工藤太郎さんインタビュー その1


 1999年7月23日・千駄ヶ谷のバンプールにて  工藤さんは、「MOON」や「UFO -A DAY IN THE LIFE-」といったゲームを生 んだゲームデザイナー。知る人ぞ知る、というか、ある種のゲームファンの間ではカ リスマ的なクリエイターだと思う。あまりゲーム雑誌とかのインタビューは受けてお られないそうなので、このインタビューはレアで貴重かもしれない。  僕は某ペンネーム仕事の打ち上げで工藤さんとお話しする機会があって、そのクリ エイティブな雰囲気とゲーム制作裏話の面白さに引きつけられた。ちょうどゲーム業 界のことを小説に書こうと思っていたし、工藤さんが有限会社バンプールを設立され た時期でもあったので、業界の仕組みやゲーム作りのことをお聞きしようと取材を申 し込んだ次第。  初めて訪れたバンプールのオフィスは、一軒家を改造したようなとてもアットホー ムな空間であった。広々とした空間にデスクやパソコンがゆったり並んでる様は、何 かのドラマかCMの撮影場所にでもしたい感じである。ゲームの開発会社ってえとご ちゃごちゃっとした空間でどよーんと作業が進んでる印象があったのだけど、僕のそ んな偏見はきれいさっぱりと吹き飛ばされたのだった。  明るいミーティングルームの壁際には「MOON」や「UFO」のキャラクターの 人形(スタッフ手作りの紙粘土製である)が飾られてて、CDラジカセからはフルー ト系のインストゥルメンタルが流れてくる。そんな気持ちいい雰囲気の中、気さくな 工藤さんからいろいろ教えていただいた。 ◎祝・バンプール設立 竹内「今度、ゲーム業界と漫画業界に関わる長編小説を書こうと思ってるんですよ。   で、いろいろお話を聞かせていただこうと思ってまして──僕的に、今回のバン   プール独立が実にタイミングいいなーと思って……独立するのって、どんなきっ   かけで行われるものなんですか?」 工藤「えーっとねえ、僕自身の経歴でいうと、まず大学は普通の4大だったんですけ   ど──」 竹内「あ、そうなんですか。芸術系の方だと思ってましたよ」 工藤「いえ違います違います。経済学部ですよ。んで、中学生ぐらいからずっとバン   ドやってて、うちの親父とかもミュージシャンだったんですよ。そういうのがあ   って、音楽やるかみたいな話もあったんだけど……なんか、みんな就職活動とか   始めるじゃないですか。大学4年くらいになると。そうなった時に一緒にバンド   活動やってた連中も就職活動とか始めたりとかして、みんな就職かよーみたいな   感じで焦ってたんだけど、それでも4年の2月頃まで何にもしない状態で。もう   いかにも、卒業してフリーターコースっていうかね。そんな状態の時に、音楽雑   誌でゲーム会社(K社)がサウンドを募集してるっていうのがあって」 竹内「あ、最初はK社だったんですか」 工藤「そうなんですよ。僕の場合は最初K社でスーファミ時代にずっとサウンドをや   ってたんですよ。で、やってた後に今度いわゆるディレクション、企画も面白く   てやってたんですよね、ちょっと。んで、なんかちゃんとやりたいなとか思って、   そっち側に変えるためにっつって今度はS社に行ったんですよ。そこで企画を2   年くらいやって。──で、僕は独立した理由っていうのは、いわゆる大きい会社   にいるときは要はサラリーマンじゃないですか。だから仕事は仕事でやりつつ、   自分で遊んだりとか、好きなこと何かないかなみたいな感じだったんですけど、   ゲーム業界って忙しくなる時はめちゃくちゃ忙しくなるし、1ヵ月2ヵ月ってす   ごいヘビーにやるじゃないですか。やっぱり仕事としてやってる以上プロの自覚   みたいなもんは出てくるから、そうなるとこう、何ていうんですかね……仕事っ   ていう感覚を僕の中で持ちたくなかったんですよ。要するに会社に行って仕事を   して、仕事が終わった後にどうのこうのっていう──自分の持ってるエネルギー   の配分を、仕事とその他っていうのじゃなくて、何か一つのものに全部注ぎ込み   たかったっていう気持ちがすごくあって。   そうなってくるとやっぱり、ゲームを作ってるってことは楽しい、だからこれに   全力を注ごうってことになった時に、俺がこれに全力を注ぐんだったら会社のた   めに動くなんてことは無理だから。自分らの看板のために全部頑張るっていう風   にするには、どんなに頑張ったってサラリーマンやってたら会社の評判が上がる   だけで……自分の名前を出したいってわけじゃないんですよ、決して。僕はあん   まり取材とか受けない方で、自分の名前を出したいっていうのはないんですよ。   じゃないけど、うちらの看板は絶対に出したいっていうか、チームとしてのアイ   デンティティを、S社の開発6部っていうアイデンティティじゃなくて、何か一   つのゲーム作るにあたってのブランドっていうものを持ちたいってのがあって、   それがまず独立したという」 竹内「それでじゃあ、S社からラブデリックが──」 工藤「そうですそうです」 竹内「じゃ、今回の独立というか、バンプール設立っていうのは──」 工藤「今回の流れっていうのは、えーと、まずラブデリックができたっていうのは3   年前かな。で、『MOON』を一本開発したと。で、終わった後に僕ともう1人、   西っていうのがいて、その2人がいわゆる企画として2人頭でやってたんですけ   ど、今回別になったんですよ。お互いにやりたいことがちょっと」 竹内「ああなるほど。方向性の違いというか、なんか2人ユニットのミュージシャン   がソロ活動するようなもんですね」 工藤「そうですそうです。そういう感じでやってて、今二つに分かれてやってるんで   すよ。UFOチームとそれからもう一つ、ハードはドリームキャストでやってる   チームと。それで僕らは、『UFO』開発中はラブデリックのUFOチームって   いう言い方をずっとしてたんです。で、むこうがラブデリックとして何かをやっ   た時に、ラブデリックっていうのはこういうの作ってるんだっていう風に思われ   るラブデリックと、それからうちらがやっている『UFO』みたいなものを作る   ラブデリックっていうのが2つ存在してしまう形になっちゃって。で、僕は純粋   にそれが嫌だったんですね。僕はもう1ブランド1チームじゃないと成立しない   と思ってるんですよ。自分がものを作る形では。で、例えば向こうも同じ看板で   やってるっていうんだったら、俺も向こうに同じくらい関わらないと納得できな   いし。それは否定するとかそういうことじゃなくて、自分が全く見れないものが   同じ看板から出るっていうことが僕はもう、すごく嫌で。やっぱり自分の屋号に   は責任を持ちたいから」 竹内「あ、やっぱり屋号って感じなんですか。なるほどね。──こう、カラーを純粋   に結晶させるっていうのが今回のバンプール設立なんですね」 ◎バンプールの目指す形   独立と会社設立にまつわる実務レベルのことをいろいろ教えていただいた後で、 工藤「今お話ししたのは何故うちらが独立したかっていう話で、次はバンプールって   のはどういう形を目指してるのかっていう話になっちゃうと思うんですけど──   やっぱりセルフプロデュースですね、一番思ったのは。ゲーム業界って1個の開   発が長いじゃないですか。1年とか1年半とかかかりますよね。そうすると、は   じめに契約をしてしまえば、少なくともきっちり開発だけやっていれば1年半は   食っていける。その間新しい営業とかをかます必要も全然ないし、大変なところ   だったらその間にいろいろ入れて2チームで回してとか3チームにしてとかって   いう風にして経営上は安定させていくんでしょうけど、うちらは腕だけで食って   いくつもりだから。で、1本1年半かけてっていうのが決まっちゃえば、1年半   は開発に集中してれば他に会社の経営的なことっていうのはあまり考えなくてい   いと。経理の人がいて、その予算でみんなのギャランティーとか場の維持費とか   を管理する人がいれば、その間にいろんな営業したりとかする必要は全然ないし。   それで1年半が終わって、終わった瞬間に、1ヵ月くらいかけてバタバタっと次   のを探すっていう──普通はもうちょっとかぶらせてやるんでしょうけど、うち   らはそこで前にやったものに自分らが自信を持ってれば絶対に次のをやってくれ   っていうところがいるはずだっていうことだけでやってるし、それで今んところ   成立してるから。これで次とか外したりとかし始めるとどうなるのか分からない   ですけどね」 竹内「え、じゃあ『UFO』を終わらせて、さあ終わった次は何しようかなーってい   うところから今の動きが生まれてきたっていうことなんですか」 工藤「そうですそうです」 竹内「でまあ、新ゲームに入られてるってお話がありましたけど、それはスポンサー   というか……パブリッシャーっていうんでしたっけ? それのところに契約を持   ち込んでって予算をぶんどってって感じのことを、この1、2か月の間に?」 工藤「そうですね。──ただ、もうラブデリックってブランドで2本出してるから、   『MOON』とか『UFO』とかってゲーム業界で知ってる人は知ってるってい   うか、ミュージシャンズミージシャンじゃないけど、うちらのゲームって業界受   けするところがあるんで、それで契約とかは取りやすいですけどね。ありがたい   ことに」 竹内「コンセプチュアルなゲームを作ってるが故の、ブランドの強みというか。──   その場合の営業をやる人っていうのは営業要員でいるんですか?」 工藤「それは僕が行きますよ」 竹内「じゃあもうトップが動いてって感じで」 工藤「トップが動くっていうか、それはクリエイターのキャプテンっていうことで行   きますから。うちのチームがいいですよって話をしに」 竹内「形としては、そういう形は業界内で一般的なものなんですか?」 工藤「いや、普通はやっぱプロデューサー的な立場の人がいて、うちはこういうのが   得意なチームが1チームあるんですけどどうでしょうってパプリッシャーに営業   に行ったりとか、企画の人間に新しいゲームの企画書を書かせてそれを持ってパ   ブリッシャーのとこを回ってこんな企画あるんですけどみたいなことをやるとか。   まあクリエイターが直接行くパターンもあるでしょうし、あとは会社のアイデン   ティティがしっかりしてれば、うちは凄くサウンドが強いですよとか、うちはグ   ラフィックだけに特化した会社ですとかっていうのが、例えばプログラムは自信   あるんだけど絵がちょっとねっていうとことコラボレーションしたりとか。──   例えば、どこかで絵描きだけのデザイン会社がゲーム作りたいっつってデザイン   の絵とかをもってパブリッシャーに来るとするじゃないですか。そうすると、あ   あ絵はすごくいいねと。これでゲームを作りたいんだけど、これを持ってきた会   社ってのはグラフィックしかいないから、じゃあこちらでプログラマー集団を紹   介しますっていう感じで、そこを組ませてやったりとかもあるみたいです」 竹内「バンプールの場合は、それを丸ごと──」 工藤「うん、それはもう、僕らのスタイルは外注は無理っていう。作りながら物事を   会話で決めていくスタンスだから。だから、そこの現場もそうだけども、声出し   たら全員に聞こえる状態」 竹内「非常にアットホームなオフィスですよね」 工藤「だから、『UFO』の開発してる時もこのホワイトボード(『UFO』のタイ   ムテーブルが細かく書き込んである)があの開発現場のド真ん中にあって、みん   なでカタカタ打ちながらちらちら見ながら。だから、これといってミーティング   っていうミーティングもあんまりもたないんですよ。手を動かしながら、どっか   で誰かが話し始めたら、それがみんな聞こえるから。適当に自分のことしながら   でも、『それはどうかなあ』とか茶々入れたりとか」 竹内「システマティックにするっていうよりは、創作集団の理想的な原型をとどめて   やってるって感じなんですね」 工藤「そうですね。ゲーム作るって、今はすごくでかい会社がシステマティックにや   るようになってて、プログラマーとかに人数投入して、ハード的な技術研究をす   る人達と、この部分のプログラムこの部分のプログラムって専門家職ができてき   て、あとムービーを作るチームとか、その分野のプロが集まって効率のいい作業   方法とかですごく大っきい規模のプロジェクトをやったりしてる中で──やっぱ   りフルCGの映画を作るのとはわけが違ってて、ゲームってプレーヤーを遊ばせ   るものだから、作ってる側に遊び感覚ねえと駄目だろう気はしてるんですよ。だ   からあんまりちゃんとしたミーティングして、さあどうしましょうって言って仕   様書みたいなもん決めて、スケジュールきっちり切って、さあどこまで進みまし   たかっていう進行を管理する人がいてっていうのをやるよりかは、部活ノリって   いうかバンドノリっていうか、いってる制作スタイルがあってもいいんじゃない   かなという」 ◎制作チームのメンバーのこと   ドラクエやファイナルファンタジーの影響か、世間にはゲーム制作は物凄く人手   のかかるもの、なんていうイメージが広がってる。──しかしバンプールからい   ただいた会社設立案内の葉書に載っていたメンバーの数は7人。意外に少ないん   だなあと思いつつ、そのへんの体制について聞いてみた。 竹内「部活やバンドのノリの制作スタイルって意味では、チームとしての人数はこの   くらいが理想なんですか」 工藤「理想ですね、これぐらいが。これ以上増えちゃうとちょっとコンセンサスも取   りづらくなっちゃうし。──もちろん全員好みが一緒っていうわけじゃなくて、   ある程度みんな、これが好きっていうのはバラバラなんですけど、共通した部分   ってのはある程度なにか持ってないと」 竹内「共通した部分というと?」 工藤「例えば、ここでどういうキャラを出すっていった時に、『木こりがいいんじゃ   ねえか』とか『プロレスラーがいいんじゃねえか』とか、みんなそれぞれのネタ   を出してった時に、『えーっそこは美少女じゃーん』みたいなことを言う人がい   ると、やっぱりだんだん疎外感っていうノリがあるじゃないですか。そういうと   ころでは、ある程度好みが合ってるっていう感じですね」 竹内「そういう、好みの合う人が集まるっていうのは自然な流れなんですか? それ   ともどっかで、あいつはいいから引き抜こう、みたいな?」 工藤「いや、それはだから、今うちらのチームを構成してるのは、元S社と元K社だ   けなんですよ。僕が一緒に肌を合わせて、こいつだったらやってみたいなって思   った人だけを集めたっていう」 竹内「なるほど。精鋭部隊ですね」 工藤「サウンド関係はみんなK社出身なんでけど、それとかも僕がK社やめてS社行   って、3年間ぐらいやった後で辞めようかなって思ってた時に、サウンドとかは   K社でやってたあの人とあの人がいいなあと思って、3年ぶりぐらいに、ちょっ   と会いましょうっつって。『久しぶりー』なんつって、『今なにやってんのー』   『いやーS社で頑張ってますよー』とかいって。で、『S社最近どーよ』って言   った時に、『いやー、実は俺やめようと思ってんですよー』つって、『なんで?   S社っていいんでしょ?』『いや、もう独立しようと思ってんだ』『へえーっ』   『やりましょう、一緒に!』(笑)」 竹内「あはははは。それはいい話ですねー。なんというか、小説に使いたくなるエピ   ソードだなあ。──そういう辞め際の美学と人集めの美学ってありますよね」 ◎スタッフの陣容について 竹内「やっぱ、企業として膨れ上がってくとクリエイティブな物作りがしにくくなる   もんなんですかね?」 工藤「うーん、ただ、それくらい人数かけないとできないものってもあるから」 竹内「そうですね。方向性としてRPGとかはそっちに行っちゃってますもんね。た   だ、僕は前にロープレの開発にちょこっと関わったことあるんですけど、下請け   でやってた会社のさらに外注でって感じで受けたもんで、もうわけ分かんなかっ   たんですよ。トップと末端の意思の疎通というか、でかいプロジェクトチームと   しての血流が滞ってるみたいで。──だからこういう、バンプールみたいな少人   数編成って非常に面白いなあと」 工藤「だから僕は、一緒に仕事をしていく上で、この部屋とむこうの部屋の現場の距   離(インタビューを行った部屋とオフィスとは数メートル離れてる)が遠くて無   理ですもん、もう」 竹内「ほうほう」 工藤「まず、一緒にチームで働いてる人のモニターとか、今どういうことをやってる   かってのが常に見えてる状況」 竹内「そういや、部屋の中心からみんなのモニターが見える感じに組んであるんです   ね。──そうそう、チームとしての必要な役割ってのをお聞きしたかったんです   よ。具体的にどんな仕事があるのかなって、素人の質問で申し訳ないですけど」 工藤「それは結構、タイトルによっても違うと思うんですけどね。僕が今まで経験し   てるパターンだと──ラブデリックになってからはいわゆるアドベンチャーっぽ   いものじゃないですか。で、シューティングとかアクションとかになってくると、   まずプログラマーが3人か4人、ゲームのプログラム作る人がいて、それの絵を   描くグラフィックがいて、あとサウンドっていうくらいですかね。あと制作進行   みたいな感じで1人入るパターンがあるけど、それはだいたいメインプログラマ   ーが兼任するんじゃないすかね」 竹内「それじゃ、アクション以外の『UFO』みたいな場合は?」 工藤「そうですね、このへんになってくると、理想的には僕みたいな企画的な役割の   人間が全てを負う、受けるんですね。だからプログラマーがやることっていうの   は、基本的な画面の表示と、それからコントローラーを動かすとキャラが動くと   か、そういうプログラム的なところ。あとはキャラクターとかそういうものを動   かすための、なんつうか簡易言語みたいなものを作るんですよ。で、僕はCとか   のプログラムは全然打てないんで、プログラマーが作ってくれた簡易言語でがし   がし書いてく感じですね。──RPGの場合もね、企画はたいがいそういうこと   をしますね。僕がS社でRPGやってた時には、やっぱり同じような、このキャ   ラクターが喋りかけたらこういうセリフを返して、言った後にアイテムをくれる   とかっていうことの仕込みを簡易言語を使って。だからRPG作る過程っていう   のは、そこに一個入るんですよね。技術的なこと言うと、RPGの開発が時間か   かるのってそこで、普通アクションとかシューティングだと、プログラマーが直   接キャラクター出して、そんでそれの動きの慣性がどうのこうのっていうのをが   んがんプログラムで書いていくパターンなんだけど、RPGの場合にはまず企画   的なシナリオ書いたりとか、お話を再現する人達が使う簡易言語をまず作るとこ   ろから入っていくから、最初の半年はツール作りですね、プログラマーのするこ   とは。グラフイックの人間とかも、うちの場合はポリゴンじゃなくて2Dじゃな   いですか。ポリゴンだったら直接テクスチャーだけ渡したらプログラマーがそれ   を画面上に出してモデル出して終わりってことになるんですけど、2Dの場合は   2Dのアニメーションを作るためのツールをまず作るところから始まりますね。   でかい会社になると、ツールを作るための部とかがあるから、社内ツールみたい   なものも凄くいいものができてくるから、そういうところは大きい会社っていい   なあと思いますね。うちらが1人のグラフィックが使うためのツールを1人のプ   ログラマーが半年で作るのと、ツール作る部っていうのが10人くらいいる会社   が何百人の何十チーム分のツールを5年かけて作ってんのでは全然違いますね、   やっぱり。だからうちらの使ってるツールっていうのはバグとかもめちゃくちゃ   多いし」 竹内「そのバグ取りとかも一緒の作業として平行してやるわけですか?」 工藤「ですね。ただ、そのツールを製品として出すわけじゃないから、あとはプログ   ラマーとのやりとりで。そのバグをとってると1ヵ月のびちゃうから我慢してく   れと。そのプログラマーがツール作った後で違うことやらなきゃならないとかも   あるから」 竹内「バグをバグとして受け入れながらそれをうまい具合に使いこなすと」 工藤「もうほんと、最初の頃の使えない頃ってのは、グラフィックの方も1ドット打   ったらセーブして1ドット打ったらセーブしてっていうことをしながら頑張って   耐えて使って、どうしてもこの機能だけつけてくれっていうのを頼んで、じゃあ   そのために1週間っていう風にやりくりしながら」 竹内「そういうのの全体的な統括も工藤さんがやられてるんですか?」 工藤「統括っていうほどじゃないけど、そのへんは各自」 竹内「現場現場で?」 工藤「はじめに聞きますけどね。このツール作るのどれくらいかかるって。ただ制作   の仕切りも、ハードとかが変わると全然変わるんですよね。例えば『UFO』の   開発が始まった時とかは『MOON』で作ったツールみたいな資産がそのまま使   えるから、結構そういう部分では時間は余裕があるんだけど、新しいハードにな   っちゃうとツールとか資産が全部リセットですから。それがゲーム業界の馬鹿ら   しいところっていうか」


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