第9回 アロマティック・ビター
1.おいしい濃色ビールが作りたい

 初めて作った濃色ビール(第6回)は失敗に終わった。淡色ビールは成功のメドがついた。今度はモルトエキス+ホップの、正真正銘のオールモルトで濃色ビールに挑戦である。うまくいったら、淡色ビール2回、濃色ビール1回を繰り返す3バッチのサイクルを定着させたい。そうすれば、日常的なビール需要のかなりの部分をカバーできることになるだろう。

2.仕込みと第1次発酵

 使うのはBLACKROCKのNew Zealand Country Bitter、23リットル用(1700グラム)。フィニッシングのホップにはCascade(ホール)を使う。Cascadeの華やかな香りを期待して、Aromatic Bitterと命名する。
 まず、酵母を準備する。消毒したコップにドライモルト少々を入れ、お湯で溶かしてから水を加えて適温にする。ここにドライイーストを入れて軽くかき混ぜ、ラップで蓋をしておく。
 次にモルトエキスを20分ほど煮込み、水を入れた発酵容器に注ぐ。次に別の片手鍋でお湯を1リットルくらい沸かし、そこにホップを入れる。量は0.7オンスほど。2分ほど煮出したあと、網で漉しながら発酵容器へ。さらにもう一度、ホップの入った片手鍋にお湯を注ぎ、少しかき混ぜてから同じように発酵容器へ。ホップの成分を無駄にしないためである。同じことを、今度は水で2回繰り返す。さらに水を加えて総量を12リットルにする。
 そこに、用意しておいた酵母を投入。1時間ほどしかたっていなかったが、酵母はもう、コップの中でさかんに発酵をはじめていた。仕込んで数時間後には、もう発酵が盛んになっていた。

3.瓶詰めと第2次発酵

 5日目になると、もう発酵はほとんど終わっていた。しかしドレンコックからグラスに少し取ってみると、濁りがまだ多い。そこで瓶詰めは延期して、出張に出かける。10日目の夜に帰り、ドレンコックからグラスに取ってみると、液はかなり透明になっている。飲むと強い苦みと酸味の間から、Cascadeの香りが立ち上る。瓶詰めは翌朝。普通の注ぎ方でまず20本、さらに発酵容器を傾けて3本。苦みと酸味、それにホップの芳香がうまく調和してくれるといいのだが。

4.試飲

 瓶詰めから5日目、最初の試飲をする。Cascadeの香りはいいのだが、苦みと酸味がともに自己主張し、全体のバランスが悪い。とくに酸味が突出している。雑菌に汚染された風ではないので、熟成すれば何とかなるとは思うが。(1998.10.11)

 瓶詰めから2週間、2回目の試飲。苦み・酸味はやや穏やかになり、ホップの香りや麦芽の甘み、焦がし麦芽の風味と調和してきたようだ。しかし、まだ苦み・酸味とも荒っぽい感じが否めない。ホップなしモルトを入れたほうがよかったかも。私はこれでもおいしいと思うが、好みは分かれるだろう。もう少し待つ必要がありそう。(1998.10.20)

 瓶詰めから一月半。あいかわらず酸味は強いが、苦みの強さとのバランスはとれたように思う。こういうスタイルのビールだと考えれば、よくできているのだろう。飲んだ友人のひとりは、「すばらしくおいしい、ビールの概念が変わった」とまで言ってくれた。(1998.11.28)

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