サイキンのタケウチ


〔身辺雑記〕

1月4日(金)
 三が日も明けて世の中が動き出したようだ。おいらもいろいろ年始回りな日。
 散歩と朝食と木彫りの朝を過ごした後、まずは図書館・洋菓子屋・蔵元と回り、本とDVDと酒と手土産を仕入れる。それから車にくろべーを乗せ、ちょうどお昼時に知人宅へ。お雑煮やらお料理やらをいただいた上に夕食用のおにぎりやお惣菜までいただいておいとま。二軒目に移動。
 どちらのお宅でも、洋菓子屋で買った手土産は好評。日本酒の蔵元の店員さんからすすめられたチョコ系の洋菓子で、たいてい売り切れ・予約殺到・何度か通って今日初めてショーケースに並んでるのを見たという一品なのだが、これが美味しい上にびっくりするほど安い。――食べて喜んでもらった後、はしたないとは思いつつ、「さて、1個いくらでしょう?」と尋ねてみた。
 2軒とも、「僕がそんな質問するからには」ってヒントがあったにもかかわらず、僕が明かしたのは「桁が違うよ」って回答であった。それくらい、味と値段がかけはなれてるのだ。それだけ良心的なお店なわけだけど、こういうのって素晴らしい。

 帰宅後、年始回りの後は仕事始め。
 『シチュエーションパズルの攻防』文庫版あとがきの執筆、というか素材の整理開始。メールやSNSで進めてるQ&Aをまとめてるんだけど、こういう作業もなかなか面白い。相変わらず正解者はいないけど、こちらの用意した正解に迫ってくる質問が出るってのも嬉しいもんだ。
 一段落してから、DVD見つつ晩酌。最近、『男はつらいよ』のリリー三部作(っていうか四部作というべきなのか?)を見てるんだけど、これはこれでお正月って感じでいいものだ。別に正月映画で寅さんを見る習慣はなかったし、作中でも特に正月を扱ってないのに、渥美清の台詞回しを堪能してると正月気分を味わえるってのは何故なんだろうなあ……

1月20日(日)
 午前と午後と、2度ほど宅配便の来訪。
 まず午前の部はくろべーにプレゼント。先日、硬質ゴムの犬用おもちゃ、ハードコングを見事に破壊しやがったので、その後継おもちゃである。つっても僕が買ったのではなく、壊れたコングの画像をフェイスブックに載せたところ、じゃあ絶対壊せないのを贈りますって言ってくださる方が現れたのだ。ありがたやありがたや。
 で、いただいたのが、ちょっと変わった形の水色のボール。ラベルにはゾゴフレックスのハックと書いてあったので、ゾゴフレックスってのがブランド名なのかと思ったら、どうやらくろべーのように壊しまくる犬用に開発された新素材の名前であるらしい。商品説明には「stronger than any other material to our knowledge」なんて書いてあって、開発側の自信のほどがうかがえる。
 梱包を解いてる間から興味津津な顔でよってきたくろべーの目の前に、早速つきつけてみた。誰が教えたわけでもないのに「これは食べ物じゃないけど好きにしていいのだ」と認識したくろべー、早速かぶりついてガシガシ噛みまくり。
 さて、絶対壊れないという評判のこのボール、果たして破壊王くろべーの牙の前に持ちこたえることができるだろーか?

 午後の配達は僕が注文したもの。エアーマッサージ座椅子なる代物である。
 今暮らしてる越冬地で、なんかくつろいで読書できる椅子がほしいなーと思って購入したのである。ほんとは椅子を探してたんだけど、いろいろ見てるうちに可変性の高い座椅子でマッサージ機能までついてるのを見つけてたのだ。これをホットカーペットの上に置き、膝にくろべーをのっけたらあったかいかなーと思ったら、ふつふつとほしくなったのである。
 基本的に椅子中心で一人暮らしを始めて以来コタツなんて20年以上使ってない生活なので、座椅子を買うのも生まれて初めてである。これもいそいそと梱包をとき、早速座ってマッサージ機能を試してみる。
 ちょっとソフト目だけど、なかなか気持ちいいし、思ったより作動音も静かなのが嬉しい。自宅山荘の仕事部屋で使ってるデッキチェア風マッサージ椅子は近所迷惑なほど音がでかいので持ってこなかったけど、この座椅子が立派に代打をつとめてくれそーだ。リクライニングの選択の幅が広いので自分にとってのベストポジションを見つけるまでが大変そうだが、今後はここで読書しながらいろいろ試してみよーと思う。
 つうわけで、僕は座椅子で本を読んだり(『ティファニーで朝食を』と『蒼天航路』)ゲームしたり(『とびだせどうぶつの森』)して過ごし、くろべーは昼寝したりボール噛んだりして過ごす日曜でありました……

1月25日(金)
 朝、連作『ものがたりのアンテナ』の第2話が完成。
 これは彫刻家のはしもとみおさんの彫刻をもとに、僕が物語をつけるっていうコラボ作品。憧れの彫刻家さんの作品に文章をつけられるってだけでも嬉しいし、彫刻作品に触発されて文章が湧き出てくる感覚が心地いい。――編集者との共同作業は結構な確率で衝突しがちな僕だけど、尊敬するクリエイターとのコラボレーションって大好きなのだ。案外、自分の完全オリジナルよりは人の作品に文章をつける方が得意なんじゃないかとすら思う。
 この文章や彫刻、それを元にした写真絵本は、3月に那須高原の絵本カフェ、murmurさんで展示予定。そして第2話脱稿の数時間後、くろべーの散歩に出掛ける時にポストをのぞいたら、タイミングよくその彫刻展のチラシが届いていた。こういう偶然って嬉しいね。
 僕自身、はしもと作品に触れられる機会が嬉しいし、文章と彫刻のコラボもいい感じの効果を生んでる気がする。こらから宣伝してなるべくたくさんの人に来てもらおうと思ってるので、ご興味おありの方はぜひこちらをご参照あれ。↓
http://kirinsan.awk.jp/pages/exhibition.html

 そして夜。はしもとさんからメールで、どーんと大容量の音声ファイルが届いた。
 『ものがたりのアンテナ』の第1話、『三日月のブランコ』っていう物語を書き上げた際、それにちなんだ『流れ星のしっぽ』っていう文章も書いていた。短い文章を書こうとしたら詩みたいになって、ついでに歌詞みたいになったなーと思ってたら、はしもとさんの仲間のミュージシャンの方が、その文章に曲をつけてくれたのである。
 なんだかどきどきしながら、その音声ファイルを聴いてみた。――そして聞いてるうちに自然と笑顔になっていた。なんかこー、しみじみと幸せな気持ちになる体験だった。
 もちろん曲自体の気持ちよさもあるし、自分が書いたはずの言葉がまったく別のもののように聞こえてくるのが心地いいのだ。いってみれば彫刻作品から生まれた言葉が、僕を通り過ぎて音楽作品に変わっているわけで、その流れの中に身をおけたことが幸せなんだと思う。
 その曲、“ポチとoliveによる『流れ星のしっぽ』”をリピート再生モードにして、そのまま眠りにつくことにした。――3月のライブでも演奏してもらえるらしいので、皆さんぜひおいでください。

「タケウチDJ」に投稿する

過去の「サイキンのタケウチ」を読む

HOMEに戻る