ポートランド日記                                     スズキメディア

8月27日(水)──27日目


 エンタープライズにレンタカーを返す。その前にガス(英語風だとガソリンじゃなくてガスです)を満タンにした(Fill it up please.と言えばいいのがやっとわかった。前は、full tunkなんて言ってなかなか通じなかった)。
 このあたりのガススタンドは、ほとんどミニサービス(ガソリンを入れるのは店員がやってくれる。他はたまに窓を拭くくらいで何もしない。フルサービスだと、ボンネットを開けて調べたり、いろいろしてくれるらしい──経験がないのでわからないが)。セルフサービスがどうしてないのかと思っていたが、オレゴン州は法律でセルフサービスは認められていないのだそうだ。ひとことでアメリカと言ってもいろいろだ。

 そのあと、ダウンタウンで朝食。ベーグルのあるカフェで、ターキー(七面鳥)ベーグルのサンドイッチを頼んでみた。12種類あるベーグルから(セサミ、オニオン、ガーリックなどがある)どれを選ぶか聞かれて、セサミを選ぶ。野菜も何を入れるか聞かれたが、「イエス、イエス」と言っているうちに全部入れることになった。これに、カフェラテを入れて、7.40ドル。次の人は、「トースト」とベーグルを焼くように頼んでいた。次の機会はそうしたほうがおいしそうだ。
 Cは、「あなたは食べ物のこととなると苦手な英語を一生懸命使う」と言うが、そうかもしれない。

 銀行で入金。トラベラーズチェックと現金合わせて200ドルを入金してみた。入金は、depositという。アメリカでは、ATMでの入金は日本と違って、紙幣を金額を書いた封筒に入れて、それをATMの機械に入れる。これだと、現金だけでなく小切手の入金もできる。今日はカウンターでの入金だったが、次はATMでの入金を試してみよう。

 このあと、Cは大学に戻り、僕は理髪店に行った。ポートランドに来る前に、行きつけの美容院に行こうと思っていたが、準備が忙しくて結局行けなかった。一か月経ってかなり伸びてしまったので髪を切りに行かないといけない。大丈夫だろうか。
 ガイドブックを見ると、チップを渡さないといけないとか、アメリカでは大雑把なので気に入った髪型にするのは大変とか、いろいろ書いてある。

 日本では美容院でカットするが、美容院(beauty shop)は面倒そうだし、男性が行かない店だと恥ずかしいので、理髪店(barber)に行くことにした。ヤフー・イエローページ(http://yp.yahoo.com/で検索してみると、ポートランドにある、理髪店のリストが出てきた。住所も電話番号もあるのでこれで十分だが、ヤフー・イエローページが便利なのは、「Driving Directions」で、自分の今いる住所を入れると、そこから店までの地図が道順付きで表示されること。これがあれば、迷うことはない。

 昨日のうちにダウンタウンに近い、理髪店を三軒ピックアップしておいたが、一軒目はすでにその場所になかった。次の店は、以前行ったダウンタウンのセーフウェイに近い店。前を通り過ぎつつ様子をうかがってみると、頭の禿げ上がった男性が調髪の最中だ。刈っているのは金髪の中年のおばさん。理容師はこの人ひとりだけのようだ。店は小さくて、あまりきれいではないが、入りやすそうなので、ここに決めた。
 中に入ったら、ちょうど電話がかかってきて店の人が出たので、僕は何か言うわけにも行かず椅子に坐っていた。電話が終わったら、すぐだから待っているように話しかけられた(英語の内容がわかったわけではない。そんな気がした。短いフレーズだと全然何を行っているかわからなくて困ることがある)。

 五分ほどで前の男性は終わって、僕の番になった。「サイドは耳にかからないように、後ろも刈って、前は少しだけ刈る」と伝えたが、なんとかわかってもらったようだ。軽快にハサミが進んで、バリカンも使って(刈り上げるのではなく、最初に髪を短くするのに使う)15分、あっという間に終わった。
 首の回りに巻くカバーもいい加減なので、えりの間から髪の毛がずいぶん入り込んでいる。掃除機みたい据え付けの機械で髪の毛を吸い取ってくれるが、肌にくっついているのはあまりよくとれない(あとで、帰ってすぐシャワーを浴びた)。

 ガイドブックに書いてあったように、シャンプーもひげ剃りもなく、最後にクリームで固めて終了。値段を聞いたら、15ドルというので、20ドル渡して、5ドルのお釣りから2ドルを「チップです」と言って渡した。僕の前のおじさんは、20ドル渡してお釣りはいらないよという感じで帰っていったが、どちらがよかったのだろうか(おじさんは、髪を刈る以外にも何かしたのかもしれないが)。

 チップというのはどうもよくわからない。レストランなんかでは、何度も体験しているからわかってきたけど、理髪店は初めてだから困る。ガイドブックにも、「美容院や理髪店ではチップを渡します」と書いてあるだけだったりするから、どのくらい渡せばいいのかわからない。
 もう少し詳しく書いてある本には、「料金の10%〜15%を渡します。最後に料金を払うときに一緒に渡します。シャンプーを別の人にしてもらった場合には、それぞれの人にも渡します」なんて書いてあるが、これでは、実際は最後に料金を払うときにどうチップを渡せばいいのか正確なところはわからない。

 取りあえず髪は短くなったけど、寮に帰ったら、Cが、「何だかとっちゃんぼうやみたい」と笑っていた、今までは、美容院でそれなりにカッコよく(?)カットされていたのが、普通の理髪店みたいに(その通りだから、しかたないけど)カットされたので、どうもおかしい。それに、短くしたのに上の毛が立ってしまう。まあ、アメリカだからしかたない。取りあえず、そこそこのカットができる店が見つかってよかった。

 そのあとセーフウェイで買い物してバスで帰宅。Cは昼過ぎに部屋に戻り仕事。昼食は病院のカフェテリアへ。

 夕食はI先生の教え子のWさんと食事。カンボジア料理。といっても、正確にはアジア料理の店で、メニューにはヤキソバもある。前に、最初にタイ料理の店で食べた若いパパイヤのサラダ、スープ、冷たいライスヌードルのサラダなどを頼む。Wさんが辛いものは駄目だというので(それでアジア料理の店に来ているのはおかしいが、僕らの口に合うおいしい店は少ないのだ)マイルドにマイルドにとお願いしたので、辛さはそれほどでもなかった。

 外で食べるというと、タイ料理ばかり食べているが、僕らにとってポートランドで一番おいしいのは、いまのところアジア系の料理のようだ。


次を読む前に戻る目次表紙