トラフィック

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　メキシコとアメリカを結ぶ大規模麻薬密売ルート「トラフィック」。
　立ち向かうは、麻薬撲滅を目指す行政官、メキシコで麻薬と戦う刑事。一方、夫を麻薬密売で逮捕された妻。さまざまな人物が交錯し、「麻薬」に翻弄される社会派ドラマ。
　アメリカの高校生にまではびこる麻薬の脅威。刑事たちは命がけでルートを探る。ハリウッドは「インサイダー」にしても、こういう強大な組織に立ち向かうヒーローを描くのがとても上手い。本作は、派手なアクションやサスペンス、といったオマケは抑え、リアルな人間ドラマを描ききることに徹した。結果、アクションに若干の弱さを残しつつも、特有のスタイリッシュでテンポのよい映像で飾られ、２時間半、たっぷり飽きさせずに魅せる。
　これを教育映画的な見方をするのはあまりにも、もったいない。これは一級のエンターテインメントである。しかも観客に一定のレヴェルを要求する適度な緊張感がたまらない。
　キャメラはシーンによって黄色や青の映像を交錯させ、場の雰囲気を盛り上げる。インサイダーやダンサー・イン・ザ・ダークよろしく手持ちカメラが、ドキュメンタリー的リアルさを演出している。音楽もシンセを駆使した神秘的なもの。
　メキシコ人に扮したベネチオ・デルトロの演技も見物。ストーリーをほとんど彼の濃い顔で持っていってしまう。
　実際、これだけの大作をまとめ上げたソダバーグのバイタリティには、敬服する。