スコーピオンの封印・3
「先輩。なんか私、怖くなってきましたよ。」
「どうして?」
「だっておかしくありません?私たちだけタダだなんて・・・。」
「確かに。だけどもっとおかしいのが、あのパソコン・・・。」
あっ!しまった!思わず口をあわてて塞いだ。絵里奈は『ん?』という顔をして私を見ている。もしかして聞こえちゃったかなぁ?まぁいいや。知らんぷりしてよう。
しかし私は絵里奈の耳が地獄耳だったということを忘れていた。さらに絵里奈の疑いが続く。なく私は絵里奈に、パソコンに出て来るヒカルくんのことを話すことにした。
『証拠を見せてほしい』ということで、いったん絵里奈は家に戻り、午後11時に部屋へ来ることになった(実は絵里奈は私の家の近所に住んでいるのだ)。私と絵里奈はパソコンディスクの前に座った。しかし時間の午前0時になってもヒカルくんは現れなかったのだ。
「あれ?おかしいなぁ?この前はこの時間に現れたのに・・・。」
「先輩、出て来ませんよ。寝ぼけてたんじゃないんですか?仕方ありませんね。今日は帰ります。」
「ゴメンね。絵里奈。」
「いいんです。もうすぐ目の前でヒカルくんに会えるから・・・。おやすみなさい。」
絵里奈はちょっとあきれた顔をして家に帰った。絵里奈を見送って部屋に戻ったその時、パソコンに変化が起きた。なんとヒカルくんが画面に現れたのである。私は思わずパソコンに近寄った。
「ひ、ヒカルくん!」
『友達、帰った?』
「うん。帰ったけど・・・。」
『そうか。よかった。このことは僕と女神ちゃんだけの秘密ね(^_-)他の人に知られたら大変だから・・・。』
その時私は、彼の言っている意味がわからなかった。でもここかせ異様なことが起きたのは私だけじゃなかったのだ。そのことはハワイに行ってからのことだから、まだこの頃はわかっていなかった。
あっ、そうだ。ヒカルくんに、どうして私たちだけ旅費がタダなのか聞いてみよう。一瞬、声が詰まったけど、聞いてみないと私にもわからない。旅費もトラベラーズチェックもタダなんて・・・なんか裏がありそう。
「ねえヒカルくん、どうして私たちだけ旅費もドル代もタダなの?」
『・・・それは、ハワイに着いてから話すよ。それから旅費やドル代も僕から出させてもらうから、送金はしなくてもいいよ。』
「でも、私たち怖いの。だってヒカルくんとは、昔からの知り合いでもないのに、理由もなくお金を払わなくていいなんて・・・。」
『いいから。とにかく送金はしなくていいよ。僕から出させて。じゃあ。』
「ちょっとヒカルくん!!」
ヒカルくんはそのまま消えてしまった。なんだか怖い。なぜヒカルくんが私たちだけの旅費をすべて出してくれるのか。旅行へ行くの、やめようかなぁ?だけど今からキャンセルすると、旅費の20%を払わないといけないんだよね。
仕方ない。とにかくだまされたと思って行ってみるか。ハワイ旅行1ヶ月前の出来事だった。この日が、私にとっては一生忘れられない『意味』がある夜だったのである。
2週間後。なんとなくポストを見ると、ファンクラブの封筒が入っていた。そして手紙には『現金を銀行に預けました。菱和銀行です。』と書いてあった。私は急いで菱和銀行に行ってみた。すると銀行員は、
「こちら30万でございます。お確かめ下さい。」
そう。結局送金したお金を返されてしまったのだ。ちょっと信じられないことになってしまった。どうして私たちに旅費が返されたのかは、ハワイでわかることなんだけど・・・。
まぁいいや。浮いたお金で宝石でも買うか・・・。でもあとで請求書が来たらヤバイから預けておこう。1万円だけ自分で持って、残りは銀行に振り込むことにしよう。こんな大金、持ってたら盗まれるのはわかってるから・・・。
早速私はデパートに出向いた。今日は絵里奈は両親と出掛けているため、1人でデパートへやって来た。普段着だから貧乏に見られがちだけど、『普段から良い格好をしている人は、けっこう貧乏なんだよ』なんて聞かされたことがあった。だから私はいつもの格好をしているわけ。
「いらっしゃいませ。」
ガラス越しにはたくさんの指輪が並んでいた。わあ、こんなにあるんだ。ダイヤからサファイヤからルビーから・・・。いろいろあるんだなぁ。でも『欲しい!』と思う指輪はなかったけど、私は一瞬、ドキッとした指輪があったのだ。その指輪とは、ブルートパーズなんだけど、大きなヘッドがゴールドになっていた。店員さんに出しもらった。
はめてみるとサイズもぴったり。持っていなかったので買っておこうと思ったところ、私の右手の薬指、すっごい太いんだよね。13号なんだ。でもサイズもちゃんと直してくれるっていうから頼んでみた。加工代はタダなんだけど、指輪自体が結構高いの。いくらかって?大丈夫。1万円はきらないから・・・。
加工時間はだいたい1週間だから、出発まで間に合うね。OK!思いきって買ってみることにした。しかし、この指輪が大きな使命を抱えていることは知らなかった2週間前だった。