疲れた そして、ひとりっきりだ。 疲れはてて、 気が滅入るほどだ。 岩間には 雪溶け水がたばしる。 指はしびれ、
膝がふるえる。 いまこそ、 いまこそ、手を緩めてはならぬ。
ほかの人たちの行く径には 陽が当たる 休み場所があって、
そこで仲間どうし出会う。 だが、ここが おまえの道なのだ。 そして、いまこそ、 いまこそ、裏切ってはならぬ。
すすり泣け。 できるものなら すすり泣け。 だが、苦情は洩らすな。 道がおまえを選んでくれたのだーー ありがたく思うがよい。 (ダグ・ハマーショルド 鵜飼信成訳『道しるべ』より)
1961年9月17日、国連総長ダグ・ハマーショルドの搭乗した飛行機が墜落し、乗員全員が死亡した。 後日、彼が残した「心の日記」が見出され、「道しるべ」として世に出された。 ダグ・ハマーショルドは優れた指導者だったが、人が真に指導者たりえようとするとき、それは孤独なものなのだと、この詩を読むとそれがひしひしと感じられる。世界を導くという仕事は孤独なものだ。この孤独に耐え得る人でなければ指導者たり得ない。 この孤独に耐え得る力はどこからくるのだろうか。信念、いやそれは深い人間に対する思索、そう信仰によってしか得られないように思う。 今の指導者たちを見たとき、彼のような「孤高の存在」であり得るような人は見つからないように思う。 私はそれほどの重荷を背負ったことはない。しかし、自分の能力を超えると思はれる荷物を背負はされるという経験をさせられた。しかし、そんな軽い荷物にさえ挫けてしまった。この詩を何度読み返したことだろう。でも、障壁を克服はできなかった。 だが『道しるべ』は語りかけてくる。全てを委ねて人生を生き抜く力を得ることの術が何なのかを。
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