ポートランド日記                                     スズキメディア

11月15日(木)──107日目


 知識テスト(knowledge test)は、今日(二回目)に失敗すれば、翌日また受けられるが、三回目に失敗すると、次は一週間後にしか受けられない。何とか、今日は合格したいと思って、昨夜は遅くまで、解説書を細かく読んで真剣に勉強した。テストは日本語だけど、解説書は英語しかないから、解説文の全部の意味を取るのは大変だ。

 夜更かししたので、十時頃目が覚めて、準備をしてDMVへ行く。
 乗ったバスの運転手さんが、「どこへ行くんだい」と話しかけてきたので、「運転免許の試験を受けにいく」と答えたら、受けたらしくて、運転手さんが、「俺が免許の試験を受けたのは○○年前だ」と言い出して、前のほうの席の人たちと免許の話で盛り上がっていた(僕は後ろのほうで聞いていた)。運転手さんは陽気な人で、「STOP」サインのところでは、「STOPサインのところでは、きちんと止まります」というような感じで正しい運転の解説まで始める。
 DMVを降りるときも、「次は、この運転席で運転しろよ。グッドラック」と声をかけられた。ときどきこういう陽気で口数の多い運転手さんがいて楽しい。日本では、「運転中は運転手に話しかけないでください」という表示があるが、こっちは関係ないみたいだ。けっこうみんな乗客と話しながら運転している。

 試験は、勉強のかいもあって、31問中28問正解したところで、合格して終了。昨日と同じ問題も5問くらい出たので楽だったが、「正解/不正解」の表示がでるために、ドキドキして心臓に良くない。
 終わって、目の検査をして、そのあと、運転テストの予約番号と予約の電話番号を紙に書いて渡される。これから、電話で、運転テストの予約をするのだ。
 ここで、何か書類でも渡されるかと思ったけど、手書きの番号を書いた紙切れを渡されただけ。お金も全く払わない。つまり、最後の運転テスト通過して、運転免許を手にするまでお金はかからないのだ。そのときも、54.50ドルと安い。
 渡航費用を考えても、アメリカにしばらく滞在して免許を取って、日本で書き換えたほうが、20〜30万円払って、教習所でそこでしか通用しない運転術を習うよりいいような気がする。

 寮に帰って、電話で予約したが、知識テストを受けたダウンタウンのDMVは運転テストはしていないというので、サウスイーストにあるDMVで火曜日の午後二時十分から運転テストを受ける予約をした。当日、自分で車を持ってテストを受けにいくので、レンタカーを借りる電話もした。
 サウスイーストの辺りは、あまり走ったことがないので、九時に車を借りて、少し練習してみるつもりだ。大学の授業のない火曜日にしたのは、知識テストは、授業のあとの疲れた頭でいって失敗したので、今回は、すっきりとした頭と身体で行こうと思ったからだ。
 でも、これが功を奏するかどうかはわからない。最初の運転テストは、どんなコースをどんなふうに走らされるかを体験するだけになるかもしれない。運転テストは、初回を失敗すると二回目は一週間後、三回目はその二週間後にしか受けられない。二回失敗すると、十二月の帰国に間に合わないかもしれない。
 何とか免許は取っていきたいが、どうなるだろう。

 昼食は、「タイフーン・オンブロードウェイ」というタイ料理の店で食べた。ここは、インペリアルホテルにある支店で、ホテルの中の店なので、インテリアも立派。価格も多少高いようだ。
 ウィンターカレー(8.95ドル)のチキンを頼んだが、ここのカレーは今まで食べたタイ料理のカレーとは違っていた。ブロッコリー、にんじん、など野菜がきれいに切ってあり、普通のタイカレーのように、野菜をよく煮込んだ様子はなく、型くずれしていない。別にゆでて、加えたようだ。タイ料理というより、見た目は洗練されたフランス料理のように感じられる。
 味も多少ココナッツミルクが強く、辛くもあるのだが、甘みが勝っている。このタイ料理は今まで食べたところと違って、アメリカ風のタイ料理のようだ。周りを見回しても、お客はアメリカ人と思しき人ばかりだ。

 アジア系の料理は、アメリカ風の味付けの店とそうでない店と二種類あるようだ。アメリカ風は、アメリカ人の味の好みに合わせて、甘い味付けになっている。タイ料理ならココナッツミルクを効かせて、日本料理なら甘いテリヤキソースだ(日本のみりんと醤油をつかった照り焼きとはちょっと違う)。
 メキシコ料理もそうだが、アメリカのレストランは、アメリカ風に味付けが変わっているところが多い。「タコデルマー」も、マイルドソースを選ぶと、日本人には食べられないくらい甘い味付けになる。アメリカ人は、どうしてこんなに甘い味付けが、砂糖が好きなのだろう。
 これを理解していないと、(日本人にとって)まずい料理を食べるはめになる。アジア系のレストランにいくなら、アジア系の人がたくさん入っている店を選んだほうがいい。

 夕食は、Cの英語の聞き取りの手伝いに来ていたWさんに、中華料理の店に連れて行ってもらう。ノースイーストにある店で、ここは、アメリカ人ではなく、日本人に受ける味だそうだ。イカの揚げ物(お店のおすすめ、他のテーブルでも頼んでいる人が多かった)、カキの炒め物(大ぶりのカキにソースが効いている)、チャイニーズブロッコリー(久しぶりに食べた。日本ではあまり食べる機会がない)と鶏肉の炒め物を頼んだが、予想どおりおいしかった。
 入ったところにカニやロブスターの水槽があって、今までで一番おいしい中華料理を食べることできたトロントの中華料理店「康城飯店」を思い出した、そこに比べると、チャイニーズブロッコリーの味付けなど、味としては少し落ちるが(あそこと比べるのはかわいそうかもしれない)、久しぶりにおいしい中華料理を食べた気がした。


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