40題 在日朝鮮人は外国人である

止めても止まらぬ同化の流れ

在日朝鮮人の同化についての動向を示す客観的データはどういうものがあるか。在日子弟約12万人のうち日本の学校に通う者10万人以上と大多数を占めること、本国生まれの一世の割合が全体の1割になったこと(以上は1985年の推計)、80年以降毎年6千人以上が日本に帰化していること、帰化を考えながら帰化申請に至っていない人はその数倍もいるだろうこと、75年以降日本人との結婚数が朝鮮人どうしのそれを上回っていること、北朝鮮への帰国者数は60・61年の2年間で約7万2千人であったが、その後減少し85年以降は6年間で10人も満たないこと等々で、それらは在日の同化傾向を裏付けるものである。(以上の数字は平凡社刊『朝鮮を知る辞典』他から)

 いま在日朝鮮人は、北朝鮮でも韓国でもいつでも自由に帰国することができる。しかし、本国への帰国を考える在日はほとんど全くといっていい程いなくなっている。そして本国の親族や宗族とも交流のない在日が多くなっている。韓国に留学した若い在日は、自分の本国なのにその国のことを喜々として語ることがなく、北朝鮮に親族訪問した在日は実に口が重い。

 本国と切れた存在であり、また日本文化を享受し日本の言葉・習慣・感覚そして価値観を身に付けていっている在日の現実の姿を見ると、彼らが同化していくのは自然の流れであり、止めても止まらぬ流れであると思う。

 同化してはだめだ、民族性の確立を、と口では叫んでも、身体は同化の流れに乗っている。日本政府が同化政策・同化攻撃を行なっていると主張する人もいるが、日本政府は何もそんな努力をしなくても、在日の方から同化していっているのである。彼らと日本人との違いは国籍のみで、内実は日本人そのものという状況になりつつあるのである。

 近頃在日たちが、公務員の就職のすべての門戸を開けとか、在日外国人にも参政権を与えよ、という運動を進めていることがマスコミに報道されるようになった。どう考えても彼らの運動は、徹底した日本志向あるいは限りなく日本人に近づく運動であり、帰化すればすべてが解決する問題である。そこまで主張するのなら、外国籍であることの意味は一体何なのであろうか。

 

しかし在日朝鮮人は外国人である

在日朝鮮人の国籍について、日本政府の立場からいうと次のようになる。1910年の日韓併合によって朝鮮が日本の植民地となったので、朝鮮人は対外的にはすべて日本国籍を有することになった。第二次世界大戦では日本はポツダム宣言を受諾して終戦となったが、その宣言のなかに朝鮮の独立が謳われており、日本は朝鮮の独立を認めた。朝鮮の独立により朝鮮に住む朝鮮人の国籍は日本国籍でなくなり、在日朝鮮人のそれについては一応外国人として扱った。戦後の日本は敗戦国として占領軍支配下にあったが、52年に講和条約を締結して独立国として世界に認められることにより、在日朝鮮人は正式に外国人となった。在日朝鮮人が外国人として扱われることについて、本国の韓国や北朝鮮政府だけでなく在日朝鮮人自身からも異議はなかった。

 朝鮮の方の主張は次のようになる。1910年の日韓併合は暴力と脅迫により強制されたものであり、無効である。その後36年間にわたる植民地化は全くの不法不当である。従ってその時の朝鮮人は日本国籍を有していたと見てはならない。朝鮮人は一貫して朝鮮・韓国籍を有していたのだ。

 対立点は、日韓併合・植民地化が合法正当だったのか、不法不当なものだったのか、ということである。すなわち日本は合法正当だから日本国籍を持っていた、朝鮮側は不法不当だから日本国籍は最初からない、となる。

 65年の日韓条約締結までの日韓交渉で、最も対立し紛糾した一つがこの点(合法か不法か)であった。いま日本は北朝鮮と国交樹立に向けて交渉中ということになっているが、北朝鮮もこの点については韓国と同じ見解であるので、いずれ同じように対立することになろう。

 植民地下とはいえ自分は日本国籍をもって生まれ育ってきた、日本国籍を放棄した覚えはないと主張する在日が70年以降現れた。これはさらに、日本は敗戦の際に在日朝鮮人に朝鮮と日本の国籍を選択する権利を与えるべきだったのにそうしなかった、在日は日本国籍を剥奪されたのだ、という主張に繋がっていく。そしてその考え方の前提は、植民地化が合法正当であったとする日本政府の立場と同じであることに注意が必要である。

またこの日本国籍剥奪論は、その考え方が正しいとしても今や遅きに失する。終戦直後の日本が連合軍の占領下にあった時に、在日朝鮮人が外国人であることは当事者自身が主張したのだ。正確に言うと、在日朝鮮人はアメリカやイギリス・中国と同様の戦勝国民(連合国民)として扱え、敗戦国民(被占領国民)である日本人と同じにするな、というものであった。つまり日本国籍を維持したいという意見は全くなかったのである。

在日朝鮮人が外国人であることは認めなければならない。そして外国人が内国民より不利な取り扱いを受けることは、世界のどの国でも行なわれていることで、従って不当なことではない。在日も外国人であるが故に、日本人よりも不利であることは当然のことである。問題があるとすれば、その不利なことが合理的なものかどうか、人間としての尊厳に触れるものかどうか、ということであろう。

(つづく)

 

(追記)

 これは拙著『「民族差別と闘う」には疑問がある』(1993自費出版)の一節の再録。10年ぐらい前のものなので、同化についてのデータがかなり古いものとなっています。しかし、趣旨は今でも有効なものと考えています。

なお同化については拙論第19題「消える『在日韓国・朝鮮人』」にあるように、同化の速度がさらに速くなっていっているのが現状です。

 

(参考)

国籍選択と強制退去 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/06/15/405667

国籍剥奪論 http://tsujimoto.asablo.jp/blog/2006/07/15/445780

 

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