スコーピオンの封印・2


 書類に書かれた氏名を見て社員はびっくりしていた。どうしたんだろう。突然社員が立ち上がり『少々お待ち下さい』と言って、私たちを席に残して奥の部屋に入って行ったのである。
「どうしたんですか?社員さん。」
「わかんない。まぁいいや。待っていよう。」
 数分後。焦った顔をした社員が戻って来た。そして1枚のFAXを私たちに見せた。なんと、ヒカルくんが所属している事務所からのFAXだった。そのFAXを見た時、大声で言ってしまった。
「旅費がタダ!?」
「というワケなんです。」
 私たちが大声で言った後、代理店にいたお客さんたちが、ジロッと私たちを見ていた。だってびっくりたんだもん。旅費がタダなんて思えないじゃん?ファンの子はみんなちゃんとお金を払ってるのに・・・。
 あわてて私たちはペコペコと頭を下げて、何も知らなかったように後ろを向いた。しばらくすると、他のお客さんはまたザワザワと話しを始めていた。あ〜焦った。大声出した私たちが悪かった。
「それって、どういうことですか?」
「実はこのFAXが届いたのが今朝なんですよ。お2人が住んでいらっしゃるのはここら辺ですから、私どもの代理店が近いと思ったらしくて、今朝FAXが届いたんです。」
「そうですか・・・。わかりました。とにかく書類だけは全部書いてありますので・・・。これです。」
「かしこまりました。それでは早速FAXを流します。」
 というわけで。私たちが書いた書類は、ヒカルくんの事務所に流された。代理店を出て、絵里奈を私の家に誘った。私はすぐに事務所に電話をしてみると、事務所の女性が出た。私は思いきって旅費のことを聞いてみた。
 なんと特別にヒカルくんが私たちの分まで出してくれるという。でも私たちにとっては、ちょっと怖い気がしたので、郵便局に向かい、お金を振り込むことにした。
 事務所の女性は承知してくれたけど、ヒカルくんがなんて言うか・・・。私たちは早速郵便局に行って、お金20万を振り込んだ。だってタダで旅行になんて行かれないよ。ヒカルくんには悪いけど、振り込ませてもらいます。
 その日の夜。私の部屋にWindos95がついてるパソコンがあるんだけど、そのパソコンに、大変な変化が起きたついていないハズの電源が自動的についたのである。私はその光によって起こされた。あれ?私、電源でも入れちゃったのかなぁ???でもパソコンにはリモコンがないハズ・・・。
 するとザーーという音がして、しばらくたって今度は画面が真っ黒になった。そこから、だんだん人の顔が出てきた。なんとその人は、ヒカルくん本人だったんだ。私、びっくりして思わずタンクトップでいたのを忘れて、パソコンの前に行ったんだ。
「ヒ、ヒカルくん!?ヒカルくんなの?」
『そうだよ。画面を借りて君の部屋のパソコンに移動させてもらったんだ。』
「でも、普通の人じゃ入れないハズだけど?」
『わかってる。僕はパソコンを使いこなすことが出きるから、僕のデータを入れたんだよ。あっ、誰か来る。』
 えっ?私にはわからないけど・・・。ガチャ。お母さんが目をこすりながら私の部屋に入って来たのである。なんだ。お母さんか。だからヒカルくんが消えちゃったのね。電源がつけっぱなしである。
「女神。暗い部屋でパソコンなんかやっちゃダメって言ったじゃないの!!目を悪くするわよ。」
「えっ?ヒカルくんがいたから・・・。」
「何をバカげたこと言ってるの。こんなところに、人なんかいるワケないじゃないのよ。もう寝なさい。明日もバイトでしょ?」
「・・・うん・・・。」
 バタン!お母さんが部屋のドアを閉めて、トントンと階段を降りる音が消えると、また画面にヒカルくんが現れた。びっくりした。私は思わずパソコンの前に再び座った。一体私に何を求めているんだろう。
「びっくりしたぁ。突然消えるから・・・。」
『ゴメンね。急に消えて。お母さんが来たからさ。ところで君の名前は?』
「私?私は矢野女神。歳は20歳で、趣味はパソコンのデータを集めること。特技はパソコン。星座はさそり座でB型。」
『へえ〜。僕と同じ趣味だ。じゃあ全部の機能を使いこなせるんだ。』
「って言うか、一部しか使いこなせないけど・・・。」
 パソコンの画面の中にいるのに、本人が目の前にいそうでテレてしまう。2人っきりでしゃべっているとなると、なんだかテレくさいよ。ヒカルくんの顔を真っすぐ見れない。
 その日。私はヒカルくんといろいろな話をした。例えばヒカルくんのこととか、大学のこととか・・・。私は大学の海外サークルに入っていて、あっちこっちの外国や姉妹校にもお世話になったんだ。その時の思い出話とかを、ヒカルくんにたくさんしてあげた。ちなみにこのことは,絵里奈に話していない。話したらやきもちをや、くことぐらいわかっていたから・・・。

 さて1週間前にパスポートを申請した絵里奈は、早速パスポートセンターへ行って、パスポートの確認をしていた。私は横でパンフレットをあさっていた。いろいろな旅行先があるんだね。あっ、その前に円をドルに替えないとな。
 私はあらかじめ持っていた10万円をドルに替えてもらった。さて交換カウンターに行くやいなや、突然私の名前を聞いてきた。
「お客様のお名前は?」
「えっ?私は矢野女神ですけど・・・。」
「笠月絵里奈です。」
「矢野女神様に笠月絵里奈様ですね?こちら、ドルになってります。お確かめ下さい。」
 えっ?何も言ってないのに、どうしてドルっていうことがわかったの?まぁいいや。じゃないって!とにかく私は社員さんに、何も言わないのに、どうしてそれがわかったかのか聞いてみた。
「実は、室井ヒカルさんの事務所からお電話が入りまして、交換のドル代は無料となっておりまして・・・。」
「ちょっと待って下さい。どうして私たちだけ無料なんですか?」
「他の人はちゃんとお金を払ってるのに・・・。」
「申し訳ございませんが、私どもからでは何も申し上げることはありませんので、直接事務所の方に聞いて頂ければよろしいかと思いますが・・・。」
 そこまで言われてしまうと私たちは何も言えない。そうだよな。旅行を管理しているのはヒカルくんの事務所なんだから・・・。とにかくまた私たちは郵便局に行き、ドル代を振り込んだ。
 おかしいよ。絶対おかしいよ!だって私たちだけタダで、他のファンはちゃんと払ってるのよ。私たちだけタダってことがわかったら、絶対怒るのは目に見えてるようなもんだよ。怒るどころか、反対に殺されちゃうよ。

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