アジアカップ特集


4年に一回のアジアカップが始まった。頻度的にはワールドカップ、オリンピックと同等なのに、あまり知られていない大会でもある。
今回は日本代表にとって2002年のワールドカップ前、最後の大きな大会ということで少し詳細に分析を行ってみたいと思う。

同時に、かねてから考えていたことだが、試合中のさまざまな局面を数値化することにより、客観的に試合や選手を評価することを試みたいと思う。今までのサッカーでは、なんとなくこの選手はスゴイ(悪い)という評価はあっても、具体的に他の選手に比べてどのくらいスゴイ(悪い)のかということは曖昧だった。野球のように打率何割、防御率何点という客観的な数値表現が存在しなかったからである。得点数、アシスト数のカウントはあるが、これは点を取った当の選手だけの活躍だけではなく、ボールを奪うディフェンス面の動きや中盤の組み立てなどによってトータルに生まれるものなので、イコール選手評価とは言えないからである。
まだまだ試行錯誤の段階なので、即、各選手の評価にはつながっていないが、徐々に一般化できたらと思っている。
この試みに関しては広く意見をつのって良いものにしていきたいと思うので、メール等でみなさまのアイディア、ご批判等をいただければ幸いに思う。

・サウジアラビア戦(10/14)
・ウズベキスタン戦(10/17)
・日本選手の相性分析
・カタール戦(10/20)
・準々決勝:イラク戦(10/24)
・準決勝:中国戦(10/26)
・決勝:サウジアラビア戦(10/30)
・アジアカップ総合分析(工事中)


【決勝】日本vsサウジアラビア(10/30)
日本1(1−0、0−0)0サウジアラビア
日本:望月30

日本
GK:1川口能活
DF:4森岡隆三、3松田直樹、6服部年宏
MF:8望月重良、24明神智和、10名波浩、14中村俊輔、12森島寛晃(89分30小野伸二)
FW:9西澤明訓、29高原直泰(80分13柳沢敦)(88分15奥大介)

【試合概要】
長かったアジアカップもいよいよ決勝戦。対戦相手は初戦で戦ったサウジアラビア。このときは4−1で快勝したが、サウジアラビアは試合を重ねるたびに調子を上げてきている。これに対して日本は中国戦で苦戦して稲本が出場停止、加えて選手の疲労が目立っているのも気になる。
前半、サウジアラビアは引いて日本DFとGKの間めがけてロングパスを放り込むパワープレー。連携ミスなどもあり何度か危ない場面になり、前半9分、ついにサウジFWに抜け出され決定的なピンチ、これを森岡と望月が二人そろって引っ張りファール、PKを取られる。しかしこのPKはゴール左に外れて川口ガッツポーズ。
これに対して日本は中盤を完全に支配し、何度か良い形を作る。前半30分、右やや浅い位置で高原がFKをゲット。いつものとおり中村がキック、ゴール前、GKがわずかに届かない位置に正確にフィード、ニアの高原、西澤の頭を越えてゴール正面へ、そこへフリーで走り込んだ望月が足でたたきつけるシュート、これが決まって日本先制。その後も日本はサウジに全くシュートを打たせず前半終了。
後半、サウジは全く別のチームに変身、怒濤の攻撃を開始する。ボールを奪った後の速い攻めで日本DFは引きっぱなし。こぼれ球も拾いまくられ、得意の中盤はずたずたに引き裂かれシュートも打たれまくり、まるでサンドバック状態。20分〜30分ごろに何本かシュートを打ってペースをつかみかけるが30分過ぎからサウジがラストスパート、再びサンドバックに逆戻り。川口のスーパーセーブでなんとか90分までこぎ着けるが、なんとロスタイムが5分、涙目でしのいでやっとタイムアップ。厳しい試合を乗り切って、日本は念願のアジアカップを勝ち取った。

【ゲーム分析】
シュート数:
 ・ 日本 :前半8本、後半7本
 ・ サウジ:前半2本、後半13本

日本シュートの内訳は次のとおり。
 ○ ゴール:1本
 ○ GK・枠:5本
 ○ 枠外・DF正面:10本

決定率7%、枠内率33%

各選手のシュート、アシスト数(かっこ内はゴール数)

名前 アシスト シュート
高原
西澤
森島
名波
中村 3(1)
明神
望月 1(1)
柳沢


2 FWのポストプレー
西澤/高原のポストプレー成績は次のとおり。
前半:

名前 キープ one ファール 展ミス 奪われ 仕切直 合計
西澤 8 2 1 4 2 0 15
高原 8 1 4 4 2 2 20

後半:

名前 キープ one ファール 展ミス 奪われ 仕切直 合計
西澤 2 0 2 4 1 0 9
高原 1 1 1 1 4 1 8

キープ:受けてパスまで成功
one:キープ数の内、ワンタッチパスで展開した数
ファール:キープ時相手のファール誘う
展開ミス:キープしたがその後にパスミス
奪われる:キープ失敗し相手ボールに
仕切直し:パスの出しどころ無く大きく戻す


前半のポストプレーは35回、後半は極端に少なく17回。前半は回数こそ多くないが、成功率は高かった。これに対して後半は圧倒的にボールを支配されていたことが分かる。流れの悪かったカタール戦の前半よりさらに回数が少ないし、成功率も最低だった。
前の2試合と違い、西澤よりも高原の方が前半のプレー回数が多い。高原が序盤から飛ばしていたことが分かる。後半の交代は妥当だったが、代わった柳沢のパフォーマンスが悪すぎた。
柳沢は、中村のボールを受けたマイナスの折り返しは良かったが、時間帯を考えればもっと前線でボールをキープして時間を稼ぐプレーを心がけるべきだった。わずか10分足らずで交代させられたが、この厳しい采配で結果的に他のメンバーが奮起された。特にその後に代わった奥と小野は動きが良かった。

内容が悪かったにせよ、ほんと、勝てて良かった。
アジアチャンピオン、おめでとう!
それにしても楽勝の試合はすべて失点して、逆に一番苦しい試合で完封するなんて、つくづくサッカーって不思議なスポーツだなぁ・・・と思う。



【準決勝】日本vs中国戦(10/26)
日本3(1−1、2−1)2中国
日本:オウンゴール21、西澤53、明神61 中国:祁宏30、楊晨49

日本
GK:1川口能活
DF:4森岡隆三、3松田直樹、6服部年宏
MF:24明神智和、17稲本潤一、10名波浩、14中村俊輔、12森島寛晃(89分15奥大介)
FW:9西澤明訓(88分13柳沢敦)、29高原直泰

【試合概要】
最初の国歌斉唱、日本選手は全員、まるで今起きたばかりのような顔で君が代を歌っていた。中村はぼさぼさ髪だし、高原は熟睡して寝言を言っていた。序盤の動きもまるでウォーミングアップをしているかのようなパス回し。これに対して中国選手は終了間際のような勢いで飛び回っている。勢い余って21分、高原のセンタリングに中国DFが突っ込んで鮮やかなオウンゴール、日本は何もしないうちに先制。その後も中国選手の動きに翻弄されて日本は中盤を作れず、30分についに失点。オリンピック、アメリカ戦の再来かーとカナリ嫌なムードで前半終了。
後半の立ち上がりも同じようなムード。日本は開始後1分、2分とパスミスからカウンターを受け、3分目についに失点。うわー、シャレにならないぃーと思っていたらその4分後、ペナルティエリア前の絶好のポジションでFK。名波にだまされたカメラが彼をアップで写しているうちに中村がキック、壁を超えたボールはクロスバーに心地よい音をたててヒット、こぼれたところへ西澤がロケット頭突きを決めてゴール。真夜中にもかかわらず、日本各地のテレビの前で叫び声が上がったことだろう。
その後は序盤に飛ばしすぎた中国選手が失速し、徐々に日本のボールが回り始める。そして後半15分、右サイドの高原が落としたボールに明神が走り込んでミドルシュート、これが決まって日本勝ち越し。終了間際にはお約束の川口のあぶないシーンもあったがなんとか逃げ切り、日本は2大会ぶりの決勝進出を決めた。

【ゲーム分析】
1 全般
シュート数は、前半4本、後半10本の計14本。
その内訳は次のとおり。
○ ゴール:2本
○ 枠内:6本
○ 枠外:6本
決定率14%、枠内率43%

各選手のシュート、アシスト数(かっこ内はゴール数)

名前 アシスト シュート
高原 1(1)
西澤 2(1)
森島
名波
中村
明神 1(1)
稲本
松田
服部
柳沢


2 FWのポストプレー
西澤/高原のポストプレー成績は次のとおり。
前半:

名前 キープ one ファール 展開ミス 奪われ 仕切直し 合計
西澤 12
高原

後半:

名前 キープ one ファール 展開ミス 奪われ 仕切直し 合計
西澤
高原 13

キープ:受けてパスまで成功
one:キープ数の内、ワンタッチパスで展開した数
ファール:キープ時相手のファール誘う
展開ミス:キープしたがその後にパスミス
奪われる:キープ失敗し相手ボールに
仕切直し:パスの出しどころ無く大きく戻す


前半は西澤のポストが目立ち(西澤:12、高原:7)、後半は高原が目立った(西澤:9、高原:13)のは前のイラク戦と同じパターン。西澤は後半、ややペースが落ちる。しかもこの日は得意のワンタッチパスも少なく、かなり疲労がたまっているように見えた。決勝戦では、柳沢と前後半で分担しても良いのではと思う。また、高原は相変わらず被ファールが多く、この日も計7回もかせいでいた。
ポストプレーの絶対数はイラク戦の57回に対して今回の中国戦は41回と大幅に少なくなっている。そのかわり、FWへの楔のパスを途中でカットされた場面が12回もあった。これは、中国が日本のポストプレーを研究して対策を練っていたからではないかと思う。ただし、パスカット12回の内訳は前半10回に対して後半はわずか2回にとどまっている。つまり、後半になってから中国選手の足が止まっていたことが分かる。

3 苦戦の分析
現在の日本代表は中盤での速いパス回しが特徴だと言われている。ディフェンスの基本であるフラット3をセンターラインまで押し上げると、当然相手選手のプレッシャーを受けることになるのだが、そこであわてて攻めるのではなく、テンポ良くボールを回しながらよりプレッシャーの薄い地域(逆サイドなど)へボールを運び、そこから高いディフェンスラインを保ったまま落ち着いて攻撃を組み立てる。
しかしこの日の中国戦では、日本のパス回しのリズムが悪く、ボールをうまくプレッシャー圏外に運ぶことができなかった。そのためディフェンスラインは高い位置を保つことができず、ときどきボールを奪われてピンチを招いた。この試合で中盤のミスからボールを奪われた回数は都合18回もあった。
このような苦戦には、主に次のような原因が考えられる。
1 中国選手から激しいプレッシャーを受けた。
2 ボールを持っていない選手の動きが悪く、パスの出し先が無かった。
3 ボールを持った選手の判断が遅かった(ワンタッチパスなどが少なかった)。
4 大会終盤ということでグランドが荒れ、安定したパスが出せなかった。

今大会では何度も激しいプレッシャーを受ける場面があったので、1は決定的な理由にはならないだろう。1に加えて2と3の理由があったからこそ、予選以来もっとも苦戦する試合(カタール戦を除く)になったと思われる。
2と3の理由には厳しい試合日程から来る選手の疲労が考えられるが、その背景には、長丁場の中でベストメンバーを効果的に休ませられなかった選手層の薄さがあると思う。サブの選手たち、もっと奮起してくれー!


【準々決勝】日本vsイラク戦(10/24)
日本4(3−1、1−0)1イラク
日本:名波8、29、高原12、明神62 イラク:A・ジャシム4
GK:1川口能活
DF:22中澤佑ニ、4森岡隆三、6服部年宏
MF:24明神智和、17稲本潤一(66分8望月重良)、10名波浩、14中村俊輔(79分30小野伸二)、12森島寛晃(70分15奥大介)
FW:9西澤明訓、29高原直泰

【試合概要】
開始直後、イラクは積極的に攻撃をしかけてくる。4分、右サイドの服部がかわされてセンタリング、これを中央の森岡がクリアミスしてイラク選手正面にパス、シュートを決められて先制される。その直後の8分、右サイドから中村のFK、ゴール前には上げずペナルティエリア外の遠目のスペースへキック、そこへ名波が走り込んでボレーシュート、これが決まってあっさり同点。U-20選手権の頃から何度か試されているオプションだが、決まったのは初めて見た。
その後、12分には相手DFのパス回しを森島が持ち込んで最後は高原が決めて勝ち越し。さらに29分には、ゴール前のこぼれ球を名波が落ち着いてループシュート、3点目。
後半には明神のミドルシュートが決まり4点目。内容的に圧勝した。

【ゲーム分析】
1 全般
シュート数は、前半10本、後半8本の計18本。
その内訳は次のとおり。
○ ゴール:4本
○ GK・DF正面:6本
○ 枠外:8本
決定率22%、枠内率55%

各選手のシュート、アシスト数(かっこ内はゴール数)

名前 アシスト シュート
高原 4(1)
西澤 2(1)
森島 1(1)
名波 2(2)
中村 5(1)
明神 2(1)
稲本
中澤
望月
小野


2 FWのポストプレー
西澤/高原のポストプレー成績は次のとおり。
前半:

名前 キープ (one) ファール 展開ミス 奪われる 仕切直し 総数
西澤 14(1) 20
高原 11

後半:

名前 キープ (one) ファール 展開ミス 奪われる 仕切直し 総数
西澤 7(1) 10
高原 8(1) 16

キープ:受けてパスまで成功(カッコ内:シュートまで行った回数)
one:キープ数の内、ワンタッチパスで展開した数
ファール:キープ時相手のファール誘う
展開ミス:キープしたがその後にパスミス
奪われる:キープ失敗し相手ボールに
仕切直し:パスの出しどころ無く大きく戻す


特に前半は西澤のポストプレーが効いていた。特にワンタッチでの速い展開が多かったことが分かる。これに対して高原は成功率が低いように見えるが、厳しいプレッシャーを受けてファールを誘っている回数が多い。また両者とも、前の試合、久保と北嶋と比べてボールを奪われる回数が極端に少なかったことが分かる。


【予選C組】日本vsカタール戦(10/20)

日本1(0−1、1−0)1カタール 
日本:西澤61 カタール:アルオベイドリ22

日本
GK:20高桑大二朗
DF:22中澤佑二、4森岡隆三、26海本慶治=38分退場
MF:8望月重良、15奥大介、10名波浩、11三浦淳宏(78分6服部年宏)、30小野伸二
FW:27北嶋秀朗(46分24明神智和)、19久保竜彦(46分9西澤明訓)

【試合概要】
日本は一次予選一位通過が確定していたため、この日は8人のサブメンバーを起用して主力選手を休ませる方針で望んだ。
まず前半、日本は攻撃の組み立てがうまく行かず、1、2戦目で見せた効果的な攻撃パターンがほとんど見られなかった。これに対してカタールは予選突破がかかった大事な試合ということもあり、激しいプレッシャーをかけてきた。それでも一進一退の互角の展開が続く。
しかし22分、日本ゴール遠目の位置からカタールのセットプレー、直接狙った強烈なシュートがゴール右に決まってカタールが先制、その後も立ち直れない日本は38分、海本がこの日二枚目のイエローカードで退場、ほとんど見せ場のないまま前半を終了。
後半、FWの2人に代わって西澤(ワントップ)、明神が入ったことによりリズムが変わった。カタールが守り一辺倒になったこともあり、日本が徐々に攻撃のペースをつかみはじめる。何度かチャンスがあった後、61分、名波のスルーパスに反応した小野がゴール左をえぐりセンタリング、これにディフェンスを振り回して西澤が突進、ゴールが決まり1対1の同点に追いついた。しかしその後はカタールの必死の守備にはばまれそのまま試合終了。日本は全勝で予選を飾ることはできなかった。

【ゲーム分析】
この試合は大幅にメンバーが入れ替わったことで、1、2戦目との違いがはっきりと分かるゲームとなった。日本が多用している攻撃パターンに照らし合わせ、この日の前半で悪かった部分、後半で修正された部分について考察を加えた。

まず前半、攻撃に参加していた主要メンバーは次のとおり。
・ 前線:FW久保、北嶋
・ 右サイド:MF望月、(奥)
・ 左サイド:MF三浦、(DF海本:オーバーラップ)
・ トップ下:MF小野


また、1、2戦目における主な攻撃パターンは次のとおり。
・ FWのポストプレーからの展開
・ 左右のスペースを使ったサイド攻撃
・ 相手DFの裏を狙ったコンビネーションプレー
・ セットプレー



1 FWのポストプレー
1戦目では主に柳沢、2戦目では西澤がくさびのパスを受けてキープ、これに高原、森島、中村、名波がからむシーンが多く見られた。このパターンでゴール、およびシュートなど惜しい形を作った回数は次のとおり。
・ サウジアラビア戦:5回
・ ウズベキスタン戦:9回

しかしこの日の前半、FW(久保、北嶋)のポストプレーからきちんと攻撃の形を作れた回数はゼロだった。それどころか、プレッシャーを受けてカタールに奪われることもしばしばだった。これに対して、後半から出場した西澤のポストプレーは比較的有効に働いていた。両者のポストプレーの比較を表に示す。

名前 キープ ファール 展開ミス 奪われる 仕切直し 総回数
久保 3(0) 12
北嶋 2(0) 13
西澤 4(2) 15

キープ:受けてパスまで成功(カッコ内:シュートまで行った回数)
ファール:キープ時相手のファールを誘う
展開ミス:キープしたがその後にパスミス
奪われる:キープに失敗し相手ボールに
仕切直し:パスの出しどころ無く大きく戻す


久保と北嶋のポストプレー総回数は25回、これは前半の日本が徹底的にFWに当てて展開する戦術を使っていたことが分かる。その結果として相手にプレーを読まれていた可能性もある。また、この25回中相手に奪われた回数は計10回、なんとかキープできたのはわずかに5回だけだった。
これに対して西澤のポストプレーの場合、最後のシュートまで行ったパターンが2回あった。また、相手のファールを誘った場面も2回ほどあった。そしてなによりも、相手DFのプレッシャーに負けてボールを奪われるというシーンが少なかった。
また数字には表れていないが、前半の2人に比べて西澤が比較的カタールゴールに近い位置でボールを受けていたことも良い形を作ることにつながっていたと思う。(BSの解説(柱谷氏)の発言)

注)ポストプレーの成否は楔のパスの精度、および周りの選手の動き出しにもかかっているので、失敗しても100%ポストとなった選手の責任というわけではない。よって、この日の久保、北嶋だけを責めるのではなく、周りの選手も同時に責められるべきである。しかし、そのあたりを数値化できていないのが弱いところでもある。

2 左右のスペースを使ったサイド攻撃
1、2戦目を通じて左サイドのスペースを中村、名波、高原、柳沢などが入れ替わり立ち替わり使い、効果的な崩しを行っていた。また右サイドからの攻撃は左に比べて薄かったが、森島が走り込むことによってスペースを有効に利用していた。
カタール戦ではもっぱら、左は三浦(海本)、右は望月(奥)、そして両方に小野が適宜参加することによって組み立てられていた。しかし一対一で負けたり連携が悪かったりでほとんど機能しなかった。前半に左右のスペースを使った攻撃は、左6回、右5回だったが、その内訳は次のとおり。
・ シュートまで行った:1回(海本センタリング→望月折り返し→久保シュート(オフサイド))
・ センタリング成功:1回
・サイドでファール誘う:1回
・ サイドへのパスは通ったが一対一で負ける:4回
・ サイドへのパスさえ通らなかった:4回

シュートまで行った海本のクロスも深くえぐった攻撃ではなく、左浅めの位置からのアーリークロスだった。結果的に日本のサイド攻撃が完全に封じられていたことが分かる。
しかしこの日は後半になっても、サイドからの攻撃は完全には改善されなかった。決勝トーナメントに向けて、ひとつの不安材料ではないかと思う。

3 相手DFの裏を狙ったコンビネーションプレー
1、2戦目で最も見応えがあったのが、ワンタッチパスなどから相手DFの裏を狙ったコンビネーションプレーだろう。名波のスルーパスに高原が反応し振り向きざまに決めたシーンが1、2戦それぞれ1回ずつあった。この組み立てでゴール、およびシュートなど惜しいシーンにつながった回数は次のとおり。(カッコ内は得点)
・ サウジアラビア戦:5回(2点)
・ ウズベキスタン戦:7回(2点)

カタール戦前半も7回ほどDF裏のスペースを狙った攻撃があったが、いずれもシュートにさえ結びつかなかった。
これに対して後半は名波が前方にポジションしたことにより、小野との連携でたびたび良い形を作ることができた。唯一の得点シーンは、名波が出したDFの間を抜くスルーパスに小野が反応し、ゴールぎわ左からセンタリングして西澤に合わせることによって生まれた。

4 セットプレー
セットプレーの精度の高さも日本の大きな武器になっている。特に中村からのFKはことごとくチャンスにつながっていると言っても過言ではない。1、2戦目のセットプレーからのチャンスは次のとおり。
・ サウジアラビア戦
  中村→柳沢(フリーで受けてシュート→GK正面)
  名波→松田→高原(松田が頭でそらして高原ヘッド→GK正面)
・ ウズベキスタン戦
  中村→西澤→森島(西澤がヘッド→GKはじく→こぼれだまを森島がゴール)
  中村→中澤→高原(中澤が頭でそらして高原ヘッド→ゴール)

カタール戦前半にも小野のFKに望月が合わせるシーンがあったが、得点にはつながらなかった。(結果的にハンド?)

5 まとめ
前半、攻撃は全てサブのメンバーで担当することになった(名波はあまり攻撃に参加せず)。その結果、数字が示しているとおりほとんど攻撃の形を作れなかった。
その後、後半開始時のメンバーチェンジによって次のような変更が加わった。
・ 両サイドの三浦、望月が下がり目になった。
・ ボランチに明神が入った結果、名波が攻撃参加する回数が増えた。

その結果、日本の攻撃陣は次のような構成となった。
・ FW:西澤(ワントップ)
・ MF左:小野(三浦)、右:奥(望月)、中央:名波

代わったのは2人だけだったが、攻撃陣の顔ぶれが大幅に代わっていることがわかる。つまり最小限のメンバーチェンジで、前半とは違うチームに変更されたとも言える。その結果、西澤のポストプレー、および名波と小野のコンビネーションプレーが効果を発揮し、攻撃にリズムが出た。また、奥が左サイドスペースに顔を出すなど、頻繁にポジションチェンジを行っていた。



【予選C組】1、2戦目における日本選手間の相性分析
日本代表の選手間の相性について分析してみた。
分析は、FWおよび中盤の攻撃的な選手にしぼった。
具体的には、サウジアラビア、ウズベキスタン戦の全シュート機会に関して、誰と誰がパス交換を行ったか、その回数を集計した。

サウジアラビア戦

柳沢 高原 森島 名波 中村 小野 西澤
柳沢
高原
森島
名波
中村
小野
西澤



ウズベキスタン戦

西澤 高原 森島 名波 中村 小野
西澤
高原
森島
名波
中村
小野


注)全パス交換の総数ではなく、シュートまで行ったチャンス内に限った数字である。

・ FW間
まず、柳沢と高原のパス交換が少ない(1回)ことが分かる。むしろ柳沢は森島との相性が良いようである(5回)。これに対して、ウズベキスタン戦では高原と西澤で3回のパス交換が行われている。西澤と森島はJリーグで一緒にプレーしているので連絡は密(4回)のようだ。
また、高原と森島のパス交換は2試合あわせて1回と極端に少ない。

・ MF−FW間
柳沢は名波、中村からまんべんなくパス供給を受けている。これに対して、高原は中村との相性が悪いようである。逆に西澤は名波よりは中村からのパスに多く絡んでいることが分かる。

・ まとめ
相性の良い組み合わせは次のとおり。
 柳沢−森島(5)/名波(3)
 高原−西澤(3)/名波(3)
 西澤−中村(4)/森島(4)

相性の悪い組み合わせ。
 高原−柳沢(1)/森島(1)
 西澤−名波(1)
 森島−名
波(1)

まだサンプルとなる数字が少ないので決定的なことは言えない。今後も統計を取っていきたいと思う。

【予選C組】日本vsウズベキスタン戦(10/17)
 日本8(5−1、3−0)1ウズベキスタン
日本:森島6、西沢13、24、48、高原17、19、57、北嶋78 
ウズベキスタン:ルーシャン29

日本GK:1川口能活
DF:22中澤佑ニ、4森岡隆三、6服部年宏
MF:24明神智和、17稲本潤一(78分8望月重良)、10名波浩、14中村俊輔、12森島寛晃(53分30小野伸二)
 FW:9西沢明訓、29高原直泰(57分27北嶋秀朗)

【試合概要】
まず試合開始早々、高原がペナルティエリア内でファールをもらいPK。西澤が蹴るが、GKに止められて嫌なムードが流れる。しかしその直後から怒濤のゴールラッシュ。
・ 1点目(6分)中村のFKから最後は森島
・ 2点目(13分)高原の左からのセンタリングから西澤がシュート
・ 3点目(17分)中村のコーナーキック、中澤が頭ですらして最後は高原のヘッド
・ 4点目(19分)服部のクロスに高原が走り込んでシュート
・ 5点目(24分)西澤−森島の速いワンツーから最後は西澤
・ 6点目(後半3分)左から名波がセンタリング、西澤のダイビングヘッド
・ 7点目(後半12分)DF裏へ名波のパス、高原反応して振り向きざまシュート
・ 8点目(後半33分)小野の速いスルーパス、北嶋足下で受けてGK一対一ゴール
ウズベキスタンは高原、西澤、森島の動きを全くつかまえられず、日本は楽にフィニッシュを決めていた。また、中盤でも日本選手はほとんどプレッシャーを受けずにパス交換していた。日本は練習どおりの組み立てができ、その結果がこの大量得点につながったと思う。
5点目を取った後、ウズベキスタンはコーナーキックから1点取ったがこれが精一杯。日本はサウジ戦に引き続き、大量得点で予選リーグ2勝目を上げた。
この後の試合でサウジアラビアがカタールに引き分けたため、日本の予選1位が確定した。

【攻撃の分析】
シュート機会は前半12回、後半10回の計22回。その内訳は次のとおり。
○ ゴール:8本
○ GK・DF正面:5本
○ 枠外:8本
○ その他:1本
決定率は3.5割、枠内率は6割だった。以前から問題視されていた決定力不足がうそのようである。
さらに、主要選手がチャンスにからんだ回数は次のとおり。

アシスト シュート
西澤
高原
森島
名波
中村
小野


前回のサウジ戦と違い、名波、中村のシュートが無かったことが分かる。これは前半で試合が決まってしまったため、中盤からの攻撃参加を控えた結果だろうと思う。あるいは体力温存の意味もあったかもしれない。

【各選手のはたらき】
体調不良のためにベンチから外れた柳沢に代わって西澤が先発で起用された。開始直後、PKを外してどきどきさせてくれたが、その後は5本のシュートのうち3本を決めてハットトリックを達成した。特に豪快なヘディングシュートは熱狂させてくれる。また森島とのセレッソコンビも抜群で、6点目のワンツー攻撃は速かった。
高原はサウジ戦よりも動きが良かった。日本の2点目、左サイドをえぐった際のフェイントは見事だった。その後のセンタリングもDFの動きを見て低い弾道で上げたのが相手DFのタイミングを崩した。4点目、中村のコーナーキックを中澤のアシストで決めた場面は、前回サウジ戦で松田とのコンビネーションと同じパターン(サウジ戦ではGK正面)、ハットトリックを決めた場面は、サウジ戦で得点した名波とのコンビネーションと同じようなパターンだった。練習どおりということだろう。
名波は多少のミスもあったが、攻撃、守備の両面で活躍した。中村もFKでは抜群の安定感を見せていた。
小野は後半ほとんどの出場となったが、FKを蹴ったりダイレクトボレーシュートを放つなど、楽しいプレーを見せてくれた。
唯一の失点は5点取った後ということで試合が決まってしまっていたため、集中力が欠けたのだろう。残念ではあるが、このような試合で90分全力を出す必要は無いので、特に気にしなくてもよい思う。競った試合ではもっとモチベーションが高いだろうから。
次回、カタール戦は主力温存ということで、サブメンバーが続々と登場しそうである。三浦や小野をもっと長時間見てみたいと思う。

【予選C組】日本vsサウジアラビア戦(10/14)
日本4(2−0、2−1)1サウジアラビア
日本:柳沢26、高原38、名波54、小野88 サウジアラビア:森岡89=OG

GK:1川口能活
DF:4森岡隆三、3松田直樹、6服部年宏
MF:24明神智和、17稲本潤一、10名波浩、14中村俊輔、12森島寛晃(80分30小野伸二)
FW:29高原直泰(66分9西沢名訓)、13柳沢敦(80分11三浦淳宏)

【試合概要】
前半から日本が圧倒的にボールを支配する。26分、カウンターから中村が精密なセンタリング、ゴール右で森島が折り返し、最後は柳沢が慎重に腹で押し込んで先制。さらに38分、サウジDFのクリアミスを名波がひろってスルーパス、これに高原が反応し振り向きざまに豪快なシュート。2点目。
後半、サウジアラビアは反撃するどころか逆に足が止まり、日本のチャンスがさらに増える。後半開始9分、柳沢がゴール左をえぐりサウジ中盤が戻り切れずに空いたスペースへマイナスのセンタリング、ここへ名波が走り込んでシュート。3点目。さらに終了間際、名波がDFの裏へロングフィード、サウジディフェンスはすでに戻る元気が無く、これが小野に通って完全な独走状態、GK一対一から落ち着いて左隅へ4点目。その直後、森岡がヘッドでバックパスしたところ、これが川口の頭上を越えてしまいオウンゴール。最後にケチがついてしまったが、内容的には圧勝で初戦を終了した。

【攻撃の分析】
シュート数は前半5本、後半11本の計16本。その内訳は次のとおり。
 ○ ゴール:4本
 ○ GK・DF正面:6本
 ○ ポスト:1本
 ○ 枠外:5本
かなりの高確率でシュートが枠内に飛んでいることがわかる。また、決定率.250というのも優秀な成績だと思う。

また、シュートまで行った攻撃の組み立てパターンの内訳は次のとおり。
 ○自陣からの組み立て(遅攻):6回
 ○セットプレー:3回
 ○カウンター:2回
 ○波状攻撃:3回
 ○こぼれ球:2回
自陣から組み立てる(DF、ボランチからのパス→ポストプレー→サイドへ展開→崩してシュート)パターンが多く、日本がボールを支配したままフィニッシュまで持っていくきれいな形を作れていたことが分かる。

さらに、選手各人のチャンスにからんだ回数は次のとおり。
○シュート
 柳沢3、高原3、名波3、小野3、森島/中村/三浦/西澤各1
○アシスト
 柳沢3、高原0、名波3、森島2、中村3、三浦1

【各選手のはたらき】
まず、柳沢の調子が良かった。ゴール、アシストを決めたほか、ポストプレーでも安定しており随所で目立っていた。1点目のゴールシーン、フリーになる動きは素晴らしかったが、押し込んだ場面は慎重すぎてかっこわるかった。また、名波も調子が上がっている感じで、中盤から前線へのパスのほとんどがシュートチャンスにつながっていた。
これに対して、高原は絶好調の時に比べるとやや体が重い感じだったが、2点目のゴールは高原らしい集中力だった。中村は大活躍とまでは行かなかったが、平均以上のプレーでチャンスを作った。また、稲本はバランス重視で意図的に攻撃には参加しなかったようだ。明神も地味だったが、1点目の組み立ては彼のロングパスからのカウンターだったし、3点目は彼が粘ってもらったFKからの早いリスタートがゴールにつながった。
川口は危ない場面が2度3度とあり、最後は森岡との連携ミスからオウンゴールまで許してしまった。やっと巡ってきた出場機会で張り切っているのは分かるが、もう少し落ち着いてプレーして欲しいと思う。小野は15分間で3本のシュートを放つなど調子は良いようだ。これから連戦が続くので、出場機会も増えるだろうと思う。楽しみである。

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