後、一八九九年、ロシアがこの地を占領し、貿易港を建設したとき、ロシアの首都から遠かったという立地条件とターリアンの音がロシア語で「遠い」に近いことからタルニィになり、それが最終的にターリエンとなった。」

……例によって疑問百出ですね。(^^;
・「漢字名」ではなく「漢名(中国語名)」ではないか?
・「満州人の進出」以前に「青泥窪」という地名があったことが確認できているのか?
・「ダリン(港、岸)」なるマンチュー語があるのか?
# 少なくとも以下のオンライン辞書にはそれらしい単語はない:
http://web.archive.org/web/20011117084017/msnhomepages.talkcity.com/IvyHall/anzhu/manchu_d.htm
・ロシアの支配は1898年からでは?
・「ターリアン」と「ターリエン」、どっちがホント?
・"Dal'nij"を「タルニィ」とするのはおかしい(濁点のつけ忘れ?)。
・歴史記述として、日本の支配(租借)下の正式名「だいれん」を無視してよいのか?
などなど。


* いわゆる「旅大租地条約」の露語正文(綴りは現代式にされてますが)を発見:
http://www.hist.msu.ru/ER/Etext/FOREIGN/port_art.htm
 “Та-лянь-вань”(Ta-ljan'-van')と明記されてます。
 ちなみに、「中露密約」の正文では、「李鴻章」が“ЛИ ХУН-ЧЖАН”になってました:
http://www.hist.msu.ru/ER/Etext/FOREIGN/china896.htm



Re: 大連

massangeana (2004/03/02 22:51)

とりあえずこれ。
http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Forest/1429/colo/dairen2.html



Re: 大連は満洲語か?

massangeana (2004/03/04 04:29)

>『名称是怎様来的?“大連”其名源自満語』
ロシアが清朝から大連湾などを租借したときの条約中, ロシア語で大連湾にあたる箇所に
相当する満語の箇所が「海浜之湾」になっている。「海浜」は満語では dalin という。
したがって「大連」は満語の dalin の音に由来するにちがいない, という論旨ですね。

松茸さんが疑問を呈していらっしゃいましたが, 岸を dalin といったのはたしかのよう
です。Google で「julergi dalin」で検索してみてください。ネルチンスク条約の原文が
でてきます(朝鮮語のpdf なので, 直接日本の acrobat では開けないようです。HTML版
はみられます)。




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