日本バレーは、これでよいのか
緊急提言: 今こそ理念が求められる
緊急提言2: 鎖国を直ちに解除すべし
バレー不人気
Vリーグ
強化についても少し
E-Mailのすすめ

このページはまだ「青い」ファンの独り言として聞いてほしい。


緊急提言: 今こそ理念が求められる

恐れていたことは次第に現実となりつつある。小田急が98年度限りの休部を明らかにした。これ以外にも、非公式に休部が明らかになったチームもあり、休部の危機にあると思われるチームも少なくない。というより、危なくないチームなどない、というほうが適切かもしれない。
会社側の発表した休部の理由からは「プロ化への抵抗(?)」のようなものも感じ取れる。しかし、現在の理念もない状態で、プロに近づく方向性が進めば、企業が反対するのは当然である。企業にとって金がかかるだけで何もメリットがないからである。

今こそ、そして今すぐにはっきりとした理念を示さなくてはならない。バレーボールという競技そのもののファンを増やし、バレーボールが文化として根付くためのビジョンである。それがあれば、いくら不景気でも、これほど休廃部が相次ぐことはないはずである。この不景気の中でもJリーグのチームが簡単に切り捨てられることが少ないのは、そのようなビジョンがはっきりしていることも大きな要因であることは間違いない。逆に、それがなければ、日本バレーの決壊は必至である。

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バレー不人気

少なくとも、人気回復についても強化についても明確なビジョンを持たず場当たり的な策を続けてきた協会の姿勢は即刻に改善が必要であると考える。私はバレーファン歴は短いので、ここから先は多くのバレーボールサイトの書き込みを私なりに要約したものになる。日本バレーの弱体化は今に始まったことではない。そしてその弱体化の期間にあっても、人気回復のチャンスは何度もあった。この後では、日本の上位進出あるいは日本人スターに頼らない人気回復を考えるけれども、それは、日本の上位進出も日本人スターの登場も期待できない現状があるからである。日本人のスタープレイヤーが出てくれば、人気回復のより強力な決め手となりうるのは当然である。そしてここ10年ほどの間にもそのチャンスはあったのだ。ところが、そのたびに協会はまるで見当違いの策でそれをつぶしてきた。89年のワールドカップでは、当時18歳の斎藤真由美選手がスターとなった。そしてその勢いをそのまま、89年度の日本リーグで所属するイトーヨーカドーを優勝に導いた。彼女は史上最年少のMVP受賞者となった。彼女は本来レフトのアタッカーである。ところが、まだ若いのだからセンターもやらせてみようとか、挙げ句の果てにはライトもとか、滅茶苦茶なコンバートの話が出てきた。翌年の世界選手権に向けて、実際にセンターにコンバートしてさらにセッター名取とあわせようとしていたときに、最初のひざのけがが起きた。そのけがが次々とけがを誘発した。「もらい事故」で生死の境をさまよったのは別としても、それ以前にすでに、競技どころか日常生活にも支障を来すほどけがは悪化していた。また、95年ワールドカップ・96年アトランタ五輪最終予選では、佐伯美香選手のブームが起こった。しかし、協会内部で「大きいエースでなければだめだ」という声が起こった。そのため小さい佐伯選手は次第に疎んじられるようになった。それを感じてのインドア引退・ビーチ転向だったという。これを言った人間は、例えば、当時の世界のエース、ルイスの存在をどう考えていたのだろう。そもそも、大きいエースがいないから佐伯ないしは大懸をエースとして使っていたのであり、それも体格的に優れた選手に基礎的な運動能力の養成から一貫した強化を行ってこなかった協会の無策に責任があるはずである。

ここから先は私なりの考えになるけれども、これが正しいというものではない。それよりはむしろ、自分なりの考えをもつためのヒントとしていただきたい。

現在のバレー不人気の最大の原因が、全日本が弱くなったことにあることはほぼ間違いない。もちろん人気の回復のためには全日本が強くなることがもっとも望ましい。しかし、今回の世界選手権で、アトランタ五輪の成績から大幅に上がることは、私は無理だと思うし期待もしていない。現状を見る限り、全日本が好成績を上げればなどというのはないものねだりだと思う。ここまで言うと怒る人もいるかも知れない。しかし、男女とも史上最低の成績に終わったアトランタ五輪と比べても、全日本が強くなっているとはとうてい思えないのである。それを打開するためには、現在の小学→中学→高校→企業というばらばらの強化をやめ、国をあげて一貫した強化を行う*しかないと思う。あるいはどこからかバーバラのごとくスーパーエースでも出てくれば話は別である。
* これはバレーだけではなく、主な競技は全てそうすることになるはずである。

私の見方がひどく冷めているのは、

ことが大きな原因だろう。一方、現在のバレーボール関係者の偉いさんは全員日本が強かった時代の人であり、ファンの中にもかつての強い全日本を知っている人が多いだけに、「黄金時代よもう一度」という気持ちが強いと思われる。しかし、昔のことは全部忘れて本当にゼロからスタートするつもりでないと、強化も人気回復もできないと思う。

とにかく、現在の体制である程度強くできるとしても、それが一朝一夕で無理なことは明らかなはずである。しかし人気回復は待ったなしの課題である。全日本が強くなるのを待ってはいられない。だいたい日本バレーの弱体化は昨日今日に始まったことではない。また、人気のあるスポーツが日本が強いものばかりかといえば、そうではない。全日本が弱いことを不人気の理由にしていては先に進まないと思う。全日本が弱いなら弱いなりに、人気が出る方向性を考えていかなければならないはずである。

そしてその方法としては、バーバラを応援する理由のページでも述べたけれども、
世界のスーパープレー(プレーヤー)を見られることをもっと前面に押し出し宣伝する
しかないはずである。すぐに観客動員の増加にはつながらなくても、本当の意味のファンを増やすためには、結局最も優れたプレーをできる限り多くの人に見てもらうしかない。この原則にあわない方策をとっても、成功するはずがない。そのことからして、ここ数年の日本協会のあの手この手が失敗に終わっているのは、むしろ当然という気がする。

ここで二段構えのPRを考える。まずは、「世界一のチームのエース」という宣伝文句で話題を作る。ファンダールミューレン、イェルツェン、アルタモノワとそろっていれば、十分すぎるはずである。それに加えて、強いチームの所属でないため知名度は劣るけれども、個人としては飛び抜けた能力を持っている選手を新たなスターとして売り出す。このための最大の切り札は当然バーバラである。さらにペレスもいる。

協会がまともなPRというか、企業努力をしているという話はあまり聞いたことがない。これは実際に試合場に行った方何人かの観戦記からの引用になるけれども、会場に向かう電車やバスの中には全く広告はなく、最寄りの駅から会場に向かう間ですらポスターも案内もないという。世界選手権でさえ、博多駅前の大きなビルに1ヶ月以上先のマラソン開催を知らせる巨大な垂れ幕があったのに、バレーボールは垂れ幕もなければ会場への案内もなく、はっきり言えば「会場に行かなければ開催していることが分からない」状態だった。しばしば「殿様商売」と言われるけれども、「お客様に来ていただく」という発想が本当にあるのかどうか疑いたくなる。

一方で、Vリーグでも日本で行う国際大会でも、試合と関係ない演出ばかりが派手になっている。これで日本チームが全然強くない、あるいは目立つのは外国人選手ばかりとあっては、観客はしらけるだけである。Vリーグの演出はサッカー、バスケなどのまねらしい。成功している他競技のまねをするのは間違いではない。ここから先の議論は、むしろ、成功している他競技に学ぶべきという内容である。しかし、格好をまねするのではなく、どうして成功しているのかという本質を見極め、そこをまねしなければならない。

第4回にしても、民放のVリーグの放送は2試合しか予定されていなかった(第4回Vリーグ観戦ガイド編集時点で)。すでに事態はきわめて深刻なレベルになっていた。それにもかかわらず、行われた変更は、「質の高い試合を増やす」という観点からはプラスにならないものばかりだった。
最近盛んに議論されている時間短縮(時間制限)にしてもそうだと思う。そもそも、テレビ放送のために時間制限が必要という話自体、どこから出てきたのだろうか。テニスにしても、3セットマッチとして、短い試合だと40〜50分で終わってしまう(しかも強い選手ほどそのような試合が多い)一方、もつれれば2時間を超えることは珍しくない。だからといって時間制限をしようという話は聞いたことがない。最近は最終セットでもタイブレークを行うという傾向があるけれども、これはバレーボールで言えば、今までは最終セットは得点に関係なく2点差がつくまで行っていたものを最終セットも17点先取で打ちきりとしよう、といったくらいのものである。

最近は企業スポーツ部の休・廃部が相次いでいる。この終わりの見えない不況の中では当然といえば当然のことである。96年度までにも、実業団リーグのチームの休部が相次いだ。これではその流れが止まるはずはなく、ついにVのチームにまで容赦なく及んだ。まず第4回でVリーグに復帰、台風の目となった男子住友金属のこのシーズン限りの休部が明らかになった。
ちなみに、住金はNHK-BSで一度試合を見た。第一印象は「男子版デンソーエアリービーズ」(笑)。バーバラ→イリア・サベリエフ。その試合を見る限り、エアリービーズよりまし(日本人選手がまとも。事実、このチームには日本代表選手もいる)だからけっこういけるチームと思ったのだが。イリアは、断然のアタック決定本数トップであり、アタック決定率もサーブ効果率も5〜6位と、まさにバーバラそのままの奮闘である。バーバラのファンである私にとって、このようなチームは違和感なくとけ込めた。

そしてついに激震がVリーグを襲った。ダイエーバレー部の休部発表である。これをきっかけにして、Vリーグの運営および日本代表の強化(これらは当然密接な関係があるのだが)について根本的に考え直さなくてはならない。しかし、こうなってからではあまりにも遅すぎる。もはやこれは

Vリーグの存続そのものの危機を迎えている
ことには変わりない。住友金属の廃部、そしてダイエーの騒動は、どのチームがいつ休部・廃部になってもおかしくないことを示している。

PRが不足しているのは、企業側の問題でもある。チームを持っている企業が所属選手を使ったCMを作れば、これはバレーボールのPRにもなる。実際、いすゞ自動車は、自社のバスケットボールチームの選手が出演したCMを流している。個人的には、デンソー・東洋紡あたりに期待したかった。これは、イエリッチ・アルタモノワというスーパースターの存在だけではなく、両企業の性格も考えてのことである。家電あるいは流通業など、商品が直接消費者にわたる企業の場合、どうしてもCMは、家電なら自社製品、流通ならバーゲンセールの宣伝が多くなる。しかし、東洋紡は素材産業、デンソーは基本的に自動車部品製造業であり、製品が直接消費者の手に渡るわけではない。だからCMをもし流すとすればイメージ的なものになる。そこでバーバラあるいはアルを使うことは当然考えられると思うのだが。

ただし、ダイエー関連の新聞記事を読む限りでは、テレビ放映権料、入場料などの収入は全て協会側のものになっているようである。協会から各チームへはどのように金が配分されているのかわからないけれども、これでは、企業が客を呼ぼうという努力をしないのも当然ではないだろうか。

人気回復のもう一つの重要なカギは「地域密着」であると私は考える。野球およびサッカーが日本の二大メジャースポーツとなった(あるいはそうであり続ける)理由の大きなものもそれである。地元のチームだから応援しようという人間が非常に多いのである。そして、そこで質の高い試合を見せることができれば、最初はそのような動機で試合を見に来たファンの中から、そのスポーツ自体の固定ファンが出てくるはずである。これにより、企業がチームを手放さない理由である「宣伝効果」も非常に高まるだろう。しかし、現在のバレーボールは、チーム所在地とほとんど関係ないところでの試合ばかりである。これではそのようなファンがつく可能性はない。

もちろん、現在の地方興行にはバレーボールの普及という意味があることも承知である。しかし、それが実際に効果を上げているかどうかははなはだ疑問である。前にも書いたとおり、客を呼ぼうという努力がされているという話を聞かないのである。
サッカーJリーグも地方巡業のようなまねはしていない。それでも、現在では観客の減少が問題になっているけれども、Jリーグ発足以前と比べれば、サッカー人口は大幅に増え人気も高まったことは間違いない。

地域密着というと、考えられるのはフランチャイズである。プロ野球やサッカーと同様に、各チームが本拠地を決めて、どのチームも本拠地で半分の試合を行うわけである。女子なら、NEC・ヨーカドー・小田急が東京、東芝が横浜、デンソーが名古屋、東洋紡・ユニチカが大阪、ダイエーが神戸といった感じになるだろう。現状では現実味の薄い話だが、次のような効果は期待できると考えている。

私の望みとしては、月刊バレーボールにあった記事と同じになってしまうけれども、
「今年は中日ドラゴンズも名古屋グランパスもあかんなあ」
「でもデンソーエアリービーズが強いからええじゃないか。バーバラと誰ぞの二枚看板で優勝だ」

なんて会話が交わされる日が、いつかこないかな、と思っているのである。
しかし、競技自体についてはよく知らないのに騒いでばかりいるファンが増えるのは、個人的にはあまり気分はよくない。バレーボールを愛しバレーボールについて深い知識を持っている人、つまり「本当のファン」の割合が非常に多い現在のあり方は、それはそれでよいものである。

もう少し現実的な話に戻ろう。「身の丈にあった運営」に持っていくことも考えるべきである。現状では、代々木第一とかなみはやドームとか大きな会場を借りてもがらがらである。これでは赤字が増えるだけである。例えば、バスケの日本リーグはファイナルでも代々木第二あるいは東京体育館である。よけいな演出もなくして、その分を少しでも入場料を安くするなど観客に還元する方向に持っていくべきである。これは今すぐにでもできることのはずである。

およそスポーツのチケットは、大人の最も安い席・当日券で1000〜1500円くらいが相場だと思う。バスケではそうなっているようだし、運営形態としては全く違うがプロ野球でもだいたいこの程度である。しかし、バレーボールVリーグでは、会場によって大きな違いがあるけれども、ほとんどの会場では大人の入場料金は最も安い席でも2000円以上、なんと3000円を超える会場もある。バスケの日本リーグでは、東京の試合でも、指定席で2500円、アリーナでも3500円くらいと聞いている。バレーボールに比べると、指定席で1000円、アリーナでは2000円ほど安い。
ただし、バレーボールの場合、原則1会場1日2試合で、チケットは1日分の入場券である。つまり2試合分の料金というわけである。それを考慮すれば一概に高いとは言えない。1日2試合は、本当のバレーファンにとってはたまらないという意見もある。これを1会場1日1試合として、入場料をその分下げることには賛否両論あろう。しかし、チケットが高いことは、初めてバレーを見に行こうという人にとってはしきいが高いことは間違いない。
かつて映画で2本立て1500円が標準だった時代に、1本で800円という新料金を世に問うた映画会社があったが、これにも似た議論だと思う。これはその後定着したのだろうか。映画の場合、2本立てのうち1本はおまけで二流三流であることが多いという問題もあったわけだが。

一度会場に来てもらった客に続けてきてもらうためには、試合のレベルアップとともに、勝負として面白くすることが必要である。そのためには強すぎるチームがあることはよくない。試合前から勝負が見えていたり一方的な試合が多かったりしては面白くない。

とりとめのないことを延々と書いてしまったけれども、私としては、「これだけ強くかっこよく、そして熱い選手がいるのだから、うまくアピールすればもっと人気が出るはずなのに、どうしてその努力をしないのか」という歯がゆい思いから、いろいろと書いてしまった次第である。

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Vリーグ

第4回Vリーグでは、同時にコートに出られる外国人選手は一人になった。しかし、ふたを開けてみれば、外国人頼りのチームは結局外国人頼りのままである。そのもっとも顕著なのが女子のデンソーとヨーカドーである。デンソー・イエリッチの決定本数は931本、これは19試合で記録したものなので単純に21/19倍すると1029本。チーム内で決定本数1位と2位の選手を足してこれに届くチームはもちろん他にない。チーム内で決定本数1位と2位の選手の決定率平均でバーバラの決定率46.83%に達しているチームも、もしあるとすればヨーカドーだけで、それ以外のチームは全く届かない(4ポイント以上低い)。ヨーカドーのペレスはセンタープレイヤーとしてブロック賞を獲得、さらに決定率でも決定本数でもほとんどのチームのエースを圧倒した(664/1370 = 48.47%、これに対抗できるのは931/1988 = 46.83%のバーバラのみ)。この二人は、一人で二人分を完全に超えたのだ。

第4回Vリーグ、男子では、大物の外国人エースアタッカーを新たに採用するチームが相次いだ。外国人選手を使っていない1チームを除くと、7チーム中5チームが、外国人は大物エースアタッカー一人という布陣になった。女子では外国人選手は残留した選手が多いけれども、昨年まで2名登録していたのを1名に減らしたチームも多く、やはりエースアタッカー一人という傾向がみられる(外国人選手なしの2チームを除き、6チーム中3チーム)。また、大物選手一人という傾向も強い(6チーム中4チーム、ただし前項と重複するのは2チームのみ)。外国人選手を二人獲得したチームは男女とも1チームずつあるけれども、この両チームとも、出場セット数からして、大半はレフトエースのほうを使っているようである。(余談だがこの両チームは不思議なことに共通点が多い。どちらも第3回Vリーグで準優勝、それだけでなく準優勝が何度もありながら優勝は一度もない。二人の外国人選手はロシアナショナルチームのエースとセンターである。守りよりも攻撃力の強さが特徴である。)この両チームはいずれも苦戦を強いられた。男子JTは、完全に勝負を度外視で若手選手に実戦経験を積ませる方向にいったようである。女子の東洋紡はアルタモノワ一人にボールを集める試合が続いた。
そして第5回Vリーグでは、NECがこれまで4年間在籍したチューリナに代わりゴディナを(これはチューリナが妊娠・出産のためバレーを離れたことも契機)、これまで純血主義を守り続けた日立がソコロワを獲得。第4回リーグで打ちまくったイエリッチ・アルタモノワ・ペレスに加え、女子でも完全に大物外国人選手一人が主流となった。

要するに、外国人選手オン・ザ・コート一人になったことにより、

ことになっている。これで日本人選手の育成に役に立つのだろうか。

近年の結果の意味するところは、日本の一流選手が外国の一流選手に歯が立っていないということであり、その本質的なところは、たとえ外国人選手が二人から一人に減っても変わるものではない。結局のところ、日本のバレーボールが外国の強豪に比べて(特にパワーの面で)大きく立ち後れているという現状がある限り、世界の一流選手を連れてくるという動きが止まることは望み薄である。

さらに、外国人選手オン・ザ・コート一人にしたことにより、これ以外にも懸念されることはいくつかある。

  1. 世界のトップのプレーに接する機会が少なくなる。特に、外国人選手がエースアタッカーに偏ることにより、強力なセンタープレイヤー(あるいはそのような選手がいるチーム)と対戦する機会がなくなる。
  2. リーグ全体のレベルが低下する。
  3. チーム間の力の格差が大きくなり、一方的な試合が増える。

強化ということを考えた場合、

  1. 日本人選手だけで試合を組み立てる
  2. 世界のトップレベルのチームあるいはそのチームの選手と幅広くふだんに当たる
ことは車の両輪ではないかと思う。外国人選手をオン・ザ・コート一人にすることは、このうち前者を重視した変更である。しかし、観客が減りスポンサーが降りたことにより、日露対抗も97年限りで廃止となるなど、後者の機会が減ることが非常に懸念される。

第3回までは、二人の外国人選手のうち一人はエースアタッカーだがもう一人はセンタープレイヤーというチームが多かった。しかし、今回、外国人のセンタープレイヤーを常時使っているのは女子のヨーカドーだけである。このペレス選手も、身長もすごい(194cm)が実績も88年ソウル五輪でナショナルチームの銀メダルに貢献とすごい。大物である。この選手は今年新規採用だが、監督によると、最初はやはりエースを考えたという。それがセンタープレイヤーになったのは、やはり、エース一人にボールを集めるという戦い方ではバーバラとアルにかなわないという判断があったものと思われる。

日本の守りは、力押しよりもむしろ速攻かつ移動攻撃に弱い。これは、グラチャンあるいはワールドグランプリでもはっきりしたことであり、Vリーグに変わって以降のスパイク賞受賞者からも言えることである。もちろん、エリザベータ(ティーシェンコ)とエフゲーニャとバーバラでは所属するチームの事情が違う(ポジションが違うし、それ以上にチームの依存度が違う。当然、バーバラ > エフゲーニャ > エリザベータの順)から単純に比較はできないけれども、2年連続決定率55%以上でスパイク賞、それも決定率2位のエフゲーニャに比べ約5%、バーバラに比べ7%以上高い(第3回の場合)とはやはり驚異的である。ワールドグランプリのときはこれに輪をかけてひどく、本当に「止めたシーンが記憶にない」くらいやりたい放題やられていた。それも、サイドアウトを取りにくるときは大筋で彼女を使ってくるとわかっているのにだ!決定率はきちんと数えてはいないがどう見ても7割はいっていた。外国人選手に門戸を開いたことの意味は、第一にこのような相手に当たっておくことにあるはずである。しかし、外国人選手がエースアタッカーに偏ると、このようなプレイヤー(のいるチーム)と対戦する機会もなくなる。

第5回以降、Vリーグは8チームから10チームに拡大される。しかし、第4回の状況を見ると、日本人選手だけでまともなチームが編成できるのはわずか2チームである(まともなチームとはどの程度のものか、という点については人によって見方は異なるだろうが)。その寸前までいっているけれども、エースアタッカーがいないチームが2チーム。強力な外国人選手を入れてどうにかVリーグに踏みとどまっているのが3チームくらい。

これまで実業団リーグから昇格しVリーグ定着を果たした2チームには、世界最強のエースアタッカーに加え優れたセンタープレイヤーもいた。このうち1チームは、移籍で日本代表のスーパーエースまで獲得した。もちろん他のチームにも強力な外国人選手はいたししかも二人同時に使えたわけだけれども、このくらいの戦力補強をしないと、実業団リーグから上がったばかりのチームがVリーグでまともに戦うのは難しいということである。これ以外は、実業団リーグから上がってきても完全にいじめられる役割に終わっている。果たして、現在実業団リーグのチームが、外国人選手オン・ザ・コート一人でどこまで上がれるのだろうか。しかも、前からでも後ろからでも世界最強レベルの攻撃ができ、さらに1試合100本打っても平気なエースアタッカーなど、世界中に二人といるはずがない。
これはある程度予想されたことだが、序盤から、上位2チームとそれ以外のチームで力の差が大きく開いていることが露呈された。これでチームの数を増やせば、リーグ全体のレベルの低下が懸念される。日本人選手の駒のそろわないチームは、外国人選手頼みでもよいから、リーグ全体のレベルを上げて、質の高い試合の経験を多く積ませて強化につなげるというのなら、それはそれで筋の通った考えである。また、日本人選手育成のため、外国人選手をオン・ザ・コート一人にすることも、もちろん間違いではない。しかし、この両者は相反する。また、現状でもいつも試合が入っていて(Vリーグだけでなく、全日本選手権・国体などトーナメントのカップ戦もあり、もちろん国際試合もある)まとまった強化を行う時間がないことが指摘されているのに、チームの数を増やしこれ以上試合を増やそうというのだろうか。要するに、方向性が見えてこないのである。97年度Vリーグに最大の衝撃を与えた「ダイエー休部」にしても、中内会長にその決心をさせたのは、JVAのビジョンのなさだったという。

そもそも、Vリーグを8チームから10チームに増やす(さらに構成チームを原則固定する)とはいつ出てきた話なのだろう。少なくとも、第3回Vリーグが終わった時点では、そのような話はなかったと思う。その後の監督会議では、Vリーグ7位と実業団リーグ2位の入れ替え戦を廃止し(つまりVリーグ7位なら自動的に残留である)、Vリーグ最下位と実業団リーグ優勝のチームとの間だけ入れ替え戦を行うということが決定された。この話と、Vリーグを10チームに増やすということの共通点は、Vリーグの固定メンバーを6チームから増やそうということである。この目的は、入れ替えなどが激しいと全日本に集中できないためということである。この理由を見る限り、Vリーグは全日本の強化の一環とはあまり考えられていないようである。Vリーグは全日本の強化という面ではどのような位置づけになっているのか?これもよくわからない。

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強化についても少し

日本のバレーボールはいつの間に世界からこれほど遠ざかってしまっただろう。国際大会を見るたびに強く感じる。特に女子バレーについて、日本は世界のトップの一角でメダルもねらえるという意識があったのは、それほど昔のことではない。バルセロナ・オリンピックの頃まではそうだった。今は、メダルどころか、オリンピックに出場するのがやっとである。

日本サッカーはついに悲願のワールドカップ出場を果たした。あのドーハの悲劇から4年。しかし、4年前と今年とでは、見る側の意識に決定的な違いがあった。4年前は、日本よりもアジア最終予選の相手のほうが強いと感じられた。その格上の相手に、いかにして食らいついていくかという見方をしていた。今年はそうではなかった。日本チームは最終予選の相手と同格、あるいは相手よりも強いはずだという意識があった。世界はもはや見えないところにはない。それがはっきりと感じられるようになったのは、アトランタ・オリンピックでブラジルを破った試合以降であろう。

バレーボールについては完全にこの逆になっている。94年のアジア大会で、世界から遠ざかっていることがはっきりと露呈された。この大会で、日本の女子バレーはアジアのトップですらない―中国・韓国に完全に後れをとっている―ことが明白となった。そして、ロシアにはここ4年ほど勝ったことはない。中国にもそうである。のみならず、韓国にすら4年以上勝ったことがなかったのである。今では、日本代表がロシアあるいはキューバに勝ったら、それは奇跡―サッカーで日本代表がブラジルを破る以上の―と感じられる。

第3回Vリーグのチームごとのデータを見ていると、何がチームの順位と相関が高いかわかる。アタック決定率と順位との相関が高いのは当然として、見逃してはならないのは、サーブ効果率と順位との相関の高さである。サーブ効果率が低いチームは、例外なく下位に低迷している。サーブで崩すことがいかに重要かを示すデータである。ところが、日本代表選手が多く所属し、日本人中心で戦っているチームは、これが低かった。また、日本リーグ時代の特に終期には、時折8%台〜10%以上という高い記録はあっても、女子で6〜7%台、男子で6%前後という低い得点率でのサーブ賞獲得が多かった。Vリーグに入ってからはサーブ賞は効果率によって決められるので、直接比較はできないけれども、Vリーグのサーブ賞獲得者の得点率を試算してみると下の通りになる。日本リーグ時代のような低い数字でのサーブ賞獲得は少なくなっていることがわかる。
表1.サーブ賞獲得者の効果率・得点率
大会 男子 女子
効果率(%) 得点率(%) 効果率(%) 得点率(%)
第1回 11.90 17.06 10.29
第2回 12.55 14.66
第3回 14.88 9.45 14.77 8.84
第4回 14.78 8.37 14.68 7.61
また、最近2シーズンの「日本人選手で得点率最高の選手の得点率」を見ると、男女とも、日本リーグ時代に比べても極めて低い水準にあることがわかる(表2)。
表2.日本人選手の最高得点率(%)
男子 女子
第3回 5.51 7.33
第4回 5.87 6.28
サーブ賞最低記録(日本リーグ時代) 5.5 6.0
サーブ賞平均(日本リーグ最後の10年) 7.8 8.4

得点率あるいは効果率自体はサーブレシーブ側とのバランスで決まるものである。ジャンプサーブの破壊力で世界的に鳴らした選手でも10%の得点率など容易に出なくなっていることを考えれば、サーブレシーブの向上という要素も多分にあるのだろう。しかし、表1と2をあわせて見ると、その差はやはり大きい。サーブ賞は、Vリーグ4シーズン男女通じて日本人選手の獲得が一度もない唯一のタイトルである。特に、第1回・第2回の男子は、かなりサーブ賞の水準が低いにもかかわらず日本人選手がタイトルを取れなかった。日本人選手で安定して高いサーブ効果率を上げている選手も非常に数少ない。これらのことからして、やはりサーブの強化も十分でなかったといえるのではないか。そして強いサーブを打つ選手が少なければ、サーブレシーブもよくならないだろう。
例えば、NEC女子は、層は厚いけれども飛び抜けたアタッカーはいない。むしろ守り向きの選手が多いという印象である。ブロックにいたっては、決定数よりも決められた数のほうがかなり多い。このチームが首位争いができるのは、やはりサーブとサーブレシーブのよさがいかに大きな武器になるかという証明であろう。

アタックの威力や高さでバーバラやアルに対抗しようというのは、土台無理な話である。小さな体をいっぱいに使い、あるいは打つボールの変化を多くすれば、体格あるいは球威の不利は補えるかもしれない。しかし、そうすれば耐久力には当然問題が生じるだろう。そのようなボールを毎試合50本も打てばくたばってしまうだろう。
しかし、サーブの効果なら対抗するのは決して不可能な話ではない。デンソーエアリービーズは、第3回も第4回もサーブ効果率トップである。バーバラの攻撃力だけがとかく取り上げられるチームだけれども、実は強いサーブも武器なのである。バーバラはサーブの威力もトップクラスだが、バーバラ一人ではチーム全体の効果率が高いというのは無理である。バーバラのワンマンチームと思われているこのチームの日本人選手でも、これができるのである。日本代表選手にどうしてできないことがあろうか。

全日本選手を1つのクラブチームにまとめ、そのチームでVリーグも戦わせるという構想はだいぶ前からある。そのチームの選手はJVAとプロ契約を結ぶことになる。強化面ではそのようなチームがあったほうがたぶんよい。例えば、ロシアのナショナルチームメンバーのほとんどはウラロチカというチームの所属(これについてはOEFCに詳しい)である。しかし、JVAは予算が逼迫しており、これはとうてい実現しそうにない。
日本でも、女子バスケの場合、シャンソンとJエナジーが事実上全日本候補AとBという感じである。日本リーグにしろ全日本選手権にしろ決勝戦はこの両チームの顔合わせに決まっているから、互いに知り尽くしている。だからこの2チームから全日本を編成したときもおそらく合いやすい。前回オリンピックでは、この二強体制で20年ぶりの好成績を上げた。女子バレーより女子バスケのほうがオリンピックの成績がよかったというのは、おそらく前回五輪が初めてであろう。
第4回の状況からすれば、ダイエーとNECでこのような二強体制にもっていくことは不可能ではないと思う。それと同時に、試合をレベルアップし勝負としても面白くするために、外国人選手はオン・ザ・コート二人に戻す。第4回の状況を見る限り、外国人一人にした意義はあまり感じられない。前にも書いたけれども、日本人選手の駒の足りないチームでは、外国人一人で二人分の働きをしてしまうだけになるからである。

現在は、国内試合がどう考えても多すぎである。少なくとも6月〜11月は強化合宿と遠征を繰り返す期間にすべきである。全日本だけではなく各チームレベルでもそうだと思う。これは今すぐにでもできることである。

もっと長期的には、まず現在の学校単位、企業単位のばらばらの強化をやめて、国としてきちんとした計画を立て、クラブ単位で一貫した強化を行う必要があると思う。さらに、その内容としては、幼少のうちから基礎的な運動能力を徹底的に鍛えることが必要である。このようなやり方には賛否両論あると思うし、私も人間形成などの面からは疑問を抱く(しかし、だれもかれもが受験戦争、それも低年齢化が急速に進んでいることに比べれば、これが悪いとは言えないだろう)けれども、これをしないと世界から遠ざかるばかりということは言えるのではないか。スポーツ大国といわれる国で今これをしていない国はないと思う。現在世界のエースといわれる選手、バーバラなりアルなりを見れば誰もが認めざるを得ないと思うけれども、基礎的な運動能力、瞬発力や持久力からまるで違うということである。

現在の日本を考えてみると、運動能力を伸ばすのには非常に厳しい環境になっていることに気がつく。外で遊ぶ時間も場所もない。親もそうさせたがらない。つまり運動のセンスが養成されないのである。事実、児童・生徒の運動能力は近年急激に低下している。ある程度の年齢になってトレーニングをするにしても、そのための基礎(センス)がなければ効果は上がりにくいことは、容易に想像される。

こうして考えてみると、本来はバレーボールの強化ということを考えているはずが、もはやバレーボールという枠の中では考えられないことに気がつく。他のスポーツもよく知っていなくてはならないし、さらにはスポーツ以外の一般社会についての常識、関心も必要である。このページには、これまでにも、他のスポーツあるいはスポーツ以外とも比較する場面が出てくる。話がとんでもない方向に行きつつあるので、このへんで終わりにする。

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E-Mailのすすめ

私自身としては、今こそ長期的なビジョンのもとで、一貫した強化を行わなくてはならないと考えている。そしてそのためには、目先の大会の結果は捨ててもよいと考えている。しかし、特に今回日本で開かれる世界選手権で結果を出さなければ、バレーボールそのものがいわば「見捨てられて」しまうだろうという意見もしばしば耳にする。現場でプレーし、衰退を肌で感じている人が言っているだけに反論できない。そこをつきつめると、成績がよければ祭り上げ、悪くなればたちまち放り出すメディアの姿勢に問題がある。たとえ日本チームが好成績を上げることができなくても、多くのファンは見捨ててなどいない、ということをマスコミに知らしめていく必要がある。また、最近のバレーボール大会には、こんなばかなことはやめろと言いたくなるような本末転倒の事態が多発している。

そのためにおすすめしたいのがE-Mailの活用である。98年の春高バレー決勝で起きたような大失態に対しては、協会にどんどん抗議のメールを送るべきである。また、大会を放送する放送局にも、機会あるごとに抗議あるいは要望のメールを送り、バレーボールのファンは多いのだと示すことだと思う。実際、フィギュアスケートにおいては、ファンの抗議により、本放送でカットされた部分の再放送が実現したり、大会の放送内容のバランスが改善されていると聞く。

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