56題「朝鮮」と「韓国」

 拙論において「朝鮮」というのは、朝鮮半島において神話を含めて悠久五千年の歴史を受け継ぐ民族の総称としての「朝鮮」であり、「韓国」というのは戦後朝鮮半島南部に成立した大韓民国で、朝鮮民主主義人民共和国はいまの日本の通例として「北朝鮮」としました。したがって「朝鮮人」というのは北朝鮮および総連系の人を意味するのではなく、朝鮮民族(韓国では韓民族という)を意味します。

 このような断り書きや凡例は、拙論だけでなく韓国・朝鮮関係の本によく見られるものです。なぜこのようなことを書かねばならないのか、いつも疑問に感じています。

 「韓国」を使うか「朝鮮」を使うかでその人の立場が判明するという時代がありましたし、今もそれを主張する人がいます。これを避けるために「韓国・朝鮮」と並列する言い方もありますが、自分の民族の呼称をこのように混乱させたのは、南北の厳しい対立を続けた両政府と、その代理戦争を日本の国内で繰り広げた総連・民団というそれぞれの民族団体に第一番の責任があるといえます。自民族を「韓」「朝鮮」「高麗」「コリア」‥‥どう名付けるかは自らで決めてもらうしかないものです。

 韓国の金大中大統領が北を訪問して南北和解が図られていますが、民族呼称の統一を議論して決定してほしいものです。

 それまでは従来の例のとおり民族全体の呼称は「朝鮮」を使い、韓国という国家あるいは半島南部に関わる場合は「韓国」、朝鮮民主主義人民共和国という国家あるいは半島北部に関わる場合は「北朝鮮」を使っていきたいと思います。

 

(追記)

 かつて書いたものの再録です。

 

(追記)

 韓国は建国後間もない1950年1月6日に「国号および一部地方名と地図色の使用に関する件」(大韓民国国務院告示)のなかで次のように定めました。

 

我が国の正式国号は「大韓民国」である。しかし。使用の便宜上「大韓」または「韓国」という略称を使用することが出来るが、北韓傀儡政権との確然たる区別をするために「朝鮮」は使用してはならない。

 

 これに基づき、韓国は日本に対し外国人登録上の国籍欄を「韓国」に変えるよう求めました。そして韓国政府はこの欄が「韓国」である者のみに在外国民登録を許し、日本はその者のみに1965年の日韓条約上の協定永住を認めることとなりました。

 つまり、国籍欄の表示が二つに分かれたのは、在日側の主体的な運動ではなく、本国政府およびその代理をした民族団体の運動の結果だということです。

 韓国政府はこの考えを今も維持しており、在日の外国人登録に「韓国」と表示されていなければパスポートを発行しません。

 以上のような経過はともかく、国名表示の混乱は朝鮮半島の本国政府側に全面的な責任があるものです。

2005年10月26日記)

 

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