第4回 ブルーベリー・ビール
1.フルーツビールを作る

 フルーツを使ったビール造りは、以前からやってみたかったことの一つである。輸入されているサクランボや木イチゴのビールなど、みんなおいしいし、だいいちお洒落である。川越の小江戸ブルワリーでは、リンゴやレモン、イチゴ、スイカなどのビールを、季節替わりで出していて、とても楽しい。日本の大メーカーがまったく手を出していない分野だから、手造りしがいもある。
 しかしネックは、フルーツである。ちゃんとした味のフルーツを、ビールに仕込んで色・味・香りを楽しめる量だけ確保するためには、かなり費用がかかる。多少の費用は構わないようなものだが、自家醸造するからには、市販のビールを買うより原価が高くなるのは避けたい。柑橘類の場合は皮を使えば少量で済むようだが、やはり作るからには色も楽しめるものにしたい。
 と思っていたら、近所のスーパーでうってつけの材料を見つけた。米国産の冷凍ブルーベリーである。340グラム入りで478円。これなら十分、色も香りもでるだろう。次のビールの仕込みは、これに決めた。

2.仕込みと第1次発酵

 モルトエキスは、第4回と同じくBlack Rockの"Pilsner"の8リットル用を使う。淡色で、ブルーベリーの色を邪魔しないと思ったからである。ブルーベリーはボールに入れて室温で解凍し、砂糖をまぶしてから潰す。最初はすりこぎで潰していたのだが、どうしても粒が残ってしまうので、ポテトマッシャーを使ったところ、大変具合よくつぶれてくれた。これは我ながら良いアイデアである。
 モルトエキスをお湯を沸かした鍋に入れて煮沸し、さらに砂糖を加える。ブルーベリーの糖分が40グラムほどあると考えられるので、砂糖の量は350グラムとした。しばらく煮込んだ後、ブルーベリーを加え、再度沸騰したところで火を止め、しばらく余熱で滅菌してから、鍋ごと水につけてさます。ブルーベリーの香りを損なわないよう、ホップの追加はしない。これを発酵容器に入れ、モルトエキスに付属のイーストを混ぜて、仕込み完了。液の表面には、ブルーベリーが浮いている。夜仕込んだのだが、翌朝にはもう泡が立ちはじめていた。ここで実は、大変なことに気がついた。加える砂糖の量は標準が400グラムと思い込んでいたのだが、説明書をもう一度見直してみると、300グラムだった(笑)。アルコール分の高くなるのはいいのだが、果たしてビールの味がするものかどうか。(1998.8.29)

3.瓶詰めと第2次発酵

 6日目の朝、発酵が終わったようなので、瓶詰めに入る。プライミングシュガーは3gとする。ここで問題が一つある。発酵タンクの液面には、ブルーベリーの滓が浮遊している。このまま瓶詰めしてよいものか、どうか。考えた末、小さな漉し網を数分間、煮沸消毒し、これを突っ込んで除去することにした。作業中に雑菌が入り込む危険は大いにある。しかしこのままでは、滓がドレンコックに詰まる危険が大きい。二つを秤にかけた末の決断である。(あとで調べたところでは、ガーゼに包んで発酵させればよかったらしい。)
 やってみると、最初は快調。ところが10本目あたり、液面がドレンコックに近づいてきた頃から流れが悪くなる。そこでドレンコックをいっぱいに開けたところ、出口あたりに溜まっていた滓がどどっと瓶に流れ込んだ。この瓶はちゃんと別扱いにし、あとはドレンコックを控えめに開けて注意しながら作業を続ける。容器を傾けて無理やり流し込むことは避ける。全部で13本とることができた。
 瓶の中身を透かして見ると、どの瓶にも多少の果肉くずが混入しているようだ。ろ過していないのだから、これは仕方あるまい。色は薄い赤ワインに少し茶色を足したようなものである。(1998.9.2)

4.試飲

 瓶詰めしてから1週間。試飲をする。
 泡立ちは足りない。ただし、口に含むと適度の炭酸を感じる。期待したほど強くないものの、フルーティーな香りと酸味がある。ただし例のサイダー香味もかなりあって、ブルーベリー味だと自慢できるようなものではない。まあ、もう少し様子を見ましょう。(1998.9.9)

 かなり味が落ち着いてきたが、あいかわらず、ブルーベリーそのものではない酸味を感じる。砂糖を使ったのが間違いだったかな。それにブルーベリーというのはあまり味の濃厚な果実ではないので、340gというのは少なかったのかもしれない。(1998.9.27)

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