■ 鬼平犯科帳 (8) ■

 「用心棒」


「私だって、人斬りのあなたと一緒に、この暑い、人気もない畑道を歩いて行こうというのですよ。」


 「あきれた奴」


「世の中の人間の多くは、うわべだけで人の値うちをはかってしまうゆえ、な」


 「明神の次郎吉」


「なれど、これからも、おのれでおのれに気をつけいよ」
「は……?」
「お前の躰の底にねむっているなまぐさい女の血、にな」


 「流星」


(ともかく……いますこし、さぐりを入れようとしているうちに感づかれ、引きさらわれたのであろう。ばかなやつめ。なぜ……なぜ、おれに早くから知らせておかなかったのか……)


 「白と黒」


「すでに、長谷川平蔵様はおれたちのことを見通していなさる。覚悟してくれ。おれも腹を切るつもりだ」


 「あきらめきれずに」


「あっ……て、てめえは彦……」
「いまは、長谷川平蔵さま御手の者だよ、安くあつかってもらうめえ」


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