第60題 「日韓条約」小考
日韓条約で過去の歴史はすべて解決した
日本と韓国の間における過去のことについての請求権は、日韓条約(1965年締結、批准)で「完全かつ最終的」に解決したことになっています。また国としても個人(法人を含む)も、過去のことについて相手には請求できないこととなっています。
つまり、韓国側はかつての植民地時代に発生したすべて請求権を放棄し、日本側は韓国に残してきた財産や日本漁船拿捕の補償等の請求権を放棄することとなりました。
従って、いわゆる従軍慰安婦や強制連行されたと称する韓国人たちが日本に補償要求するのは、すべて条約に反することになります。
条約における韓国の位置付け
ところで同条約において、第3条は、
「韓国政府は国連総会決議第195号(V)に示されている通りの朝鮮にある唯一の合法的政府であることが確認される。」
とあります。
それでは国連決議第195号(V)はどういうものか。長くなりますので、その要旨を当時の日本の国会議事録(昭和40年10月29日)から引用しますと、
「朝鮮半島の一部、そこに有効な支配と管轄権を及ぼし得る政府ができた、この政府は、その住民の自由な意思の表明によって選挙を行なって、それに基づいてできた政府である。で、朝鮮全体を見渡してかかる政権は唯一の合法政府である」(椎名外務大臣の答弁)
というものです。
分かりやすく言いますと、1948年に国連は朝鮮半島全体の自由な選挙をしようとしたが、北朝鮮を支配していたソ連がこれを拒否した。そこでやむなく南朝鮮だけの選挙を実施して、大韓民国という政府が成立した。朝鮮半島全体をみて合法的政府と言えるものは、今のところこれだけである、というものです。
もっと分かりやすく言うと、当時国連が有効に支配できた半島南半部では合法的政府はできたが、北半部については知りません、というものです。
両国の解釈の違い
日本政府は日韓条約を締結するにあたり、相手の韓国をこの国連決議通りの解釈で認める、という立場を崩していません。しかし韓国側は、我が政府は朝鮮全体を代表するものと認められた、と解釈しています。
このように両国で解釈の違いがあるまま、日韓条約が締結されました。
日本の立場から言うと、南半部では過去のことは清算した、しかし北半部についてはこれからの課題である、ということになります。
一方の韓国の立場では全朝鮮の唯一の代表である我が政府と条約を結んだ以上は、北半部についても過去のことは解決した、ということになります。
韓国は解釈を変えた
2002年9月に小泉首相と金正日委員長とが署名した「日朝平壌宣言」では、日本は北半部では未解決であるという立場を崩さず、過去のことについては経済協力としてお金を渡すこととしました。それは賠償ではなく経済協力として渡すものですが、これは日韓条約と同じ内容となります。
韓国民は日韓条約を締結した朴正熙大統領の時代でしたら、自分こそが朝鮮半島の唯一の正当代表者なのだから、このような宣言に大反対したでしょう。しかし先の金大中大統領が北朝鮮を対等なものと認めたので、唯一代表者だという考えを変更し、宣言に賛成しました。
これからのことになりますが、解決したはずの過去の歴史にいつまでもこだわる韓国は北朝鮮に、日本からもっとお金を取れと応援することになるでしょう。
(追記)
あるHPに投稿したものの再録。一部改変。