多文化社会における教育U

- The Diversity Education in Japan -

97/03/01 04:50:50


アメリカにおける事例考察:

(このページは東京大学大学院の藤村先生の講演をもとに作成しています)

  • アメリカにおける移民の変遷: 人口移動を生誕国別にみた外国生まれの人口で見る(抜粋)

  •  *増減=激増◎、増○、減△、激減×。 

    出生国 外国生まれ総数
    1970年 1960年 1930年 1910年 1890年 1870年
    1)北西ヨーロッパ圏 △1,536,722 ×1,973,025 △3,728,050 4,239,067 ○4,380,752 3,124,638
    2)中央及び東ヨーロッパ圏 △2,811,094 ×3,717,907 △5,897,799 ○6,014,028 ○3,420,629 1,784,449
    3)南ヨーロッパ圏 △1,343,510 ×1,528,473 ○2,106,295 ◎1,525,875 ◎206,648 25,853
    4)その他のヨーロッパ圏 ○20,700 △14,327 16,255 12,871 ◎12,579 1,678
    5)アジア圏

    中国

    日本

    インド

    韓国

    フィリピン

    ◎824,887

    ◎172,132

    120,235

    ◎51,000

    ◎38,711

    ○184,842

    ○499,312

    ◎99,735

    ○109,175

    ◎12,296

    11,171

    104,843

    ○275,665

    △46,129

    70,993

    5,850

    -----

    -----

    ◎191,484

    ×56,756

    ◎67,744

    ○4,664

    -----

    -----

    ◎113,396

    ◎106,701

    ◎2,292

    ◎2,143

    -----

    -----

    64,565

    63,042

    73

    586

    -----

    -----

    6)アメリカ圏

    キューバ

    メキシコ

    中央アメリカ

    南アメリカ

    ◎2,616,391

    ◎439,048

    ○759,711

    ◎315,460

    ◎255,238

    △1,860,809

    ◎79,150

    △575,902

    ◎48,949

    ◎89,536

    ○2,102,209

    18,493

    ◎641,462

    ◎10,514

    ◎33,623

    ○1,489,231

    ◎15,133

    ◎221,915

    1,736

    ○8,228

    ◎1,088,245

    -----

    ○77,853

    ◎1,192

    ○5,006

    551,335

    5,319

    42,436

    301

    3,566

    7)その他

    アフリカ

    ◎465,998

    ◎61,463

    ◎144,245

    ◎18,737

    ○77,876

    ◎8,859

    ○43,330

    3,992

    ○27,311

    2,207

    14,711

    2,657

    *NOTES

    1){イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド、アイルランド、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、アイスランド、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、スイス、フランス等}

    2){ドイツ、ポーランド、旧チェコスロバキア、オーストリア、ハンガリー、旧ユーゴスラビア、旧ソ連、フィンランド、ルーマニア、ブルガリア等}

    3){ギリシャ、イタリア、スペイン、ポルトガル等}

    5){シリア、アジアトルコ、パレスチナ等もこの圏に属す}

    6){カナダ、西インド諸島等もこの圏に属す}

    7){オーストラリア、太平洋諸島等もこの圏に属す}

    (Reference:「アメリカ歴史総計」原書房)

     

     

  • 1930年からヨーロッパ圏からの移民が減少していることに気がつく: これは1924年の「移民禁止法」制定によるものである。
  •  

  • 1960年から1970年にかけて「アジア圏」「アメリカ圏」を中心に爆発的に移民が流入しているのが分かる: これは1965年の「新移民法」制定によるものである。
  •  

  • 1970年には「アジア圏」の中でも「中国・韓国・フィリピン」からの流入が著しいのが分かる。
  •  

  • また、「中央アメリカ」「キューバ」「南アメリカ」からの流入も著しいのが分かる。
  •  

  • 日本は1960年から1970年にかけてよりも、それ以前の明治後期から大正にかけての移民が多く、その当時の近代国家を目指した政策が読みとれるようで、先代の偉大さを感じる。
  • 表には現れていないのだが、1965年から爆発的に流入してきた「中国・韓国・フィリピン」「中央アメリカ」「キューバ」「南アメリカ」からの移民者が定住した地はカリフォルニアが多い

    そして、ここで考えたいのが ESL 教育としての対象の移民者である。当然彼らが市民権を得るためには一定の年数の居住と ESLのテスト等の条件がある程度ある。つまり ESL 教育がこの1965年を皮切りに本格的に始まったと言っても過言では無い。その ESL教育の対象となっていたのは「中国・韓国・フィリピン」「中央アメリカ」「キューバ」「南アメリカ」からの移民者である。

    ESL教育というのは移民の彼らが市民権を得えられるような日常会話に支障が起こらないための言語教育でもあったと言えるかもしれない。

    因みにそのころの言語学者の書いた有名なESL関係の書物が、現在の日本の英語教育に良く引用されていることが多いのではないだろうか。 Wilga.M.Rivers の引用が学会等でもあるが、彼女は1960年代初頭から始まり70年代に活躍した学者である。私も大学でやったN.Chomskyもしかりで、70年代の言語学者であり、未だに引用されている。理論が真理ならば新しい古いに全く関係ないが、仮にその研究対象が全く日本人にゆかりのない状況の人たちであったならどうなのだろう。今から30年も昔の理論が現在も日本でまかり通っているのである。だからといって新しい理論はこれっといって出てきていないのかも知れない。というよりは出す必要性が当のアメリカにおいてなくなり、言語学の分野が廃れているのかも知れない。現在アメリカ本土の学者よりもヨーロッパ方面の言語学者の方が活躍しているように見えるのは私の錯覚、間違いだろうか。

    要するに私が言いたいのは、30年も前の理論も参考になるがそれよりも、「日本人向けの外国語学習法の確立をした方が良いのではないか」ということである。しかも、現時点での学習者のニーズにあったもっとも環境に適した方法で。因みに日本向けの研究団体に JALT があり、日夜研究されているとは思う。80年代になってS.Krashenの"The Natural Approach"を中心にCLTが日本で流行っているが、本当にあのやり方で中学生にとってトータルな英語力はつくのだろうか。生徒へのアンケート調査では大半が「英語で話をしたい・話すことは楽しい」という回答になるが、そのまま「話す英語」中心で将来的に役に立つ英語力につながるのだろうか。コミュニケーション活動は確かに教室を生徒が information-gap 等のゲーム形式で動き回り、楽しいので私もどんどん取り入れていきたいとは思うが、ふと「これで本当に力は着いていくのか」心配になることがある。。。。。本当に簡単な英語を話せるだけで良いのだろうか。聞けなくても話せれば良いのだろうか。とにかく話すことが第一優先なのだろうか。まったく疑問である。最近あくまで私個人として、そうではないという結論に至っている。

    本題とははずれるが、常識で考えてみても週3時間で中学から初めて英語を始めた生徒があれもこれもできるはずがない。何かに的を絞らざるを得ないだろう。しかも、中学生は英語がどんなに好きでもそればかりやっている訳ではないし、他にもやるべきこと、やらされることが山ほどある。環境的にも英語を第一優先するべき理由が無い。英語を実際に使用する場が日常生活に無いのである。Native/早期/時間量/英語量がもっとも英語習得に良いのは周知のことである。しかし、現状では中学生にやることが多すぎると同時に、時間とゆとりが無いのである。おまけに学校行事で授業間隔が大きく隔たれば隔たるほど、習得などあり得ない。"学習"に頼るしか無く、そうなると「構造言語学」であり、パターンプラクティス/文法指導ということになってしまう。


    多文化社会アメリカにおける成人・継続教育

    〜カリフォルニアのESLの在り方を考える〜

    (Adult and continuing education)

  • アメリカにおいて成人・継続教育とは、義務教育年齢を過ぎた成人のためのあらゆるレベルの教育を指す。

  • レベル:

    1. adult basic education: 識字教育、基礎教育

    2. adult education: 中等教育レベル

    3. continuing education: 中等後教育レベル

    4. continuing higher education: 高等教育レベル

    5. continuing professional education: 高等教育レベル

  • 地域住民のための教育を目指した機関−コミュニティ・カレッジ

  • コミュニティカレッジとは:アメリカにおいて公立の2年生の短期大学の総称である。コミュニティカレッジ学区に居住する住民を主な対象とし、普通教育と職業教育の総合的なカリキュラムをもち、Open admission制をとる。(無試験入学)。短期大学(高等教育機関)として以外に、成人・継続教育機関としての性質ももちあわせ、補習教育や成人の継続教育の他、地域社会サービスも行っている。

  • Pasadena City College
    カリフォルニア州のPasadena Area Community College District(ロサンゼルス郡のArcadia, El Monteの一部、La Canada Flintridge, Pasadena, Rosemead, San Marino, South Pasadena, Temple City の8地域から構成)のコミュニティ・カレッジ。1928年に創立。カリフォルニア州とという人種構成の多様な地域に位置するため、宅制の人種構成も多様である。
     
    人種構成:
    Native American: 1%

    Asian: 22%

    African: 8%

    Filipino: 3%

    中南米: 22%

    白人: 41%

    他: 3%

    教育機能:
    ・短期大学としての正規の学校教育、1)教養教育(社会に生きる個人として必要な知識、態度技能に関連した教育) 2)職業教育(地域の企業と共同した人材育成の教育) 3)編入教育(4年制の大学・カレッジへの編入のための教育)

     

    成人基礎教育:
    ・基礎的なコミュニケーション、読解、算数

     

    成人・継続教育:
    ・Continuing Education部:: 学位とは関係なく、単位のない講座 ・Community Skills Center: 職業訓練講座、不法移民の人にも教育を与える→市民権を得るため。

     

    Pasadena City College における成人・継続教育:
     
    ・Office of Continuing Education:
    受講料無料、開講場所は、図書館、教会、病院、老人センター等。講座は、市民教育・地域開発・コンピューター・ ESL ・親の学級の4つ。講座には社会福祉的色彩の濃いものが多い。
     
    ・Community Skills Center:
    Pasadena City College , パサディナ統一学区、パサディナ市との合意で1980年に敷設された職業訓練機関で、中等教育レベルの職業技能訓練を主な目的にしたもの、受講料なし。多くの不法入国者や失業者も受け入れ、まさに多文化社会アメリカの特色が色濃く出ている。講座はAmericanization, ビシネス、市民教育・地域開発、ESL 高校卒業資格所得コースの5つ。
     
    ・Community Education Office:
    Pasadena City College の短期大学としての機能とは完全に分離した機関で、独立採算制をとっている。(受講者の受講料で運営)。いわば、「受益者負担の公立のカルチャーセンター」であり、地域住民にとって身近な学習の場。知識・技能習得型よりも趣味・教養型の講座が多い。

     

    University Extension(比較的高学歴者の継続教育を目指した機関−大学拡張部−)
    大学拡張:
    大学が若者だけでなく、広く成人市民を対象としてその教育を拡張する事。近代的大学拡張の起源は19世紀イギリスのケンブリッジ大学にさかのぼる。アメリカには19世紀後半にイギリスにおける大学拡張の動きが伝わったが、教養教育中心のイギリス型大学拡張運動はまもなく衰退し、20世紀に入りウィスコンシン大学を中心に、住民の生活課題解決能力の形成を目的としたアメリカ型の大学拡張運動が盛んになり、今日に至る。アメリカでは大学に Extension Division をが敷設され、継続高等教育行っているところが多い。その対象は高等教育のニーズを持つ社会人であり、前述のコミュニティカレッジよりも受講者の比較的高学歴が目立つ。
    UCLA Extension:
    UC Extension の(カリフォルニア大学拡張部。。。1891年設立)の機構の一つ。当初は潜在的な大学入学者に大学入学のための準備教育を行うことを目的としていたが、1950年代以後、その使命を地域社会の開発とするようになった。すなわち今日 UCLA Extension は地域社会で働く人々に職業教育を行う継続教育機関としての役割を担っている。1965年、Higher Education Actが設立してから10数年は州の予算からの援助も受けていたが、1976年以降は州からの援助は切れ、独立採算制をとるようなり、現在に至る。現在年間の講座数は4000を数え、10万人が少なくとも1つの講座に登録し、登録者は延べ12万人にのぼる。
     
    教育プログラム:
    UC Extensionは4学期制(春夏秋冬)をとり、各学期毎に講座単位で登録する。1つの講座はおよそ10回。受講料は講座によって様々。会計や経営に関する基礎講座の場合は、12〜15回で $250前後となっている。Pasadena City CollegeのCommunity Education Officeの講座に比べて受講料は高い。また、ESLのような講座は開講数が少なく、実用的かつ高度な専門教育講座が多い。

    人種構成:

    白人:: 85%

    中南米:: 3%

    アジア系:: 6%

    African:  3%

     

    その他:「民衆学校」Highlander Folk School:
    生活課題を抱えた民衆の学習の場

     

  • Pasadena City Collegeのように、移民者だけでなく不法入国者にたいしても成人教育を施す機関があり、そこでは技能習得教育が中心である。まさにアメリカで市民権を得て、生きていくための教育と言っても過言ではないだろう。
  •  

  • そこではカリフォルニアを中心に移民してきた「アジア系」「Hispanic系」が中心ESL等を学んでいる。しかも、完全な技能習得として、訓練校的にである。
  •  

  • ここで日本のEFLを考えてもらいたい、私たちは完全に「技能」としての英語で本当に良いのだろうか。Academicな内容として言語学的アプローチが無くて良いのだろうか。日本で「英語が生きていくために必要なのだろうか」。もし、答えがNoであるなら、日本の英語教育はESL理論中心では多少ない方が良いのかもしれない。EFLも日本独自の形があって良いのだと思う。大学まで文法づけにされた学生は文句を言いながらも、努力の結果、海外留学なくして流ちょうに英語が話せているものがいる。確かに回り道をしてしまったかも知れないが、結局努力次第で流ちょうになってしまう。不可能ではない。これは日本の学生の基本的な思考力や能力が高いためではないだろうか。私は決して英語が流ちょうにしゃべれないからと言って卑下することは全くないと感じている。生きていくために英語が必要ないこの環境は自慢できるものである。母国語の影響が強いのは恥ずべきことなのだろうか。私は考えようによったら、母国語を忘れない教育をしている国があるのに対して日本はほんとうに裕福で、発達した国だと思う。英語が下手というのは、この裕福さ故の贅沢な悩みなのかもしれない。こんなことを言っていると英語の教師としてお怒りを買ってしまうが、当然英語が下手と馬鹿にされるのは嫌だから、日本人として卑下するのではなく、自信を持って独自の英語学習法を産み出すことを提言したいと思っている。教育活動全体を良く考え、今まで通りの理数系の力を損なわないよう限られた時間の中で、多少理論が入っても良いから独自の"学習"法を見つけていってもらいたいと私は思う。
  •  

  • UCLA Extension等では高度な学習を行い、そこではESL等が行われず、教養としての成人学習が行われている。そして、そこに通う人種も白人が圧倒的である。
  •  
    To be continued..............

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    An example of the Diversity education in U.S.

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