ハリケーン

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　無実のボクサーが、その自伝によって心動かされた少年によって、長い刑務所生活から晴れて自由になるまでの苦難と友情の物語。
　まさにデンゼルワシントンの真骨頂。野性的なボクサーからインテリになった姿まで、等身大で演じきる。実話であることと、彼の説得力ある重厚な存在感で、圧倒的なリアリティを醸し出している。まさに現代の「巌窟王」。彼を投獄した検事や判事の権力構造、黒人人種差別の吹き荒れる60年代の社会的背景、ハリケーンの幼年期の劣悪な環境、ハリケーンの精神を解放した「知」、ハリケーンのカリスマに魅せられた人々など、複雑にからみあう要素一つ一つが、ハリケーンという人間を強く強くしていく。それをデンゼルが魅せる魅せる。それをしっかりと定着させたキャメラと、彼の生涯を見事にまとめあげた脚本、編集の見事さ。彼を助けるのが字の読めなかった黒人の少年とカナダ人3人の白人家族というのも面白い。脇を固めた俳優陣の演技も良い。
　このところ5.0を付けてばかりだが、これまでなら、なかなか映画化できなかったような難しいテーマでも、積極的に映画化（しかも第一級のエンターテイメントとして）しているのだから当然である。アメリカ映画の監督の層の厚さに今さらながら驚かされる。