スコーピオンの封印・7


 ヒカルくんが借りて来た車はオープンカーで、私は後部座席に乗って、絵里奈は助手席。そしてヒカルくんが運転手。ヒカルくんの曲『GOLD・PANORAMA』を聞いていた。ヒカルくんがステージでやっていた振り付けをしながら・・・。時々、ヒカルくんが片手運転しながら、振り付けを教えてくれたっけ・・・。
 数分後。絵里奈とヒカルくんは車を降りて、波打ち際で遊んでいた。私はどっちかというと車にいるのが好きなので、車から見えるワイキキのビーチを眺めていた。きれいだよね。こんなにきれいな海を見たのは久しぶり。
 今じゃ海水は汚くなって来ている。だんだんとと真っ黒に染まっていく海を見ていると、やっぱり心細い。よくテレビなんかで沖縄のサンゴ礁なんか見るけど、間近でこんなきれいな海を見るのは久しぶり。
 小さいころ、よく家族で車に乗って、海まで行ったことがある。千葉の内房辺りかな?そこでカニを捕まえたり、めずらしい貝なんか見つけて集めていたんだっけ?どこに行っちゃったんだろう。あっ、海に返したんだ。
 絵里奈が波打ち際で転んでしまったので、ヒカルくんが絵里奈の手を引っ張って起こしてくれてた。絵里奈は真っ赤。見てられないよなぁ。でもいいか。絵里奈にとって初めての海外で、なおかつヒカルくんと初デートだもんなぁ。今日は許してあげましょう。
 夕方近くになってきたので、今度は私が助手席に乗ってホテルに帰った。ヒカルくんは車を返しに行ってしまった。私たちはヒカルくんの運転姿を見て、しばしボー然としていた。
「今夜はいい夢が見られそうですね?」
「そうだね。絵里奈、食事でも行こうか?夜になるとバイキング料理なんだけどね、食事しながらショーが見られるのよ。ちょっと高いけどね・・・。」
「なんで知ってるんですか?」
「一度、このホテルに泊まったことがあるからね。けっこうおいしいよ。」
「そうなんですか?バイキングって、結構量が多いんですよね?何時頃にしますか?」
 そんなことを話しながら、私たちはホテルに入って行った。さて夜になって、私たちはプールの前にあるバイキングコースに行くことになった。こういう場所は、ちょっとおしゃれして行った方がいいんだよね。
 私たちは買ったばかりのムームーを着て、お金を払ってお皿とフォークを持って行った。ビーフやらチキンやら、はたまた野菜サラダやフルーツやケーキも・・・。絵里奈は迷わずお魚を選んでいた。私は飛行機の中でチキンを食べたので、今度はビーフを頼んだ。
 席がなかなか見つからないので、ウロウロと探していると、なにやら茶髪の人がいたので、一体誰かと思って見てみると、なんとテーブルの1番前に、ヒカルくんがポツンと座っていた。私たちは知らないふりをして、ヒカルくんに近付いた。
「Excuse me?」
「Yes?あっ、女神ちゃんたちじゃん?どうしてココがわかったの?」
「ヒカルくんこそ、どうしてココで食事を?」
「だって僕は出て歩けないからさ、ココでしか食事が取れなくて・・・。それに、ファンの子たちだって、僕を探すかもしれないし、そうなってしまうと、満足に食事ができなくなってしまうから、ココにいるんだ。それに、ココのディナー、おいしいって評判だからね。」
「そうか・・・。ミュージシャンも大変だね。」
 その日は、私たちとヒカルくんはディナーを楽しんだ。けっこうヒカルくんのカワイイ一面も見れたしね。それに、ヒカルくんといるということが、けっこう貴重だからね。
 えっ?『カワイイ一面って何?』だって?それはね、ヒカルくんがステージ(ショーのステージね)に呼ばれて、いきなりウクレレを持たされて、おじさんに教わりながら弾いてたこと。この姿がかわいくてたまらなかった。
 しまいにはヒカルくん、『アロハオエ〜!』って歌い出したの。それを聞いて地元の人はアハハハハと笑っていた。私たちも思わず笑ってしまった。ふざけながら歌っていたんだよね。
 部屋に戻ると、私はモーニングコールを頼んだ。明日、ヒカルくんの弟分の平田晃市(弟と呼ばれているが、本人は気に入っているのだろうか?)くんと、パピー(超年上っていう話を聞いたことかある)の勝野清輔パピーがやって来るので、モーニングコールを頼んだのである。その日、私は眠ることができなかった。

 さて次の日。午前7時。モーニングコールがやって来た。8時にバスに集合なのである。電話がなったので、私は手探りで受話器を探した。あったあった。受話器をあげると、メロディーが流れていた。
「あーあ。眠い。さてと、絵里奈を起こすか・・・。絵里奈!起きなさい!」
「ん?あっ、もうこんな時間なんですか?ふああああっ!おはようございます。先輩。」
「おはよう。昨日は眠れた?」
「全然。だってヒカルくんと一緒にドライブ行ったり、ディナーを楽しんだことで頭がいっぱいで、眠れなかったから・・・。」
 そうか・・・。私と同じだ。私たちは着替えて昨日買ったカップラーメンを食べていた。そして8時。バスの前に集合して、バスに乗り込み、一路ホノルル空港へ・・・。午前8時30分頃にパピーと弟が到着するらしい。パピーと弟が空港を出て来ると、私たちはキャーキャー騒いだ。パピーも『イェイ!』と言って親指を出して来た。弟はただペコリと軽くあいさつをするだけ。
 バスに乗り込んで1時間。私たちはある森林公園に着いた。そこで私たちはヒカルくんと時間を過ごすことになっている。昔、流行った『マジカルバナナ』をやってヒカルくんと対決したり・・・。ちなみに私たちは第一予選で落ちちゃったけど・・・。
「ここで、敗者復活戦を行います!生き残れるのは3人だけ。僕とパピーと弟がくじを引くから、当たった3人が敗者復活者となるよ。みんな、いい?」
「はーーーーーーい!」
 ファンたちが手を挙げながら返事をすると、一斉にくじを引き始めた。ドキドキ・・・。こっちまで手に汗を握っちゃうよ。誰が選ばれるんだろう。含み笑いをしながらチラッとヒカルくんが私を見た。えっ?もしかして・・・。
「発表します。矢野女神さん。」
 えっ!?私!?私は思わずびっくりしてしまった。ヒカルくんとマジカルバナナができるなんて、夢じゃないんだよね。絵里奈は私の肩をポンとたたいて、私を前に出させた。
 勝った人達の輪に集まって、マジカルバナナを始めた。何とか引っ掛からないように言ったけど、けっこう難しいのが出て来たので、一回目で敗退となってしまった。やっぱり難しいよなぁ。
「先輩、残念でしたね?」
「うん。日頃からやっている人達は違うよ。ほら、あそこにいるサーファー系の女の子、いるでしょ?あの子、けっこう渋谷で遊んでるんだって。こーいうことには強いのよ。」
「勉強には強くなくて?」
「そうかもね。」
 クスクスと笑ってしまった。結局勝ったのは、案の定サーファー系の女の子だった。やっぱりね。ヒカルくんのダンスタイムになって、森林公園を舞台に、ダンスナンバーを披露するヒカルくん。私たちもハッスルハッスルしてしまった。中では、1990年に流行っていた『ジュリアナ扇子』を持って来て、踊っていた子もいた。100人もいるから大パーティーとなってしまった。私たちはヒカルくんのステージに上がってヒカルくんの前で踊った。

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