Suzuki Media / Horai Tsushin
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No.10 -2001.4.30 (ドリトル通信001) 


 なんと6か月ぶりとなってしまいました。メールマガジンの配信を委託している「まぐまぐ」から4月中に配信がないとIDを取り消すという通告があったので、急きょ発行しました。といわけで、本文にもあるように「挨拶程度の文章」ですが、ご容赦ください。
 これから、インターネット関係にプラスして、児童文学関係と音楽関係にも少し力を入れていこうと思っています。それほど長い文章にせず、短いものを週に1回は発行したいと考えています。ご関心のない分野の文章が届いたときは、どうぞそのまま削除してください。

///////これからドリトル先生についていろいろ書いてみようと思います///////

 ドリトル先生という本を知っている人はかなり多いと思う。読んだことはなくても、何か聞いたことがあるという人は多いだろう。でも、ドリトル先生とその作者のヒュー・ロフティングのことは情報が少ない。もちろん物語というのはそれだけで完結しているものだから、余分な情報はいらないかもしれないけれど、好きな物語なら、やっぱりいろいろな情報が知りたくなってくる。

 ドリトル先生の関連書籍は数が少ない。A.A.ミルンの「クマのプーさん」やサン=テグジュペリの「星の王子さま」、モンゴメリの「赤毛のアン」なら、訳書や日本人の書いたものもなど関連書籍は山のようにある。しかし、ドリトル先生と作者のヒュー・ロフティングに関しては、なぜか、数えるほどしかない。井伏鱒二訳の全12巻のドリトル先生のシリーズが、岩波書店から、単行本と少年文庫の両方で、品切れになることもなく書店の棚に並んでいるのに比べて、研究書や関連書の類いがあまりにも少ない。

 1996年に高田宏さんの『生命《いのち》のよろこび─ドリトル先生にまなぶ─』(新潮選書)が出版されているが、これは、研究書ではなく、高田さんがドリトル先生をよりどころに、平和や生きることへの自分自身の思いを語ったもの。もちろん興味深い本ではあるのだけれど、ドリトル先生についてもっと知りたいという思いをかなえてくれるものではない。

 そんなことを思っていたときに、ようやく出版されたのが、南條竹則さんの『ドリトル先生の英国』(文春新書)。南條さんは、ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞している作家で、翻訳書もある。この本がまさに、僕が読みたいと思っていた本だった。
 ドリトル先生の舞台は19世紀だから、僕らが生きてきた20世紀の日本とはずいぶん違う。だいたい、シルクハットに燕尾服というドリトル先生の服装自体、今から考えるとずいぶん奇妙だ。そんな基本的な疑問にもこの本は答えてくれる。
 小説を読んでいると、どうしてもその背景になるものが気になってくる。そうしたことに答えてくれる本が欲しいと思っていたのだが、『ドリトル先生の英国』はまさにそれに答えてくれる内容だった。

 この本については、また別のところで詳しく触れたいと思うが、一番うれしかったのは、シリーズ第1作の『ドリトル先生アフリカゆき』に出てくる食べ物「アブラミのお菓子」がどんなものか解明されたことだった。
 これは、原文では「suet pudding」で、牛の脂身(スエット)に粉や砂糖、卵、牛乳などを加えて、干した果物を入れ、蒸して作るプディングのことだそうだ。小学生の頃、図書館から借りだしたドリトル先生シリーズを読んでいるときには、「アブラミのお菓子」っていったい何だろうと不思議に思っていた。油で揚げたお菓子のように思っていたのだけれど、実は全然違ったのだ。

 ドリトル先生の関連書籍が少ないのは、日本だけのことではない。アメリカ、イギリスでも、ほとんど出版されていない。作者のヒュー・ロフティングの伝記もこれまでに2冊だけ、ほかにも関連書籍と言われるものはほとんどない。
 ドリトル先生シリーズは、最初の『アフリカゆき』が1920年に出版され、1922年に続いて出された『航海記』が児童文学の著名な賞であるニューベリー賞を受賞したときと、1967年にレックス・ハリソンの主演でハリウッドで映画化されたときに、大きく話題を集めた。しかし、文学作品としての研究はあまり進んでいないようで、僕にとっては、そうしたところに興味があるのだけれど、そうした情報はなかなか手に入らない。

 というわけで、微力ではあるけれど、ドリトル先生とヒュー・ロフティングについて、自分なりに調べていきたいと考えている。英文学者というわけではないので、学問的なアプローチはできないが、いろいろな角度から書いてみたいと思っている。

(今回は、挨拶程度の文章になりましたが、次回以降をご期待ください。ドリトル先生に限らず、関心のある範囲で、児童文学から、普通の文学まで取り上げていくつもりです。)

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●版画家の小野琢正さんが、2001年にイギリスで「HENRO(遍路)展」を開きます。
詳しくは、
http://www.asahi-net.or.jp/~hh5y-szk/ono/henro.htm

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編集と発行:鈴木康之/SUZUKI Yasuyuki
suzuki.yasuyuki@nifty.ne.jp
http://www.asahi-net.or.jp/~hh5y-szk/