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 作成者・池田博明

    「49才の少年」

     宮川 和幸     1985年

  佐々木昭一郎を語る  ピッコロ・フューメ 佐々木作品上映会パンフより 

 イタリア・ハンガリーのロケに同行して、佐々木さんに対する印象を、三つ程持ちました.先ず、いつも少年の心を持っているという事ですね.人間でも動物でも少年の心で捉えすぐに仲良くなってしまう.好奇心や感受牲が強いんです.例えば音に対する感覚.
 何でもない音、例えば、小川のせせらぎの音だとか木のそよぐ音なんかに対して非常に敏感なんです.木がそよぐ音がして、突然「あの木を撮ってくれ」って言ったりするんですよ.音の使い方は天才的だと思います.音の方が絵よりもイマジネーションを拡げてゆけますから.佐々木さんは、ラジオドラマが基本になって映像を創りあげてきていると思います.だから.音だけ聞いていてもイメージが沸いてくるんです.

 もう一つは、誰とでも仲良くできる事です.ロケの一ケ月前にシナリオハンテイングをやるんですけど、短期に出済交渉を決めるんですが、初対面の外国人でもすぐうちとけて仲良くなる.言葉なんか使わずに分からせる才能がありますね.この辺はちょっと宇宙人的な所がありますね.そして、友達になっているか故に自然な演技を引き出せるんでしょう.それから、作品に仕上げていく上で役者を自分のべースに巻き込んでその気にさせてゆく.才能ですね、これはやはり凄いものです.人間としての魅力があったからこそ、あの作品が生まれたと思います.

 次に、自由への憧れが,強いですね.束縛されたり、与えられた仕事をやるというのが嫌いなんです.台本がきっちりとあって、その通りに撮っていくという事はしない.大きなねらいとイメージで撮っていくんです.遠くへ行きたいという思いを常に潜在的な欲望として持っているんです.この辺が少女の心の旅を描ける所以でしょう.そうそう、佐々木さんは熱中すると食事をしなくなります.だから、食事時分になっても食事の事など忘れてしまう.けれどスタッフは皆お腹か空いています.「昼飯にしましょうか」僕の一番重要な仕事はスタッフに食事をちゃんととらせることでした.ハンガリーの葡萄園で収録した時ですが、出演してた人達か皆消えてしまった.向うでは12時〜1時まで必ず昼食をとります.後でサンドイッチをさし入れてくれた人は「日本人は食事せずに仕事をするのか?」と真面目な顔をして聞きました.

 ロケの後、編集室にちょいちょいのぞきに行きました.5万フィート約26時間撮ってましたから《》、ラッシュ見るだけで一週間はかかりますね.編集マンは、メシが食えないと言って泣いていました.
 佐々木さんは特異な才能・性格を持っていて、それにうまく巻き込まれて楽しかったですね.苦しいことでも、熱き思い・熱き感情に駆られて、さほど辛くありませんでした.  (談) 

 <「川の流れはバイオリンの音」の演出助手>
 《註》佐々木昭一郎氏によると、この言葉は誤りである。正しくは放送時間の5倍である、と(2002年)。

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