サイキンのタケウチ


〔身辺雑記〕

2月10日(金)
 ご近所さんからお茶に招かれ、くろべーとお邪魔した。まあくろべーはお茶は飲まんけど、お菓子をもらったり女性陣に甘えたりしてご満悦。しゃがんで遊んでくれたお嬢さんに抱きついて押し倒した時にゃあ、さすがに飼い主としてどーしていいか困ってしまったが。
 離れでお茶をいただいてる最中、表で犬の声がすると思ったら、そのお宅の犬、ボクくんがいた。母屋のベランダで大工仕事してるご主人がガラス戸を開けた時に脱走して離れにやってきたらしい。くろべーの気配に気付いて遊びにきてくれたようだが、戸を開けてみたら犬がひとりで訪問してくるってのも民話風で楽しいもんである。
 くろべーは友達犬が現れて更に浮かれてるし、奥さんはその犬にハーネスをつけてるので、そんじゃあ一緒に散歩にいきますかーと誘ってみる。どのみち僕とくろべーは散歩も兼ねて出てきたのだ。奥さんと一緒にそのお宅のもう1頭の犬とお嬢さんも一緒に行くってことになり、3人と3頭で歩くことに。
 2頭のうち、新参者の若い雄犬のユキくんは日頃から散歩でくろべーに会うと吠えかかり、歯を剥いたり飛びかかったりして威嚇したりするのだが、今日は意外におとなしい。ほとんど吠えないし、くろべーが甘え鳴きして近寄った時だけ軽く威嚇するくらい。どうやら、いつも会う時はリードの持ち手がご主人なので気が大きくなってるが、今日の持ち手はお嬢さんなので強気に出られないようだ。不等式で表わすと、

 ご主人+ユキ>タケウチ+くろべー>お嬢さん+ユキ

 ってことになるらしい。犬なりになかなか複雑なパワーバランスを計算して態度を決めてるわけである。よく専門家が、犬の問題行動の大半は人間が原因とかいってるけど、これもそういうことなのかなあ。
 いつもはご夫婦で2頭を散歩させてるとこに僕とくろべーが遭遇するので、今度あったらご夫婦でリードを交換してもらったらどうなるか実験してみたいものだ。「奥さん+ユキ」ってのは順位的にどこに位置するのか、そしてそれはご一家の順位をどの程度反映してるのか、ちょっと興味深い。
 まあいずれにしても、くろべーは彼らを見るなり大喜びで甘え鳴きして駆け寄ることだけは間違いないだろーなー。

2月13日(月)
 冷え込みの続く中、今日は風がなく日差しがあって意外とあったかいので、久々に自宅山荘に行くことにした。プチ引っ越しして今は越冬地暮らしとはいえ、いろいろ必要なもんがあってたまに帰宅したくなるんだよね。
 とはいえ、その帰宅ってのが大変なのである。道路はところどころでアイスバーン化してて気が抜けないし、雪山の積雪は1メーターくらいある上に道路脇は除雪車が飛ばした雪が壁になっている。車止めから自宅までは雪中行軍で、脚がずぼずぼはまって身動きとれなくなるほど。スキーヤーやスノーボーダーが泣いて喜びそうなパウダースノーに両足がずぼっとハマると本当にやっかいで、文字通り這いずるようにして家まで辿りつく。
 んがしかし。こーゆー過酷な環境下では「家に辿りつく」イコール「家に入る」ではない。玄関の扉の前にも雪はしっかり積もってて、その雪をかきださないと中に入れないのだ。なんだかRPGのトラップみたいだよなあ。
 まあしかし、こっちも一応、打開策のアイテムは仕込んである。雪の中から玄関近くにおいといたスコップを引きぬき、わっせわっせと雪かき。一汗かいてよーやく帰宅。なんだって自分の家に入るのにこんな苦労をしなきゃいかんのだか……

 自宅からあれこれ持ちだしたついでに、管理事務所にたまった郵便物を受け取る。今ごろ年賀状を見てるあたりが旧歴もびっくりな季節感。
 中に一通だけ速達があって、見れば読書感想画コンクール(『自転車冒険記』が課題図書に選定されてる)の授賞式の案内状である。管理事務所に速達や書留が届くとスタッフが電話で一報くれるのが通例なのだが、何故か普通郵便の扱いだったらしい。
 版元からは「授賞式が行われるそうです」「もしかしたら、竹内さんにも案内が行くと思います」とだけ聞かされてたんだけど、こうして留守宅に届いてるんじゃ速達の意味ないわな……
 下山途中で昼食に寄ったベーカリーカフェで開封、よーやく式の日程が分かり、『自転車冒険記』をもとにしてくれた絵が2作品ほど入賞してることも知った。主催側からは「ご出席いただき入賞者と親しくご歓談を」なんて書いてあったけど、「交通費につきましてはご容赦のほどをお願いいたします」とも書き添えてある。17日までに返答をってことだが、どーすっか迷うとこだよなあ。
 もちろん絵は見てみたいし、入賞した読者さんたちに声もかけたい(受賞おめでとう&読んで描いてくれてありがとう!)。だけど、自腹で上京ってのはもちろん、その間のくろべーの世話をどうするかってのも、僕にとっては結構な負担なのだ。――どなたかか越冬コテージに遊びにきて、おいらの留守中にくろべーをあずかってくれませんかー?
 ちなみに入賞作はそのうちネットでも見られるようになるらしいみたいだし、主催者の中には毎日新聞社があるので日曜版か何かの誌面にも掲載にものりそうである。相変わらず詳細については知らないんだけど、ご興味ある方はチェックしてみてくだされ。

2月18日(土)
 お昼から近所のバーへ。――別に昼間から酒飲むわけじゃなく、土日はランチ営業をしてると知ったからである。なんで知ったかっていやあ、こないだ夜に飲みに行ったら定休日で、ネットで営業時間を調べたからなんだけどね。
 バータイムの料理もおいしい店なのでランチにも期待。メニューは1種類だけってことだったが、スープとサラダとパスタとデザートがセットになっている。薪ストーブのぬくもりとビル・エヴァンスのBGMも気もちいいバーの店内で食べるランチは期待通りにおいしかったが、何よりそのサラダが印象的だった。
 葉物野菜を何種類か刻んである上に、ゆがいたブロッコリーとサヤエンドウがのってて、粉チーズとビネガーとオリーブオイルって感じでさっぱり仕上げてあるサラダなんだけど、このサヤエンドウが生まれて初めて食べるってくらいうまかったのだ。これまでサヤエンドウってえとぺしゃっと薄くて苦みというかえぐみがある印象だったが、今日食べたのは肉厚であまみがあって、しゃきしゃきした歯ごたえもいい感じ。有機無農薬か何かで有名な農園のすぐ近くにあるバーだから、そこの野菜なのかなー。

 ここらは野菜がおいしいだけじゃなく、パン屋の名店が多いことでも有名である。水がおいしいってだけじゃなくて硬度だかペーハーだかがパン作りに向いてるんだとか。いろんな店のいろんなパンを食べ比べるのも楽しいもんである。
 ランチを食べた帰り道、夕食用のフランスパンを買ったのだが、たまたま焼き立てでまだあったかかった。帰宅後、ちょいと味見と思ってかじったところ、これまた美味でやめらんなくなってしまった。
 フランスパンってえと硬いイメージがあるけれど、焼きたてだけあって皮からしてやわらかいし、小麦の香ばしさや甘みがあってたまらない。こりゃあ冷めないうちに食べた方がいいかもなー……などと考えたのが運のつき。しっかりランチ食った後だってのに、ぺろっと1本完食してしまった。まあフランスパンっていっても買物カゴからにょきっと突き出すでかいのじゃなくてもっと短いやつだし、くろべーと分け合って食べたんだけど、それにしても結構な量だよなーと空になった紙袋を見て思う。
 ま、何はともあれ、うまいもん食ってのんびり暮らすのはいいことじゃって結論にしておこう。

2月28日(火)
 朝起きると暖房を入れ、テレビやパソコンをつけるのがこのところの習慣なのだが、今朝は目の覚める情報が2つ飛び込んできた。
 1つは読者の人がフェイスブックに書き込んでくれた、読書感想画コンクール情報。入選した作品が公式発表となったようで、『自転車冒険記 12歳の助走』をモチーフにした絵画作品もネット上で見られるようになっているのだ。興味ある方は見てみてねってことで、リンク先はこちら。↓

http://mainichi.jp/sp/?kansouga/junior/006.html

 これは中学生の部の優良賞受賞作、牧田茉理乃さんの「旅の終わり、そして始まり」という作品。橋を車輪受けに見立てたってことで、橋梁のワイヤーとスポーク、タイヤの模様と龍の鱗って感じでイメージが繋がっているデザイン性がお見事。迫力ある構図で空に北斗七星まで描いてあって、実に盛り沢山な絵となってます。

http://mainichi.jp/sp/?kansouga/high/006.html

 こちらは高校生の部の優良賞受賞作、添田賢刀さんの「多々羅大橋、鳴き龍」という作品。瀬戸内海にかかる多々羅大橋には龍が天にのぼる音が再現されてる場所があるんだけれど、その音を絵の中に表現した作品になっている。音が上にむかっていく様を人物の視線と点描で表わすテクニックが本格的だし、印象派や新印象派が好きな僕としては嬉しいかぎり。
 朝からこの2作品を見てて、ふっと昔のことを思い出した。そーいえば僕の高校時代、同じ学年に絵の天才少年といわれてる男がいて、こういう読書感想画で何かの賞をとって話題になっていた。今回のと同じコンクールかは覚えてないけど、今年が第23回ってことは、当時が第1回か第2回だった可能性はあんのかな。
 アホ高校生だった僕は、その受賞者の天才少年に、おいらの小説の挿絵を書いてくれよと申し込んで断られた覚えがある(当時から小説書いてたのだ)。考えてみりゃ、それから20年以上たって、こうして自作の絵を描いてもらえるようになったわけで、小説を書いてるだけではえられないイメージの広がりをこうして目にすることができたのは幸せだなーと思う。

 ネットからふと目を離してテレビ画面を見ると、フジテレビの「めざましテレビ」で、4月からのリニューアルが発表されていた。
 病気療養中のメインキャスターの大塚さんが番組を卒業ってことでコメントが読み上げられ、ふーんと思ってたら、そのことを発表してた伊藤アナウンサーまで卒業と付け加えられた。僕が寝起きにフジテレビに合わせてた大きな理由は彼だってので、結構びっくり。
 伊藤利尋アナは大学時代に隣のクラスにいて、語学の授業で一緒だった。なんか学生服を着てた印象の強い真面目な学年で(体育会系は学ランの習慣がある学校だったんだけどね)、共通の知人が「こいつ成績全部Aなんだぜ」なんつって紹介してくれたのを覚えている。
 アホ学生だった僕はびっくりして「そんなに点数稼いでどうすんの?」みたいなことを質問した。別に嫌味いったり文句つけたりするつもりはなく、単純に不思議だったから訊ねたんだけど、伊藤青年は困ったように笑っただけで何も答えてくれなかったっけなー。――20年ほど前の東急大井町線の車内でのやりとり、不思議と今でもよく覚えているのはどーしてだろう。
 その彼が大学出てしばらくしたら「アミーゴ伊藤」なんて呼ばれてラテンな衣装でマラカス降って躍りながらアナウンサーをやっていた。。(Aとってたのはアナウンサーになるためだったんだね)その映像にぶったまげたのが発端でめざましテレビを見るようになり、その後いろいろ問題があっても見続けてきたんだけど、その伊藤アナが卒業じゃあ、朝につけるチャンネルもかわってきそうだな。NHKやTBSはちょっと抵抗あるし、やはり『カレーライフ』でお世話になった日テレだろーか。
 しかし、めざましテレビは大塚キャスターが病気療養に入ってから伊藤くんが司会で回してる感じだったので、てっきり彼が継ぐものかと思ってた。及ばずながらその路線を応援してるつもりだったので、ちと残念である。まあ社内人事のしがらみもあろうし、彼はすっかりいろんなバラエティーに引っ張りだこだから、「めざまし」を離れた方が活躍できるのかもなー。

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