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EUREKA     2000

 

 

Rating: 4.9

Genre: ドラマ

I watched : in Theater

Country: 日本

Cast:
役所広司
宮崎兄弟
光石研
斉藤陽一郎

Directed by: 青山真治

Music: 青山真治

Comment:
Helplessに続く、北九州を舞台にした3時間以上という長尺のモノクロ作品。カンヌ映画祭の批評家連盟賞とエキュメニック賞のダブル受賞作品。
西鉄バスでバスジャック事件が発生。生き残ったのはバスの運転手の澤井と幼い兄妹。兄妹の家は、マスコミにもまれて崩壊し、沢井の夫婦も離縁となった。そんな事件の被害者たちの、「その後」を真摯に描いた人間ドラマ。
冒頭から展開する極度に省略され、かつリズミカルに展開する、バスジャックシーンから家庭崩壊にかけて、さすがHelplessの監督である。ぐいぐい引き込んでいき、全く長さを感じさせない。しかし、後半のテンポは一転してゆっくりになる。
それぞれ生活を失った人々が集まり合い、小さな生活をはじめる。そこに道化として登場するHelplessにも出ていたアキヒコ。 4人の生活が静かに送られるかと思いきや、連続殺人事件が発生。それに巻き込まれる澤井。淡々としかし着実に降りかかる不幸に、彼らは幾度となく人生のリセットを迫られる。しかし、現実はそううまくは行かない・・・。
役所広司が基督のごとく自己を犠牲にして子供を守る男を熱演。何も語らない子供たちを宮崎兄妹が演じる(兄よりも妹の方が見るものが多い)。脇を固める光石研や斎藤陽一郎らHelplessに引き続いてのメンバーに加え、国生さゆりが、九州弁で澤井の元妻を自然体で演じきったのには驚いた。
ところどころ、小津安二郎の笠さんを思わせる父親が登場したり、少年が読んでいる本がAKIRAであったり、かなりフランス人好みに作られているな、という印象も受けたが、しっかり邦画のスタイルを踏襲しているのは評価できた。
しかし、ラストに向けて、不協和音(車のノイズや病を抱えた澤井の咳。アキヒコの無意味なポラロイド写真)と共に、ストーリーそのものが奇妙に空中分解しはじめる。そして観客をけむに巻いたようなラスト。やや監督の若さが見えてしまうような強引なオチに、少々違和感と不満を覚えた。
とは言うものの、終始展開するあまりにも美しいモノクロ映像と雄大な九州の風景のため、見終わった後の達成感はこの上もない。久々に骨太の気合の入ったこの邦画との出会いは貴重であった。それゆえに々ラストの物足りなさが今なお気になり、後一歩踏み込んで欲しかった気もする。音楽は、神がかったシンセ特有の異空間的メロディ。物語そのものには一切タッチせず、一気にラストシーンを高みに持ち上げる。ややずるい気もするが、取り上げたテーマが現在もっとも深い問題だけに、安易に答えを出すのを避けたのかもしれない。青山監督の次なる作品に、更なる期待がかかる。

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