私の単著をご紹介します。現在、8冊。ついでに、訳書も一冊ご紹介します。


貧困連鎖(2009年2月刊)

格差拡大と貧困問題を幅広く、また可能な限り平易に解説。格差拡大政策の背景と、格差拡大・貧困克服のために政策についても論じる。
四六版・254ページ(大和書房 1500円)

序章 秋葉原通り魔事件の衝撃
第1章 「格差はいつの時代にもあった」というのは本当か
第2章 格差拡大を推進した人々
第3章 「新しい階級社会」の誕生
第4章 一度落ちたらはい上がれない社会
第5章 格差と貧困を生み出した国の政策
第6章 一〇年後──階級社会日本最悪のシナリオ
第7章 目指すべき未来と今できること
終章 復讐する社会からの脱出
文献一覧

序章抜粋

  日本では、経済格差が急速に拡大しているが、その責任のかなりの部分は国、つまり日本政府にある。なぜなら、経済政策や労働政策、税制、社会保障制度など、格差にかかわるほとんどの制度は、国によって担われているからである。だから、経済格差の拡大と、そこから生じる好ましくない事態に直接的な責任を負わなければならないのは、国である。なかでも労働分野の規制緩和は、不安定な派遣労働者を大量に生み出して、若者たちの間に巨大な貧困層をつくり出し、社会にはかり知れないほどの傷跡を残した。今回の悲惨な事件の何割かは、国の責任だといわなければならない。
 このことは、問題を解決するためには国を変えること、つまり政府の枠組みや政策体系を変えることが不可欠だということを意味する。そして、国を変えることができないなら、私たちを待ち受けるのは、さらに悲惨な未来である。
 日本の経済格差はいかに深刻な状態にあるか。そこから、どのような問題が生まれているか。国はこのような現状にどのように関与してきたか、どのような責任を負っているのか。このままだとすると、日本はどれほど暗い未来を迎えることになるのか。そして、このような事態を避けるため、いま何が必要とされているのか。
 本書では、こうした問題についてできるだけわかりやすく論じていきたいと考えている。


居酒屋ほろ酔い考現学(2008年6月刊)

提唱する「居酒屋考現学」、初の成果。本邦初の「居酒屋学」。
四六版・267ページ(毎日新聞社 1500円)

序 居酒屋から日本が見える
第1章 格差社会の居酒屋
第2章 居酒屋考現学事始め
第3章 銀座礼讃
第4章 ヤミ市の夢の跡
第5章 やきとりとは何か
第6章 国境の町をゆく
第7章 下町居酒屋の越境体験
第8章 「山の手」の幻影
第9章 格差拡大と日本の酒文化
居酒屋はインターネット──あとがきにかえて
主要文献一覧

第9章より抜粋

  しばらく前から、経済的格差の拡大が社会問題となっている。最近ではさらに進んで、貧困の広がりが注目されるようになった。格差社会と貧困の拡大に対する批判は、これからも続けられなければならない。そして、すべての人に安定したまともな仕事と、安心して生活できるだけの収入を保障すること、このために必要な政策をとることを、国と企業に要求していく必要がある。
 しかし私は、単に自分の好みの問題としてではなく、人権の問題として、そして豊かな文化を守り育て、安定した社会を維持するために、「誰でも酒が飲める社会を」「誰でも居酒屋へ行ける社会を」という要求を、そこに付け加えたいと思うのである。


新しい階級社会 新しい階級闘争──[格差]ですまされない現実 (2007年10月刊)

初の一般書。格差拡大がもたらした様々な問題を描くとともに、最新データから貧困の拡大と階級所属の固定化を実証。
四六版・239ページ(光文社 1200円)

はじめに
第1章 格差社会の風景
第2章 階級闘争としての格差論争
第3章 貧困化する日本
第4章 「新・階級社会」の構造
第5章 もう「上流」にはなれない
第6章 さまざまな「階級闘争」
第7章 新しい階級闘争が始まる
あとがき
文献一覧

「はじめに」より抜粋

  日本の社会は、いま大きな岐路に立っている。「一億総中流」という俗説が、いかに虚構であり幻想だったとしても、ほとんどの人々に「それなりに安定した普通の暮らし」が保障されていたということの意味は大きい。しかし、それはもはや、過去のことである。格差が拡大し、階級間の利害が対立する。しかも階級間の対立は、切磋琢磨してよりよい社会を作り上げる方向にではなく、不信と敵意を生み出して、社会を解体させる方向に向かっていく。このような近未来を回避できるかどうかは、今日のわれわれにかかっているのである。


階級社会──現代日本の格差を問う (2006年9月刊)

最新データによって現代日本「格差社会」の階級社会としての構造を明らかにするとともに、階級研究のウイングを都市論と大衆文化論に広げる試み。たちまち重版。
四六版・226ページ(講談社選書メチエ 1500円)

はじめに
第1章 階級の死と再生
第2章 階級へのまなざし――近代都市東京と「階級」
第3章 庶民とヒーローの階級闘争――『下町の太陽』と梶原一騎
第4章 拡大する階級格差
第5章 アンダークラス化する若者たち
第6章 女たちの階級選択
第7章 「格差社会」のゆくえ
あとがき
主要参考文献
索引

あとがきより抜粋

 本書は、階級や階級格差の問題を主題とした私の著書としては『現代日本の階級構造』から数えて四冊目だが、これまでのものとはかなり異なる社会環境のなかで出版されることになった。なにしろ、経済格差の拡大がサラリーマンや主婦の日常の話の種となり、「格差社会」や「下流社会」が流行語になる時代である。第一章で詳しく述べたように、「階級社会」という言葉すら、しばしば使われている。これまで階級に関する本を書くときは、「日本は平等な社会だ」「日本には階級がない」と思いこんでいる読者を想定して、学説史や研究史、そしてさまざまな階級否定論に目配りをしつつ、慎重に論を進めるのが常だった。しかし、今回は違った。なにしろ、貧富の格差が拡大していることや、人々が〈勝ち組〉と〈負け組〉、〈上流〉と〈下流〉などに分け隔てられていることなどは、もう常識化しているのである。持論を自由に書くことができる分だけ、読者にとっての読みやすさや面白さにも配慮できたし、これまで暖めてきた新しいテーマも取り上げることができた。


階級・ジェンダー・再生産──現代資本主義の存続メカニズム (2003年3月刊)

階級論と並ぶ、私のもうひとつの研究テーマ。その成果を1冊にまとめました。
A5版・224ページ+xii(東信堂・3200円)

第1部 文化的再生産の理論
第一章 文化としての資本主義・資本主義の文化
第二章 資本主義社会の文化的再生産
第三章 文化の階層性と階級構造の正統化

第2部 ジェンダーと家父長制の再生産
第四章 教育と家父長制の再生産
第五章 スクール・セクシュアル・ハラスメントとは何か
第六章 ジェンダーと階級構造----セクシズムの克服と理論的統合を目指して

第3部 階級構造と教育改革
第七章 現代日本の階級構造と高校教育
第八章 高校教育の社会的位置の変遷と高校教育改革
第九章 階級社会日本の大学教育

第4部 再生産と国家装置
第一〇章 資本主義社会の再生産と国家装置の理論

あとがき
文献一覧
索引

*ご注文は、お近くの書店へどうぞ。ISBN4-88713-497-5

 資本主義社会は、いかにして再生産されるか──本書のテーマは、この一点に尽きる。
 ここで資本主義社会というのは、資本家と労働者の二階級の間の経済的な交換=搾取関係から構成されるものとして抽象された、純粋資本主義社会のことではない。複数の生産様式と、家父長制という再生産様式を含み、したがって資本家と労働者以外にもいくつかの階級を含むとともに、男性と女性を構造的に非対称的な関係においている、現実の資本主義社会のことである。そしてある社会が再生産されるとは、その社会の基本的な構造が維持されることをいう。
 階級的な不平等と対立関係、ジェンダーによる不平等と対立関係をはらんでいるにも関わらず、この社会の基本的な構造が変化せずに維持されているのはなぜか。それを構成する人々が不断に移動し、入れ替わっているにもかかわらず、その基本的な構造が維持されるのはなぜか。この問いは、「社会はいかにして可能か」という社会学の根本問題の、現代資本主義という形態規定性の下における、動態的な表現にほかならない。
 本書は、この巨大なテーマに対して非力を省みず二〇年近くにわたって格闘してきた私の、現時点での中間総括である。


現代日本の階級構造──理論・方法・計量分析 (1999年10月刊)

私の約15年に及ぶ階級研究の総決算であり、分析的マルクス主義の視点に立つ日本初の実証研究です。全編ほぼ書き下ろし。
A5版・276ページ+x(東信堂・4300円)

はしがき

第T部 現代資本主義の階級構造
第1章 忘れられた概念----現代日本の階級研究
第2章 『共産党宣言』とMarx階級理論----呪縛を超えて
第3章 現代資本主義の階級構造----理論的考察
第4章 階級・ジェンダー・企業社会

第U部 現代日本の階級構造----計量分析
第5章 戦後日本の階級構造----基本構造と変動過程
第6章 戦後日本の農民層分解
第7章 近代家族と社会諸階級
第8章 教育と階級構造----2つの再生産過程

あとがき
索引

*ご注文は、お近くの書店へどうぞ。ISBN4-88713-337-5
正誤表を作りました。m(_ _)m

「はしがき」より抜粋

 「階級」という概念は、戦後日本の社会科学においてつねに、不幸な位置に置かれてきた。それは第1に、深刻な政治的バイアスにつきまとわれてきた。これと関連して第2に、実証的な検討にたえうる概念として精緻化されてこなかった。その結果は、階級研究の沈滞と不毛であった。
 本書の目的は、階級研究の発展を妨げたこの2つの障碍と欠落を克服することにある。その第T部は、階級研究の沈滞を招いた原因を研究史の中に探るとともに、その克服の方向を明らかにし、現代資本主義の階級構造に関する実証的研究のための理論と方法を準備することにあてられる。第U部では、実際にデータを使って、とくに戦後日本社会に焦点を当てながら、いくつかのテーマについての実証分析を行なう。最終的な目標は、階級理論がすぐれた一貫性と広い射程をもつとともに、ここ数十年来蓄積されてきた社会学的な階層研究の伝統に十分対抗しうる実証的有効性をもつことを示すところにある。


階級社会日本 (2001年5月刊)

「階級」をキーワードに、日本社会の実像を解き明かす。好評3刷。
四六版・276ページ+v (青木書店・2700円)

はじめに

第1章 自画像としての階級論
第2章 日本から階級が「消えた」時代
第3章 現代社会の階級構造----マルクシズムからマルクシアンへ
プロムナード 越境する階級----二つの『ツルモク独身寮』
第4章 四つの階級・四つの生活世界
第5章 階級は越境できるか----『不平等社会日本』の真実
第6章 女たちの階級社会
第7章 閉ざされた政治空間
第8章 新しい「平等社会」へ

あとがき
索引

*ご注文は、お近くの書店へどうぞ。ISBN4-250-20118-X

「あとがき」より抜粋

 「階級」いう概念は、日本の社会科学から捨てられたも同然である。ということは、「階級」をキーワードに現代日本社会を解き明かすなどという作業には、ほとんど誰も手をつけていないわけだ。データの分析を進めれば進めるほど、新しい事実が次々に明らかになってくる。それは、とてもスリリングな体験だった。こんなおいしい研究テーマ、独り占めにしていいのだろうか。
 私が本書で目指したのは、読者の皆さんが、自分の周囲にも「階級」と「階級構造」がちゃんと存在していることに気づくよう、ささやかなお手伝いをすることである。少しでも多くの読者が、「あ、日本は階級社会だったんだ」と思ってくだされば、夏休みと冬休みを返上したかいがあったというものだ。日本はれっきとした階級社会──この事実を直視することが、日本社会の将来をめぐるすべての議論の大前提である。


Class Structure in Contemporary Japan (2003年3月刊)

Based on the SSM Survey data, the book investigates four major classes - capitalist, working, new and old middle - and their characteristics and mobility patterns in terms of income, work, social network, leisure activity, gender relations and voting behavior.
(Trans Pacific Press Hardcover$79.95 Paperback $44.95)
 

Preface to the English Edition
1 Class Studies: Self-Images of Modern Society
2 When Class 'Disappeared' from Japan
3 Class Structure in Contemporary Society: From Marxist to Marxian Theory
Promenade: Transgression of Class Borders : Two Versions of 'Tsurumoku Bachelor Dormitory'
4 Four Classes: Four Life-Worlds
5 Can Class Borders be Crossed? The Structure of Cross-Class Mobility
6 Differentiation of the Farming Class in Postwar Japan
7 Women in Class Structure
8 Closed Up Political Space
9 Towards A New 'Egalitarian Society'
Endnotes
Bibliography

From Preface to the English Edition

 Contemporary Japan,a highly advanced capitalist society,is a class society.This does not appear to be widely recognized though,either by the Japanese themselves,or by international observers.The argument of this book is that a four-class model - capitalist,working,new and old middle classes - applies squarely to Japanese society today and provides the best framework for its interpretation.


スティーヴン・エジェル著 階級とは何か (2002年4月刊)

不平等研究の中心地・英国の模範的教科書、待望の邦訳。
四六版・227ページ (青木書店・2500円)

第1章 階級の古典的理論──マルクスとウェーバー
第2章 現代の階級理論──ネオ・マルクス主義とネオ・ウェーバー主義
第3章 階級の測定
第4章 階級構造と社会変動
第5章 階級と社会移動
第6章 階級・不平等・政治
第7章 無階級社会と階級の終焉

文献一覧 主要邦訳文献目録
訳者あとがき
索引

*ご注文は、お近くの書店へどうぞ。ISBN4-250-20211-9

「訳者あとがき」より抜粋

 本書は原著でわずか149ページという、階級理論と階級研究に関するコンパクトな入門書で、1993年の出版以来、英語圏を中心に多くの読者を獲得している。その内容は、対立するが共通点も多い階級理論の二人の創始者としてマルクスとウェーバーを位置づけた上で、その後の多様な階級理論と階級研究の展開を絶妙のバランス感覚をもって過不足なく描き出すとともに、現代の先進国社会が直面する諸問題と将来社会の課題にまで言及したもので、まさに入門的教科書の模範というにふさわしい。
 おそらく本書は、日本語で出版されるものとしては最初の、「階級」に関する概括的な入門書である。本書の出版によって、近代社会科学の最良の財産ともいうべきこの概念が、日本に定着するきっかけをつくることができれば幸いである。

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