Suzuki Media / Horai Tsushin
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No.13 -2001.8.18


 奥さんにくっついてポートランド(オレゴン州))に来て20日がたとうとしています。遅くなりましたが、ポートランド日記をお送りします。最初の2日間ですが、毎日の分を送っては煩雑になりますので、以後はホームページで連載します。関心のある方はアクセスしてください。毎日か隔日で更新の予定です。まとまって面白い話がありましたら、また蓬莱通信(ポートランド通信)でお届けします。
 西海岸へお越しの際は、ぜひポートランドへもおたちよりください。ご案内させていただきます。また、こちらでできるような取材・執筆などの仕事がありましたら、ぜひご連絡ください。

////////////////////ポートランド日記/////////////////////////////////////


8月1日(1日目)

 ビザがぎりぎり7月31日になってやっと出たり、荷物の梱包と書類作成に思わぬ時間がかかって30日は徹夜になったり、出発前のさまざまな障害については、またあとでまとめて書くとして、とりあえず、8月1日夕方5時45分発のエアカナダ3004便でバンクーバーに向けて出発。
 出発までの準備──半年くらい前から徐々に始まり、2か月前から本格的になり、最後の2週間は他の仕事が手につかないくらい、けっこう手間がかかった準備を終えて、ポートランドに向けて出発できるまでこぎつけたということで、何かをやりとげたようなある種の達成感がある。普通の観光や取材のための海外旅行では、こういうことはないかもしれない。
 夏休みなので、飛行機は満席状態。早めにチェックインして、通路側の席を確保してバンクーバーへ。フライトは不快な事件もなく順調に進行。バンクーバーはカナダだが、アメリカへの入国審査をバンクーバーで済ませるようになっていて、入国審査はバンクーバーですべて済んでしまった。

 ポートランドへ着くと、C(うちの奥さん)の友人の留学生のSさん(女性)が迎えに来てくれていて、レジデンスホール(寮)まで車で連れて行ってもらう。これからここに5か月半暮らすことになる。
 レジデンスホールの僕らが暮らす部屋は、一階にある。元々はゲスト用に作られた部屋だそうで、ここだけシャワーとトイレが付属している。大学の学生寮だから、他の階の部屋はバストイレは共用だ。二人用の部屋といっても六畳〜八畳くらいの印象で狭いけど、5か月暮らすにはそれほど悪くない。ビデオ付きのTVもついている。日本なら、ちょっと安めのビジネスホテルのツインルームという感じだ。
 寮の中には、7階にコンピュータールームがある。ここは、寮の住人なら、24時間自由にLANでインターネットに接続したパソコンを使うことができる。「とは言っても、日本語の入出力できるわけじゃないから」と思っていたが、この7階のコンピュータールームが、ポートランド到着後数日間、部屋に電話が引けるまで大いに役に立った。

 インターネットエクスプローラは日本語表示ができるので、ウェッブなら日本語のメールを読むことが可能だ。「アメリカのWindowsは日本語は駄目」という固定観念があったが、状況はずいぶん変わっている。
 もちろん、フォントは入っていても、かな漢字変換はインストールされていないから日本語を書くことはできない。しかし、日本から持っていったノートブックで文章を書いて、それをフロッピーディスクに保存し、それを読み込んで送ることで、日本語のメールも送れるようになった。最初は、ローマ字のメールを書いていたが、これでは満足な情報交換はできない、
 Windowsに付属しているワープロソフトのWordpadに読み込んだ段階では文字化けしているが、そこからカット&ペーストでウェッブのメールに張り込むと、きちんと日本語になる。

 部屋に台所はついていないが、共同の台所を使うことができて、電子レンジ、食器洗い機などひと通りそろっている。食器や調理器具も共同のものがある。共用の冷蔵庫があって、一部を利用することができる。寮の宿泊料(家賃)は、バス付きの僕たちの部屋の場合、月500ドルだが、電気料金、水道料金などは含まれるので、短い滞在なら、リーズナブルかもしれない。
 寮に荷物を置いて、Cがこれから勉強する、「スクール・オブ・ナーシング(看護学部)」に連れて行ってもらった。校内を歩くといろんな人に会って、その都度あいさつ。Cの職場に来る機会はあまりないので、いろいろと観察する。でも、飛行機の中でほとんど寝なかったので、眠気が最大限に達している。
 そのあと、スーパーマーケットに当面の買い物に行く。寮で冷蔵庫が使えることがわかったので、食料をいろいろと買い込む。

 それから、「安全」というおかしな名前の日本食品店へ。ここには、1年半前初めてポートランドを訪ねたときも何度か来ている。納豆、日本酒、椎茸、米、など購入。ポートランドは日本人が多いので、ここに来ればほとんど何でもそろう。
 前回ポートランドに来たときも、使わないというタコの頭(本当はお腹)をわけてもらって、たこ焼きを作った。もう一軒「宇和島屋」というのがあって、そこのほうが品揃えがいいそうだが、まだ行ったことがない。
 夕食はI先生(女性)とSさん二人を交えて四人でタイ料理。機内食ばかりだったので、久しぶりにおいしい食事をしたという感じ。トムヤムクン、パイナップルサラダ、生春巻き、カレーを、マイルドと注文したが、けっこう辛くて汗をかいた。 寮に戻ってQWESTに電話したが、七時を廻っていてつながらなかった。

8月2日(2日目)

 昨日書いたように、寮のアメリカのコンピューターでも日本語表示ができるので、日に何度か、7階のコンピュータールームまで上がっていって、メールを読んで送るのが日課になった。電話が引けるまで、メールはどうしようと思っていたが、その心配はなくなった。
 Cがビジティング・スカラーとしてこれから通うOHSU(Oregon Health Science University)全体はダウンタウンにほど近い山の中腹にあるので、眺めがとてもいい。大学といってもそれだけではなくて、病院もいくつか建っている。寮の7階に上がると、ポートランドの市街とウィラメット川とその向こうの街並みが一望にできる。緑が多くとてもきれいな眺めだ。そのうち写真で紹介します。

 朝7時過ぎに電話会社のQWESTに電話。知らない人と電話で英語でやりとりするというのは本当にストレスにさらされる。QWESTと契約するのはローカルコールだけで、ロングディスタンスは他の電話会社とまた別に契約しないといけないが、それについてのやりとりで間抜けな会話をいっぱいしてしまった。
「長距離のサービスはどこと契約すべきですか?」
「リストはお見せすることはできます」
「それをお願いします」
「オフィスまで来ていただけますか」(そんなわざわざ行っている暇ないよ……でも、午後にダウンタウンに行ったら、たまたま偶然QWESTのオフィスを見つけた!)
「長距離のサービスはどこと契約したらいいんでしょう?」
「お友だちに聞いていただけますか」
 というような感じ(推定)。
 社会保障番号を聞かれたが、「昨日ポートランドについたばかりでまだない」と答えた。「あなたの別の電話」ももちろんない、「お友だちの電話」も「わからない」。こんなのでいいかと思ったけど、最後に電話番号と月曜日に開設されると言っていた。僕のつたない英語力では、本当に月曜日に電話がつながるかわからないが、まあ月曜日になってつながらないようなら、また電話してみよう。(でも、QWESTのサイトをみていたら、ウェブからも申し込めるようだった。問合せはメールにしたほうが無難かもしれない)

 午後は、バスでダウンタウンに出かけた。ポートランドのバスはいくつかのゾーンに分かれていて、隣のゾーンへは1.20ドル。乗車の時に料金を払うと、何時まで有効を示したレシートを渡してくれて、2時間までは何度でも乗り降りできる。寮とダウンタウンは、隣のゾーン。2時間以内に戻ってくれば、1.20ドルで往復できることになる。同じゾーンの中では無料だ。つまり、ダウンタウンの中でちょこちょこ移動するのは無料ということになる。
 1年半前にポートランドへ来たときも乗っているが、乗り方をすっかり忘れている。でも、寮にいるCの知り合いのI先生に教わって、それほど迷わずに乗ることができた。
 間抜けだったのは、日本の左側通行の癖が抜けなくて、別方向のバス停で待っていて、一台乗り過ごしてしまったこと。クルマの運転なんかで右側通行のことはわかっているはずだけど、変なところで間違えてしまう。

 ダウンタウンでは、バスの回数券を買い、お目当てのパウエルズブックストアに行った(蓬莱通信3号参照 http://www.asahi-net.or.jp/~hh5y-szk/horai3.htm)。アーシュラ・K・ル=グィンのゲド戦記の第5巻が発売されていて、他にル=グィンの安そうな本と合わせて購入(4巻で完結したはずのゲド戦記の5巻が出たのは画期的なことで、ポートランドに住んでいる、今世紀最強のSF作家アーシュラ・K・ル=グィンについてもいろいろ書きたいのですがそれはまたべつの機会に)。他に、ポートランドを歩くためのガイドブックと、ちょっと変な日本体験記の絵本を買った。
 パウエルズブックストアのなかには、カフェテラスがある、おなかがすいたので、スープとサンドイッチとコーヒーを食べた。英語を聞いたり話したりしていると、エネルギーを使うようで、とてもおなかがすくような気がする。

 文房具やコンピューター関連製品を扱っているオフィスデポも見つけたので、入って、電源コードやファイルホルダーなどを買った。フラットベッドスキャナーを見てみたら、1万円程度と日本よりも安い。スキャナーを買えば、英文資料を読み込んで、OCRして、それを翻訳ソフトにかければ、うちの奥さんがこれから抱えることになるだろう英文資料の山を何とかするのに、多少は役に立つ、やはりスキャナーは買ってしまったほうがいいようだ。
 緊張すると下痢をすることが多い。神経性の腸炎のようなものだ。二人とも調子が悪くなったので、夕食をダウンタウンでとるのはやめにして、バスで戻った。6時頃で道はクルマで混んでいた。

 帰ってくると、ドアにメモが貼ってあって、うちの奥さんは、明日(3日)、こちらで世話をしてくれる大学の人と初めて会うことになった。午後は、二人でアメリカ人の友人のお宅におじゃまする。
 中古車の購入については、思案中。クルマが安く手に入ったとしても、アメリカの免許もなく運転歴もないので、保険が高くつきそうだ。週末や必要なときに、レンタカーを借りたほうがいいかもしれない。

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