サイキンのタケウチ


〔身辺雑記〕

5月8日(火)
 どーも最近、買い出し下山の際にくろべーを同伴するのが習慣になってしまった。別に僕の方から連れていこうとは思ってないのだが、普通にお出かけの準備をしてると奴の方で勝手に盛り上がって一緒にドライブする気になっている。それをぐっととどめてお前だけ留守番じゃーってことにしづらいもんで、つい一緒に連れていくことになる。まあ甘いっていわれりゃそれまでなんですけども。
 で、今日も今日とて黒犬同伴ドライブ。ちょうど行こうと思ってたショッピングモールは犬連れで歩けるし、犬同伴可能店がいくつかあるので、上天気の中を散歩。モール内はいろんな犬のにおいがするのか、くろべーは終始興奮してて、犬好きらしい人が撫でてくれてもろくに見向きもしない。それでいて、ペット不可の店で買物する間に店頭につないでおくと、そーゆー時だけ通行人に愛想を振りまいてるのは何故だろう?
 そんで結局、買いたかった靴やサンダルはサイズが合うのが見つからず、たまたま眼鏡屋の店頭で見かけた「黒ラブぬいぐるみ型眼鏡入れ」なんて代物だけ購入。これではすっかり愛犬家のショッピングではないか。

 さすがにパン屋や図書館や本屋やスーパーに寄ってる間はくろべーも車で留守番。しかし日中はぐんぐんが気温あがってきて、窓をあけっぱなしにしてても車の中は暑くなった。荷室でハアハアいってるくろべーを見てるうちに、この際だから川で遊んで涼んでいこうかと思い立つ。
 帰り道でちょっと遠回りすると、山間の渓流で犬を遊ばせられるスポットがあるのだ。温泉街に近いところで、お湯の流れ込みがある上に川底からも湧出してるようで、水温もそこそこ高い。泳ぐのにぴったり……のはずだったが、このところ大雨が多かったせいか、いざ着いてみたら水量多くて水温低い。水泳好きのくろべーも、ちょっと泳いだ後は全身で水につかるのを躊躇していた。
 まあそれでも足までは平気で入ってたし、川というだけで気持ちがたかぶるらしい。長いこと遊んだ後は疲れが出たようで、車に戻ってもハッチバックからぴょんと跳び乗ることができなかった。川で泳ごうとしなかったのも、自分の体力を鑑みての状況判断だったのかもね。
 考えてみれば、くろべーも結構な歳である(5月1日で11歳になりました)。かつて足腰が弱った時には療法食で持ち直したとはいえ、いよいよ老化が進行してきたのかもしれない。帰宅後は階段を上がるのさえ億劫がってやたらとぐーぐー寝てる姿を見て、今度の夏に川で一緒に泳ごうと思ってたのは難しいかもと気付いた。
 こういう犬中心ののんきな田舎暮らしがいつまでも続くわけじゃないと思うと、多少甘い顔をしてでも一緒の時間を長く持つべきかなって気もしてくる。まあこれからの時期、車の中は暑くなりすぎるからあんまり同伴ドライブもできないんだけれど。

5月21日(火)
 目覚めて寝室の雨戸を開き、おお晴れてるぞーと喜ぶ。今朝は金環日食ってことで、観測用のフィルターがついた科学雑誌の増刊号を買っといたのだ。
 日食のはじまる時間になって、早速そのフィルターで朝陽を眺めてみる。――んがしかし、我が家は森の中にあるせいで、月のせいで欠けてんだか木の陰になってんだか判然としない。やっぱり見やすい場所まで移動じゃーってことで、朝のくろべー散歩を兼ねて出陣。
 今朝の散歩はちょっと大荷物である。いつも散歩の時にはリードだのスコップだのビニール袋だのテニスボールだのが詰まった散歩バックを持参するのだが、今朝はそこに日食用装備が加わる。観測用のA5版下敷き・カメラ替わりのケータイ・同じく3DS・ラジオで日食報道を確認するためのウォークマン・観測中にくろべーを遊ばせておくサッカーボール。ついでにいつもはしない腕時計まで身に着け、準備万端って気分で森の中を進む。基本的に人けのない場所なのでいいけれど、傍から見たらバカみたいかもなーとふと思う。

 目的地は見晴らしの開けたリゾートマンションの駐車場。もっとも、朝陽が昇ってるのは開けた方向じゃなくてマンションや山の方向だったが、まずは駐車場でくろべーとボール遊び。奴がサッカーボールをくわえてごろごろと寝転んでるところで、僕もアスファルトに寝そべって空を見上げる。
 じわじわと太陽面を移動する月の影を眺めつつFM放送を聞いてたのだが、日食の報道もラジオ局によってまるで違うようだ。レポーターがやたらと感動的とか神秘的とか強調してもりあがってる局もあれば、直前までスポーツコーナーでサッカーの話ばかりしてる局もある。なんだってこのタイミングでサッカーの話題なんだよと思ったが、僕も日食を見に行くためにサッカーボールを持参してるんだから人のこたあいえないわな。
 ザッピングの後、音楽を流してる局を聞きながら金環の瞬間を迎えたが、その音楽ってのが見事にドリカムの「時間旅行」だった。――1990年に作った歌らしいけど、ずっと第一線でバンド活動を続けながら22年後の日食を迎えるってどんな気持ちなんだろーなあ。
 1990年ってえと、僕は進学校から予備校に進学した頃だなーとか思うけど、その頃は22年後にこういう場所で大きな黒犬と寝そべりながら金環日食を眺めることになろうとは想像もしなかった。あの頃、僕はダビングしたカセットテープでドリカムを知ったんだけど、そのテープをプレゼントしてくれた女の子はもうこの世にはいない。―― 金環の瞬間の太陽は空に浮かんだ目玉みたいにも見えて、ふっと一つ目の運命神なんてものを連想する。
 天体の運行に比べりゃ人の営みなんて束の間の夢、なーんてのは使い古された言い回しだけど、その短い間におきる展開の醍醐味ってのもあるよなーと思わせてくれる金環日食。邯鄲の枕ならぬアスファルトを枕に、とりとめなくそんなことを考える朝であった。

5月25日(金)
 うちのあたりのリゾート地は、ゴールデンウィークや夏休みなんかより5月中旬〜下旬くらいがいい。常々そう言ってるせいか、今週は火曜と金曜に来客があった。あったんだけど……どっちも見事に雨でやんの。
 この時期、山中で雨が降ると涼しいのを通り越して結構寒い。遠方から来た人には気の毒だったけど……いや例年だったら5月後半って雨が少ない時期なんだよ、ほんと。
 実際、火曜と金曜以外はきれいに晴れて、実に気持ちいい気候だったのだ。来客の日にかぎって狙い澄ましたように雨が降るのは不思議なもんだと思いつつ、ちょっと笑っちゃったりなんかして。

 火曜の来客は雨を気にせず観光したのでおいらは助手席でナビして観光ガイド、金曜のお客は滞在してるペンションに上がらせてもらってチェス。寒いこたあ寒いけど、雨でもそれなりに楽しくやれるもんである。
 辺鄙なところに住んでるせいでチェス相手に事欠く日々を送ってるので、実際に駒を動かしてリアルチェスができるだけで結構嬉しい。そのために自作の木彫りチェス駒を持参したし、チェス盤や駒袋はこのチェスセットのために作ってもらったもんなので、ペンションの御夫妻にも道具自慢を聞いてもらったりなんかして。
 対戦したのはチェス960っていうランダムチェス。初期配置が毎回違うため、定跡の暗記じゃなく戦略を練る楽しさが味わえるルールである。今回も楽しく遊べて満足だったけど、リアルチェスでやる場合の初期配置の決め方って、何かうまい方法はないかなあ?  今は8面サイコロと6面サイコロを使ってやってんだけど、制約にひっかかったりダブったりして何度も振り直さなきゃならないのが問題点。今日のお相手は数学研究者になるのが夢という人だったので、ぱっとスマートに決まる方法がないかなーと相談してみたのだが、その場で名案は出なかった。結局いつものように振り直ししながら駒を並べていったんだけど……誰かこれぞという方法を御存じだったら教えてください!

〔後日付記〕
 その後、960の初期配置を決める方法を整理してみました。
 使う道具は、サイコロでもルーレットでもカードでもくじ引きでもOK。
 ランダムの数字を出して、それに応じたマスに駒を置いていきます。

1・白マス4つに対してBの位置決め。
2・黒マス4つに対してBの位置決め。
3・残り6マスに対してQの位置決め。
4・残り5マスに対してNの位置決め。
5・残り4マスに対してNの位置決め。
6・残り3マスにはRKRの順で配置。

 つうわけで、手順は6段階。個人的にはサイコロを転がすのが好きだけど、1〜6のカードをセットに加えとくと便利かもね。

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