スコーピオンの封印・4
さて当日になり、ブルートパーズの指輪をつけて、成田の第一ターミナル4階の出発ロビーへ行くことになった。集合するのは午後5時。その2時間後には日本を離れることになる。昨日はお母さんが、インスタントみそ汁や梅干し、はたまた食べる海苔まで買って来て、『ハワイで食べなさい』と言って、スーツケースに入れてくれた。おまけに日本食の食べ収め(?)ということで、和食をごちそうしてくれた。イヤってほど食べたけど、しばらく日本にいないとなると少し心細い。
ファンたちがワイワイと集まって来た。派手なスーツケースに、ちゃらちゃらした服を着てるコもいれば、厚底グツをはいたコギャルも見かけた。それから茶髪で真っ黒に日焼けしたサーファー系もいる。私とは大違い。
それにしても絵里奈が遅いなぁ。今日は運が悪いことに、絵里奈が利用しているバスが少し遅れてしまっているらしいと、今朝電話があった。大丈夫かなぁ?ところが遅れると言っていた絵里奈が、他の所で待っていたのである。あれ?遅れるって言ってたのに・・・。
「先輩、すみません。」
「早かったね。どうして?」
「実はタクシーで来たんです。母からタクシー代をもらったので・・・。」
あっ、そっか。電車で行くより、かえってタクシーで来た方が早いもんね。チェッ!私もそうした方がよかったなぁ。
あらかじめ円は持って行くことにした。旅行代理店からもらったトラベラーズも持って行ってと・・・。ドルを先に使っちゃって、トラベラーズを後に使っちゃった方が良いんだよね。残っちゃったドルは空港で取り替えてくれるし・・・。だいたい私はそうしてる。
「室井ヒカルのファンの皆さん、こちらに集まって下さい。」
1人の添乗員さんが私たちを呼んでいる。そろそろ時間になったので、私はカウンターに荷物を預けて、空港券をもらった。ところが私たちがもらった空港券は、なんとファーストクラス!!!他の人の空港券を見ると、エコノミーシートなんだ。それって席がなかったってこと?
「すみません。どうして私たちだけが?」
「他の人はエコノミーシートなのに・・・。」
「申し訳ございませんが、あなた様方の場合は、ファーストクラスになってしまったのです。確かそこに室井さんも乗るはずです。」
えっ?ヒカルくんもファーストクラスにいるってこと?話によれば、今回はハワイに着くまでは8時間かかると言われている。それまで私たちはのんびり過ごすことになる。飛行機が初めての絵里奈は少し興奮気味だ。
出国手続きをして、手荷物チェックをしてもらって、ボディチェックもされた。危険物とかMDなんか金属だから、すぐにサイレンが鳴ってしまう。私より前にいた女の子がひっかかっていた。
あと、日本からブランド物のバックや財布があると、許可をもらわないといけない。もらわないと、免税店から盗んだということになってしまうからだ。私はクリスチャン・ディオールのバックを持っていたので、勘違いされる可能性が高いので、許可をもらって来た。いよいよ飛行機に乗り込む時間がやって来た。
「先輩、私、ドキドキしちゃいますよ。」
「そうよね。なにせ私たちはファーストクラス。いいよねぇ。飛行機に乗るのが初めてなのにファーストクラスなんて・・・。」
「そんなぁ。私を責めないで下さいよぉ。」
「だってファーストクラスなんかお金持ちの人だけが乗れるんだよ。それにシートとシートの間はすごく広いんだから・・・。」
しゃべっているうちに、ファーストクラスに着いた。入ったと同時に思わずため息。だってお客さんはみんなスーツ着てるし、私服は私たちだけ。もちろんシートの余裕もあって広いし、エコノミーみたくきゅうくつじゃない。
私たちだけ浮いてるって感じ。こうなるんだったら、スーツを着て来ればよかった。でもスーツはトランクの中・・・。ああ悲しい(;_;)
「えーっと、私たちの席はどこだ。」
「あっ、ここですよ先輩。」
「ありがとさん。さてと、手荷物をボックスにしまって・・・。あれ?」
私が手荷物をボックスにしまい終わった後に席を見ると、どこかで見かけたことがある人を見た。茶髪で丸型メガネのグラサンをかけて、ジーンズに革ジャンを着ている。
おそるおそる席に座る私。どっかで見かけたことがあるような、ないような。私は恥をさらすことを恐れながらも、思いきって聞いてみた。
「あの・・・。」
「待ってたよ。よく来たね。」
「あーーっ!ヒカ!ヒカ!ヒカルくん!」
なんと私の隣の席はヒカルくんだった!2人で大騒ぎ。周囲の人は『何だ何だ』と思いながら私たちの回りに集まって来た。『なんでもないんです』と言いながらお客さんを席に返した。なにせ本物が、私たちの目の前にいるなんて、夢にも思わなかったからだ。偉い人の隣に座ることになっちゃった。
あいかわらずミーハーな絵里奈はサインをもらってから、しっかり握手までもらっていた。普通ならもらえることはないのに・・・。と思いつつ、私ももらったりする。