アイズ・ワイド・シャット<BR>Eyes wide shut

Comment:
　ついに、アイズ・ワイド・シャットを見た。文句なしの傑作である。
　原作は世紀末ウィーンのアルチュール・シュニッツラー原作の「夢小説」。それをニューヨークに舞台を置き直した意欲作。
　音楽はショスタコービッチ以外にも、クリス・アイザックなど現代のアーチストの優れた音楽を採用。ここでもキューブリックの音楽センスのよさが伺える。また、キューブリックの映像の特徴である対称形や仮面、顔、冷たい光などは健在である。
　テーマは性（セックス）。性の正体が掴めないまま、観客はキューブリックの魔術の中に引き込まれていく。理性を失いそうになるほど、幻想的で美しく官能的で退廃的な映像。これは過去のキューブリック作品の中でも突出していると思う。結果として、キューブリック作品の中ではかなり難解な作品になったが、テーマが性であるだけに、言葉で理解しなくても、映像から感じ取れる。まさにキューブリックに適した題材であったと言える。
　トム・クルーズは今までで最高の演技をしている。個性を押さえ、まったく別人の男になり切っている。（なで肩でなくなっている！）ニコール・キッドマンも負けてない。彼をときに脅かし、ときに慰める複雑な妻を好演。
　かくして世紀末にふさわしい映画が登場したといえる。