第22題 日本史の特徴

 日本史の最大の特徴は何か。それは国家史、民族史、地域史という三つの歴史が、千数百年の長きにわたってほぼ重なるということである。「ほぼ」と言ったのは、沖縄と北海道では近代より以前において重ならない部分があるためで、他は全く重なると言ってよい。

 このような歴史を歩んだところは世界でも珍しい。ある地域を取り出して歴史を叙述しようとしても、そこにはいろんな民族が次々と移動して来たり、出て行ったり、また独自の国家が作られたかと思うと、強大国の一部となったり‥‥という歴史になってしまう。

 具体例で言うと、今深刻な紛争がおきているバルカン半島のセルビア共和国内のコソボという地域の歴史の略述を引用すると、

 

もともとコソボは12世紀末にセルビア人がセルビア王国を建国した土地だった。しかし、1389年にオスマン・トルコに攻め入られ、トルコ領となる。キリスト教徒のセルビア人には人頭税がかけられ、彼らは1718世紀になるとオスマン帝国の圧政から逃れるため、ハンガリー南部やウクライナ地方(現クロアチア領)へと移住していく。その後、人口の減ったコソボにトルコはアルバニア人を移住させたのである。

 

 つまりコソボの地域史は、この800年の間にセルビア・トルコ・アルバニアという三つの民族と国家が複雑に入り組んでいるのである。それ以前の歴史が不明であるが、おそらく東ローマ帝国、ギリシア、マケドニアなどの諸国家や諸民族が入り乱れていたことであろう。地域史と民族史と国家史とが全くのバラバラなのである。

 そして全世界においては、このように歴史がバラバラであるのがほとんどであって、日本のように三つの歴史が千数百年もの間、ずうっと重なるというのは非常に珍しい例なのである。アジアにおいては日本以外では、お隣の朝鮮ぐらいであろうか。

 日本史において民族や国家を論じるにあたっては、国家史と民族史と地域史という三つの歴史が重なるという特殊性に留意しなければならない。そうでなければ、世界に通用しない民族論、国家論になってしまうだろう。

 

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