1999-2000 Serie A1 Women Play-Off

準々決勝
準決勝
決勝

講評

星取表
試合結果

今シーズンのイタリアリーグのプレーオフは、後ろが詰まっている(シドニー五輪世界最終予選がある)ため、前年よりは短縮。参加するのは通常シーズンの上位8チームで、7-10位チームによる1回戦はなくいきなり準々決勝になる。9,10位のチームはプレーオフなしで順位確定である。準々決勝は2試合先取で行われる。準決勝以降は3試合先取である。準々決勝の組み合わせは例年通りで、
1位対8位
4位対5位
3位対6位
2位対7位
という対戦である。


準々決勝

Medinex Reggio-Calabria - Marsi' Palermo
第1戦は何一つ変わったことはなく終わった。ReggioCは、ルイザとフェルナンデスが打ちまくった。Palermoは大型エースのモニク・アダムスとTetyana Ivanyuskinaが奮戦したものの、ReggioCが順当にストレート勝ち。
第2戦、ReggioCは、準決勝以降に備えてか、キューバ勢のうちルイザを休ませ、代わりにOkrachkovaを起用した。しかし、そのOkrachkovaの決定率は極度に悪かった。それに対し、Palermoはこの試合もアダムスとIvanyuskinaが健闘。ReggioCに幾分かの油断もあったのか、試合はよもやのフルセットに突入した。最終セットこそReggioCがブロック4本など格の違いを見せたものの、何となく後味の悪い試合となった。
ReggioC3 (25-19, 25-21, 25-19) 0Palermo
ReggioC3 (25-18, 22-25, 25-18, 23-25, 15-9) 2Palermo

Phone Limited Modena - Latte Lucano Matera
レギュラーシーズン通算の順位としては7位でも、後半戦に上位チームに心底肝を冷やさせたMateraは、やはりプレーオフでもひと味もふた味も違う試合を見せた。
第1試合も、フィップス・ゼトバのModenaの両エースも快調とはいかない。一方、MateraではAna Paula de Tassisが決定率55%という活躍。第1セットは21-15Modenaリードから追い上げられ、第2,3セットは終盤まで2点差程度の展開が続いた。この試合は結局総合力でModenaがストレート勝ちしたものの、どのセットも楽に取ったとは言い難かった。
そして第2試合、Materaはレギュラーシーズンの大エースTurlea Carmenに代わり、第1試合で活躍が目立ったde Tassisにボールを集めた。71打数28決定、決定率こそ39%にとどまったものの、粘り強く打ち返し期待に応える活躍。一方Modenaは藩文莉が決定率何と11%という極度の不振。ゼトバもミスやシャットされる数が極度に多い。1,2セットと2点差でMateraが連取。特に第2セットは21-18Modenaリードからの逆転だった。第3セット途中、藩のあまりの不振に耐えかね、パハーレに交代。これが見事的中、パハーレは決定率55%の大活躍で、試合の流れを変えた。さらにセッターもKarine Salinasからマリノバに交代。第3セットの中盤からはModenaが先行の流れに変わった。それでも楽はさせてもらえず、第3,4セットと2点差でかろうじてModenaが奪う。そして最終セット、5-1とModenaが突き放したかに思われたが、Materaはこれを追いつく。Modenaが再び振り切るにはデュース2度を要した。全セット2点差でフルセットという、私の知る限り全セットラリーポイント制で初の激闘で、Modenaが準決勝進出を決めた。
Modena3 (25-23, 25-22, 25-22) 0Matera
Modena3 (23-25, 23-25, 25-23, 26-24, 17-15) 2Matera

Foppapedretti Bergamo - Volley Vicenza
本来目玉であるべき4位対5位の対戦が全く一方的なものになり、無風に終わるかと思われた準々決勝だったが、思わぬ波乱が待ちかまえていた。
第1戦は、ペレス・ピッチニーニの大活躍があり、一方Vicenzaのアタッカーは全体にミスが多く、特にウェールシンクは決定数よりシャットされたりミスしたりしたものが多かった。全く一方的にBergamoがストレート勝ち。
ところが、第2戦にVicenzaの監督は思いきった布陣の変更に出る。今シーズン、このチームはサーブレシーブに全体に難があり、ベテランのメンショーワをサーブレシーブの中心に据えて安定を図っていた。そのため、メンショーワに重い負担がかかっていた。ところが、この試合、率ではウェールシンクよりずっと上のメンショーワをサーブレシーブ陣形から外した。キューバ勢、あるいはゼトバ・イエリッチのスーパーエースに比べ、Bergamoのサーブが強くないことを見抜いての作戦だった。打つことに専念できたメンショーワは決定率53%と期待通りの活躍。それがウェールシンクにもよい影響を与え、さらに、サーブ受数の増えたパッジさえブロック6本。一方計算が狂ったBergamoは攻撃陣が総崩れ。第2セット途中でガラストリ→チェブキナ、ソーシー→Slavka Homzovaの選手交代、これはどちらも大正解だったけれども、ピッチニーニ・リニエーリまでつぶれては打つ手がない。
準々決勝で唯一1勝1敗となって迎えた第3戦、Bergamoはベテランセンターのチェブキナ・ペレスはそれなりの働きをしたものの、サイドアタッカー全体にミスが多く、らしくない試合になった。一方前節の成功で気をよくしたメンショーワの勢いはさらに加速するばかり。アタック決定率63%、得点25の活躍で、Vicenzaのチームを逆転・番狂わせの準決勝進出に導いた。
Bergamo3 (25-13, 25-17, 25-18) 0Vicenza
Vicenza3 (28-26, 25-19, 20-25, 25-19) 1Bergamo
Vicenza3 (25-23, 30-28, 21-25, 25-13) 1Bergamo

Despar Perugia - ER Napoli
通常シーズン4位対5位の対戦、本来はこの対戦が準々決勝の目玉とならなければならない。前シーズンもプレーオフ準々決勝で同じ対戦があり、そのときは第5戦(前年は3試合先取)までもつれている。しかし、今シーズンのNapoliは後半戦以降チームが崩壊状態。まともな試合ははじめから期待できなかった。
第1戦、Napoliはセッターラマスを先発させたものの、Perugiaの一方的な試合展開となる。たまりかねて第1セット途中からフレデルスに交代。これが一応は効果あり、第3セットはNapoliが奪い、第2,4セットも接戦が続いた。両チームともサイドアタッカーの決定率はおおむね低く、ミスも多かった。勝敗を分けた要因の一つはセンター線の働きである。そもそも、フレデルスにセンター線をまともに扱うことは期待できず、第1セット途中でVecerkovaからIvanovaに交代したもののほとんど効果なし。また、サーブ力の差もまともに出た。
第2戦はベル・フランシアを中心にPerugiaのアタッカーが異常な大当たり。チームのスパイク決定率は67%。女子でそんなことがあるのか本当に。第1セットこそNapoliリードの場面もあったものの、それを終盤にPerugiaが逆転すると、第2セット以降は全く一方的展開。Napoliのファンの怒る気力も奪い、Perugiaが難なく準決勝進出。それにしても、上記のMateraの健闘、Palermoさえ優勝大本命のReggioC相手にフルセットまで持ち込んだのに比べると、このNapoliの戦いぶりは情けないとしか言いようがない。
Perugia3 (25-15, 27-25, 18-25, 26-24) 1Napoli
Perugia3 (26-24, 25-17, 25-15) 0Napoli

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準決勝

Medinex Reggio-Calabria - Despar Perugia
キューバの片割れ同士の注目の対戦、どちらが勝つにしてもこの勝者が優勝する可能性は高いと思われた対決である。
第1戦は、第2セットこそ途中16-9ReggioCリードからPerugiaに逆転を許したものの、大筋でReggioCのペース。3,4セットは楽勝でReggioCが奪い、セットカウント3-1でReggioCが初戦をものにした。Perugiaはベルがまずまずだった以外はアタッカーがほとんど決まらず。一方ReggioCはコスタを除き問題なし、特に通常シーズンはキューバ勢の陰に隠れていたMarcela Ritschelovaの活躍が目立った。
しかし第2戦でPerugiaが底力を見せる。Perugiaのアタッカーはラーメを除き大当たり、一方ReggioCも全体として悪くはないのだが最大の攻撃の軸であるフェルナンデスにミスが多かった。もう一つPerugiaらしさが大いに出たのがサーブ。ミスも多いものの、サーブレシーブの堅いReggioCから8本のサービスエースを奪い、勢いに乗った。ReggioCに今シーズン初めての1-3での黒星をつけた。
第3戦、Perugiaのキューバトリオはそろって極端な不振。ラーメ・レチコの欧州勢の活躍は目立ったものの、3人の代役は不可能である。一方ReggioCでもルイザは苦戦したが、ほかの選手がその穴を埋めた。特に、この試合でもRitschelovaの活躍が光った。競り合いのセットが続いたものの、ReggioCが3セット連続デュースをものにしてストレート勝ちをおさめた。
第4戦は、両チームともよく守ったと言うべきなのか、サイドアタッカーはどちらのチームもなかなか決まらなかった。その中で目立ったのがPerugiaのセンター線、フランシアとラーメの活躍である。それに対し、ReggioCの2勝の立て役者であるRitschelovaは不振だった。この試合もいずれのセットも僅差の展開が続き、準決勝にふさわしい熱戦となったが、第2セット21-17とReggioCがリードしながらデュースに突入しPerugiaが逆転。これで試合全体の流れが変わり、この後3,4セットもPerugiaが連取。2勝2敗のタイとして最終戦に勝負を持ち越した。
勝ち負けを交互に繰り返して迎えた最終戦、もはや両チームのアタッカーとも思うように決まらない。その中で突出していたのが決定率56%のロル。Ritschelovaもスパイクだけでなくブロック4本でもチームを引っ張った。一方Perugiaは強烈なサーブで対抗、第2セットに実に7発のサービスエースをたたき込んだ。しかし及ばず、1日1セットで5セットマッチを戦っている感もあったこの準決勝は、ReggioCが3勝2敗で制し、決勝に進出した。
ReggioC3 (26-24, 26-28, 25-19, 25-17) 1Perugia
Perugia3 (25-22, 26-24, 21-25, 27-25) 1ReggioC
ReggioC3 (26-24, 28-26, 27-25) 0Perugia
Perugia3 (24-26, 26-24, 25-22, 25-23) 1ReggioC
ReggioC3 (25-22, 16-25, 27-25, 25-20) 1Perugia

Phone Limited Modena - Volley Vicenza
通常シーズンの成績あるいは直接対決の結果から言えば、Modenaがそれほど苦にする相手ではないと思われた。しかし、第1戦はVicenzaが勢いを見せた。第1セットはModenaがとるものの、第2,3セットは21-14と途中でVicenzaが大きくリードを奪い、結局そのまま逃げ切った。第4セットはModenaが序盤からリードを広げて奪い、試合は最終セットに突入するものの、その最終セットは途中10-4とVicenzaが大量リード。Modenaも猛然と追い上げたものの、わずかに及ばず、初戦はVicenzaがものにした。この試合でも勝利の立役者はメンショーワ。サーブレシーブを免除されてから3試合連続決定率50%オーバーをマークしている。それに加えウェールシンクも56打数28決定の大車輪の活躍を見せた。また、第1セット、サーブレシーブのミスのせいか、パッジが途中交代。代わりに本来レフトのウズノバが入った。そのウズノバも守り中心に役割をきっちり果たした(第1セットはグリンカがセンターという変則の布陣だったが、第2セット以降はウズノバがレフトでグリンカはセンターという本来のポジションに戻った。)。Modenaはフィップス・ゼトバの両エースはまずまず働いたものの、本来堅いはずのサーブレシーブが崩れたことも敗因の一つとなった。
しかし第2試合ではModenaがすさまじい爆発力を見せる。フィップスが18打数13決定など、チームのスパイク決定率実に69%、ゼトバの57%でさえこの試合では悪いほう。一方Vicenzaは3連勝の主役のメンショーワが完全につぶれ、一方的な敗戦となった。
第3試合は激しい打ち合いとなった。Modenaでは、ゼトバが決定率56%総得点は実に30、レッジェーリも決定率76%の完璧な仕事ぶり。それに対し、Vicenzaはメンショーワが息を吹き返し、さらにグリンカも揃い踏み、この2人が60%オーバーの決定率。ウェールシンクもそれに引っ張られるように得点を重ねた。しかし、Modenaは4セットでミスによる失点わずか9という信じがたい試合をやってのけた。また、この試合スパイクを同じ数打ったスーパーエース対決は、やはりゼトバの勝ち。これらがModenaの勝利につながった。
大型のアタッカーがいい形で打ちながらその上をいかれたのでは、Vicenzaにとっては何ともつらい。第4戦、第1セットは何とか競り合っていたが、ついにメンショーワが力尽きた。Modenaも、前の試合で大活躍のゼトバとレッジェーリは、疲れが出たのか不調。しかし、そこはもう1枚の大エースのフィップスで埋め合わせができる。結局は初戦をフルセットで落とした後は3連勝、Modenaが決勝に進出した。Vicenzaは前年を上回る準決勝進出を果たしたが、前年と同じModenaに行く手を阻まれた。
Vicenza3 (18-25, 25-22, 25-20, 19-25, 15-13) 2Modena
Modena3 (25-14, 25-13, 25-23) 0Vicenza
Modena3 (25-23, 25-22, 22-25, 25-21) 1Vicenza
Modena3 (25-22, 25-21, 25-19) 0Vicenza

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決勝

決勝はReggio-Calabria対Modena、通常シーズン1位と2位という最も順当な対戦となった。
これまで勝たなければならない相手ほどきっちり勝ち続けてきただけに、Reggio-Calabriaの優位は揺らがないと思われた。しかし、決勝は第1戦から意外な展開となる。Modenaはフィップス参戦以降はその対角に藩を先発することが多かったが、この決勝はパハーレを先発起用。それが正解で、第1戦もゼトバ・フィップスに負けない働きを見せる。一方、ReggioCは誰に打たせても全く決まらない。第2セット途中、ロル→Okrachkova、Ritschelova→蘇の選手交代に踏み切るも、かえって悪くなる一方。今シーズン初のストレート、それも3セットわずか53点で敗戦。
第2戦、ReggioCのアタッカーの不振はなおも続く。Ritschelovaはまずまずよかったものの、サイドアタッカーでかろうじて決まっていたのはルイザだけ。そのルイザにボールが集まるものの、ミスが多くなり満足な状況ではない。一方Modenaも決定率こそ高くはないものの相変わらずミスが少ない。そしてこの試合も第三のエースのパハーレがチームを引っ張った。第4セットは終盤にReggioCが追い上げたものの届かず、セットカウント3-1で、Modenaが連勝。ReggioCはいきなり窮地に追い込まれた。
第3戦はModenaのフィップスが不振。パハーレも第2戦までほどの勢いはなく、ゼトバ頼みのやや苦しい展開。一方ReggioCは、攻撃ではルイザとコスタ、フェルナンデスとRitschelovaのセンター線は2人でブロック12本と活躍した。さらに、第2戦までと違いミスの少ない試合を展開、6本のサービスエースも有効だった。試合はフルセットに突入したが、最終セットはReggioCにサービスエース2本、さらにModenaにスパイクミスが相次ぎ、ReggioCが一方的にとった。
第4戦は激しい打ち合いとなった。Modenaはフィップスとゼトバの両エースが打ちまくり、レッジェーリも好調。一方ReggioCはルイザが実に決定率65%をマーク、そのルイザとコスタを中心に迎え撃った。試合は第3セットまででModenaがセットカウント2-1とリード、スクデットまで1セットと迫った。第4セット、後がなくなったReggioCは、この試合不調のフェルナンデスを下げ、蘇立群を先発。この荒療治が効いたか、第4セットは中盤以降ReggioCが一気にリードを広げて奪った。最終セット、打ち合いはさらに激しさを増したが、結局ReggioCが2点のリードを保って逆転勝ち。Modenaとしては、途中16-11とリードしながら追い上げられ、26-24と逆転でReggioCに奪われた第2セットが痛かった。
勝てそうで勝ちきれない試合が2試合続くと、Modenaにとって最終戦は決していい雰囲気で迎えられたものではなかっただろう。この試合も、第1セットはModenaが終始リードで奪ったものの、この決勝の第1セットは全てModenaがとっている。第2セットは中盤までほとんど点数が離れない展開が続いた。しかし、終盤に入って21-17と一気にModenaが突き放し、2セット連取。第3セットも、序盤から中盤まではReggioCが先行する場面があったものの、17-16ReggioC先行からModenaが19-17と逆転する。そのまま21-19に至り、ついに優勝秒読み。この後Modenaは連続得点で締めた。ゼトバとフィップスの卓越した攻撃力に加え、中国から郎平監督を招き、ミスの少ないバレーも身につけたModenaがついに頂点に上り詰めた。
Modena3 (25-20, 25-19, 25-14) 0ReggioC
Modena3 (25-20, 20-25, 25-15, 25-23) 1ReggioC
ReggioC3 (19-25, 25-23, 25-18, 15-25, 15-8) 2Modena
ReggioC3 (18-25, 26-24, 18-25, 25-17, 15-13) 2Modena
Modena3 (25-18, 25-21, 25-19) 0ReggioC

今シーズンの表のMVPは間違いなくゼトバである。前年は、攻撃の中心はフィップスで、ゼトバはアタックでの得点は必ずしも多くない(注: 前年はサイドアウト制である)傾向があった。しかし、今シーズンは一貫して大黒柱はゼトバ。フィップス復帰以降もその立場は変わらなかった。まず特筆すべきは、通常シーズン・プレーオフ合計33試合123セット皆勤ということである。ブルガリアがワールドカップ・五輪予選など全て不出場という事情があるとはいえ、他のチームを見回しても休みのない選手などまずはいない。その中で1セット平均約6得点、イエリッチとほぼ並ぶリーグでも最高の得点力を示しており、しかもブロック・サーブも強力でブレーク得点が極めて多い。
さて、表のMVPはゼトバだとすれば、このプレーオフの陰のMVPにはパハーレを推したい。準々決勝第2戦のMateraとの試合でも第3セットから出場、流れを変えて、この試合を2セットダウンからの逆転勝ちに導いた。そして、決勝では第1戦からのスタメン起用が大正解。決勝での3試合の勝ち試合はいずれも絶好調、この選手の調子が上がらなかった2試合は結局勝てなかった。プレーオフのみのサーブレシーブのランキングでも2位に入っており、しかも大きな失敗が少ないことが際だっている。

もう一つModenaのチームの大きなトピックは、セッターである。今シーズン、このチームの正セッターをほぼ一貫して務めたのは、Karine Salinasというフランスのセッターである。
国際大会での実績などほとんどない選手を正セッターに大抜擢したのは、極めて驚くべきことである。キリロワ(ReggioC)・カッチャトーリ(Bergamo)・アゲロ(Perugia)・フレデルス(Napoli)と、このリーグで優勝を争うようなチームは、司令塔もそうそうたる面々である。それに比べれば、前年に正セッターを務めたマリノバでさえ、実績は目立たない部類に入る。
これは二つの意味で、とんでもない賭けだったと言っていいだろう。もちろんその一つは、カリーヌという選手の能力が定かでない、ということである。そしてもう一つは、マリノバをくさらせる危険が極めて大きいことである。前年のこのチームは、ほとんど全試合マリノバが正セッターだった。国際大会での実績もほとんどない選手が後からきて、その選手ばかり使われて自分の出番がなくなったとなれば、心中穏やかなはずはない。その選手が不満分子になれば、下手をすればチームの解体を招きかねない。
プレーオフでは、先発はカリーヌ、ピンチになったらマリノバにスイッチと、野球の継投にも似た起用法をとった。1試合ごとに見てもそれがしばしばあり、2試合ないし3試合先取のラウンドで見てもそうだった。決勝では、最初の2戦で二人を試した。第3戦・第4戦と決着をつけられず、最終戦に至り先発でマリノバを起用、ストレート勝ちで優勝を決めた。見事なリレーだったと言えるだろう。このリレーが機能するためには、セッターがどちらであってもほかのアタッカーがあわせられること(それだけの練習がきちんとできていること)に加えて、二人のセッターが自分の役割を完全に納得して務めなければならない。それができたのは、監督の力に他ならないと言えるだろう。
セッター2枚の使い分けの成功を見ると、Modenaの今シーズンの優勝が、郎平監督の指導力とフロントの力が実に一体となって達成されたものであったことがはっきりする。

今シーズンはバーバラがイタリアのチームに移籍したことで、前年までと違う見方でこのリーグを見てきた。そして、そのチームがセッターで迷走を続けたのを追ってきた一人としては、その差はあまりにも大きいと痛感するしかない。

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講評

優勝したModenaについてまとめたので、ついでにほかのチームについても一言ずつ講評したい。
なお、これを記している5月末現在、'99-00シーズンが終わった直後にしてすでに来シーズンに向けた動きが始まっている。ベテランエースのミフコバおよび大型センターのMarina Ivanovaが、NapoliからVicenzaに移籍することが発表されている。

Reggio-Calabria
今シーズンは昨シーズン以上に破壊力があり隙もない布陣、優勝大本命と思われた。実際通常シーズンは圧倒的強さで1位通過。それにしても、2年連続通常シーズンは1位、それも決勝2勝3敗で準優勝とは・・・今回の準優勝はトラウマになりかねない。

Perugia
後半は予想通りの強さだったと言えるだろう。しかし、キューバ抜きではあまりにも弱すぎ。序盤の出遅れの結果4位にとどまり、準決勝でReggio-Calabriaとの対戦となってしまった。Modenaとの相性は比較的よかったのだが。優勝を狙うには、キューバ勢の力およびキューバそのままのチームカラーにいかにプラスαできるかが課題となるだろう。

Vicenza
前シーズンから入れ替わりは多かったが、徹底した高さ重視の方針は変わっていない。ビッグネーム4チームあるいは5チームに比べると、やはり地味なメンバー、破壊力はそれだけ劣る。プレーオフ準々決勝でBergamoを倒したのは見事な戦いぶりだったと言えるだろうが、通常シーズンではサーブレシーブから崩れる試合が多かった。(前年はパハーレ・アダムスというエース対角、サーブレシーブはリーグ随一の堅さだった。)サーブレシーブの安定がまず第一の課題となるだろう。

Bergamo
ルイスが結局参戦しなかったこともあり、サイドアタッカーの決定力不足に悩まされたシーズンとなった。取りこぼしをしない伝統の力は通常シーズンでは十分に見られたものの、プレーオフではVicenzaによもやの苦杯をなめた。しかしこのチームがこのままの状況にとどまることはないだろう。

Napoli
シーズン序盤は予想以上に快調に滑り出したと思われたが、中盤から後半にかけては悲惨な状況に陥った。後半だけ見れば下位チームの成績である。おそらく、チームの体を成していなかったと思われる。結局セッターをめぐる迷走が致命傷となった。監督の選手起用に疑問が感じられた場面も多々あった。しかし、このチームにまず求めたいのは、どのようなチームを作りたいのかという一貫した思想である。97-98シーズンはフィップス・アダムスが高いところから打ちまくるチーム、98-99シーズンはイタリア・オランダ選手を主とした堅実なバレー、そして今シーズンはイエリッチ・レト・ベルティーニとサイドの破壊力重視に戻った。メンバーが入れ替わるだけでなく、チームの方針自体毎年これだけ変わるのでは、監督としてもチームを作れないだろう。

Matera
このシーズンは前年に比べると大型化を進めた。とはいえ、特にサイドの破壊力は、上位チームとは格段に劣る。それにもかかわらず、後半戦は6勝5敗勝点19という完全な上位の成績。上位チームを次々倒し一時は台風の目ともなった。各選手の個人能力だけではない、チームとしてまとまればこれだけできるというのを示したと言えよう。プレーオフでも、優勝したModena相手に立派な内容だったと言えるのではないか。

Palermo
選手起用が変則でわかりにくいチームなのだが、終盤のチームを見ると、アダムス・Ivanyuskinaなどかなり大型化指向のようである。サーブの破壊力もこのチームの特色だが、出来不出来の差が極端にあった。リーグ全体の戦い方としては、勝てる相手にきっちり勝って余裕を持って残留を果たした、という印象である。

Ravenna
最も目立ったところがないチーム。ベテランのNatalia Bozhenovaが攻守にわたり中心であることは変わっていない。来シーズンは思い切った増強なり入れ替えなりしないと、残留は難しいかもしれない。

Firenze
国際大会での目立った実績があるのは途中参戦のイスキエルドくらい、そのイスキエルドもセッター専任の起用。残留したこと自体が健闘といえるだろう。

Busto
Okrachkovaを引き抜かれたのが何と言っても致命的だった。Okrachkovaがいればサイドアタッカーは侮りがたい布陣だったのだが。

Reggio Emilia
前シーズンから攻撃力不足が顕著だったが、このシーズンはそのメンバーからさらにソーシー、ベチェバが抜け、センターのレマーティもフル参戦はできなかった。いったい誰が攻撃するのか?これでは降格もやむを得ない。

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