1990年にカナダのCBCと米国のディズニーチャンネルで放送が開始されたTVドラマ 「アヴォンリーへの道 ( Road to Avonlea )」 は、 Lucy Maud Montgomery の小説 「ストーリー・ガール ( The Story Girl )」「黄金の道 ( The Golden Road )」、 その他いくつかの短編集をもとに構成されていますが、 かなり自由な脚色がなされているので、原作とはほとんど別の物語と考えた方がよいでしょう。 アヴォンリーといえば、 Montgomery ファンには言わずと知れた 「赤毛のアン」 の舞台ですが、 こちらはやや時代が下って今世紀初頭のお話ということになっていますから、 アンは既にギルバートと結婚して、 「炉辺荘」に住んでいる頃ということになるでしょうか。

  物語は、 モントリオールの裕福な貿易商の家に、 大人だけに囲まれて育った夢見がちな少女・セーラが、 突然身に覚えのない横領事件に巻き込まれてしまった父の許を離れて、 プリンス・エドワード島 に住むという亡くなった母方の親戚に預けられるところから始まります。 厳しいヘティ伯母さんや見知らぬ島の人々の中で、 彼女が「よそ者」から真に家族の一員として自らの居場所を見出すまでを、 上質のユーモアの中に描いたのが第1シーズンと第2シーズンのエピソードでした。
  「アヴォンリーへの道」 は、 世界140ヶ国 で放映されるという、 カナダTV界空前のヒット作となりましたが、 第7シーズンとなる1996年を以てついに最後を迎えることになりました。 各シーズン13話ですから、 全部で91話制作されたことになります。 日本では平成5年と6年にNHK教育TVで第1シーズンと第2シーズンの作品が放送された後、 2年のブランクを経て、 平成8年から9年にかけて全エピソードがNHK総合TVで放送されました。 カナダ空前のヒット作も、 日本では始めのうちはたいして話題になりませんでしたが、 次第に多くのファンをつかみ、 ついには再放送嘆願の署名運動が行われるまでになりました。

  物語の主役は、 何といっても Sarah Polley が演ずるセーラ・スタンリー ( Sara Stanley ) にちがいないのですが、 個性あふれる脇役が揃い、 毎回話題の中心となる人物が変わるので、 その意味では「みんなが主役」なのかもしれません。 事実、 第6シーズンの冒頭で、 セーラはただひとりパリへと旅立ってしまうのですが、 主役が欠けた後も変わらぬ人気を保ち続けた不思議な作品なのです。
  そういうわけでアヴォンリーファンの方々なら、 既にフェリシティやデールさんなど、 それぞれにお気に入りの登場人物をお持ちかもしれませんが、 やはり主役セーラを演ずる Sarah Polley のファンは少なくないことでしょう。 そんなあなたのために、 インターネットから得た情報だけを頼りに、 彼女のことについてほんの少しばかり書いてみることにしました。 独自に取材した内容は何もありませんが、 ファンの方はとりあえずご笑覧あれ。

  まずは彼女の生立ちから。 Sarah Polley は 1979年1月8日、 カナダの俳優の家庭に生まれました。 父は Michael Polley というよりも、 「アヴォンリーへの道」 のブレア医師と言った方がわかりやすいでしょう。 あの髭のお医者さんが、 彼女の本当の父なのです。 母 Diane も俳優で、 映画 「赤毛のアン ( Anne of Green Gables )」 などではキャスティングも手がけましたが、 1990年まさに 「アヴォンリーへの道」 の放送が始まった年に、 癌のため亡くなりました。 Sarah Polley は、 物語の中のセーラ・スタンリーと同様に、 幼くして母を失ったのです。
  両親の才能を豊かに受継いだ Sarah は、 1985年わずか5才のときにディズニー映画 「クリスマスに届いた愛 ( One Magic Christmas )」 でデビュー、 脇役ながら早くも名子役として認められました。 5年後の 「丘の家のジェーン ( Lantern Hill )」 では、 準主役ともいえる孤児のジョディ・ターナーを演じ、 主役もかすむほどの見事な演技でジェミニ賞に輝いています。
  「アヴォンリーへの道」 では一転して、 パリ製のドレスがよく似合う、 お金持ちのお嬢さまを演ずることになったわけですが、 人を惹き付けずにはおかない笑顔と、 幼い正義感にふるえるときの表情、 そして時折見せるちょっぴり生意気そうな横顔などで、 世界中にどれほど多くのファンを作ったことでしょうか。 お嬢さまを演じてお嬢さまに見え、 孤児の役ではほんとうに孤児を演じ切れる子役は、 決して多くはないと思います。 「すてきな看護婦さん」 の中で、 セーラが「あたしはまだ子供よ。( I'm not a woman yet. )」と言う場面がありましたが、 そのことばどうりの幼い少女でありながら、 男女の機微に触れる難しいシーンの中でさえ、 少しも危うさを感じさせない希有な存在でした。
  The Avonlea Album には、 右のように Sarah の美しいスチル写真がたくさん収められています。 ところが、 日本でも出版されていた 「アヴォンリーへの道」 のストーリーブックに見る写真の多くは、 画面に映る彼女とはおよそかけはなれた硬い表情なのです。 残念ながら彼女はあまり写真映りがよくない方なのかもしれません。 けれども、 写真が真を写さないことは今さら言うまでもないでしょう。 Sarah は動く画面の中ではほんとうに魅力的で、 個性のひらめきを感じさせてくれる俳優なのです。

  さて、 素顔の Sarah は、 貪欲ということばがぴったりのたいへんな読書家で、 アムネスティを積極的に支援したり、 人種差別反対運動 の先頭に立つなど、 社会的・政治的な問題にも深い関心を持っています。 将来は作家になって、 詩や小説だけでなく政治についても書きたいというのが彼女の夢なのです。 映画の役柄そのままに、 若いながらも自己をしっかりと確立した理知的な婦人であり、 またフルート奏者としても立派な腕前を舞台で披露しています。 本人は菜食主義者だと言っているようですが、 撮影の合間にスタッフがグルメフードを囲んでいるときも、 彼女はひとりマクドナルドのハンバーガーを好んだといいますから、 ほんとうは"偏食"主義者なのかもしれませんね。
  向上心に燃える Sarah は英国のオックスフォード大学への留学を望んでいますが、 実現するかどうかは微妙なところです。 というのも、 彼女はストラトフォード・フェスティバルで 「鏡の国のアリス ( Alice Through the Looking Glass )」 の主役の座を射止めながら、 持病の悪化というアクシデントに見舞われ、 最終日まで公演を続けることができなかったのです。 手術を受けて何とか再起を果したものの、 無理がたたって一時はかなり深刻な状態だったといわれています。 才気あふれる彼女ですが、 健康面では必ずしも恵まれているとはいえないようです。 まだまだ若い彼女のこと、 これからはどうか無理をせず、 そしてできることなら作家としてではなく、 いつまでもスクリーンとステージの上で私たちを魅了してほしいというのが、 多くのファンの偽らざる思いではないでしょうか。

  感動的なラストシーンで 「アヴォンリーへの道」 はついに幕を下ろしました。 フェリシティとガスのファンは喜びに浸っておられることと思いますが、 セーラを応援してこられた方にとっては、 少しばかり不満の残る最終話だったのではないでしょうか。 いろいろな謎が謎のままとなったのも残念といえば残念ですが、 その方が「空想の余地がある」ということなのかもしれません。
  この物語が果たしてどこまで Montgomery の世界に忠実であったかはともかくとして、 美しい映像の中に登場人物ひとりひとりの個性と愛をていねいに描いたという点で、 優れた作品であったことは間違いないと思います。 放送された時間帯の関係で、 全てのエピソードを楽しめなかった方も多いことでしょう。 林浩子さんの再放送嘆願署名運動が実って、 このすばらしい作品が再び見られる日が来ることを願って止みません。


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  美しいテーマ音楽が「アヴォンリーへの道」の魅力をいっそう引き立たせていました。 SullivanBoutique.com から発売されたCDに収録されているのは、残念ながら Don Gillis の作品のみなので、 ここに John WelsmanMichael Conway Baker による代表的な曲を取上げることにします。

(*) これは Welsman の編曲によるもので、オリジナルは古いアイルランドの曲 'Ur Cnoc Cein Mhic Cainte'( ゲール語で、'The Fresh Hills of Cein Mhic Cainte' の意 )です。 そう あさこ さんから、原曲のCDが発売されているとの情報をいただきました。ケルトハープの演奏で、「蛍の光」も聴くことができます。
タイトル:Grey Eyed Morn, 演奏者:Sue Richards, 発売元:Maggie's Music,Inc.
ThemeComposed by
mp3 ra 第1,2シーズンのオープニング ; ストーリーガールのテーマ John Welsman
mp3 ra 「のろわれたヴァイオリン」より、ガス・パイクのテーマ (*)
mp3 ra 「魔女の妙薬」のエンディング ; ペグ・ボウエンのテーマ
mp3 ra 「はるか昔の恋」のエンディング ; 友情のテーマ
mp3 ra 「町の消防団」のエンディング ; キング家のテーマ
mp3 ra 「町はお祭りムード」のエンディング Michael Conway Baker
  本を読みたい方へ。 いくつかの作品はオンラインで全文を読むことができます。   Road to Avonlea に関するすばらしいサイト。 ファンの方は是非訪ねてみてください。 なお、 Road to Avonlea はカナダでの原題で、 米国では単に Avonlea となっています。
  最後に Lucy Maud Montgomery と、 プリンス・エドワード島 に関するサイトをご紹介します。
Last Update : 23 Jan 2005
Created : 14 Aug 1996

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