桜桃の味

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「うなぎ」と一緒にカンヌ映画祭パルムドールを受賞したことで有名なイラン映画。自殺願望の男が、自殺を手伝ってくれる人を探しに延々と郊外をドライブする物語。
　先に「風が吹くまま」を見ていたこともあって、安心してキアロスタミ作品を堪能できた。主人公の男、軍隊に所属する少年、神学校に通うアフガン人の男、はく製を作ることを仕事にする老人、つくづくいい顔をしている。みな素人だという。彼らからこれだけのいい表情をとりだす監督の技量に改めて、驚かされる。特に、最後の老人が話す物語やトルコ語の詩が感動的で、素朴な老人の人柄と相まって、いっそうしみじみ来る。テーマが普遍性をもつだけに、これだけ海外でも評価されたのだろうが、イランならではの特殊性（アフガン人の流入、強い軍隊、イスラム教）もしっかり盛り込んでいて、キアロスタミ監督の強いメッセージも感じ取れる。
　映像の美しさは、「風が吹くまま」を圧倒しており、おそらく時間をかけてとったのだろう幻想的な風景（しかもすぐそばがビル街なのに！）を、たっぷりフィルムに定着させている。ラストにその苦労を忍ばせるメイキング（？）が挿入されていて驚いた。「風が吹くまま」の骨を投げるシーンといい、ラストにふっと変わったことをするのが好きな監督である。