図書館員のためのパソコン・インターネット入門 第46回

インターネットで旅情報を収集


 インターネットには、いろいろな活用法、楽しみ方がある。すでにプロバイダーと契約している人は、自分なりの楽しみ方を見つけているだろが、まだインターネット始めていない人は、面白そうだなという興味は持っていても、本当のところどんな利用法があるのか、疑問に思っているかもしれない。今回は、僕自身の体験を交えながら、インターネット利用法のひとつ、旅行情報の収集について紹介しよう。

カナダ旅行にインターネットを活用

 97年11月夫婦でカナダ旅行をした。 僕もうちの奥さんも鉄道旅行が好きだ。日本国内でも、東京から札幌まで寝台特急の「北斗星」に載ったこともある。カナダ国内でも鉄道旅行をしてみたいと考えていたが、実際にどんな路線があって、どのくらい列車が走っているかなかなかわからなかった。
 カナダは日本と違い、実用的な交通手段は飛行機かバスだ。鉄道はトロント、モントリオールなど東部の大都市間や、近距離以外は、観光用が中心になっている。例えば、東部のモントリオールやトロントと西部のバンクーバーを結ぶ大陸横断鉄道は、週に1、2本しか走っていない。
 日本国内で売っているガイドブックを調べても、「大陸横断の鉄道の旅」という大ざっぱな記事は載っているが、具体的にどんな路線があるか、ダイヤはどうなっていて、何日で大陸横断できるか、料金はいくらか、など詳しいことは全然わからない。日本国内の旅行会社に頼めば調べてもらえるだろうが、時間もかかりそうだし、自分の好みのスケジュールが組んでもらえるかどうかわからない。
 そこで、インターネットで調べてみることにした。
 検索サーバーの老舗のYahoo!には各国版もある。日本版のYahoo! Japan を活用している人も多いだろう。カナダには、Yahoo! Canada(http://www.yahoo.ca/)があるので、そこで検索してみると、カナダ国内の鉄道会社「VIA Rail Canada」のサイト(http://www.viarail.ca/en.index.html)や長距離バス会社のサイト「greyhound canada」(http://www.greyhound.ca/)が見つかった。

海外の鉄道・バスのダイヤを調べる

 早速、「VIA Rail Canada」のサイトに飛んでみると、大陸横断列車のダイヤが、予約状況までわかった。しかも、その場でクレジットカードを使って切符を買うこともできる。詳しく見ていると、地図には鉄道線路が記入されているが、貨物しか走っていなくて、旅客列車は走っていないところがあることもわかった。
 結局、調べていくと、大陸横断鉄道は、人気が高いようで、寝台車はすべて満席。普通の座席なら空席はあるが、大陸横断するには、3日間くらい乗り続けなければならないから、料金は安いが座席では大変そうだ。ガイドブックで調べてみると、座席は学生などが利用することが多いらしい。
 カナダで鉄道旅行をするのは無理かなと思ったが、さらに調べていくと、別に、バンクーバーから、ロッキー山脈を越えて、バンフまで2日間かけて走るロッキー・マウンテニア号という列車ツアーのサイト(http://www.fleethouse.com/fhcanada/rocky_hm.htm)が見つかった。バンクーバーとバンフの間の町のホテルに一泊し、列車は景色の見える昼間しか走らないという面白そうなツアーだ。こちらは、まだ空席もあり、適当な便もあったので、それを予約することにした。これも、ガイドブックに短い記事は出ていたが、細かいスケジュールはホームページで調べるまでわからなかった。
 「greyhound canada」おホームページでは、多数ある路線のダイヤが細かく全部調べることができる。カナダ国内では、都市と都市の間の短距離、飛行場から町までなどの細かい移動はバスに頼ることになるが、細かいダイヤは日本で調べてもよくわからなかった。まあ、いざとなれば、タクシーでと考えておけば、その場で調べ照れば何とかなるが、事前にダイヤがわかるのは安心だ。
 特に、読むのはまだしも、英語を話すのと聞くのは苦手だから、事前に情報がわかっているほが、何かと役に立つ。

国内旅行に関する情報も豊富にある


 僕は、パック旅行ではなく、自分でスケジュールを立てる「個人旅行」をすることが多い。しかし、自分でスケジュールを組むといっても、市販のガイドブックだけでは、どうしても情報不足になる。下手すると、パック旅行とそれほど変わらないことになってしまう。せっかく自分だけの個人旅行をと思っているのに、手間とお金だけかかって、内容はパック旅行と同じというのでは面白くない。
 自分なりの満足できる旅行をするために重要なのは、事前の情報収集だ。と言っても、特に海外旅行となると、ガイドブックや旅行雑誌以外に、情報を集める方法はなかなかない。そんなとき役に立つのが、インターネットのホームページだ。インターネットでは、自治体や企業だけでなく、そこに住んでいる人もホームページを開いて、地元に住んでいなければわからないような観光スポットや、美術館、博物館、おいしいお店の情報を載せている。旅行してきた人が、体験に基づいた役に立つ情報を公開していることもある。
 インターネットは、海外だけではなく、国内の旅行でも役に立つ。この記事を書くのに、Yahoo! Japanで「旅行」というキーワードで調べてみたが、以前に比べて、飛躍的にサイトの数が増えていた。各県別に分類された旅行に関するホームページの一覧を見ながら、説明を読んでみても、面白そうなところがたくさんある。
 どのページも写真満載で、旅に出かけずに気分だけ味わうこともできそうだ。情報収集というだけでなく、ホームページをいろいろ見ていくだけで、テレビの旅番組を見ているような楽しみ方ができる。これも、インターネットの面白いところだ。

 すでに、インターネットを始めている人にはミミタコの話だろうが、こんな便利で役に立つものが、パソコンを買ってプロバイダーと契約するだけで利用できる。パソコンは20万円以下で最新機種が手に入るし、月々かかる費用は、電話料金も含めて、数千円から1万円くらいだ。パソコンは苦手という人には、テレビとつないでゲーム機感覚でインターネットの見られるウェッブTVのようなサービスもある。
 もちろん、インターネットには、旅に関するもの以外にもいろいろな楽しみ方がある。この機会に始めることを考えてみてはどうだろう。

図書館員のためのパソコン・インターネット入門 第47回

インターネットのリファレンス


 無数にあるインターネットのホームページは、検索サーバーを使うことで、ひとつの大きなデータベースになる。この話は、以前この連載でも書いたが、それ以外にも、インターネットには、新聞記事、百科事典など、あらかじめ作られたデータベースを提供しているページもある。
 ホームページ全体からは、思いもかけないデータが拾い出せる面白みがあるが、紙の百科事典を引いたり、過去の新聞記事を検索するのは、もっと確実に必要な情報を集めることができる。
 以前は、オンラインデータベースは、ニフティサーブなどのパソコン通信で使うものだった。しかし、インターネットが普及して、ホームページで検索のできるオンラインデータベースも増えてきた。
 僕は、『ニフティサーブ・オンラインデータベース徹底活用マニュアル』など、パソコン通信のオンラインデータベース解説書を書いていることもあって、インターネットで有用なデータベースが増えているのには、注目していた。今回は、百科事典、新聞記事データベースなど、インターネットで使えるリファレンスについて紹介しよう。

オンライン百科事典は役に立つ

 日本では、平凡社の世界大百科事典など、百科事典のCD-ROM化が進んでいる。CD-ROM百科事典は、従来の紙の事典に比べて、場所をとらないし、キーワード検索が簡単にできるという利点があるが、最新の情報が入れられないという点では、インターネットのホームページにかなわない。
 普通の人なら百科事典を調べる機会はそれほど多くない。CD-ROM版の百科事典はけっこう効果だから、買うのはちょっとためらってしまう。しかし、インターネット上で同じように百科事典が検索できるなら、たとえ、1回の検索に別料金がかかっても、お得ということになる。しかも、最新情報が常に更新されているから、最新語や出来事について調べるのも有効だ。
 百科事典のサイトは、残念ながら、日本語のものはまだ見つけていないが、アメリカにはいくつか役に立つサイトがある。2月にスタートした「Funk & Wagnalls Knowledge Center」(http://www.funkandwagnalls.com/)は、百科事典の老舗として知られているFunk & Wagnalls社のサイト。文章の他に、写真、音声、アニメーションもあって、単に調べるだけでなく、読んでいくだけで楽しくなるようなオンラインの百科事典だ。通信社のロイターのニュースも読めるようになっている。
 正式オープンは4月15日で、それまでは、試用期間として無料で使うことができる。あと少ししか時間がないが、興味のある人はアクセスしてみよう。正式オープンすると、年間利用料金は14.95ドル。
 また、すでにあるものとしては、「Britannica Online」(http://www.eb.com/)も面白い。利用料金は年間85ドルとちょっと高いが、それだけの価値はある内容になっている。
 以前はインターネットというと、無料で面白いページがいろいろ見られる(電話料金やプロバイダーの料金はかかるが)というイメージだったが、最近は、クレジットカードでの支払いを登録、毎月や毎年の利用料金を支払って使うサービスも増えてきた。百科事典や新聞記事データベースなど、データの収集や構築、運営にお金のかかるものは、有料になるのは仕方のないところだ。
 書籍にしても雑誌にしても、有用な情報を手に入れるにはお金がかかるものだから、インターネットもそうした方向に進んで、その分、今以上に役に立つ情報が(もちろんリーズナブルな料金で)手に入るようになってほしい。

アメリカの新聞のサイトを楽しむ

 百科事典以外に新聞記事を収録したサイトも役に立つ。新聞といっても、世界中に無数の新聞があり、目的のものを探し出すのが大変だが、そんなとき役に立つのがノースカロライナ州立大学グリーンズボロ校が作っている世界の新聞サイトが一目でわかるリンク集「News and Newspapers Online」(http://www.uncg.edu/lib/news)のページ。
新聞サイトを集めたリンク集は他にもたくさんあるが、ここは、アメリカ、ヨーロッパ、アジアなどの地域から州や国名を選ぶと、その地区のオンライン新聞のリストが短い解説とともに表示される。これが目的の新聞を探すのに大変使いやすい。
 掲載されているサイトも、利用が無料であること、頻繁に更新されること、要約ではなく記事全文を掲載していること、一般の新聞であることなどの基準で選ばれているので、その場でクリックしてそのサイトに飛べば、すぐに新聞を読むことができる。語学に自信のある人、海外に関心のある人は、このページを使えば、何時間でもインターネットで楽しむことができる。
 「News and Newspapers Online」に集まっている新聞は、その日の記事、あるいは少し前のまでの記事が読めるものが中心。それでも、世界中のいろんな情報に触れることはできるが、新聞記事を事典やリファレンスのように使うには、記事の検索ができるといい。 サンフランシスコの新聞「San Francisco Chronicle」(http://www.sfgate.com/)など、アメリカの新聞は過去にさかのぼって新聞記事の検索が出きるものがある。これなど、百科事典にまだ載っていないような最新情報を調べるのに有効だ。
 以前から、パソコン通信で、海外も含めた新聞記事の検索ができて、僕も仕事に利用していたが、インターネットでできるようになると、さらに使いやすくなる。画像などがその場で見られるのも、インターネットのいいところだ。

日本の新聞のサイトも充実してきた


 英語のサイトばかり紹介してきたが、日本の新聞も最近はサイトを開いて記事を提供するところが増えてきた。その日の記事などは、無料で読めるところがほとんど。これは、インターネットを始めた人なら、一度はのぞいてみたことがあるだろう。新聞の宅配もあるし、テレビも見られる日本国内では、それほど役に立つとは思わないかもしれないが、海外にでたときには、これが役に立つ。
 また、最新の新聞記事が読めるだけでなく、過去にさかのぼって記事の検索できるサイトもある。朝日新聞は、通常の記事を見るサイトは http://www.asahi.com/ だが、そのページにある検索機能を使うと、1985年以降の全記事からキーワード検索ができる。検索すると、どんな記事があるか、タイトルと発行年月日などは見ることができるが、全文を読むためには、月5200円の利用料金を払って「asahi.com perfect」に登録する必要がある。「asahi.com perfect」には、14日間すべてのサービスが無料で使える「お試し購読申込み」があるので、興味のある人は試しに使ってみるといいだろう。
 月5200円は高いと思うかもしれないが、それだけで、データベース検索は使い放題。僕が仕事の関係でニフティサーブの朝日新聞の記事データベースを使っていた頃は、1分間80円といった高い料金設定で、月に1万円以上かかっていたから、それから比べると安くなったと言えるかもしれない。
 読売新聞は、ヨミネットというプロバイダーサービスをやっている(http://www.yominet.or.jp/)。ここは、YOMIDASという読売新聞の記事データベースがあるが、他のプロバイダーを使っている人なら、月700円で、記事検索サービス(3年分)やその他のコンテンツの利用ができる。過去3年と限られるが、これも役に立つサービスだ。

図書館員のためのパソコン・インターネット入門 第48回

ページを保存する


 ブラウザでいろんなホームページを見ていると、資料としてそのページをそのまま保存しておきたくなることがある。Internet Exploler でも Netscape Communicator でも、[ファイル]→[名前を付けて保存]で、そのときブラウザに表示しているページをHTMLファイルとして保存することができる。しかし、あとから、保存したファイルをブラウザで開いてみると、画像が表示されないことに気がつくはずだ。
 ちゃんと保存したはずなのに、何で? と思うかもしれないが、これはホームページの構成が関係している。ホームページを作っている人はもちろん知っていると思うが、ブラウザに表示されるページは、ひとつのファイルだけで構成されているわけではない。
 HTMLファイルに含まれるのは、テキストのほか、画像やテキストなどの配置(レイアウト)の情報だけ。ページに表示されている画像や音声ファイルのデータは、それぞれ別のファイルとして存在している。だから、もし、画像も含めてページを保存するなら、ひとつひとつの画像を個別に保存していかなければならない。

ホームページの保存は手間がかかる

 具体的には、それぞれの画像のところをマウスで右クリックして、開いたメニューの[画像を名前を付けて保存](Internet Exploler の場合は、[名前を付けて画像を保存])をクリックして保存を繰り返していく。画像の数が多いページでは、けっこう手間のかかる作業だ。
 しかも、そうやって、HTMLファイルと画像ファイルをすべて保存したとしても、ブラウザでうまく表示できないことがある。これは、ホームページ上では、画像ファイルがまとめてひとつのフォルダ(ディレクトリともいう)に保存されているためだ。たとえば、HTMLファイルのひとつしたに、images という名前のフォルダを作って、そこに画像ファイルを入れ、そこから読み込むように指定している。
 その場合は、自分のハードディスクに保存するときも、images というフォルダを新しく作って、画像ファイルはそこに保存するようにしないといけない。こうした作業をして初めて、ホームページを完全に保存することができる。つまり、けっこう面倒な作業なのだ。
 どうして、保存がこんなに面倒なのかには、HTMLファイルの構成ということもあるが、実は著作権などの問題も関係している。インターネットでホームページを見るときには、ホームページのサーバーから自分のパソコンのハードディスクへ、HTMLファイルや画像ファイルをダウンロードしている。正確にいうと、これは「複製」をしていることになる。ホームページを見ていくだけで、どんどん複製ができることになると、著作権が侵害される恐れが出てくる。
 しかし、ハードディスクに保存されたファイルは、一定時間が過ぎたり、一定の量を超えると、どんどん削除されていく。オフラインでブラウザを使っていると、少し前にアクセスしたページはだんだん見られなくなるが、これはそういう仕組みがあるからだ。
 ホームページアクセスしたときは、ダウンロードをしてどんどん複製をするが、それはずっと取っておくものではない。これが、著作権を守るために、インターネットがとっている方法のひとつなのだろう。

自動巡回機能を使って保存する

 でも、これでは、やはり不便だ。最新のブラウザでは、Internet Explolerなら、[お気に入り]→[購読]、Netscape Communicatorでは、Netcaster というソフトを使うことで、ホームページの保存がもっと便利にできる。
 Netcaster は、本来は保存をするためのソフトではない。最近のインターネット技術のひとつにブッシュ技術というものがある。これは、自分からサイトを探して情報を集めてくる(引き出してくるので「プル型」)ではなくて、そのサイトの情報が自動的に自分のパソコンに送り込まれてくる形のものをいう(プル型の反対なので「プッシュ型」という。ニュース配信のサービスなどがある)。
 実際には、プッシュ型とっても、テレビやラジオのように、情報が勝手に流れてくるのではなくて、ブラウザで設定をしておくと、自動的にそのサイトにアクセスして更新されているファイルをまとめてダウンロードしてくる方式だ。つまりこれを利用すれば、プッシュ型のサービスを提供している特別のサイトでなくても、あるページの情報をまるごと保存してあとから、オフラインで見ることができるわけだ。
 Netcaster は、「スタート」→[Netscape Communicator]→[Netscape Netcaster]で開くことができる。[Netscape Communicator]をすでに起動しているときは、[Communicator]→[Netscape Netcaster]でもいい。

Netscape Netcasterでページを丸ごと保存


 Netcasterのウインドウが開いたら、まず、「新規」ボタンをクリックする。「チャンネルのプロパティ」という画面になるので、「場所」の欄に、保存したいホームページのURLを記入して、「名前」の欄には、適当なものを入れる。「このチャンネルまたはサイトを次の間隔で更新」のチェックは外しておく。
 次に、「キャッシュ」のタグをクリックして、「サイトを□レベルの深さまでダウンロード」を指定する。この数字は、「場所」の欄に指定したURLから、何段階下のページまで保存するかを示したもの。ひとつのページだけ保存したいなら、「1」でいいし、あまり数字を多くすると、大量のページをダウンロードすることになって時間がかかりすぎてしまうので、多くても「2」か「3」くらいにしておいたほうがいいだろう。
 また、大量のファイルの保存を避けるためには、「情報を□KB以上保存しない」の設定を少な目にしてもいい。デフォルト(規定値)では、5000(約5MB)だが、特に、28800bpsや33600bpsのアナログ回線で接続している人は、もう少し少な目にしたほうがいいだろう。
 「OK」をクリックして設定を終えると、Netcaster にそのホームページが、自分が付けた「名前」でチャンネルとして登録される。そこを、右クリックして[更新を開始]を選ぶと、ダウンロードがスタートする。ダウンロードが終了したあとで、そのチャンネルをダブルクリックすると、ブラウザにそのページがに表示される。
 興味のあるホームページを見つけて、そのサイトをまとめてゆっくり見たいときには、このNetcasterを使うといい。あるサイトの全体を見るには、何度も何度もホームページ上のリンクをクリックしていかなければならないが、Netcasterを使えば、自動的に、しかも手動よりも短時間にホームページ全体を保存することができる。

 Internet Exploler の場合も、同じように「お気に入り」の中の「購読」を使うことで、ホームページ全体の保存ができる。これについては、連載の第29回の、Internet Exploler 4.0の自動巡回についての解説で詳しく紹介したので、参照してください。

図書館員のためのパソコン・インターネット入門 第49回

98年夏、Windows98登場


 95年11月に、Windows95日本語版が発売されて、2年半。98年の夏には、次期バージョンのWindows98が発売される予定だ。すでに、β3バージョンまで配布されていて、雑誌などでも、Windows98に関する詳しい記事を見かけるようになってきた。
 今回は、Windows98にどんな新機能がプラスされているかを紹介しながら、Windows95からアップグレードしたほうがいいのかを考えてみよう。

Windows95のいろいろなバージョン

 Windows98の解説をする前に、Windows95についてもう一度おさらいしておこう。
 Windows95と言っても、何度かバージョンアップされているので、いくつかの種類がある。自分のWindows95がどのバージョンかを確認するには、デスクトップの[マイコンピュータ]のアイコンを右クリックして、[プロパティ]をクリックする。開いたウインドウの「Microsoft Windows 95」の下に、「4.00.950……」とあるが、これでWindows95のバージョンがわかる。
 「4.00.950」と後ろに何もついていなければ、95年11月に発売された最初のバージョン。「4.00.950a」と「a」がついたものは、「サービスパック1」を加えたバージョン。「4.00.950a」は、最初のWindows95のバグを修正したり、ネットワーク機能を強化したもの。Windows95がプリインストールされたパソコン(96年末まで、それ以降は後述のOSR-2になる)は、この「4.00.950a」になっている。
 「サービスパック1」はマイクロソフトのサイト(http://www.microsoft.com/japan/win95/s-pack/)からダウンロードできるので、「a」のついていない人は、手に入れてインストールしておくといいだろう。
 Windows95にはこのほかにも、いろいろな追加モジュールがあって、マイクロソフトのサイトからダウンロードできる。関心のある人は、http://www.microsoft.com/japan/win95/modules/ にアクセスしてみよう。

 「4.00.950B」は、96年末以降のWindows95パソコンにプリインストールされているもの。USBなど、新しいハードテクノロジーに対応しているので、ソフトウェアとしては発売されていない。このバージョンは、OSR-2(OEM Service Release 2)と呼ばれるもので、サービスパック1に比べて、ずっと大きなバージョンアップになっている。
 一番大きな改良点は、ディスクのフォーマットが、FAT16という方式からFAT32に変わったこと。これによって、2GB(ギガバイト)以上のハードディスクも1パーティーション(1つの区切り)でフォーマットできるようになり、クラスタ(ハードディスクやフロッピーディスクを使うときの最小単位)のサイズも小さくなったので、ハードディスクのパフォーマンスが向上した。
 残念ながら、「4.00.950a」のユーザーは、パソコンを買い替えなければ「4.00.950B」を手に入れることはできない。FAT32を利用するには、Windows98まで、待たなければならないことになる。

Windows98の便利な機能

 さて、Windows98だが、Windows95は、OSR-2で機能が強化されていることもあって、Windows3.1からWindows95のように大きく変わるわけではない。それに、一番大きな変化は、Internet Exploler 4.0 に含まれているアクティブデスクトップですでに登場している部分だから、実はあまり目新しいものはない。より使いやすくなって、しかも安定するというのが全体の印象だ。
 アクティブデスクトップについては、すでに解説したので、その回を参照してほしいが、Windows98になると、Windows95+Internet Exploler 4.0 では動作が不安定だったアクティブデスクトップがうまく動くようになるだろう。
 アクティブデスクトップの考え方は、自分のパソコンとインターネットをシームレスにつなげてしまおうというものだ。Windows95では、パソコンのハードディスクはエクスプローラで見て、インターネットには、Internet Explolerでアクセスするという形だが、これが統合されて、エクスプローラでもURLを入力して、そのままホームページが見られるようになる。
 インターネットは、世界中のコンピュータをひとつにつなげてしまうものだが、パソコンのOSがWindows98に進化すれば、自分のパソコンも含めて、ひとくくりで使えるようになるというわけだ。これは、実際に使ってみるとかなり便利なことがわかる。

 Windows98には、他にもいろんなところで便利になる。インターネットに関連したものについていくつか紹介しよう。

・ファミリーログオン
 家庭で1台のパソコンを家族で共有して使う場合、Windows95ではあまりプライバシーを守ることができなかった。しかし、Windows98では、ユーザー名が一覧で表示され、そこから自分の名前を選んで、パスワードを入力すれば、自分だけのデスクトップを使うことができる。これで、電子メールや自分の作った文章のプライバシーを守ることができるようになる。家族でパソコンを共有している人には、うれしい機能だ。

・赤外線ポート
 最近のノートパソコンには、パソコン同士でデータのやり取りをするための「赤外線ポート」が付いているのが当たり前になったが、Windows98では、赤外線ポートの扱いがずっと簡単になった。ファイルを右クリックすると[送る]というメニューが出るが、ここに[赤外線の受信側]という項目が加わり、それを選択するだけで、相手のパソコンに簡単にファイルを送ることができる。
 赤外線ポートの機能を初めとして、電源のオンオフを管理する機能や、電話線を通じてデスクトップパソコンに接続する機能など、Windows98は、ノートパソコンに必要な機能が充実している。

Windows98へバージョンアップ


 最初に書いたが、Windows98は、Windows3.1からWindows95への劇的な変化ほどの変更はない。どちらかというと、Windows95では未完成だった機能を強化したという印象だ。ただし、その分、パソコンのOSとして、より使いやすくなっている部分は多い。特に初心者にとっては、Windows98は、Windows95と比べてもずっと使いやすくなるはずだ。
 OSというのは、パソコンを使うときに不可欠のものだ。しかし、OSを使いこなすのに、時間や手間がかかるのは、本来の目的に反している。Windows95が登場したときには、Windows3.1よりもずっと使いやすくなるのだから、多少の手間には目をつぶるしかないかと思ったが、Windows98では、それほど苦労することはなさそうだ。
 OSに求められる一番のものは、安定した動作だ。いくらいろんな機能があっても、動作が不安定でしょっちゅうハングアップしているようでは、使う気にならない。その意味で、Windows98はWindows95の進化を集大成したような、完成したOSになるはずだ。
 Windows95が登場したときのように、先を争ってWindows98を手に入れる必要はないだろうが、これからパソコンを買おうと考えている人は、この夏のWindows98の登場まで少し待ったほうがいいかもしれない。
 また、今のパソコンにCPUやメモリー、ハードディスクの余裕がある人は、Windows98へのバージョンアップを考えてみるといいだろう。劇的な変化がないと言っても、Windows95よりはずっと使い勝手がよくなっているはずだ。
 Windows98については、http://www.microsoft.com/japan/win98/ で詳しい情報を見ることができる。正式な発売時期も、そのうちこのサイトで発表されるだろう。

図書館員のためのパソコン・インターネット入門 第50回

インターネットの最新トレンド


 50回にわたって、インターネットとパソコンについて解説してきましたが、今回で最終回です。インターネットは日々変化しています。連載の最初に書いたことは、1年後の現在ではすでに古くなっていること、変わってしまったこともたくさんあります。
 書き残したことはたくさんあるような気がしますが、今回は、僕も最近注目しているインターネットの最新情報の中から、いくつかを紹介します。

もっと簡単にインターネットする方法

 この連載を読んでいる方の中には、インターネットはやってみたいけど、パソコンを買って始めるのは面倒だしお金もかかる、とまだ後込みしている人もいるだろう。そんな人のために、もっと簡単にテレビを使って、インターネットを始める方法がある。
 テレビでインターネットといっても、少し前に家電メーカーが発売して、売れ行きのよくなかったインターネットテレビや、セガサターンでインターネットに接続する方法ではない。
 家電メーカーのインターネットテレビやセガサターンでも、もちろんテレビでインターネットに接続することができるが、画像の表示が遅くて、文字も読みにくく、インターネットを楽しむというレベルのものではなかった。テレビはもともとインターネットを見るために作られたものではないから、これはある程度は仕方のないことだ。
 それに対して、97年12月からサービスが始まった「WebTV」は、同じテレビで見るインターネットでも、文字や画像はきれいで、表示も早い。テレビでインターネットへの快適なアクセスが可能になった理由は、ちょっとした発想の転換と技術力。WebTVでは、インターネットのデータをそのまま表示するのではなく、自分のところのサーバーで加工してから流している。
 そのとき、画面を見やすいように再レイアウトし、高速に画面を切り替えられるようにデータを圧縮して送ったり、文字のにじみやちらつきを抑える独自の技術を使う。それで、テレビでも、インターネットをハイクオリティで楽しむことができるのだ。
 もちろん操作も簡単で、セットアップは家庭用ゲーム機と同じ要領で、テレビと電話回線に専用端末を接続するだけ。実際のインターネットへのアクセスも、画面の指示に従っていけばいい。
 インターネットは、ブラウザやプラグインがどんどん新しくなっていくが、WebTVは、自動的にダウンロードして、最新の環境にする仕組みも持っている。必要な機器は専用端末だけで、定価で4万数千円とパソコンに比べればぐんと安い。あとは、15時間まで月額2000円と、普通のプロバイダーと同じ程度の利用料金がかかるだけだ。
 アメリカで始まったサービスだが、向こうでは、パソコンでインターネットをやっている人が、家族でリビングルームでもホームページを見たい、というので、WebTVを購入することも多いそうだ。詳しくは、http://www.webtv.co.jp/ で見ることができる。

56kモデムとISDNと衛星インターネット


 インターネットをするには、64kbpsという高速通信のできるISDNがおすすめ、とこの連載にも書いたが、ISDNにするとなると、TA(ターミナルアダプター)を買ったり、NTTに連絡して工事を依頼したり、とけっこう手間がかかる。最近は、56kbpsという高速のモデムも出ているが、これではダメなのだろうか。
 56kbpsは、2万円以下で手に入るようになったから、取りあえずISDNを引くのは面倒だという人は、これを購入するのもひとつの方法だ。56kbpsは、これまで2つの方式が併存していたが、ようやく統一される方向になってきた。今売っているものは、統一方式に無料でバージョンアップできるから、心配はない。
 ただし、56kbpsといっても、いつもこのスピードで接続できるわけではない。アナログ回線は回線の品質に影響されることが多いから、場合によっては、半分くらいのスピードしか出ないこともある。また、56kbpsになるのは、受信のときだけで、送信のほうは、33.6kbpsくらいしか出ない。
 もうひとつ、ISDNにすると、基本料金が月1750円から、2380円に上がるが、それで、2回線が使えるようになる。家族のいる人は特に、インターネットを始めると、その間電話が使えないので苦情が出るかもしれない。ISDNは単に64kbpsという高速通信ができるだけでなく、アナログよりも安く2回線が使えるという魅力もある。やはり、どうせ買い替えるなら、56kbpsよりも、TAかダイヤルアップルーターを選択したほうがよさそうだ。

 ISDNを使い始めると、その速さにも慣れてしまって、もっと高速にならないかと思うようになる。最近サービスがスタートしている、衛星インターネットだと、400kbpsというISDNの6倍のスピードで受信ができる。「サッとネット」というサービスで、データの受信は衛星からの電波を使い、送信は従来の電話線経由(他のプロバイダーを使う)になる。
 ブラウザでホームページをクリックすると、その情報は電話線経由でサーバーに送られ、ページの画像やHTMLのデータは、衛星経由で送られてくる仕組みだ。パラボラアンテナとパソコンに組み込む受信ボードと受信用ソフトウェアが必要で、そのほか、月額基本料金5500円などがかかる。
 画像や動画、音楽など、大量のデータをダウンロードしたい人は考えてもいいサービスだ。無料体験キャンペーンなどもやっているので、詳しくは、http://www.diredtint.co.jp/ にアクセスしてみよう。

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 50回にわたって、インターネットとパソコンについて解説してきたが、これを全部読んでも、もちろんすべてがわかるわけではない。全部読んで実践すれば、インターネットとパソコンについてはかなり詳しくなるはずだが、それでも、知るべきことはまだまだたくさんある。便利に使いこなそうとすれば、いろんな技が必要になるし、それ以上に、どんどん新しいパソコンや、周辺機器、ソフトウェアが出てくるから、それに対応しなければならない。
 僕自身も、日々雑誌やインターネットで情報を仕入れて、新しいことにチャレンジしている状態だ。この連載を書くために詳しく調べることで、疑問が解決したり、役に立つ情報に気づいたり、ということがたびたびあった。

 連載はこれで終わりますが、この機会にインターネットを始められた方は、パソコンにほこりがかぶることのないよう、仕事に生活にインターネットを活用してください。
 インターネットやパソコンについて質問のある方は、suzuki.yasuyuki@nifty.ne.jp(NIFTY-Serveの場合はPXH01774)まで、電子メールでおたずねください。できる限り直接回答しますし、Q&Aのページでも紹介します。連枝終了後も、質問にはお答えします。ホームページには、インターネットやパソコンに関する記事もありますので、ぜひご覧ください。

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