第16回 ヴァイツェン
1.酵母を手に入れる

 ヴァイツェンビールとは、小麦の麦芽を主原料にした、バナナのようにフルーティな香りのするビールである。私はヴァイツェンビールが好きで、地ビールの店でヴァイツェンを見つけると、必ず注文することにしている。とくに川越にある小江戸ブルワリーのヴァイツェンは香りがたいへん強く、私のお気に入りである。しかし、これを作るためには専用の酵母が必要である。
 では、酵母をどうやって手に入れるか。個人輸入という方法もあるが、実はもっと手軽に手に入る。地ビールにはヴァイツェンビールがいくつかある。そしてその中には、酵母入りのものも少なくない。これを使えばいいわけだ。今回使うのは、「銀河高原ビール」の酵母である。まず、近所で買った「銀河高原ビール」を冷蔵庫に立てて、しばらくおく。もちろん、酵母を瓶の底に沈澱させるためである。次に中身を飲む(笑)。底に沈んだ酵母を乱さないように、静かに注ぐのがポイントである。底に3センチほど残ったところで瓶を軽く振り、残りのビールと酵母が混ざったところで、砂糖水を投入。ラップで蓋をして、暖かいところにおいておく。1時間もすると酵母は発酵をはじめ、活発に気泡が出るようになった。酵母の準備は完了である。

2.仕込みから瓶詰めまで

 今回も、パーシャルマッシングを行なう。ただし、今回使うAlexander Wheat Malt Extract は650gと量が少ないので、これを補うために小麦粉を200g加えることにした。レシピは、次の通りである。

Weitzen 11L
Alexander Wheat Malt Extract 650g
Pale malt 600g
Flour 200g
Saatz Ext.5cc 30min.
Tettnanger 14g 30min.
銀河高原ビール酵母

 まず、小麦粉を水で溶いて、火にかける。熱されたデンプンがα化して糊状になったところで、温度を確認し、ペールモルトを加える。糊状のデンプンは麦芽中の酵素によって分解され、見る見るうちに粘度が低下していく。
 今回は小麦粉を使っているので、ちゃんとプロテインレストをやり、時間も長めにかけた。それでも、マッシュ中のタンパク質はかなり多いようで、マッシュを漉すのにも、またロータリングにも、かなり苦労した。ともかく、麦汁がグレインベッドを通過してくれないのである。収率はかなり悪いと思う。
 麦汁ができたところで、モルト缶の中身を投入。ヴァイツェンなので、ホップは少な目にする。冷まして発酵容器に入れ、酵母を投入。発酵は、予想以上に順調に始まった。8日目に瓶詰め。21本取れた。

3.試飲

 瓶詰め3日目に試飲。色は濁った明るい金色。香りも、明らかにヴァイツェンである。しかし、薄い。マッシュの収率が、相当悪かったようだ。暖かい季節なら、のどの渇きを癒やす飲料としていいかもしれないが、寒い季節にじっくり飲むビールではない。

 瓶詰めから3週間。薄いのはあいかわらずだが、熟成によってコクが増してきた。これなら、十分いける。下手な地ビールのヴァイツェンより、よほどうまい。近いうちに、麦汁の濃度に気をつけて、再挑戦してみたい。(1999.2.7)

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