スコーピオンの封印・11
夕方になり、私たちが部屋でしゃべっていると、コンコン!誰かが私たちの部屋をノックした。レンズをのぞくと、添乗員さんがいたのでドアを開けた。添乗員さんが私たちに洋服を手渡したのである。
「あの・・・。これって・・・。」
「実は室井さんから預かった物なんです。これを今夜お2人に着て欲しいと申しておりました。」
「そうですか・・・。わかりました。」
パタン。添乗員さんがドアを閉めた。添乗員さんが渡した服は純白のパンツスーツ。デザインは上がベストで下がスリムストレート型のパンツだった。絵里奈が受け取った服は、同じ純白のベストフレアースカートだった。
おそらく私たちだけに作ったのかもしれない。だってサイズがピッタリなんだもん。なにせヒカルくんは作曲家だけでなく、服飾デザイナーでもあるからね。ちゃんとお店もあるんだよ。確か青山あたりだったかな?
「先輩、どうですか?」
「ぴったりじゃない。私も着たんだけど、どう?」
「似合いますよ。ヒカルくんデザインの服を持っていますけど、けっこうセンスいいですよね?」
「うん。私もヒカルくんデザインの服を持ってるけど、男が着てもけっこうカッコイイよね。」
さて夜になって、ファンたちはクルーザーに乗った。これからダンスパーティーが始まるのだ。私たちはクルーザー乗り込んだ。席はちゃんと決められているんだけど、私たちの席が一番夜景がきれいに見える所にあった。
私たちのテーブルには、私と絵里奈の名前しか入っていなかった。ってことは2人だけか・・・。絶景だった。夜景が席に座ってても見える所で、特に今日みたく月が出ていて、なおかつ雲が1つもない日が、一番夜景がきれいに見えるんだって。
「このテーブルは私たちだけか・・・。最後までうまく行かないんだね。昨日まではうまく行ってたのに。」
「ホントですね。」
「それはないと思うよ。女神ちゃん、絵里奈ちゃん。」
「えっ?うわ〜っ。」
なんと私たちの前に出た人は、純白のタキシードを着たヒカルくんだった。もちろパピーと弟もお揃いのタキシードを着ていた。うわーっ!美形揃いよ!美形揃い!(はっ!私としたことが!)
ファンたちもキャーキャー言いながらヒカルくんたちに近付いて来た。早速写真の撮り合いが始まってしまった。挨拶する前からこんなことじゃあ、せっかく着たタキシードが真っ黒になっちゃうでしょうが!!!
やっとファンから逃げられた(?)ヒカルくんたちは、アシスタントに連れられて特設ステージへと上がった。マイクを受け取って、ヒカルくんがしゃべり始めた。
「今日は最後の夜なので、みんな、楽しんでね。」
「はーーーーーい!」
午後7時。ファンたちが立ち上がってクルーザーの一番上に、夜景を見に行ってしまった。それにつられて他のファンたちも行ってしまったので、しばらく自由時間となった。私たちもクルーザーの一番上に行ってみた。窓から眺めることもできるけどね。
「いい景色。そうそう以前ハワイに来た時も、実はクルーザーを予約して、夜景を眺めた
ことがあるんだ。修学旅行で来たことがあるって言ったでしょ?その時もこんな夜景が見
えたっけ・・・。」
「そうなんですか・・・。あっ、それはいいんですけど、例の物持ってきました?」
「えっ?ああ。あのZIPPOライターのことね。もちろん、持って来てあるわよ。ちゃ
んとラッピングもしてもらったし。」
そう言いながら、私はバッグの中からZIPPOライターを取り出した。そうなんだ。プレゼントなんだからラッピングもしてもらわないと意味がないからね。でも渡せるかなぁ?下に行ったら、ヒカルくんはファンたちと写真を撮ってたし。なんかムリっぽい。
待っていれば、いずれヒカルくんが上にあがって来るでしょう。私たちはそのまま待つことにした。しばらくして、ヒカルくんが私たちの前に出て来た。なんだろう。ヒカルくんがニコニコしながら私たちに手招きしていた。
「先輩、ヒカルくんは何を言おうとしてるんでしょうか?」
「わかんないけど、行ってみようか?ヒカルくん、何ですか?」
「2人に見せたいものがあるんだ。クルーザーの操縦席なんだけど。」
「えっ!?見れるんですか!?」
「うわーっ!操縦席を見るの、初めてぇ。」
思いがけないヒカルくんのお誘い。私たちはヒカルくんの後をついて行ってみた。操縦席についてみると、ヒカルくんが真正面を指さしていた。なんとあのヴィクトリア宮殿が見えたのだ。あっ、昨日あのヴィクトリア宮殿に、スコーピオンの封印をしたんだ。