デジタルで行こう!

サンケイリビング新聞社発行「シティリビング」連載

デジタルで行こう! 第26回 1998.9

地上波デジタルテレビ

 9月23日、イギリスのBBCテレビが地上波デジタル放送をスタートした。衛星のデジタル放送は、日本でもスカイパーフェクTVやディレクTVがやっているが、地上波のデジタル放送は世界でも初めて。東京でいえば、フジテレビや日本テレビがやるようなもの。衛星ではなくて東京タワーのようなテレビ塔から電波が出てくるから、パラボラアンテナの必要はなく、専用チューナーを付けるだけで今までのテレビでもデジタル放送を見られる。  ヨーロッパではイギリスに続いて各国が、アメリカも11月から始まるが、日本は少し遅れをとって、地上波デジタル放送は2年後の2000年から。そうなると、たとえばフジテレビなら、従来のアナログ放送1チャンネルしか流せなかった電波で、3チャンネル分の放送が流せることになる。  衛星デジタルだと、パラボラを設置したり、契約して料金を払う必要があるけど、地上波デジタル時代になると、数万円の専用チューナーを買うだけで、今までの3倍の番組が楽しめちゃうってわけ。  デジタルの良さはそれだけじゃない。ハイビジョンみたいに高画質になるし、サッカーの放送で4つのカメラの映像を同時に見たり、選手のデータを画面でみたり、パソコンみたいな使い方ができる。電話と一緒に使って、テレビショッピングで、画面から選んでその場で注文することもOKだ。  今までのテレビにデジタル専用チューナーを付けているだけでは、こうした進んだ使い方はできないけど、日本でも2010年には全部のテレビ放送がデジタルに切り替わる予定。その頃には、高画質高性能のデジタル専用テレビが安い値段で登場して、お茶の間のテレビのイメージが全然変わっちゃうはずだ。  今の東京タワーの近くに、高さ700メートルのデジタル用の新東京タワーを建てるなんて話もある。21世紀最初の大きな話題は、地上波デジタルテレビ、で決まり! かも。


デジタルで行こう! 第27回 1998.10

TVゲームが変わる!

 セガが「ガンバレ!湯川専務」のCMで子供にまで言わせているように、今のゲーム機業界は、ソニーのプレステ一人勝ち。セガサターンやニンテンドー64は検討しているけど、ちょっと苦しい。でも、もしかしたら、セガ新製品「ドリームキャスト」でちょっと変わるかもしれない。あれほど強かった任天堂のファミコン、スーファミが、時代の流れとともにプレステに王者の地位を譲ったように。  別にセガに肩入れしているわけじゃないけど、ドリームキャストのポイントは、「通信」に力を入れていること。通信なんて面倒いと思うかも知れないけど、ポケモンでゲームボーイ同士をケーブルでつないでモンスターの交換をするのも、「通信」。直につなぐんじゃなくて電話線を使って、遠くの人ともできるのがドリームキャストだ。  TVゲームで通信が使えると、対戦型ゲームなら同じ場所にいなくても戦える。それ以上に、面白いのはRPG。今までのドラクエとかファイナルファンタジーは、その世界に入り込んだようにゲームができるけど、実は当然あらかじめプログラムされたシナリオに沿っている。しかし、通信RPGだと、同じ世界に自分を初めとした何人、何十人もが入り込んで動き回ることになる。一人でやっているRPGで出会って戦ったりするのは、コンピュータが作った相手だけど、通信なら、他の実際にいる誰かと戦うことにもなる。  RPGというのは、その世界を実際に体験できるのが魅力のひとつだけど、通信ゲームでは、それが実際の世界と変わらないものになってしまう。ゲームの設計者も考えなかったような事態が起こることもあるのだ。通信のRPGはパソコンの世界ではすでに始まっていて、ウルティマ・オンラインというゲームがスタートしてすぐの頃には、その世界の王様が殺されちゃうなんて、予想もしないことが起こって、最初の頃は混乱したらしい。  RPGだけじゃない。競馬ゲームなら、それぞれが育てたサラブレッドで、本当のレースができるようになる。そのうち、もっと驚くようなゲームが出てくるはずだ。TVゲームはちょっとって思っている人も、やってみようかって思いません? こんな話聞くと?


デジタルで行こう! 第28回 1998.11

エイリアンを探せ!

 エイリアンとの遭遇は、小説や映画でおなじみだけど、この広い宇宙に人類以外の知的姓名がいるかもしれない、というのは、獅子座流星群なんて見ていると、つい考えてしまうもの。  これがホントかどうか確かめようというチャレンジが、インターネットを使って行なわれる。カリフォルニア大学バークレー校の研究グループが呼びかけているもので、宇宙から飛んでくる無数の電波の中に異星人からのメッセージが隠れていないかどうか、世界中のパソコンを使って調べようというもの。計画では、インターネットを通じて電波のデータと分析プログラムを協力者に配布して、分析してもらう。ホームページで呼びかけているが、すでに10万人の申し出があるそうだ。  電波のデータはプエルトリコにある世界最大の電波望遠鏡で、これから2年間にわたって集めるが、何しろその数百万のデータを分析するのに時間がかかる。大学の巨大コンピュータにも無理なので、世界中のパソコンユーザーに依頼しようというわけだ。インターネットにつながったパソコンがあれば誰でも参加できる。  こんなふうに、インターネットでつながったパソコンだと、世界中で作業を分担して、今までできなかったような膨大な仕事をこなすことができる。以前、インターネットの暗号方式のセキュリティテストのために、ある企業が「この暗号が解けるなら解いてみろ」と募集したところ、あるグループがみんなで分担して、見事解いてしまった。暗号は、パソコンを片っ端から当たっていけばいつかは解くことができる。それでは時間がかかりすぎるが、多人数で分担することで、時間短縮をはかったのだ。  こういうインターネットを使った分業は、ここで紹介したような大規模な話だけじゃない。先生は困るだろうけど、昔は友達数人で集まって協力したりしてた学校の宿題だって、インターネットを使えば、クラス全員で協力してあっという間にできちゃう。忙しかったり暇だったり波がある会社の仕事も、横のネットワークを作ってうまく分担すれば、忙しくて残業、遊びにも行けない、なんてことはなくなるかもしれない。  インターネットにつながっているパソコンっていうのは、メール交換したり、ホームページを見たりするだけじゃなくて、うまく使うといろいろラクできるのだ。


デジタルで行こう! 第29回 1999.1

ICカードとワールドカップ

 98年フランスのワールドカップサッカー、日本国内でもかなりの盛り上がりを見せたけど、日本から行ったサポーターのチケット不足は、余計な盛り上がりだった。ニュース番組やワイドショーで、どうして不足したか? をレポートしてたけど、誰が悪かったのか、いまいちよくわからない。結局、代理店がいくつもかんで複雑なシステムになっていたのが原因らしいけど、ホントは誰が悪かったんだろう?  2002年は日本と韓国でワールドカップ。今度はチケットでごたごたが起きないように、インターネットのICカードを使ったチケット販売システムを開発することになった。  ICカードというのは、銀行のキャッシュカードと同じサイズのカードに、コンピュータで使うICチップを埋め込んだもの。今までのカードだと磁気テープに情報を書き込んだだから、口座番号と名前くらいのデータしか入らないけど、ICカードならその数十倍、数百倍の情報が入る。  チケット販売は、インターネットで予約して各自のICカードに予約データを書き込んでもらう。会場にそのICカードを持って行けば、入り口の専用ゲートから入場できる仕組み。これならチケット偽造の心配もない。インターネット使うから、代理店なしで直接購入希望者に売ることができる。これなら公正だから、たとえチケットが手に入らなくても納得できる。手数料が減る分、料金が安くなるかもしれない。  ワールドカップで使われる予定のICカードは、非接触型のカード。従来のICカードは、銀行のキャッシュカードみたいに読み取り機に入れるけど、非接触型だと赤外線にかざすだけでいい。例えば、電車の改札口。今はいちいちカードを差し込んでいるけど、非接触型になれば、改札口を通るときに機械にカードをかざすだけでいい。定期券のときは、いちいち取り出さなくていいからずっと便利になる。  ワールドカップのICカードは、チケットだけじゃなくて、ショップでの買い物や飲食にも使える。会場の中では、カード1枚ですんでしまうというわけだ。ICカードをショッピングに使う実験は、ビザカードが今渋谷でやっているし、他にも世界中いろんなところで進められている。  クレジットカード、キャッシュカードとか、お店のサービスカードとか、今いろんなカードが財布にいっぱいという人が多いけど、記憶容量の多いICカードなら、1枚で、買い物、電話、鉄道、銀行、どこでも使えるようになる。そうしたら、便利だよね。日本では、ワールドカップのICカードが普及の大きなきっかけになるはずだ。


デジタルで行こう! 第30回 1999.2

2000年問題

 1999年になって、2000年問題というのが、新聞やテレビで盛んに言われるようになってきた。今までのコンピュータは20世紀の年号を2桁で扱ってきたから、99年まではいいけど、2000年になると、00年では1900年と区別がつかなくて正常に動作しなくなるらしい。  例えばクレジットカード、今あなたが持っているのは、使用期限が99年何月かになっているのが多いはず。年号を2桁で扱ってきたから、2000年以降の使用期限のものを作るには、プログラムを大幅に変えなければならない。これには大変な手間がかかるから、99年になっても、まだその書き換えがすんでいない。  パソコンも使ってないし、関係ないじゃんと思うかもしれないけど、実はほとんどすべての人に関係ある大問題なのだ。コンピュータは、あなたの周りのあらゆるところに入り込んでいる。自動車にも家電製品にも小さなコンピュータを内蔵している。電気やガスや水道も電話も、コンピュータが動かなければお手上げだ。  このすべてのコンピュータの何%かが、2000年になると動かなくなる可能性を持っている。電気やガスや水道は大企業や役所が対策を進めているから大丈夫と思うかもしれないけど、大きなコンピュータは複雑なプログラムで動かしているから、本当にどうなるかは2000年になってみないとわからない。  アメリカ政府は、対策の遅れている途上国へは、2000年の初頭には行かないよう呼びかけている。どんな混乱が起きるかわからないからだ。飛行機だって、コンピュータで動いているようなものだから、1月1日に載っているのは、怖い。  僕は、2000年の1月1日は、家で静かにしていることにしている。電気が来なくても使えるような暖房やラジオも準備して、食料も買い込んでおいたほうがよさそうだ。


デジタルで行こう! 第31回 1999.3

未来のオーディオMP3

 インターネットでCD並みの音楽が楽しめる「MP3」が話題だ。今までのホームページで音楽を聴くっていうと、雑音まじりだったり、時々途切れたりというイメージだけど、MP3は、リアルタイムではないけれどCD並みの音がしっかり楽しめる。しかも、データ自体はCDの11分の1くらいに圧縮されているから、ダウンロード(パソコンに記録する)にかかる時間は、実際に聴く時間の2倍から数倍くらい。  MD(ミニディスク)も4分の1くらいにCDのデータを圧縮しているけど、MP3はもっと圧縮して、しかも音質はMDよりもいいくらい。画像と音声を圧縮する方式にMPEG2というのがあって、これはCDと同じサイズのディスクで映画が楽しめるDVDにも使われている。MP3はこの最新の方式を使っているから、今まで以上の圧縮が可能になった。MPはもちろんMPEGのMPだ。  MP3はパソコンで楽しめるだけじゃなくて、ウォークマンみたいな専用のプレイヤーも発売されている。半導体チップに録音するから揺れて音とびすることもない。1時間程度録音できて、チップが交換できるタイプもある。  MP3なら、誰でも自分の音楽をホームページに置いて世界中の人に聴いてもらえる。著作権の問題があるから、市販されているCDを勝手にMP3にはできないけど、インターネットでお金を取る仕組みができれば、市販CDもインターネットでMP3で発売されるようになる。  そうすれば、「ちょっと昔のCD聴きたいんだけどもう売ってない」とか、「限定版が売り切れちゃった」とかいうことがなくなるし、第一CDショップに出かける手間もなくなる。CD1枚全部じゃなくて、聴きたい曲だけ買うこともできるようになる。  電子ブックというと、「本はやっぱり紙に印刷されたのを読みたい」と思うけど、CDならMP3になったってほとんど変わらない。LPレコードがなくなったみたいに、次はCDもなくなって、全部インターネットになっちゃうかも。


デジタルでいこう! 第32回 1999.4

デジタルVHS

 CDと同じサイズのディスクに2時間の映画をデジタル高画質で記録して、まだ余裕があるというDVDが人気を集めている。98年のDVDプレーヤーの販売台数は50万台。映画、音楽などのソフトも1500タイトルになった。LDはそろそろDVDに取って代わられそうだが、最近、それとは別に、今のVHSビデオをデジタルにする「D-VHS」という新しい企画が発表された。 これは、VHSビデオと同じサイズのテープに、デジタルで最大49時間のデジタル放送が録画できるというもの。デジタルのテレビ放送はこれから本格的に始まるが、それがそのまま録画できる。デジタルだと画質が悪くなることがない。どこにどの番組を録画したかもすぐわかるし、最初からCMをカットして録画するのも原理的には可能だ。 こうなると、テレビの見方が全然変わってしまう。ハードディスクのようなメモリーを付ければ、録画途中の番組を録画を続けながら、最初から見始めるのもOK。1時間番組を15分遅れて、CMなしで楽しむなんて裏技も可能になる。テレビがデジタルになると、今までのような番組の間に無理矢理挟み込むCMは成り立たない。見たい番組は、ケーブルテレビやCS放送のように、お金を払ってみるのが当たり前になる。テレビは無料の時代は終わって、NHKと民放4系列の時代は幕を閉じるかもしれない。 この新しいD-VHSデッキは、今までのアナログのVHSテープもそのまま見ることができる。VHSは、もっと小さくて画像もきれいな8ミリビデオが登場してもしっかり生き残ってきた。今でもレンタルはVHS。誰でも録画したVHSのテープはたっぷり持っているから、それがそのまま見られるD-VHSは魅力十分だ。 発売は早ければこの夏。しかもこのD-VHS、ビデオテープでは、VHS方式とベータ方式で激しい争いを演じたビクターとソニーが協力して開発する。 DVDも録画の出来るタイプの発売が噂されているが、こちらは、ソニー陣営と東芝陣営が分裂したり、いろいろ問題があって、録画できるDVDの登場はもう少し時間がかかりそう。あなたなら、D-VHSとDVD、どちらを選びます?


デジタルでいこう! 第33回 1999.5

フラッシュメモリー

 久しぶりにオーディオ売場に行って驚いた。カセットレコーダーがすっかり少なくなって、MDプレーヤーが幅をきかせているのは予想通りだったけど、新しい発見はICレコーダーがけっこう流行っていること。ICレコーダーはテープやMDの代わりに半導体のメモリーを使ってデジタル録音するもの。MDのようにモーターが必要ないから、回転音がしないし超小型にできる。聞きたい部分を探すのもテープはもちろん、MDよりも早い。昔は、録音時間が短かったけど、今は最長で4時間録音できるものもある。英会話教室とか、講演会や会議の録音におすすめだ。 このICレコーダーに使われている半導体メモリーは、フラッシュメモリーという。パソコンに使われいるメモリーには、書き込み(音楽なら録音)ができないROM(ロム)と、書き込みはできるけど電気を切ると内容が消えてしまうRAM(ラム)の2種類があるが、フラッシュメモリーは、そのどちらでもない新製品。書き込みもできるし、電気を切っても(機器から外しても)内容が消えないというすぐれモノだ。「フラッシュ」というのは、カメラのフラッシュみたいに、一瞬で内容を消去できるところから名前がついた。 フラッシュメモリーは、小さいわりに記憶容量が大きくて、衝撃に強いと、良いとこだらけで、今ではいろんなところに使われている。携帯電話の電話番号なんかを記憶させているのもフラッシュメモリーだし、デジカメに付いている、小さい四角いチップで片端が三角形に切れているスマートメディアも、フラッシュメモリーの一種。ソニーがデジタルビデオやデジカメの記録用に宣伝しているメモリースティックも同じだ。 今はスマートメディアで最大150万画素の超キレイな画像が20数枚、CD程度の音質なら20分記憶できるだけだけど、将来は、もうひと回り小さくして、スマートメディアの1000倍くらいの記憶ができるようになるらしい。そうなると、1枚のフラッシュメモリーに、何でも入っちゃうっていうことになる。 テープからディスクに録音するものが変わってきたけど、次はフラッシュメモリーの時代になりそうだ。この名前覚えておいたらちょっと物知り顔ができる。


デジタルでいこう! 第34回 1999.6

ペットロボットでいこう!

 ボールとじゃれ合ったり、頭をなでるとうれしそうにワンとほえるという子犬型ロボットAIBO(アイボ)をソニーが発売。テレビでも取り上げられて話題になった。限定発売した3000台はわずか20分で売り切れてしまったそうだ。 ソニーでは、こうしたペットロボット市場が将来はパソコン市場と同じくらい成長すると考えている。同じ頃、アメリカの電子ペットファービーの日本語版が発売されて、デパートや玩具店に行列ができた。パソコンやゲーム機の画面の中で育てたり遊んできた電子ペットが実際にさわれるものになってきた。これからも新製品が各社から登場して、話題を作っていくことになりそうだ。 これも、コンピュータやAI技術、日本が世界のトップにあると言われるロボット技術が生み出したもの。最初に工場で人間の代わりに作業をするようになったロボットは、鉄腕アトムなど思い浮かべることもできない、ただの腕だけの実用的なものだったが、96年には、自動車メーカーの本田技研が、独立して(コードなどのついていない)自分で二足歩行のできる人間型ロボットを発表。 階段を上ったり家の中で作業をするには、人間型が適していると言われているが、将来人間型家事ロボットが登場するかとういと、専門家でも首をかしげる人が多い。洗濯は汚れ物を投げ込んで置けば、分類から洗濯・すすぎ・乾燥・たたむまでやってのける、超全自動洗濯機があればいいし、寝たきりのお年寄りの介護にしても、ロボットがやるより、全自動介護ベッドを開発したほううが早い。飛行機が鳥からヒントを得て生まれたとしても、形も仕組みも違っている。自動化したいことは、その作業にあった形のロボット機械でやったほうがずっと効率はいい。 でも、ペットだけは違う。生きている犬や猫を飼うのが都会では難しいという現代では、ロボットのニーズはますます増えてくるはず。パソコンだって、ゲームソフトが売れたからものすごい勢いで進歩した。ペットロボットも同じように、数年で本物そっくりのが出てくるかもしれない。こんなのがあったら絶対受けそうというアイデア、少しの努力と運と才能があれば、あなたでも実現できるかもしれない。大ヒットのアイデアは、実際の購買層になる若い女性の間から生まれるはずだから。


デジタルでいこう! 第35回 1999.7

インターネット最新事情

 ケータイでもEメールが簡単にできるようになって、会社のパソコンでちょこっとやるだけだったインターネットもずいぶん身近になってきたよね。 最近のうれしいニュースは、インターネットに絶対必要なパソコンが無料で手にはいるかもしれないってこと。アメリカでは、インターネットのサービスを提供するプロバイダーの競争が激しくなって、例えば、「3年間分契約を結んでくれたら、パソコンを差し上げますという」ところが増えている。 日本でも、0円とか、5円とかで、ケータイを売っているっていうのがあったけど、あれは、赤字を出してその値段で売っても、そのあと、通話料金が入れば大丈夫だから。アメリカのインターネットも同じ理由で、パソコンが無料になっている。もちろん、パソコンの価格が昔に比べてぐんと安くなったのも影響している。 日本はインターネットの普及はまだまだだし、パソコンもアメリカよりはまだ高いから、プロバイダーがそうしたサービスを始める気配はない。でも、インターネットでオンラインショッピングを始める会社が、「月1万円以上買ってくれる人にはパソコンを無料で提供!」というサービスを始める。 それでも、パソコン無料でもらっても、難しくてインターネットできそうもない、という人には、テレビでインターネットという方法がある。「ウェブTV」といって、ビデオデッキみたいな端末を買ってきてテレビとつなぐと、誰でも簡単にインターネットが始められる。「テレビでホームページ見ても、そんなにきれいじゃないし、使いにくいんじゃないの?」と思うかもしれないけど、ウェブTVの会社でテレビの画面でも見やすいようにホームページを処理してくれるから、そんな心配はない。 テレビでインターネットをやると、もっと面白いのは、テレビ放送とインターネットが連携して楽しめること。テレビ放送が、インターネットの情報を一緒に送り出すしているので、CMと一緒にその会社のホームページを自動的に見たり、スポーツ中継と一緒にインターネットで解説の画面を見たりできる。テレビ番組の情報量がぐーんと増えちゃうわけ。日本ではまだ始まってないけど、アメリカではそうした放送が日に2000時間もある。 ケータイでEメールを使うようになったら、本格的にインターネットを始めてみたくなる。ちょっと遅れちゃったかなっていう人には、そろそろ始めてみるいいチャンスかもしれない。


デジタルでいこう! 第36回 1999.8

未来のオーディオはどっち?

 松下電器が11月にDVDオーディオという新しいプレーヤーを12万円で発売する。今のCDは、人間の耳に聞こえる音をほぼカバーするような規格で作られているが、この「ほぼ」がくせ者。耳のいい人には物足りないし、耳では聞こえないような高周波の成分も実は音質には影響するという意見もあって、「昔のLPのほうが味があった」なんて意見もよく耳にする。 DVDはCDと同じ12センチのディスクに、2時間以上のデジタルの映像と音声を入れることができる。最近は映画のDVDソフトの発売も増えてきた。DVDオーディオは、CDの7倍の記憶容量を持つDVDに音声だけを入れるもの。CDでは人間の耳に聞こえる音をほぼカバーしているが、容量の大きいDVDオーディオはその数倍の細かさで記録する。今より数段の臨場感で再生ができるし、映画館のドルビーサラウンドのように、スピーカー6つを使った再生も可能になる。 実は、ソニーがスーパーオーディオCD(SACD)というまた別の規格のプレーヤーをすでに発売している。これも、DVDオーディオと同じように、CDよりも数倍の細かさで記録するディスク。両者の方式は全く違い、同じプレーヤーでかけることはできない。音質もどっちが優れているかは、実際に聞いてみないとわからない。SACDのいいところは、今までのCDプレーヤーでもかけられること(もちろん音はCD並みになる)。SACDプレーヤーは今のところ50万円と高いが、対抗して低価格機の発売も考えられる。 1台で、映画も音楽も楽しめるDVDオーディオがいいのか、今持ってるCDウォークマンが無駄にならないSACDがいいのか、難しいところ。それに、ソニーはクラシックやジャズのいい音源をたくさん持っているから、それがどっとSACDで発売されれば、プレーヤーがほしいという人が増えるかもしれない。 MDが出たときも、同時期にDCC(デジタル・コンパクトカセット)という昔のカセットも使えて、デジタル録音もできるのが発売されたけど、結局MDに負けてしまった。DCCがダメだったのは、MDより大きかったからだと思うけど、DVDとSACDはどちらも12センチのディスク。映画も音楽もひとつのプレーヤーで楽しめるほうがいいけど、どちらも聞けるプレーヤーが出れば、そっちのほうがいい。プレステとかのゲーム機と同じで、どんなソフトが出るかにもよるし、しばらく悩むことになりそうだ。


デジタルでいこう! 第37回 1999.9

ポケベルがなくなる?!

 一時は女子高生を中心に絶大な人気があったポケットベルが、ヤバイことになっている。東京テレメッセージが事実上倒産したのに続いて、他の会社も赤字で苦しんでいるのだ。 ポケベルがあっというまにすたれてしまった理由は、簡単に説明でできる。ポケベルが大ヒットしたのは、ビジネスのためとか必要に迫られたものではなかった。「今どこ?」「何してる?」とか、何気ない会話のために使われていた。今は、それがPHSや携帯の文字メールやポケットボードに替わっている。 ポケベルなら送るのに公衆電話まで行かないといけないけど、携帯ならその場で送れる。料金が安くなれば、ポケベルから携帯に移るのは前だ。 ポケベルはもう時代遅れなのか、でも、ポケベルの危機は日本だけのこと。海外では健闘している。電波の波長が携帯より長いから到達エリアが広く、障害物があっても届きやすい。特にアメリカでは、携帯電話の通話料が発信・着信に関わらず、携帯の所有者に請求され、割高という仕組みのため、ポケベルで呼び出してもらって、携帯でかけ直すという人が多い。ポケベルで受ける情報サービスも充実している。 日本でも、携帯はつながらないけど、ポケベルなら大丈夫というエリアはまだまだある。受信するだけのポケベルでも、ニュースや天気予報やお得なショッピング情報とか、安い料金で受けられるようなサービスがあれば、利用する人は増えるはず。携帯電話やPHSと一体化して、メッセージはポケベルで受けられれば、利用したい人は多いはずだ。 日本でポケベルがダメになったのは、女子高生とかビジネス以外のバブリーな利用に頼ってしまったほかに、政府の規制が大きい。今でも全国をカバーするNTTドコモ以外は、各県にひとつの会社と決められている。当然小さな県のポケベル会社は、NTTドコモにはなかなか対抗できない。合併は認められないから、経営はどんどん苦しくなる。NTTドコモだけになったら、料金は下がらないし、サービスも低下することになる。 ポケベルはまだまだ時代遅れのメディアじゃない。電波が遠くまで届く、設備が安い、端末が小さいというメリットを生かせば、新しい便利なサービスが始められるはず。世界じゅうでポケベルの便利なサービスが普及したとき、日本ではなくなっていたというのでは情けない。 郵政省も、NTTドコモも、テレメッセージ各社も、頭をひねって何とかして!


デジタルでいこう! 第38回 1999.10

デジタルは漏れやすい

 昨年から、企業の管理ミスでお客さんの個人情報が流出する事件が相次いでいる。明らかになったものだけでも、昨年1年で10件程度。NTTの社員が、電話番号のデータを業者に売っていたのがバレて逮捕されたニュースなど覚えている人も多いだろう。会社の機密情報を横流しする重大な犯罪が、最近ではいとも簡単に行なわれている。逮捕の記事など読むと、「バレてないけど、みんなけっこうやっている」と発言している関係者もいる。 これには、デジタルであることが影響している。昔なら、企業の秘密書類を盗み出すのには危険が伴った。金庫から取り出すには鍵も必要だし、持ち出したらコピーしなければならない。誰かに見られてバレる可能性はかなり高い。しかし、コンピューターから盗み出すのなら、自分の席で普通にパソコンに向かって仕事をしながら簡単にできる。コピーするのも簡単だ。電子メールで送ってしまえば、手渡しする手間もない。個人情報を違法に外部に渡した人は、それほど罪の意識はなくやったのだろう。 企業に勤める人間がモラルを持たなければいけないのはもちろんだが、これは自分の個人情報もどこに漏れているかわからないということだ。知らないところからいろいろな勧誘の電話がかかってきたり、取り寄せた覚えのないダイレクトメールが届くという経験は誰にでもあるだろう。アンケートに答えたのを忘れてしまったのかもしれないが、あなたの住所や電話番号や名前の載っている名簿が、知らぬ間に横流しされている可能性もある。 デジタル化がもっと進めば、「自分の情報はすべて自分で管理して、他の人が見るためには許可が必要」ということも可能になるが、今は個人情報はいい加減にあちこちに流れ放題という状態だ。そんな状況の中で、通信傍受法案や国民総背番号制につながる法案が国会で可決されるから、国に情報を全部握られてるようになるんじゃないかという心配の声も出てくる。 デジタルの時代になると、情報を管理するのはずっと簡単になる。それはうまく利用すれば、コストも下がるし便利なこともたくさんある。しかし、悪用されれば個人情報はタレ流しとなり、いつどこで悪用されるかわからない。それを防ぐためには、新しい技術の開発が必要だし、自分を守るためには、一人ひとりがデジタルについてもっと知識を持つことが大切だ。デジタルは便利だけど、けっこう大変なのだ。


デジタルでいこう! 第39回 1999.11

2000年問題どうする

 いよいよ2000年問題の起きる来年の1月1日が近づいてきた。政府も、食料やガソリンや医薬品などの備蓄や、預金の記帳や請求書のチェック、現金の準備、急用でない電話やインターネットの利用をできるだけ控えるようにという11項目の防衛策を発表している。政府の話だと、「心配はいらないけれど、念のため気をつけてください」というニュアンスだが、読んでいくと「こんなに準備しなくちゃいけないの、ホントに大丈夫なの」と心配になってくる。 ホントのこと言うと、1月1日になったら、どんなことが起こりそうかはわかっているけど、じゃあどれとどれが起こるかは不明。それで、11項目に何でもかんでも盛り込んであとで文句のでないようにしているのだ。昔は、政府はどんなことでも、「大丈夫だから信用しなさい」という姿勢だったけど、最近は、「なにが起こるかわかりません、最悪の事態を想定しなければいけません」という昔に比べると弱気の対応が多い。これも、世の中のシステムが複雑になって、すべての状況が把握できなくなっているから。つまり、自分の安全は自分で真剣に守らなければならない時代なのだ。 さて、2000年問題だけど、日本ではそれなりの対応をしているから、生命に危機が及ぶような事態はおそらく起きない。しかし、小規模なトラブルは必ず起きる。やはり、食品や水や燃料の備蓄はしておいたほうがいいし、コンピューターに関わる銀行口座の記帳やクレジットカードの請求のチェックはきちんとすることをすすめる。 2000年問題に限らず、今自宅で、電気やガスが水道が止まったらと考えると、けっこう大変なことに気づく。うちでも、灯油を買い込んでおいても、ストーブはすべてファンヒーターだから、停電したらいくら灯油があっても暖房はできない。そんな気がつかない落とし穴はあるはずだ。東海村の臨界事故のときも、突然10キロ圏内の人は外出禁止になって、食べ物がなくて困った人もいた。休みで家にいるとき、突然外出禁止になったら困るナという人は多いだろう。 そんなふうに、コンピューターで支えられた便利な世の中に慣れてしまって、全部止まったらどうなるだろうなんて考えることはない。2000年問題は、そんな自分の生活についてもう一度考えるいいチャンスだ。地震、台風、いろんな施設や工場の事故など、自宅にいたって災難に巻き込まれる可能性は誰にでもあるのだから。


デジタルでいこう! 第40回 1999.12

2000年問題を楽しもう

 2000年1月1日午前0時に、コンピューターが動かなくなったり、故障したりするかもしれないという2000年問題。今の世の中は、電気もガスも水道も電話も交通機関も銀行も、何んでもコンピューターが組み込まれているから、「私はパソコン使わないから関係ない」というわけにはいかない。 ちょっと前までは、日本はきちんと対応しているから大丈夫という話だったが、迫ってくると、政府も「水や食料、灯油の備蓄をして備えよう」という呼びかけを始めた。「せっかくの休みだというのに、海外旅行にも行けず、家にこもっているしかないの」とため息をついている人も多いはず。 でもでも、実は2000年問題を日本で迎えるのはけっこう面白いことなのだ。太陽は東から昇って来るから、世界の大都市のうちで最初に2000年を迎えるのは東京。つまり、東京が1月1日午前0時を迎えたとき、何が起きるかを、世界中が注目している。東京でどんなことが起きたかがわかれば、数時間後に2000年を迎えるヨーロッパやアメリカは、急きょ対策を立てることもできる。つまり、日本は、はからずも2000年問題の実験場になっちゃうというわけ。 TVや新聞などのマスコミも、その辺に注目して大々的に各地で中継するだろうし、インターネットでも、KNNという自前のデジタル放送局を持っている神田敏明さんが中心となって、ホームページで日本の状況を生中継しようという計画も進んでいる。 今は、デジタルビデオとノートパソコン、PHSがあれば、誰でも世界中に生中継の画像を流すことができる。TVよりもきめ細かく、東京各地の盛り場やイベント会場、ホテル、交通機関などからの生中継すれば、世界中の人が東京の状況がつぶさに見ることができる。インターネットが使える人は、要チェック。2000年問題対応で、年末年始も出勤になっちゃった、なんて人は会社でしっかりチェックしておこう。 ノストラダムスの1999年7の月は何も起きなかったけど、2000年1の月は、いい加減な予言じゃなくて、何かが起きるかもしれないと、政府までお墨付きを出している。ヒトの不幸を楽しむのはちょっと不謹慎かもしれないけど、しっかり対策を立てて家で安全にしていれば、まず問題はないはず。こうなったら、2000年問題は、家族や親戚と、一人暮らしなら友達と集まって、大いに楽しんじゃいましょう。何も起きなければOKだし、何しろ千年に1回のことですから、


デジタルでいこう! 第41回 2000.1

地球にやさしい電子書籍

 シティリビングの記事は、紙の新聞のほかに、インターネットのホームページでも読むことができる。読者の方は、どっちが便利だと思っているだろう。インターネットは、昔の記事をさかのぼって見たり、検索して読みたい記事を探し出すこともできる。紙の新聞のように、オフィスに一部しか配達されなくて、取り合いになるなんてこともない。でも、やっぱり新聞は紙を広げて読みたいと思う人も多いだろう。インターネットだと、ページをめくるのにも時間がかかる。どこでも読めるわけでもない。 ホームページは便利なところもあるけれど、紙の新聞や雑誌がなくなったら困る。まあ、いくらデジタルの時代になっても、アナログの新聞なんかがなくなる心配はないけど、21世紀を目前にして、書籍や雑誌の形が変わっていくのは間違いない。 僕は今、電子書籍コンソーシアムの実用化実験に参加している。電子書籍といってもいろいろなタイプがあるけど、今回のは、単行本くらいの機械に液晶画面がついていて、書店でデータを買って読む方式。液晶画面に表示されるのは、文庫本や単行本と全く同じ縦書きの文章。漫画も読める。 最初は、本と全く同じ文章を液晶画面で読むのに違和感があったけど、そのうち気にならなくなった。書籍の価格は紙の本とほぼ同じ。は電話回線を使ってダウンロードするのに数分かかるけど、待つ間、書店の人とよもやま話をしているのが新しい経験で面白い。 これなら、書店にない本を注文して長く待たされることもない。全部の本が電子書籍になれば、読みたい本が読みたいときにすぐ手に入るようになる。電子は嫌い、という人には、書店でその場で印刷する「オンデマンド印刷」の実験も別に進められている。これなら、書店で注文して、その場で印刷して製本してもらえる。紙の本がいいという人も、読みたい本をその場で手に入れることができる。こうなると、書店の形も変わっていくだろう。今までのように広い店内に、本や雑誌を並べる必要はない。売れ筋の雑誌や単行本が十数種類並べてあるほかは、コンピューターとプリンターが置いてあるだけ。そんな狭い書店でも、都会の巨大書店と大差ないことになる。 欲しい本が手に入りにくい、時間がかかるという声をよく聞くけど、電子書籍とオンデマンド印刷が普及すれば、そんな不満は解消される。アメリカのNGOでは、こうしたインターネットの普及でエネルギーの消費が減って、地球温暖化が防げるという報告も出ている。書店の陳列スペースや倉庫スペースが減らせて、維持費が少なくてすむからだ。必要な本がいつでも手に入って地球環境にもやさしい。本好きには楽しい時代になりそうだ。


デジタルでいこう! 第42回 2000.2

ダウンロードミュージック

 ダウンロードミュージックというちょっと聞き慣れない言葉は、インターネットでダウンロードして、パソコンで聞く音楽のこと。以前、この欄でもCDの11分の1くらいに圧縮したMP3っていう未来のオーディオのことを紹介したけど、MP3を初めとしたいろんな規格で圧縮された音楽が、最近インターネットのいろんなところで楽しめるようになってきた。 日本でもソニーミュージックが独自の方式で始めたし、インディーズ系だけじゃなくて、メジャーなアーティストもインターネットで聴けるようになってきた。ただし、日本はまだ料金が高い。1曲が200円〜350円だから、アルバム1枚分で2000円以上。電話料金とプロバイダーの料金を考えたら、ショップで買ってきたほうがいい。アメリカでは、1曲1ドルが普通。日本も早く値下げを考えないと、インターネットみたいにアメリカに何年も遅れをとっちゃうことになりかねない。 MP3のいいところは、パソコンにソフトを入れれば、自分でCDからMP3への変換が簡単にできること。11分の1に圧縮できるから、CD1枚に200曲くらい入っちゃう計算になる。パソコンの大きなハードディスクだったら、1000曲だって、2000曲だって可能だ。CDが増えちゃって困るという人は、全部パソコンに入れちゃえば、場所もとらない。あのCDどこに行ったかな〜って探し回ることもない。ノートパソコンなら、どこでも持ち歩ける。ウォークマンとMD何枚もをがさがさとバッグに入れて歩く手間もない。 実は、CD1枚に200曲も入っちゃって、CDとあんまり音質が変わらないのは、これからの音楽にとって画期的なことだ。ビートルズ全曲だって1枚に入っちゃうし、たとえばビートルズの膨大なレコーディングの全部を何枚何十枚のCDで発売するのも夢じゃない。そうしたら、ビートルズの4人のレコーディングのときの細かいやりとりが聞けちゃう(今はごぐ限られた評論家の人しか聞いていない)。レコードは、録音した元のテープから、楽器やボーカルやコーラスのバランスを決めながら、最終的な形に仕上げて発売されるけど、そんな作業を自分のパソコンでやって、自分だけのビートルズサウンドを作ることも可能になる。 11分の1に圧縮することで、ポピュラー音楽は全然違った作り方・売り方・聴き方になる。それもこれも、CDというデジタルなメディアに記録されているから。デジタルはいろんなことを変えていく力を持っているというわけだ。


デジタルでいこう! 第43回 2000.3

プレステ2が時代を変える

 3月4日、話題のゲーム機「プレイステーション2」が発売された。ゲーム好きの人なら、すでに手に入れているかもしれない。そうじゃない人も、TVなんかでその過熱ぶりは知っているはず。でも、プレステ2は、「ゲームなんてしない」という人にも大いに関係ある「端末」なのだ。
 プレステ2がスゴイのは、スーパーコンピュータに匹敵する高性能なチップのおかげで、ゲームなのに、映画に出てくるようななめらかなCG画像が実現していること。この高性能チップによって、最近人気の、CDサイズで映画の見られるディスク「DVD」の再生もできちゃう。
 それで3万9800円。今売っているDVDプレーヤーは10万円前後のが多いから、ゲームしなくて映画見るだけでもプレステ2はお得! ってこと。DVDはこれから、CDよりずっといい音で聞けるDVDオーディオとかバリエーションが出てくる。プレーヤーだとそのたびに機械を買い換えないといけない。プレステ2なら、ソフトでそれに対応できるから、その点も便利だ。
 しかも、来年にはプレステ2でインターネットにも接続できるようになる。対戦ゲームをしたり、ゲームソフトや、CDの11分の1でも同じ音質のMP3の音楽ソフトを手に入れたりできる。もちろん、ホームページを見たり、Eメール交換もOKだ。
 インターネットをTVを使って簡単にやろうというのはいろんなメーカーがチャレンジしてきた。最初はインターネットTVが出たし、セガのゲーム機、ドリームキャストもそれを売りにしている。しかし、いくらメーカーが力を入れても、なかなか思うように普及しなかった。パソコンでインターネットだと、普通の人にはやっぱりハードルが高い。
 しかし、全世界で7千万台売り上げたプレステの後継機、最初の2日間で百万台を出荷しても、予約に応じきれなかった次世代ゲーム機で、インターネットもできるなら、どの家にもTVと電話があるように、どの家でもインターネットするようになる時代が、すぐそこまで来ていることになる。
 携帯電話のiモードが、予想以上に大ヒットして、インターネットとEメールはすごく身近になった。そして、プレステ2で、どの家庭にもインターネットが入り込んでくる。
「20世紀の最後の年に発売されたプレステ2によって、インターネットは世界中に広く普及するようになった」。百年後の歴史の本にはこう書かれるかも。


デジタルでいこう! 第44回 2000.4

BSデジタル

 4月はTV番組改変の季節。今回も新しい番組が始まっていつもの改変のようだけれど、ちょっと感じが違う。NHKの夜のニュースが10時にずれたり、いつもより変化が激しい気がする。
 2000年になったのもあるけど、たぶん今年の12月にBSデジタル放送が始まるのが影響している。BS、CSと新しいチャンネルが増えてきたTV放送は、BSデジタル放送が加わってがらっと変わるのだ。
 今まではチャンネルが増えた程度だったけど、BSデジタルはTV界の仕組みを変えるほどのパワーを持っている。TV関係者はそれを敏感に感じ取って、地上波のTV番組が激動し始めているのだ。
 BSデジタルは、今のBSアナログ(NHKのBS2つとハイビジョンとWOWOW)とは違う衛星をもうひとつ打ち上げて送信する。デジタルはアナログに比べてデータが圧縮できるから、今までの普通の1チャンネルに、デジタルハイビジョン1つと普通の放送3つを入れることができる。普通のチャンネルなら6つ、つまり、衛星1機で6倍送れることになる。
 デジタルだから、すき間を使ってデータ放送もできる。データ放送は、視聴者が情報を選んで表示することができて、ちょうどインターネットをTVで見るようなイメージだ。チケット予約やゲーム、クイズ番組への参加なんかの番組が考えられる。
 データ放送も入れると、TVのチャンネルがいっぺんに40くらい増えることになるけど、BSデジタルは数万円のBSデジタル放送チューナーがあれば、今までのTVで見ることができる。アンテナは今のBSのでOKだ。
 NHKは今のBSの受信料のままでデジタル放送もする予定だし、民放もそれに合わせて無料放送するだろう。データ放送や一部の放送は有料になるだろうけど、それだけのチャンネルが数万円のチューナーを買うだけで見られるのは魅力だ。将来は、BSデジタルと今の地上波放送の競争になると言われているから、NHKも民放も本気で番組に力を入れるだろう。
 CSデジタルのスカパーはたくさんのチャンネルが選べるけど、有料で利用している人はそんなに多くない。でも、BS放送を見ているのは今でも900万世帯以上いるから、BSデジタルはかなりの勢いで広まるに違いない。そこでTV界にどんな変化が起こるか、今年はBSデジタル放送の動きから目が離せない。


デジタルでいこう! 第45回 2000.5

ヒトゲノム占い

 最近、新聞やテレビをにぎわしているのが、「ヒトゲノム」という言葉。これは、人間が持つ遺伝情報の全体のこと。誰でも、23対46個の染色体を持っていて、これが遺伝に関わっている。その染色体をときほぐすと、髪の毛の数万分の1の太さ、長さは約2メートルの糸のようなものになる。これがDNAだ。
 DNAはアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)という4種類の塩基が、らせん状につながっている構造になっている。つまり、このAとGとCとTの4つの並び方が暗号になっていて、人間の遺伝子情報を隠しているというわけ。
 最近「ヒト遺伝子の90%の解読に成功! 2003年にはすべて解明!」なんて騒いでいるのは、このAとGとCとTの4つの塩基の並び方が90%までわかってきたってこと。でも、全部で30億個もある。1回の解読は500個くらいしかできないから、コンピューターを使っても膨大な作業が必要になる。こうして、人間がどういうふうにできているかを、デジタルに分解してつきとめようという壮大なチャレンジなのだ。
 ヒトゲノムのことがわかってくると、病気を引き起こす遺伝子、癌や生活習慣病(糖尿病とか高血圧とか)になりやすいになりやすい遺伝子が解明されて、新しい医薬や治療法が出てくる。つまり、医薬品メーカーを初めとして、画期的な治療薬の開発でどーんとお金がもうかる可能性が大きい。だから、企業も研究所も必死になって解読に取り組んでいる。
 全部の遺伝子とその仕組みが解明されれば、人間の寿命は200歳くらいになるという話もある。ただし、AとGとCとTの4つの塩基の並び方が100%わかったとしても、まだまだ先は長い。遺伝子に当たるのは、そのうちの5%だけ、それぞれの遺伝子がどこにあるか見つけだして、さらに治療法も発見しないといけない。それに、残りの95%が何のためにあるのか、まだ全然わかっていない。これだけ科学が進んでも、人間については、わからないことだらけなのだ。
 ヒトゲノムが100%わかったとしても、病気がすべて克服されるまでは、まだまだ時間はかかる。それに、ヒトゲノムというのは、すべての人が一緒ではなくて、個人によって並び方の違いもある。これが薬の効き方の個人差の原因じゃないかとも言われている。
 もしかしたら、性格がいろいろ違うのも、この染色体の塩基の並び方の違いかも。動物占い、回転寿司占い、新しい占いがどんどん出てくるけど、究極の占いは、塩基の並び方の違いで占う「ヒトゲノム占い」かもね。


デジタルでいこう! 第46回 2000.8

低価格デジタルカメラに注目!

 今、1万円以下の安〜いデジカメが売れている。今まで人気だった5〜10万円の高級デジカメと肩を並べて、販売台数の上位に登場している。デジカメは、同じくらいの値段で、もっときれいに撮れるような機種がどんどん出て、1年前に買った機種はもう機能が低いという状況だった。それが、何で機能の低い機種に人気が集まっているのだろう。
 1万円以下の低価格機種の特徴は、画質の良さを示す画素数が30万画素以下のほかに、スマートカード、メモリースティックなどの画像を記録する取り外しできるメモリーがついていないこと。画像は電池が持つ間しか保存できない。その日のうちにUSBケーブルなどで、パソコンに転送して保存する。転送速度も昔に比べてずっと速くなったから、面倒なことはない。撮ったあと画像を確認する液晶ディスプレイも付いていない。パソコンに転送してから見ることになる。
 それでも、1万円以下で気軽に変えるのは魅力だ。パソコンは持っているから、デジカメもほしいなという、若い人たちの人気を集めている。
 発売しているのも、トミー、バンダイ、ニチメン、高木産業など、カメラメーカーじゃないメーカー。デザインも流行のスケルトンだったり、カラフルな色が選べたり、動物占いと組み合わせた機種があったり(動物占いのキャラクターのフレーム付きの写真が撮れる)、ターゲットはもろに若い層だ。
 低価格だからオモチャか、というとそんなことは全然ない。高級機種は300万画素とか、どんどん画素数を上げて画像をきれいにしていったけど、パソコンで表示するなら、30万画素以下で全然大丈夫。となると、10万円もするデジカメを大事に持っていくより、1万円以下のカメラを気軽レンズ付きカメラの感覚でポケットに突っ込んで、バシバシ撮ったほうがいい。1万円以下なら、半年に使うレンズ付きカメラ数台の値段で買えちゃう。フィルム代がいらないからアナログのコンパクトカメラよりずっとお得だ。
 1万円以下のデジカメが売れるのがわかってきたから、これからカメラメーカーもどんどん出してくるはず。そしたら、価格も5千円以下になる日も近い。1万円以下で、液晶ディスプレイが付いていたり、画像が保存できるタイプも出てくるだろう。高校生、中学生だけでなく小学生まで、デジカメ持って何でも撮って、パソコンやケータイでメールに添付して送ったり、ホームページに載せたりする時代は、そこまで来ている。


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