私トリケラ奥さんです。私タマゴ生みます。タマゴ可愛いトリケラの赤ちゃん生まれます。可愛いトリケラ赤ちゃん生まれるタマゴ盗むやついる。盗んで食べるやついる。私絶対許しません。私タマゴ守ります。私盗まれたタマゴ取り返します。「もう奴に食べられてしまっていたらどうする」、と「ガイガー」言います。難しいことわからない。でも、タマゴ食べる奴、またタマゴ盗む。何度も何度も何度も何度も盗む。決着つけます。決着つけないトリケラ滅びます。「目玉」コモドオオトカゲ怪しい、いいました。怪しい思う、私、同じです。コモドオオトカゲふんずかまえて決着つける。タマゴ盗むコモドオオトカゲ悪い悪い。殺します。
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「わしは見た。火を吐くコモドドラゴンを見たのぢゃ」と、町役場の助役、ハンニバル寺尾3世が言った。「あれは月夜の晩ぢゃった。わしの家の隣のガソリンスタンドを経営してをるロバート、こいつはロバート関根4世と言うてわしの幼なじみのメアリルイス加瀬7世の息子ぢゃ。このメアリルイスは昔、ジョン谷口5世と仲が良かったんぢゃが、ジョンは酒癖が悪くてのぉ。ある日、あれはもう30年も前のことぢゃが、ジョンは酔っぱらって海岸を歩いておって... ん、どうかしたかね?」「いらいらいらいら」と、ニコモ橘が日本語でつぶやいた。「いや、それで火を吐くコモドドラゴンはどうしたんです? いやいや、それも本当はどうでもいいのであって、要するにコモドドラゴンは、どこにいるんですか?」「その話ぢゃ。つまりジョンは酔っぱらって海岸を歩いておったので、自分の足がドラゴンに食われたのに気がつかなんだのよのぉ。コモドドラゴンは海岸におったのぢゃ。今でもおる」「30年前のドラゴンが、ですか?」「おる。これは大年寄りのドラゴンで、名前を雷竜太とゆ〜ての。非常にたちの悪いドラゴンぢゃ」「ほほう。たちが悪いというと、ひょっとしてタマゴを盗んだりしますか?」「盗む。よ〜け盗む。イタチのような奴ぢゃ」ニコモ橘は立ち上がって「そのドラゴンは、今どこにいますか?」「南海岸に夫婦ガ崎というのがある。燈台のある岬ぢゃ。この岬には、もう270年も前の話ぢゃが、実に悲しいエピソードがあってのぉ」「その岬に行けば雷竜太に会えますか?」「運が良ければ会えるぢゃろう。赤外線暗視カメラは持ってきたかな?」「へ?」ニコモは驚いて「夜じゃないと出現しないんですか」「だって、おまえさんたち日本のテレビ局は必ずテントを張って、必ず赤外線暗視カメラを設置して、必ず夜通し見張るんぢゃろうが」ニコモは、やや憤然として寺尾じいさんをにらみつけ「昼間はいないんですか?」「朝夕は岩の上でグウタラしておるし、昼間は海で泳いでおるから絵にならんぢゃろ」ハンニバル寺尾は平然と答えた。「これで終わりかな。じゃあ、プロデューサーを呼んでくれんか。カネの話があるでの」
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©Kunio Yoshikawa 1996,2004