オアシスうらばなし
『オアシス』についての裏話のコーナーです。
連載の展開に合わせつつ、思いつくことを書いていきます。
(最終更新日・2002年10月19日)
<名前の由来のこと>
オアシスという名前、作中ではばあちゃんが読んでた本からとったことになってますが、作者の方では小説を書く時に使ってるワープロから名前をもらいました。犬の小説を書こうと思った時、なんて名前の犬にしよーかなーと思ってて、ふと液晶画面の横に書いてある「OASYS」という名前が目についてしまったんです。
富士通のワープロのシリーズ名なんだけど、もともとは「オフィス・オートメーション・システム」か何かの略なのかなあ。ワープロは僕の相棒みたいなもんなんで、その名前にも愛着あったんですよ。その名残りで、ファイル名などは「OASYS」となってます。
ちなみに、英単語としてのオアシスのスペルは、YじゃなくIを使って「OASIS」となります。中学生読者が、英語のテストとかで、「タケウチのせいでOASYSって書いて間違った!」なんてことにならないよう祈ってます。
<第2章「オアシスの宝物」のこと>
オアシスがいろんなものを拾ってきちゃうという設定は、特にボーダーコリーの性質を調べて書いたわけじゃありませんでした。単にそうだったら面白いからって書いただけなんですね。
だけど書いた後になって、実際にボーダーコリーには収集癖があるらしいと知りました。こういう偶然ってのは小説を書いてると結構あって、なかなか楽しいもんです。
オアシスが動物たちの命を救うという着想は、前に読んだ『猫たちを救う犬』っていう本をヒントにしました。フィリップ・ゴンザレス著で草思社刊のノンフィクションです。犬好きにはたまらない素敵な表紙の本だし、中身もとてもいい話なので、興味のある方にはおすすめです。
<ボーダーコリーのこと>
オアシスをボーダーコリーの雑種にしようと思いついたのは、犬の写真集を見ていた時でした。
そこに載ってた、妙に愛敬のある姿をした犬はボーダコリーだと知り、その犬種は頭が良くて運動能力も抜群と知ってこれだと思ったんですね。
冒頭で捨て犬っていう設定を入れようと思ってたので、純粋なボーダーコリーじゃなくて雑種ってことにしました。雑種の方が親近感わくし、いろんな特徴があっても不思議じゃないしね。
最近は日本でも増えてきたボーダーコリーですが、まだ一般的に名前が浸透してるってほどではないようですね。どんな犬か知らないって人には、映画『ベイブ』に出てきた牧羊犬って言うと分かってもらえるでしょうか?
<きっかけのこと>
『オアシス』の第一稿を書いたのは、1999年の春のこと。
集中して『粗忽拳銃』という長編小説を書いた後、そのペースでもう1本と思って書いた物語です。
何を書こうかなーと考えた時、昔から好きだった犬の話をホームコメディーでと思いついたんですね。
正味3週間くらいで書いた中編を、連載にあたって大幅にリライトして発表しています。
<犬のこと>
僕が犬好きになったのは、やっぱり実家で飼ってたってのが大きいかな。5歳か6歳の頃にプードルがもらわれてきて、一時は3匹もいて賑やかでした。
以来18歳で上京するまで犬と暮らしてたんだけど、それからはアパート暮らしなので犬を飼いたくても飼えない状態。いくら犬好きでも街角で出会う犬と遊ぶことしかできないので、そのへんのフラストレーションが小説執筆に繋がったのかもしれません。
犬の出てくる話としては、以前に『僕らが世界を救った夜』とか『オリオン・ザ・ドッグ』っていう本を書きました。その2冊は人の言葉を喋るオリオンという犬が出てくるファンタジーなんだけど、『オアシス』は普通の世界で犬を活躍させたいと思ったんですね。
<新聞連載のこと>
小説の連載を週刊ペースで1年間も続けるってのは結構大変なことらしいですね。体を壊したとかノイローゼになったとか、恐ろしい話を耳にしたりします。
だけど『オアシス』の場合は気楽なもんです。なにしろもう既に書いちゃってあるので、あとは新聞の掲載スペースにあわせて文章を整え、著者校正ってのをすればOK。
毎回毎回、今度はどんな挿絵がつくのかなーと楽しみにしています。
<挿絵のこと>
『オアシス』連載にあたって、編集部からは“挿絵の担当者は作者の方で話をつけてほしい”みたいなことを言われました。
こういう話になるのってかなり珍しいことなんですが(大抵は編集者の方で決めちゃう)、せっかくなので以前から勝手に思い描いてた方にお願いしてみることにしました。名作『ウッシーとの日々』で名高い、はた万次郎画伯です。
ウッシーというのははた画伯の愛犬で、『ウッシーとの日々』では画伯とウッシーとの北海道での生活が描かれてます。僕はその幸せな暮らしぶりやほのぼのとした絵柄のファンだったので、『オアシス』に絵をつけるならってことでイメージしてたんですね。
駄目でもともとと思いつつ人づてに依頼してみたところ、ご快諾いただけてオアシスのイラストが生まれたわけですね。──このコーナーの表紙イラストのオアシスも、画伯からメールで届いたものです。
<画伯のこと>
はた万次郎さんの名前を初めて知ったのは、雑誌「小説すばる」誌上でのことでした。
僕が新人賞をいただいた雑誌なんですが、画伯はそこで毎月2ページものの漫画を連載してらしたんですね。僕は毎回読んでるうちにすっかりはたワールドのファンになり、『ウッシーとの日々』1〜7巻、『北海道青空日記』、『北海道田舎移住日記』と買い求めて読みふけるようになりました。
いずれも集英社から出てますので(『移住日記』のみ集英社文庫、あとは愛蔵版ワイドコミックス)、興味ある方は読んでみてください。
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