各チームの印象および来シーズンの展望

東洋紡
アルタモノワを中心としてアタック力は高かった。しかも、アタックもサーブもミスが少なく、自滅はまずないチーム。セッター永富が安定していることは、四強の他のチームに比べると大きなアドバンテージであり、対角の村田の存在を生かすことができるのも安定したトス回しがあるからである。このチームの最大の難点はサーブレシーブだが、ある程度のミスなら永富が修正してしまうし、アルにつなげば何とかなるという状況もあった。
しかし、最終的に優勝したとはいっても、アルタモノワのいなくなる来シーズンを考えるととてつもなく寒いチームであることは変わりがない。デンソー・ヨーカドーと比較しても寒い点は、攻撃のみならずサーブレシーブもどっぷりアルタモノワに頼っていたことである。今シーズンは、サーブレシーブが乱れてもアルまでつながれば何とかなるという状況だったけれども、来シーズンはそうもいかない。

日立(ベルフィーユ)
四強の中では、やや毛色の変わったチームと感じられた。アタック力は四強の他のチームに比べてやや劣る。というか、多治見・江藤のセンター線を生かし切れていない。その一方、チーム全体に高さがありブロックは断然強い。サーブも威力のあるフローターを打つ選手が多く、リーグトップクラスである。一方守備面ではやや疑問のあるチームで、特にあからさまなサーブレシーブのミスからの失点が少なくない。
多治見・江藤のセンター線の力は一頭抜けているけれども、センターだけで得点を稼ぎまくることはできない。来シーズン、エース対角にはかなり不安が残る。ベテランになりつつある福田一枚では非常に苦しい。セッターも大きな不安材料である。監督が代わらない限りは島崎が先発なのだろうが、小玉の助けを借りる場面も増えるだろう。

NEC
四強の中でも、最も弱点の見あたらないチーム。ただし、四強の中では全てが平均点以上というチームのため、圧倒的な攻撃力に対しては対抗できないことが多かった。エースもゴディナ・大懸と2枚そろっていた。さらに、ブロックについては新人賞を獲得した杉山の加入が大きく(ゴディナもブロックへの寄与も大きい)、昨シーズン以前に比べて大幅に増強された。サーブについては、ジャンプサーブを打つ選手が非常に多いという特色を持つ。そのため、サービスエースの確率は高い一方、コースに入られるとセッターに確実に返される可能性も高い。また、サーブミスが多く、これが唯一の難点である。守備面では、依然として他のチームは上回っているものの、昨シーズンに比べるとやや疑問符がつく。NECの特色は全員がきちんと守れることにあったけれども、今シーズンからリベロ制が導入されたため、守備面でのアドバンテージは必然的に小さくなってしまう。全体として、昨シーズンより強くなったのかどうかは、判断しがたい。もっとも、チューリナは今シーズンは妊娠・出産のためバレーボールそのものを離れているので、この穴を何らかの形で埋めない限りは大幅な戦力ダウンは避けられず、それがゴディナになったということであろう。
(私の勝手な推測だが、NECのチーム事情にはゴディナよりソコロワのほうがあっていたと思う。NECもソコロワほしかっただろうな〜。ところが、先に日立ベルに取られてしまった。)
日本人選手でもアタッカーのコマは十分そろっており、外国人選手なしになってもアタックおよびブロックについては心配はない。このチームについても問題はセッターであろう。特に今シーズンの後半になればなるほど、センター線の速攻あるいはコンビが影をひそめ、ゴディナ一人に頼る試合が増えた。

デンソー
四強の中でも、最も穴の多いチームであると感じられた。アタック・サーブ・それ以外の全てにおいてとにかくミスが多い。センター線の選手を大量に増強したにもかかわらず、ブロックも決して多くない。サーブレシーブは成功率は高いものの、失敗したときにエースにしてしまう確率が非常に大きい。また、セッター温水のトス回しが安定しないのも重大な問題である。しかし、イエリッチの爆発力は他の外国人エースに比べても一頭抜けており、温水のトス回しが安定したときには、アタックの破壊力は止めようがなかった。
そのバーバラがいなくなる来シーズン、これといって優れたところがないだけに、苦戦は必至と思われる。アタック・ブロック・サーブ・レシーブの全てでレベルアップが必要だが、まず最も至急の課題はセッター温水の成長である。

オレンジアタッカーズ
飛び抜けたエースはいないけれども、前半戦は強さを発揮した。ゼッターランドの速いトス回し、そしてどこからでも打てる布陣は、各チームを翻弄した。ブロックは相変わらず多かった。「粘る」というより「崩れない」という表現のほうがぴったり当てはまるチームだった。
しかし、第3週に主力選手が集団風邪に襲われた。その後しばらく練習が十分にできない状況が続き、その間にチームのリズムが狂ってしまった。このチームはダイエー時代から、個々の能力の高い選手はそろっているけれどもかみ合わない状態に陥ることが時折あったようだが、後半戦はそれにはまったまま終わってしまった。
さて、近年著しく力を伸ばしているイタリア女子チームを見たことのある方は少ないと思うけれども、私の見たところ、オレンジを思い出していただければかなり近いような気がする。ただし、高さ(特にブロックの高さ)はオレンジのほうがあるし、バックアタックを打つ選手はイタリアにはいない。
日本人選手の攻撃陣の豪華さは、他のチームを圧倒している。しかし、このチームも、セッターを来シーズンどうするのかわからない。セッターが安定すれば、来シーズンの優勝の可能性は極めて高い。

ユニチカ
重度の決定力不足に悩まされた昨シーズンに比べれば、熊前の加入、木村の成長などにより、アタックについてはかなり力が上がった。速いバレーで振り回すことができれば、上位を食う力のあるチームとなった。一方、このチームの伝統である守備面では、昨シーズンまでに比べ不安が感じられる。というか、試合によって出来不出来の差が大きいチームになったという印象を受ける。
来シーズンのVリーグ10チームの中で、このチームは鎖国の影響が最も少ないチームの一つである。とにかく、エース対角に変動がなく、セッター磯辺が信頼できるのは断然の強み。これまで5シーズン許が入っていたセッター対角のポジションにも、攻撃面では向井、守備的布陣なら内野を使えるめどが立った。現時点では、来シーズン優勝の可能性はかなりあると思われるけれども、今シーズン見られた波の大きさは解消したい。

イトーヨーカドー
デンソー、東洋紡と並び、外国人エース一人が頼りのチームで、日本人選手の攻撃力の不足は重症である。ペレスが後衛に下がったときに連続失点する場面が非常に多かった。全日本にも選出され将来を期待されている鈴木が、けがのためほとんど出場できない状況が続き、非常に大きな痛手となった。ベテランセッター内田が昨シーズンを最後に引退したこともマイナス材料になっていたけれども、セッターをNEC関西から移籍の南井に固定してチームとしては安定してきた。
このチームにとって、来シーズンは日本リーグに昇格して以来最大の試練となろう。とにかくサイドアタッカーの低さと非力さは一級品である。センターには鈴木がいるけれども、ペレスのように点数を稼ぎまくることはとてもできないだろう。セッターをどうするのかも疑問である。今シーズン佐々木を育てる計画があったようだが、それが頓挫。結局ほとんど南井が出ずっぱりだった。

日立佐和
シーズン前は伏兵的存在と注目されていたけれども、攻撃力の不足を露呈してしまった。ブロックが低いため拾うのも難しくなり、結果として大砲にどかんとやられてそれで終わり、という試合が多くなってしまった。日本のバレーボールは上に行くほど下手になるという批判はあるけれども、攻撃面ではやはりVリーグは格が違う。また、このチームはサマーリーグとか国体でもほぼベストメンバーに近いチームで戦ってきたので、それだけ研究されたこともあるだろう。
とはいえ、日本人選手だけとなる来シーズンはこのチームにとってはチャンス。最大のアドバンテージはセッター板橋の存在である。馬場の対角のエースがしっかりすれば、四強入りの可能性は高い。

東芝
このチームの決定力不足は、ユニチカ、佐和、小田急あたりと比べても一段と重度である。守備面でも、昨シーズンのような粘りというか、いやらしさというか、そのようなものがなくなってしまったような気がする。(昨シーズンの東芝は、決定力は極度に不足しているものの、対戦している側としては非常にいやらしさを感じるチームだったのだ。)特にサーブレシーブはリーグ最低で、サーブレシーブのミスから失点を重ねる場面が非常に多かった。
日本人選手の高さはVリーグでもトップクラスで、ブロック力はある。また、セッターは、高さもある丸山と若いながら安定したトスワークの岡野がそろっており、非常に安定感がある。課題のサーブレシーブを改善しセンター線が攻撃に絡む場面が増えれば、来シーズンの四強への道も見えてくる。

小田急
このチームも決め手がなく、守備面もまだまだ不安定だった。とにかくミスが多いチームで、セットの途中では競り合いあるいはリードしていてもミスから崩れることも多かった。大型の選手が多く、アタックには将来性を感じられるけれども、大砲がなくしかも攻撃が単調になりがちのためブロックされる確率も非常に高かった。それ以上に深刻なのはブロック力の不足で、本当に「皆無同然」と言えるほどだった。

(参考)JT
今シーズンはナターリャ・サフローノワという大砲はいたものの、何が何でもナターシャというチーム作りはしていなかった。チームのアタック決定数にしめるナターシャの割合は、30%にもならず、これはVリーグでは佐和の藩とほぼ同じ比率である。ブロックの高さは、Vのチームと比べても決して劣らない。セッター吉澤もラリー中でも速攻を使えるよいセッターである。入れ替え戦で明らかになったこのチームの課題は、センター線がアタック力をつけること。センター線で簡単にサイドアウトがとれるようになれば、日本人のみの来シーズンのVリーグでもそこそこにやれるのではないかと思われる。

このページの先頭に戻る
Barbara Jelic FanClubのホームページに戻る
制作者のホームページに戻る


付表

私がこの印象を書くのに参考資料とした表を以下に示す。この表の各項目の意味については、防御と失敗の集計のページを参照してほしい。

表1.アタックの集計
Team Hits Success Blocked Miss Succ. % Blo. % Miss % Efct. %
Denso 3248 1565 215 214 48.18 6.62 6.59 34.98
NEC 3039 1380 163 160 45.41 5.36 5.26 34.78
Toyobo 3516 1565 205 190 44.88 5.40 5.83 33.65
Hitachi 2905 1254 204 199 43.17 7.02 6.84 29.29
Orange 3350 1380 201 226 41.19 6.00 6.75 28.45
Sawa 3137 1275 224 174 40.64 7.14 5.55 27.96
Yokado 3333 1341 215 201 40.23 6.45 6.03 27.75
Unitika 3287 1299 221 203 39.52 6.72 6.18 26.62
Toshiba 3257 1130 219 183 34.69 6.72 5.62 22.35
Odakyu 2633 928 242 223 35.24 8.47 9.19 17.58
Total / Average 31705 13130 2109 1973 41.41 6.65 6.22 28.54

表2.アタックに対する防御の効果率
Team Hits Success Blocked Miss Succ. % Blo. % Miss % Efct. %
Hitachi 2978 1161 265 193 38.99 8.90 6.48 23.61
Orange 3299 1315 258 216 39.86 7.82 6.55 25.49
NEC 3095 1215 234 184 39.26 7.56 5.95 25.75
Unitika 3320 1364 220 243 41.08 6.63 7.32 27.14
Denso 3211 1284 202 200 39.99 6.29 6.23 27.47
Toyobo 3767 1534 245 249 40.72 6.50 6.61 27.61
Yokado 3394 1398 199 220 41.19 5.86 6.48 28.85
Toshiba 3275 1428 217 182 43.60 6.63 5.56 31.42
Sawa 3032 1355 161 180 44.69 5.31 5.94 33.44
Odakyu 2334 1076 85 129 46.10 3.64 5.53 36.93
Total / Average 31705 13130 2109 1973 41.41 6.65 6.22 28.54

表3.攻撃の値と防御の値の差
Team Attack Won-Lost Won-Lost(Class) Point Ratio
NEC +9.03 13-5(2) 1.36
Denso +7.51 14-4(1) 1.25
Toyobo +6.04 13-5(3) 1.24
Hitachi +5.69 12-6(4) 1.26
Orange +2.96 10-8(5) 1.07
Unitika -0.52 10-8(6) 1.01
Yokado -1.09 9-9(7) 0.96
Sawa -5.49 7-11(8) 0.87
Toshiba -9.07 2-16(9) 0.70
Odakyu -19.35 0-18(10) 0.47

表4.シャット率によるブロックの集計
Team Nb. Set Opp. Attack Opp. Error Success Avg. by Set Shut %
Hitachi 65 2978 193 265 4.08 9.52
Orange 64 3299 216 258 4.03 8.37
NEC 63 3095 184 234 3.71 8.04
Unitika 66 3320 243 243 3.68 7.84
Toshiba 62 3275 182 217 3.50 7.02
Toyobo 73 3767 249 245 3.36 6.96
Denso 66 3211 200 202 3.06 6.71
Yokado 64 3394 220 199 3.11 6.27
Sawa 62 3032 180 161 2.60 5.65
Odakyu 55 2334 129 85 1.55 3.85
Total / Average 640 31705 1973 2109 3.30 7.09

表5.サーブの集計
Rank Team Nb.
Match
Nb.
Set
Hits Successes Faults Effect % Fault %
N.T. Ace Pos. Pts S-O Total
1 HITACHI SAWA 18 62 1918 23 50 450 1 140 141 9.15 7.35
2 HITACHI 18 65 1976 15 53 491 1 106 107 9.12 5.42
3 DENSO 18 66 2216 20 45 552 5 170 175 8.75 7.90
4 NEC 18 63 2067 40 42 413 3 187 190 8.56 9.19
5 TOYOBO 18 73 2373 20 58 533 2 112 114 8.41 4.80
6 ODAKYU 18 55 1364 20 20 303 0 120 120 8.19 9.09
7 UNITIKA 18 66 2040 14 33 467 1 118 119 7.70 5.83
8 ITO YOKADO 18 64 2032 12 42 410 0 137 137 7.33 6.41
9 ORANGE ATTACKERS 18 64 2102 22 43 405 0 181 181 7.50 8.61
10 TOSHIBA 18 62 1769 15 24 348 1 79 80 6.85 4.52
Total Tournament 90 320 19857 201 410 4372 14 1354 1368 8.21 6.92

表6.サーブレシーブの集計
Team Hits Opp.
N.T.
Opp.
Ace
Opp.
Positive
Opp.
Fault
Rcp.
Excellent %
Rcp.
Fault %
Opp.
Effect %
NEC 1854 11 24 348 134 78.23 1.89 6.32
Yokado 2061 19 30 393 147 77.68 2.38 6.85
Unitika 2040 26 36 402 153 76.46 3.04 7.61
Orange 2048 18 38 437 128 75.03 2.73 7.70
Denso 2055 23 50 408 143 75.75 3.55 8.03
Hitachi 1805 23 34 401 133 73.62 3.16 8.33
Sawa 2019 21 41 465 154 72.56 3.07 8.42
Odakyu 1769 13 56 392 111 72.77 3.90 8.80
Toyobo 2191 26 46 528 144 71.60 3.29 8.89
Toshiba 2015 21 55 598 130 64.97 3.77 10.65
Total / Average 19857 201 410 4372 1377 73.84 3.08 8.17
なお、表6について、公式集計の値とはサーブの失敗数およびサーブレシーブの成功率の値がわずかに異なっている。表5は公式集計の値そのままである。表6の集計を行う際に、サーブレシーブの受数と成功数を下記の式を用いて算出したけれども、公式集計の中には、サーブレシーブの成功率とサーブ失敗数がうまくあわない(下記の式が成り立たない)試合がいくつかあった。
サーブ受数 = 相手のサーブ打数 - 相手のサーブ失敗数 - 相手のノータッチエース
サーブレシーブ失敗数 = 相手のエース + 相手のサーブ効果
サーブレシーブ成功率(%) = 100×(サーブ受数 - サーブレシーブ失敗数) / サーブ受数

このページの先頭に戻る
Barbara Jelic FanClubのホームページに戻る
制作者のホームページに戻る