この旅行記は、1994年9月に、夫と二人でアイルランドを旅した時のもので
す。帰国後、夫は「シャムロックにつつまれて」という題で旅の全貌を旅行記に
しるしましたので、私は自分だけの思い入れと感動を中心に、別の旅行記を書き
ました。
 英文科・ケルトフリークの私の旅行記と、理科系・新聞記者の夫の旅行記と
は、ある意味で対照的で、「一緒に旅したとは思えない」ところもありますが、
二つの旅行記が互いに補いあって(又はせめぎあって?)、旅の思い出をより生
き生きとしたものにできたら、と思います。
 お互い突き合わせをほとんどせずに書き進めたため、二つの旅行記には記憶違
いによる、あるいはパソコン通信での連載上の都合による、はたまた得て勝手な
思い込みによる重複箇所や矛盾点があることをおことわりしておきます。
 なお、文中の、『歩き方』は『地球の歩き方・アイルランド編』を、『昭文
社』は『エアリアガイド・アイルランドの旅』を指します。

                 プロフィル:山口 華(やまぐち・はな)
                 196X年生まれ。主婦。児童文学とファンタ
                 ジーを読む/書くのが趣味。日本児童文芸
                 家協会会員。『海鳴りの石』(I・II巻、
                 教育出版センター)というファンタジー小
                 説を書いています。



ダブリンまで(9月16日、17日)

 結婚式をまだ暑い9月なかばにしたというのも、「アイルランドが寒くなる前
に」という理由があったからだ。聞くところによると9月末は日本の晩秋なみと
か。膝丈の上着にタイツも用意して、いざや出発。
 夫は初めて飛行機に乗るのでワクワクしている。奮発したエールフランス・ビ
ジネスクラスはさすがに椅子がでかい。私にはでかすぎる。まるで王様の玉座に
座った子供のよう。ロシアによるシベリア上空の飛行制限とやらで、離陸が一時
                        ・・・
間も遅れたものの、「飛んだ飛んだ、おー、どんどん走ってく」。高所もフラン
ス語も苦手な私を尻目に夫は窓から覗いたり、スチュワーデス相手に「シルブプ
レ」などとやっている。約半日後、夕暮れのパリに着いた。
 翌日は終日パリを歩き回った。想像以上に寒くて、この調子ではアイルランド
が心配だ。明日は午前中のうちにダブリンへ飛ぶ。本当はブルターニュあたりを
回って「大陸のケルト」を感じた後、船で渡りたかった。「まあ、今度そんな長
い旅行は、定年後だな」と夫。サラリーマンは悲し。

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