なぜ、バーバラが最強なのか(通算成績編)

アタック決定本数の史上最多記録

バーバラはアタック決定本数の史上最多記録を持つ。第5回Vリーグ、出場18試合で940本、1試合平均52.2本、1セット平均14.2本、ありとあらゆる意味で史上最多記録である。バーバラは第3〜5回と3シーズン続けて出場1試合平均35本以上、セット平均10本以上のアタック決定本数をマークしているけれども、バーバラ以外でこのラインを超えたのは第5回Vリーグのアルタモノワ(18試合、73セットで833本)のみである。

この同じシーズンに411得点というこれまた驚異的な史上最多記録を達成している。1試合当たり22.8点、1セット平均6.24点。このシーズンのチームの得点は891点であり、その半分近くを一人で叩き出したことになる。1シーズンセット平均4点以上を記録した選手は、バーバラ以外では第4回、第5回Vリーグのアルタモノワだけである。


4シーズンでアタック3200本

Vリーグでのアタック決定本数もバーバラが断然のトップで、4シーズンで3283本である。これは日本リーグ時代までさかのぼっても最多記録になる。この間の出場セットは289セット。これを1セットあたりに直すと11.4本になる。
参考までに、日本リーグ時代の通算最高記録(200セット以上出場、セット平均)は1セット7.20本である。バーバラに比べると大したことないように見えるが、これを21試合の標準的セット数76〜77セットに換算すると約550本になり、これはバーバラ以前の猛打賞水準である。いかに試合数の少ない時代とはいえこれを9年間続けたのだから、これでも十分に大記録である。


3シーズンで1000得点

バーバラはVリーグになってから1000得点を記録した最初の選手となった。日本リーグ時代の1000得点選手は4人いるけれども、1000得点達成に最低5シーズンを要している。バーバラは1000得点にわずか3シーズンしかかかっていない。
古い時代とは試合数が異なるので簡単に比較できない。それを考慮するために出場セット数で割ると、バーバラはセット平均4.96点となる。日本リーグ時代には通算でセット平均3点以上の得点を記録した選手は皆無、Vリーグに入ってからもバーバラ以外にはアルタモノワの平均3.46点のみである。バーバラ以外では、1シーズンでさえバーバラの通算平均4.96点を上回る記録を出した選手はいない。
デンソーは第5回大会を除けばVリーグの中位ないし下位のチームであり、1セットあたりの得点は12点程度である。それを考えれば、セット平均4.96点ということがいかに驚くべきか理解いただけよう。だいたい、試合の得点のうち4分の1程度は、相手のミスによるものである。それを除けば、チームの得点の半分以上をバーバラ一人で稼いでいることになる。

バーバラがこれだけ驚異的なペースで得点を積み重ねたのは、もちろんアタックを打つ本数が常識外れに多いことが最大の要因である。しかし、アタック以外(ブロックとサーブの合計)でも1セット当たり1点以上(4年間通算)の得点をマークしている。強力なブロックを持つセンタープレイヤーならブロックで稼ぐことができるが、ブロックを本業としないサイドアタッカーがアタック以外でこれだけの得点を叩き出すのは並々ならぬことである。さらに、デンソーはもともと日本人選手は小型の選手ばかりで、ブロックは極度に少ないチームである。そのため、ブロックで稼ぐという点ではバーバラは不利である。それにもかかわらずサイドアタッカーとしてはブロックも最も多い部類に入る。
サーブに関しては、この後にも述べるとおり他選手の追随を許していない。

この記録は、アタックだけでなくサーブ・ブロックと全て最高水準にあるからこそできたものだといえるだろう。


サーブ効果率のVリーグ記録

バーバラは17.06%というサーブ効果率のVリーグシーズン記録を持つ。
日本リーグ時代との比較のために得点率(= サーブ得点 / 打数)に直すと、このシーズンのバーバラは10.29%となる。これを上回る記録は日本リーグ時代に10回以上記録されているけれども、二つの理由から、それらの記録とバーバラの記録とを同列に論じることはできない。

図1.サーブ得点率の推移
サーブ得点率の推移

その理由の一つは、かつては全体にサーブ得点率が高かったことである。上の図1を参照されたい。日本リーグ17回までは、サーブ得点率の全体平均はだいたい4.5%〜6%の間だった。第3回には得点率13.26%という史上最高記録が出ているけれども、このシーズンはサーブ得点率の全体平均も6%に達した。それに対し、日本リーグ19回以降およびVリーグに入ってからは得点率平均は3%台または4%程度である。特に、サーブのトスのやり直しが禁止された第5回Vリーグでは得点率平均は3.08%にまで落ちており、規定打数以上で得点率5%を上回った選手はわずか5人しかいない。

ここでもう一度上の図1を参照されたい。日本リーグ15〜19回において、最高得点率選手と全体平均との差が小さくなっていることにお気づきいただけるだろう。15〜20回が、8チーム総当たり3回・21試合で行った大会である。それ以外の日本リーグの大会は、レギュラーシーズンは総当たり2回戦である。
1試合ごとのサービスエース本数を考えると、0本〜1本という少ない本数の確率がほとんどなのに対し、5本とか6本とか大当たりの確率もごくわずかながらある。そのような大当たりの試合の影響は、試合数が少ないほうが当然大きくなる。したがって、試合数が少ないほうが高率の記録は出やすいと考えられ、このことはそれを裏付けていると言えるだろう。
10%以上の得点率は日本リーグ時代以来10回以上記録されているが、その過半が6チーム総当たり2回戦・10試合という少ない試合数の時代に記録されたものである。21試合のシーズンのみに限定して考えると、バーバラの記録は史上3位となる。

近年は高い得点率が出にくくなっていること、さらに21試合フル出場であることを考えれば、バーバラの得点率10.29%は内容的には史上最高水準の記録であると考えられる。


通算サーブ効果率14.10%、サーブ得点率7.50%

バーバラの通算サーブ効果率は14.10%、4シーズンとも11%以上で1位または2位である。Vリーグにおいてこれだけ安定して高いサーブ効果を上げている選手はもちろん他にいない。もともと、サーブは非常に水物であり、高い効果率(あるいは得点率)を2シーズン以上にわたって続ける選手は非常に少ない。日本リーグ時代との比較のため得点率を求めると7.50%となる。これは700打数以上の選手の中で6位に当たる数字だが、上位選手のほとんどはサーブ得点率が全体に高かった17回大会以前に活躍した選手で、日本リーグ18回以降あるいはVリーグで活躍した選手でバーバラの得点率を上回るのはわずか一人である。しかも、バーバラはこれまで何度も述べたとおりアタック本数が常識外れに多い。それほどアタックの本数が多くなれば、サーブを強く打つことも当然体力的に難しくなる。

出典(日本リーグ時代の記録): Mossy Volleyball


史上初のスパイク賞と猛打賞の同時獲得、サーブ賞とあわせた三冠

Vリーグにおいて、攻撃に関する個人集計は、アタック決定率、アタック決定数、ブロック決定数(セットあたり)、サーブ効果率の4部門で行われる。(最近は、得点の集計も行われているけれども、これはアタック決定数と重複する可能性が高いのでこの議論では外す。)バーバラは第5回Vリーグで、アタック決定率、アタック決定数、サーブ効果率の3部門で1位に輝いた。同一シーズンに3部門のトップを独占したのは、日本リーグ以来男女通じてバーバラ以外例はない。また、スパイク賞(最高決定率)と猛打賞(最多決定数)を同時に獲得したのも特筆すべきことで、これもバーバラ以外男女とも誰一人達成していない。日本の集計では、アタックの規定打数が国際大会の基準に比べかなり少ないため、スパイク賞のタイトルはセンタープレイヤーに非常に有利になっている。この点については、詳しくは史上初の三冠への道のページで考察する。


7位チームからベスト6選出

バーバラは第1回Vリーグでベスト6に選出された。所属チームの日本電装(当時)はこのシーズン7位。7位以下のチームからのベスト6選出は、日本リーグ・Vリーグの男女を通して、このシーズンのバーバラただ一度である。かつて日本リーグが6チームだった時代にも、5位以下のチームからのベスト6選出は、男女あわせわずか3例しかない。

この前の項目までは数字的な記録を主に扱ってきたけれども、このことは、数字だけではなく、バーバラのプレーがいかに大きな驚きをもって受け入れられたかの証明といえよう。


付表: Vリーグのバーバラ全成績

かっこ内の数字はその部門での順位。★印は部門史上最高記録、☆印は部門賞獲得(年度部門トップ)、(-)は11位以下で順位不明の場合を表す。
通算記録の順位は、第5回Vリーグ終了時点でVリーグ5シーズンを通算したもの。ただし(1*)は日本リーグ以来の最高記録。

大会 出場試合数
/ セット数
アタック(バックアタック含む) バックアタック ブロック サーブ 総計
打数 成功 失敗 打数 成功 失敗 成功 打数 得点 効果 効果率 失敗
得点 得権 決定数 決定率 失点 失権 失敗数 失敗率 得点 得権 決定数 決定率 失点 失権 失敗数 失敗率 得点 得権 成功数 セット平均 ノータッチ エース 合計 失点 失権 失敗数 失敗率 得点 得権 総計
第1回('94-95) 21 / 76 1450 199 434 633☆ 43.66%(10) 88 29 117 8.07% 416 184 44.23%(2) 55 11 66 0.86(12) 379 16 23 39 121 17.06%☆*1 0 64 64 16.89% 293(1) 445 738
第3回('96-97) 21 / 77 1632 280 499 779☆ 47.73%(5) 559 79 160 239 42.75%(3) 53 14 67 0.87(10) 420 10 19 29 132 13.86%(2) 362(1) 513 875
第4回('97-98) 19 / 70 1988 305 626 931☆ 46.83%(3) 732 111 226 337 46.04%(1) 38 11 49 0.70(12) 326 5 18 23 100 13.62%(2) 366☆ 637 1003
第5回('98-99) 18 / 66 1810 348 592 940★ 51.93%☆ 81 47 128 7.07% 666 133 241 374 56.16%(1) 42 11 53 0.80(10) 369 7 14 21 101 11.78%☆ 411★ 603 1014
総計 79 / 289 6880(1*) 1132(1) 2151 3283(1*) 47.72% 2373 1134 47.79% 188 47 235 0.81 1494 38 74 112(1) 454 14.10%(1) 1432(1) 2198 3630
*1 サーブ効果率(%) = (ノータッチエース + エース×0.8 + 効果×0.25) / 打数 ×100
によってサーブの集計を行うようになったのは、Vリーグになってからである。日本リーグ時代は、サーブの集計は
サーブ得点率(%) = (サーブ得点 / 打数)×100
によって行っている。
このシーズンのバーバラのサーブ効果率は、効果率で出すようになってからは最高記録である。しかし、得点率では10.29%であり、これを上回る得点率は日本リーグ時代に10回以上も記録されている。そのため表示は☆とした。
*2 日本リーグ・Vリーグを通算して最多決定本数

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