サイキンのタケウチ


〔身辺雑記〕

4月10日(火)
 朝からあったかくてほっとする天気。朝食後、久々に庭仕事にとりかかる。薪にする木を切ったり柴にする枝を折ったり、雪かき以外の作業をするってだけで楽しい。
 一汗かいてから二階に上がり、ちょっとだけ小説書いてから外出。買い出し下山のついでに某カフェにてランチ。さぼってるのではなく、このカフェに寄るのも執筆のための取材なのだ。
 とはいえ、居心地いい空間なので、のんびりと読書も楽しんだ。ドラマ版は見てない『風のガーデン』をシナリオ本で読んだんだけど、不覚にも感涙しそうになってしまった。さすがに平日の真昼間から男一人で泣いてると店の雰囲気をぶちこわしそうなので、花粉症のふりして目や鼻をこすってごまかしたりなんかして。
 カフェを出た後は近くのパン屋へ。今日の夕食と明日の朝食の分を買い、会計しようとしたら、店員のおっちゃんが操作するレジスターに6桁の数字が表示されてびっくり。パン3個お買い上げで42万円ですってなもんである。なんでか知らんが、ここのレジスターは時々とんでもない計算結果を弾き出すんだよね。
 そのおっちゃんと世間話してたら、「ここでお仕事はなさってるんですか?」と尋ねられた。山で暮らしてるって話は前にしたことあったんだけど、特に名前や職業について語ったりはしてなかったので不思議に思われてたらしい。
 平日の昼間からふらふらしてる身なので、職業は何かと聞かれることは結構あるんだけど、働いてるかどうかを問われたのは初めてかもしれない。まあ人から見たら遊んでるようにしか見えないのかもしれないし、宝くじでも当たって一生働かなくていいっていうなら喜んでそーさせてもらうけど、なかなかそうもいかないよな。

 帰りに管理事務所に寄ったら、郵便物の中に『ミステリーズ!』が届いてた。どうやら最新号が発売されたようだし、久々に短編を発表してますんで、よかったら読んでみてください。いちおー、時々は働いているのです。
 掲載されてるのは、『ファンサイトの挑戦状』って作品で、辻堂珊瑚朗無頼控のセカンドシーズン第2話である。以前編集長と話した際、続編かけたら送ってくださいって話になってたんだけど、いつでもと言ってもらった勢いで前作『チェスセットの暗号』から何年か間があいてしまった。
 その間に『イン・ザ・ルーツ』の連載や『カレーライフ』の脚本が挟まって、そっちに集中してた……ってのは言い訳でしかないけれど、舞台の制作現場を体験させていただいたおかげでいろいろ参考になった気がする。なにしろ「サンゴ先生の小説がドラマ化される」っていう設定なので、日テレ制作の舞台づくりの裏側を垣間見られたことからイメージが膨らんだんだよね。
 とはいえ、別に具体的に誰をモデルにしたとかはないのでご安心ください。まあ何かの記念と思い、若手スタッフの方々のお名前を勝手に拝借したりはしてますが……小説の登場人物の名前を考えるのって、どーも苦手なんだよね。自分で考えるのはもちろんなんだけど、うっかりしてると似たような名前をつけたりするし、下手すりゃ同じ名前を使ったりしちゃいそうだし。
 なので今後も、機会があったら身近な人の名前をばんばん拝借してったろうと思っております。「私の名前を使え」という奇特な方がいらしたらご一報あれ。

4月20日(金)
 なんだかいろんな要素に導かれるように、今日は花見の日となった。
 短編小説の手直しを終えたりちょっとした打ち合わせを終えたり、電線にかかる木の枝の処理に来てくれた東京電力の人から下界は満開ですよと知らされたりってのはあったけど、僕は特に花見ってつもりはなかった。本来だったらうちの周りは桜の季節は5月に入ってからなのだ。滅多に人とも会わない山暮らしなので、巷で花見のニュースが流れても特に気にせずすごしてたのだ。
 んがしかし。今日は買い出し&給油&図書館への返却のために下山しよーと準備してたところ、くろべーが何やら勘づいて浮かれだした。「タケウチの様子からするとお出かけだな、てえことはドライブできるな。わーいわーい!」ってな感じで、留守番するってことは考えてもいないらしい。玄関をちょこっと開いた途端、僕より先に外に飛び出しやがったので、留守番させるタイミングを失ったしまった。
 まあお山の朝は雨模様だったし、下界は夕方まで降らないらしいから、下山ついでにくろべー散歩も済ませるかーと乗せてってやることにした。ショッピングモール・ガソリンスタンド・図書館・パン屋と周り、駐車場にとまるたびに周りをちょこっと散歩させてやるだけなのだが、くろべーはそれだけでも行楽気分になるらしく、終始はしゃいでいる。あるいは春ってことで発情期の雌犬のにおいでも嗅ぎつけたのだろーか。
 昼時になったので、スーパーの駐車場に車をとめて駅前の蕎麦屋へ。このところ、なんとなく麺類が食べたくなり、中でも日本蕎麦の香りを妙に思い出すようになってたのだ。このそば屋は普通に美味しい上に蕎麦がきコロッケが食べられるので、くろべーを車に閉じ込めてでも寄りたかったのである。
 そば屋で『ドカベン・プロ野球編』なんぞ読みつつ昼食、食後にスーパーで酒や食材を買い込み、しばらく閉じ込めといたくろべーをちょっと長めの散歩に連れてってやるかーってことに。たしか街中から少し離れたところに公園があったけど、車とめるとこってあるかなーと思いつつ走っていったら、意外な光景が目に入ってきた。満開の桜、露店の派手なのぼりや看板、そして駐車場にずらっと並んだ車が道路から見えてきたのだ。普段はものすごーく地味な場所で、近くを通っても駐車場のありかさえ分からんくらいだったのだが、この時期だけは特別らしく、駐車場も増設されてるようだ。
 おかげで僕も、そーかこの方角一体が公園でここから駐車場に入ってここに止めればいいのかーってのが分かった。「犬のフンを持ち帰りましょう」みたいな看板も出てるとこみると、ペット禁止みたいな公園でもないらしい。こりゃあいいやと立ち寄っていくことに。

 どーやらこのへんでは、この週末が花見の全盛期らしい。週末は天候が崩れそうなので、金曜のうちに楽しんでる人たちが多いのかもしれない。平日の昼間だってのにけっこう人出もあって、くろべーもお祭りムードに感化されたのか妙に興奮している。桜の花より根元のにおいばかりを気にしてるようではあるが。
 こういう場所で屋台を眺めて歩いてると、何か買わなければって気になってくる。昼飯食ったばかりで食材買いこんだばかりってのは関係なくて、お祭りは別腹ってなもんなのだ。屋台の並ぶ道をくろべーと歩き、タイラーメンの看板にふらふらと引き寄せられた。昼のもりそばを大盛りにしなきゃよかったなーと思いつつ、一杯注文。日本蕎麦の後でタイのラーメンってのも日泰麺類対決みたいで悪くないではないか。
 タイラーメンといいつつ、麺は中華麺じゃなくて平打ちの米粉麺、ラーメンというよりタイ料理のクイティアオ・ナームとか、ベトナム料理のフォーと思った方がいいようようだ。僕にはタイ料理とベトナム料理を見分ける知識はないが、屋台手前におかれたセルフサービスの調味料はナンプラーと唐辛子と酢漬け唐辛子と砂糖ってのがタイ料理なんっぽいなーと思う。ベトナムだったらナンプラーのかわりにニョクマムだもんね。
 食べてみるとこれが美味。麺と野菜とひき肉と魚肉系練り物っていういかにもな取り合わせに加え、桜エビがのっけてあるのが風流である。まあタイ料理にはエビって多いから花見の時期に合わせたわけじゃないかもしらんが、桜海老がのってるってだけでなんとなく日本文化が合わさった気がしちゃうね。
 そーいえばオーストラリアに滞在してた時、2週間だけ通った語学学校のランチタイムに、近くのモールの地下食堂(カフェテリア形式だったけど食堂と呼びたくなる場所だった)でこういう麺をよく食べた。――多文化社会のオーストラリアであるからして、カフェテリアには中華料理もタイ料理もベトナム料理も西洋料理も混在してて、中華麺にタイのスープを合わせておかずにインドのタンドリーチキンなんて注文も平気でできたんだよね。
 つうわけで、食べたかった日本蕎麦に加えて久々にタイの麺まで食べられて至極満足。花より団子たあこのことだなーと思いつつ、久々にラクサやバクテーも食べたいな。日本じゃあんまり見かけないけど……

4月30日(月)
 気がついたら今日で4月もおわりかー。てえことは明日でくろべーは11歳だな。
 せめて10日にいっぺんはつけとこーかと思ってるブログだけど、特に書くことがないような……連休とはいえ僕の日常にさしたる違いはなく、リゾート地の道路は混んでるのでなるべくでかけないようにしてるとか、別荘地の人口が増えて綱なし散歩しにくいのが残念だけど来客からいろんなものをいただくおかげで食卓が潤ってるとか、そんな感じの今日この頃。

 特筆すべきこととしては何かないかなーと考えてみて、二つ思いついた。
 昨日めずらしく掃除に励んでいたらベッドの脚に足の指をぶつけてものすごーく痛かった。そして昨夜いつものよーに酒飲んで酔っ払ってたら、階段おりる途中でつるっとすべって何段か落っこちて腰をしたたか打った。どっちも下半身にまつわる痛い思い出である。ガッデム。
 さすがにそれだけじゃ何だかなーと思って他に話題をさがすと……朝の散歩でリスを見たとか、仕事部屋の窓から外を見たらオオルリがとまってたとか、人間だけじゃなく野生動物に遭遇する確率もあがってる気がするな。人が増えると動物は減りそうなもんなのに、なんでだろ。

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