改めて手紙を読み終えると、いろいろなことがすっきりしたような気がした。僕は


手紙を片付け、明かりを消して布団にもぐり直した。


 やはり僕にチケットを送ってきたのは彼女だったのだ。それは認めないわけにいか


ない。チケットだけが入れられた封筒こそが、彼女から僕に向けられた第6の手紙だ


ったのだ。


  それくらいは最初から分かっていたはずだった。だけどそれを認めようとしなかっ


たのは、たくさんの可能性を一つに限定してしまうことを無意識に恐れていたからか


もしれない。


 ──確かに、このチケットは彼女が送ってくれたのかもしれない。だけど、だから


といってこの席に座れば隣に彼女がいるとは限らないじゃないか。彼女は離れた席か


ら僕の様子を眺めてほくそえんでいるのかもしれないし、真後ろの席で澄ましている


のかもしれない。いや、そもそも彼女がそこに来るかどうかも怪しいんじゃないだろ


うか?


  それは他愛のない猜疑心だったのかもしれない。だけど布団の中でふと気がつくと、


それはいつの間にか期待感とでもいうようなものに変わっていた。ブンガならきっと、


それを物語の予感と呼ぶだろう。


 一体何が飛び出すのか──彼女なら、思いもよらないことをやってくれかもしれな


い。それに乗せられてみるのも悪くない。可能性は無数にあるのだ。うねりに身を投


じることでしか物語を先に進めることはできない。物語の中に身を置くことで、何か


を掴むことができるはずだった。


 そんなことを考えながら、僕はいつしか眠りに落ちていた。






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