オールアバウトマイマザー<BR>All about my mother

Comment:
　アルモドバル監督が全ての女性に向けて作った彼の総決算というべき作品。
　不慮の事故でたった一人の息子エステバンを失ったマヌエラは、18年ぶりに夫との思い出が詰まったバルセロナへ旅立つ。そこで昔の仲間に出会う。
　ストーリーが秀逸である。それぞれに悩みを抱えた女性たちが複雑にからみあい、マヌエラを中心に一つにまとまっていくその過程は感動的で独創的だ。特にクライマックスでエステバンの父親が登場するシーンはこの映画ならではである。また、女になった男アグラードがいい味を出していて、作品を盛り上げている。スペインの娼婦が集まる野原など、夜の世界を知り尽くしたアルモドバルならではのスポットも登場する。
　一方で、やや不満も残った。主演のセシリア・ロスの存在感は素晴らしいのだが、全編を通して乾いた演技なので、感情移入しにくかったのだ。また、感動的な物語だけに、アルモドバル特有の短いカットの連続があだになり、ややうっとうしかった。音楽も「ハイ・ヒール」の坂本龍一の名曲ぐらいを予想していたので、ノリが軽すぎるのではないかとも思われた。アルモドバルのカラーは健在だが、これまでの派手さは抑えられている。
　総じて、前評判があまりにも高すぎたためか、泣くところまで感動できなかったのがつらかった。