私の大学開放論(『大学新世紀・ユニバーシティルネサンス98』1997年9月)
 日本の四年制大学は、ごく限られた人々しか受け入れない、閉ざされた場所である。意外に思われるかもしれないが、まぎれもない事実である。大学で学んでいるのはごく限られた範囲の人々、つまり一八歳から二〇代前半までの若者、とくに男性である。これ以外の年齢の人々と女性にとって、大学はまだまだ縁遠い場所なのである。
 大学入学者の九六%が現役から二浪までの若者であり、二五歳以上の学生は、諸外国と比べて極端に少ない。社会人入学者を募集する大学が増えてきたが、その人数は学部・大学院を合わせて一万人に満たない。女性の大学進学率が伸びてきたが、学生全体に占める女性の比率は、まだ三三%。しかも学部による偏りが多く、法律経済系学部で二三%、工学部ではわずか七%を占めるにすぎない。
 これは日本の将来を考えると、由々しき問題である。技術と社会環境の変化が著しい今日、生涯にわたり、必要に応じて大学教育を受けられるシステムは不可欠である。終身雇用が見直されるとともに、その必要性はますます大きくなるだろう。
 日本は、先進国の中でもっとも女性の地位の低い国である。その原因の一つは、女性の多くが短大または文学部の出身であり、企業の基幹的な人材とみなされてこなかったことにある。
 障害になっているのは、企業の理解不足と、女性に対する偏見である。企業からの援助が少ない上に収入が減るので、社会人入学者の年間負担は百数十万円にもなる。親や教師には「女の子は短大か文学部」と考える傾向が強く、法・経学部や理科系への進学を望む女子生徒の、足を引っ張るケースが多い。
 これからは生涯学習の時代、そして男女共同参画の時代である。一八歳人口が減少するなか、新卒者以外と女性に門戸を広げることは、私大経営にとっても有利である。各私立大学での検討と、企業の理解を求めるとともに、女性が積極的に四年制大学、とくに法・経・工学部を受験することを勧めたい。

雑文のコーナー
HOME