サイキンのタケウチ


〔身辺雑記〕

9月4日(月)
 なんだか最近仕事が忙しい。本来そんなにがつがつ仕事を取ったりはしてないはずだが、働けど働けど別の締め切りが待ってる感覚である。まあ日頃さぼってるせいだろうと言われるとそれまであだが。
 そんな中、昨夜は地元の小洒落たレストランで開かれたミュージシャンの友人のライブに行った。しかし仕事を放り出してというわけじゃなく、その客席で素敵な音楽を楽しみつつゲラチェックに励んでいた。そういうことのできる雰囲気の店だとはいえ、我ながら無粋この上ないよなあ。

 執筆や校正だけじゃなく、契約がらみの案件も幾つか重なってて、出版とか映像化とか二次使用とかの話を一つ一つクリアしていくだけでも結構疲れる。僕は法学部を卒業したから一応法学士って身分なんじゃないかと思うのだが(卒業証書なんかろくに見てないので自信なし)、法律がらみのことって心理的に面倒で仕方ない。たまたま優秀な友人が弁護士になっててくれて本当に助かったよ。
 今朝は知り合いの女優さんに関する契約関係のメールまで飛び込んできた。両者の事情についてはよく分からんので勝手なことはいえないが、なんだって女優さんのマネージメントを行ってるプロダクション(もちろん僕とは無関係)が僕の私的メールアドレス(もちろん非公開)を把握してるんだろうって考えると結構恐い。
 芸能界の仕組みはよく知らんけどおっかない印象があるし、仕事関係というよりは友人として交わしてたメールまで全て傍受されてたなんてことならそれこそ法律問題なんじゃなかろうか。とりあえず本人に連絡とってみようかと電話したけど繋がらないし、こういう時ってただの留守番電話でも何かあったんじゃないかって不安になるよなあ。
 まあ何にせよ、事情がどうあれ法律がどうあれ、まずは友人に味方して応援したいものだ。応援っつっても何していいかよく分からんってのが我ながら頼りないけども。

9月5日(火)
 朝から洗濯機を回す間に翻訳仕事。洗濯物を干していて、二階の方が風が気持ちいいなーと気づく。8月は比較的涼しい一階リビングで仕事するのが基本だったが、今日は久々に二階仕事部屋へ。
 ちょうど短編というかショートショートの依頼が飛び込んできてるんで、それを片付けることに。9時に机に向かい、だーっと書いて書けたーと思ったら10時。きっかり一時間で一本書き上げたわけだ。いくら原稿用紙8枚だからって、この短時間は新記録じゃなかろーか。

 ついでに翻訳に戻っても結構いい調子で仕事がはかどる。やっぱりリビングよりも仕事部屋の方が能率が上がるもんなんだろうか。午後に入ると西日があたって仕事部屋の室温が上がるが、エアコン入れて仕事に励んだ。
 夕方になってレーサーパンツに着替えてくろべー散歩、MTBにリードをつけてひとっ走り。帰宅してドッグフードをあげて、くろべーががつがつ食ってる間にロードに乗り換える。今度はグローブもつけて本格的に走る。
 つっても、長距離は走らず目指すは石釜焼きのパン屋さん。何故かふとサンドイッチが食いたくなったし、冷蔵庫の食料は底を突きかけてるので買出しなのだ。一汗かいてパン買って、日が沈む頃に帰宅。なかなか充実した一日だったと、サンドイッチを肴にビール。僕はカレーも好きだけどサンドイッチも結構すきなのだ。

9月7日(木)
 翻訳仕事、ばりばり進んで一日の翻訳ページ数の最高記録更新。
 どーも僕は、地の文よりも会話が多いページの方が翻訳しやすいようだ。そのへんは小説を書く時と一緒だろうか。いや『じーさん武勇伝』や『オアシス』のスタイルは別格か。
 ここに来てペースが上がったのは、今週に入って小説の仕事が長編も短編も一段落したってのも大きい気がする。自らいろんな形式の文章を書きたがってるくせに、何だかんだいいながら一作品に集中する方が能率は上がるみたいである。

 あと、暑い盛りを過ぎて仕事部屋にこもれるようになったってのが大きいかな。やっぱり仕事専用のスペースの方が能率が上がるし、仕事してて気持ちいい。
 今日は意外と蒸し暑かったので昼下がりだけ仕事部屋から離れたが、その間に車転がしてスーパーで買い出し。執筆性脳貧血(仕事の後でぼーっとすること)でからっぽになった頭にはいい気分転換になった。たまたま冷凍食品半額セールにもでくわしたし。
 それにしても、仕事に集中すると家事をするのが面倒で仕方ない。冷食とレトルトとインスタントの手抜き食事ばっかりな上、掃除も全然してねーなー。困ったもんだ。

9月10日(日)
 新しいデジカメを購入。理由はいくつかあるが、来週旅行に行く予定ってのと趣味の木彫りで荒削りが終了したってのが大きい。35歳独身の身としてはもーちっと色気のある理由はないのかって気がしないでもないが。
 それでも帰宅後は早速くろべーと彫刻の2ショットで写真を撮りまくる。ここまで進んだぞーってのをブログで見せびらかすこともできるし、一緒の写真におさめることで今後の微調整に役立つんだよね。

 買い物といえば、電器屋の前に寄ったコンビニで買ったアサヒ本生クリアブラックは美味だったし、電器屋の後で寄った本屋で見つけたピュアフル文庫の新刊『告白。』も面白かった。今日は買い物運のある日だったようだ。
 『告白。』はアンソロジー本なんで、各作者のプロフィールや文章をぱーっと一通り眺めたものの、まだ芦原すなおさんの短編しか読んでない。つうかそれが目当てで購入したのだ。
 『雨鶏』の解説を書いた時、僕は混沌と純化っていうキーワードで初期芦原作品を概観したけど、その後の芦原作品群も混沌系と純化系に大別できる。『告白。』に載ってた『木霊』って短編も、これは混沌系かなあと思いながら読み進めたのだが……
 いやあ甘かった。前半のたくさんのファクターが後半のどんでん返し的展開で収束してきれいに純化していく構成には目からウロコだった。僕の記憶では久々に書籍レベルで活字になった新作だけど、短いとはいえこれは結構エポックメイキングな作品ではなかろーか。

〔タケウチDJ〕
 今回紹介するのは、こないだ発売された『ダ・ヴィンチ』10月号にのってる『手のひらの星空』がらみでいただいたお便り。まだ発売数日なのに、メールやら電話やら直接やらで結構な感想をいただいてます。短編小説でこんなに反響あったの初めてかなーと思いつつ、やはりメジャーな雑誌だと違うもんですな。
 差出人は本名で名乗っておられたんですが、かつてのハンドルネームで紹介するなら「茨城の田舎に住む大学生」さんですな。2年前には「司書を目指して勉強中」といってた彼女も、今は立派な図書館員さんだとか。

> 今日「ダ・ヴィンチ」読みました。
> ビー玉と星空って綺麗でいいですね。
> ごろんと寝転がって星空を見上げたくなりました。
>
> でも今日お話ししたかったのはそのことではなくて。
> えっと、この前横浜のカレーミュージアムに行ったんですよ。
> 竹内さんは行ったことありますか?

 さすがはタケウチ作品の読者、色気より食い気ってのが伝わってくる文面ですな。いやおいらの短編に色気があるってわけでもなかろーけど。
 カレーミュージアム、もちろん行ったことありますよ。マスコミ向けのプレオープンにも行ったし、某写真誌の企画で紹介&判定役みたいな仕事もしたことあるし。
 あのへんまで行った時にふらっと寄って飯食うのにもいいよね。フードテーマパークの中には立ち寄るだけで入場料をふんだくるとこもあるけど、カレーミュージアムは無料で入れるのが偉い。

> お目当ては、「恐るべきさぬきうどん」でも紹介されていた
> 香川代表の五右衛門のカレーうどん!
> まろやかカレーうどんに温玉をトッピングして食べました♪
> カレーは美味しかったですが、やっぱりうどんの麺は期待
> した程ではなかったです。。。
> カレーメインだから仕方ないのかな。
> それとも美味しいうどんを食べるには香川まで行かなく
> ちゃダメなのか。

 そうですな。僕の独断と偏見でいわせてもらうなら、「さぬきうどんはカレーうどんに向いてない!」
 せっかくコシがあるんだからそのまま関西ダシで食べるのが一番だよ。カレーうどんには、もっと細かったり柔らかかったりしてるうどんの方が向いてると思うな。上州手振りうどんなんて、カレーの風味と絡みやすいの何の。

> それから琉球カレーのお店で「ラフテーカレー」を食べました!!
> すごく甘かったのでかなりびっくり。
> 「カレーライフ」で出てくる沖縄のカレーは別に甘くはないですよね?
> あの甘いカレーはあそこのお店独自の物だったのでしょうか。
> 子ども用の甘口カレーよりもさらに甘い。でもカレー。
> なんだかとても不思議な味でした。

 実のところ、『カレーライフ』の作者はラフテーカレーってのを食べたことはありません。いや自分で作ったことはあるけどさ、俺が沖縄に取材に行った頃はラフテーカレーを出してる店なんて見当たらなかったのよ。
 もともとラフテー自体が黒砂糖やら何やらで甘味をつける料理だけど、カレーにする際にその甘味を活かして他との差異化をはかったのかな。

> お土産コーナーには日本全国の色んなカレーのレトルトが売っ
> ていたので、おでんカレーを探し回りましたが残念ながらなか
> ったです(>_<)
> あれだけ色々あるならおでんカレーもあっても良さそうなのに。
> ホントいろんな種類があるんですよ。
> カレーの懐の深さを感じましたね。

 他の『カレーライフ』の読者の方が、おでん缶を発売してる会社に「新製品でおでんカレーを」って企画を持ち込んだそうだけど、まだ実現してないみたいですな。そのうちどっかが発売してくれるのを待ちましょう。
 つうか、開発にあたっておいらにプロデュース依頼とかこないかなー。あれこれ味見して何だかんだと口出しするのって楽しそうだけど。

> 一回では全部のお店を回ることができなかったので、また行くつもりです。
> そのときは先にカレーライフを再読してからにしたら、
> もっと楽しめそうな気がします。

 そーですね。文庫版持参でお店めぐりなんて楽しいんじゃないでしょーか。今回のメールを読んでいて、ずいぶんとタケウチ作品との接点があるもんだなーとあらためて驚いたし。
 ていうか、カレーミュージアムの売店で文庫版『カレーライフ』を売ってくれりゃあいいのにね。でも書籍流通って難しいのかな。集英社がそういう営業努力をしてくれるとも思えんし……
 『図書館の水脈』じゃないけど、「カレーミュージアムで行列の待ち時間、お互い『カレーライフ』を読んでたことから知り合って……」なんてストーリーはどうだろう? そんなカップルがいたらおいらはちょっと羨ましがりつつ嬉しいぞ。

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