スコーピオンの封印・12
この指輪があり、そしてダイヤのペンダントに変わったって事は、やっぱり夢じゃなかっ
たんだね。私たち、ヒカルくんにHELPを求められて、一緒にスコーピオンを成仏させた。
それだけでも良かったのに、今日は今日で良い思いして・・・。よけい罪悪感が・・・。
「昨日はありがとう。そのお礼がしたくてクルーザーを予約したんだ。」
「あ、ありがとうございます・・・。あっ、そうだ。あのーヒカルくん。この指輪とペンダ
ント、ありがとうございます。お礼なんですけど・・・。これ、受け取って下さい。」
「えっ?もらっていいの?ありがとう。じゃあ僕からもこれのお礼をしないとね。」
「えっ!?いいんです!これはこれで受け取って下さい!」
私たちは一瞬あせってしまった。ZIPPOのお礼をされると、また私たちがお礼をして、
ヒカルくんがお礼をして・・・。あああああっ!堂々巡りだよーーっ!ふえーーん!どうす
ればいいの!?
何を思ったか、ヒカルくんが私の前髪を分けて、突然額にキスをして来たのである!それ
を目撃した絵里奈が、びっくりしながら真っ赤になっていた。私は思わず倒れそうなったけ
ど、なんとか絵里奈が支えてくれた。絵里奈には少し強く抱きしめて、ヒカルくんは操縦席
を後にした。
「お礼はしました。僕はそろそろファンの所に戻らないといけないから。一緒に出たら怪し
まれるから、後から出て来てね。」
ヒカルくんが出て行ってしまった。しばし私たちはボー然としてしまった。『ヒカルくん
に抱かれた』『ヒカルくんにキスされた』・・・。私たちにはそのことしか頭になかった。
これぞまさしく『棚からぼたもち(思いがけないことが起きること)』である。
お礼もしたし、キスもされたし・・・。少しホッとしたのか、私はため息をつきながら笑っ
ていた。気を取り直して、私は絵里奈の手を引っ張って、操縦席を後にした。
「絵里奈、行くよ。」
「はい。」
午前6時。私たちはホノルル空港に着いた。1回集合して、きれいに列を作って飛行機を待っていた。もう帰る日がやってきたのだ。もっと買い物すれば良かったね。でもヒカルく
んとの貴重な時間(とき)を過ごしただけで、最高のおみやげだけどね。
免税店の品物を受け取ったら、すごいことになっていた。なにせセリーヌのボストンバッ
グとポーチだけじゃなく、香水から腕時計とかをジャンジャン買ってたからね。金銭感覚な
いみたいだなぁ、私。
帰りはエコノミーシートだった。当たり前だ。行きとは違うんだからね。あの日の夜。私
たちは眠れなくて、ずっと起きていたんだ。『芸能人に抱かれた・キスされたんだ』と思え
ば、誰だって眠れないって・・・。目がパッチリだったからね。
シートに座ればもう私たちは眠っていた。ベッドで眠れなかったから、ここで眠ってしま
えっていう感じで・・・。でもちゃっかり食事の時間には起きて、しっかり食べてたけど・
・・。
成田に着いたのは、日本時間の午後4時。ここで解散となった。ファンたちはニコニコし
ながら帰って行った。結局ヒカルくんは仕事があるため、先に帰ってしまったとのこと。
「あーあ。もう終わりか。もっとヒカルくんといたかったなぁ。」
「矢野さん!笠月さん!」
「先輩、添乗員さんですよ。」
「はい?」
「これ、室井さんから預かった物です。」
私たちが受け取った物は、白い封筒だった。中身は軽い。もしかして空っぽっていうヤツ
?待ち合いの椅子に座って封をあけてみると、なんと来月分のコンサートチケットとBAC
KSTAGE PASSだった。うわーっ!こんなのもらっていいの?
「先輩、チケットですよ!来月分の!」
「よし!これでヒカルくんのコンサートに行くぞ!」
「はい!」
私たちはボストンバッグを抱えながら、成田の出口まで走って行った。その喜ばしい後ろ姿をヒカルくんが含み笑いをしながら、成田を後にしてるのも知らずに・・・。
END