ゲームパイプライン(12)
オリックス優勝&日本一おめでとう記念
メークドラマ!
日本シリーズはオリックスの4勝1敗で幕を閉じました。
中継ぎ投手陣の層の厚さが、オリックス日本一の決め手となりました。
巨人はペナントレースのような勢いが、いまひとつなかったか。
でもまあ、オリックスVS巨人だと、やっぱ華がありますね。
もー、オールスター戦かと思うくらいの豪華なメンバーで。
私個人としては、広島VS日本ハムの日本シリーズを見たかったんですけどね。って、そ
んな奇特な人間は私だけか。
さて、ゲームの話に入ります。
野球ゲームには、名作が数多くあります。『実況パワフルプロ野球』。『ベストプレー
プロ野球』。
ただ、このコーナーでは、『パワプロ』は第9回で取り上げましたし、『ベストプレー
プロ野球』は、「ウォーロック」時代の第6回でやっています。
まだこのコーナーに出てないゲームで、これらに匹敵する、あるいはこれらを上回るゲ
ームといえば、・・・そう、“アレ”ですね。
というわけで、今回取り上げるゲームは、これです。
〜ストリートファイターII(カプコン)
(写真はスーパーファミコン版『スーパーストリートファイターII』)
ごめんなさ〜い。野球の話を前フリに使って、まるっきり違う話に持っていくってのは、
「ダイス新聞」時代からの、私の常套手段なんですぅ(粋)。
今回は、「ドラマを作る」ゲームという観点から、話を進めていこうと思います。
「ドラマを作る」。
英語に直せば「メークドラマ」。
だから前フリに日本シリーズの話を持ってきたんですぅ。
さて、「メークドラマ」つまり「ドラマを作る」ゲームといって、普通頭に思い浮かぶ
のは、RPGやアドベンチャーでしょう。これらのゲームの多くには、綿密に設定された
ストーリーが用意されています。
もっとも、綿密に設定されているだけに、あまり脇道が多くありません。いわゆる「一
本道ゲーム」というやつです。
この種のゲームでは、密度の濃い、面白いストーリーが楽しめます。しかしその反面、
プレイヤーに選択の余地があまりないので、プレイヤーが話を動かしているという実感に
欠けます。
「ドラマを楽しむ」ことはできますが、「ドラマを作る」ことはできないのです。
RPGで「ドラマを作る」ゲームといえば、なんといっても『ウィザードリィ』、とく
に『1』。ストーリーの始めと終わりだけ決まっていて、途中の筋書きがありません。そ
の代わりに、筋書きを構成し得る、さまざまな要素が散りばめられています。落とし穴。
ブルーリボン。馬小屋。友好的な怪物。マーフィーズゴースト。罠解除失敗。etc.
一本道ストーリーのような、緻密な構成は望めませんが、逆に、プレイヤー自身が物語
の“すき間”を想像できます。
プレイヤーが物語を選択できる。
プレイヤーが物語を想像(創造)できる。
二重の意味で、プレイヤーが「ドラマを作る」ことのできるゲームです。
RPGではありませんが、『信長の野望』など一連の光栄作品も、これと似たことがい
えます。山下章先生の言葉を借りれば「プレイヤーの行動の足跡が、そのまま物語になっ
ていく」(「電脳遊技考」P107)ゲームです。
じつは私、『ストリートファイターII』も、こういうゲームの仲間ではないかと思うの
です。
『ストリートファイターII』(以下『ストII』)と『信長の野望』には、意外と共通点
があります。
- 主人公を、何人かの中から選択できる点。
- このとき選択しなかった他のキャラを次々と倒していくことで、ゲームが進行する点。
『ストII』にも『信長』にも、一応主人公的な人物はいます。『ストII』ならリュウ、
『信長』なら信長です。
でもどちらのゲームでも、主人公以外の人物を、プレイヤーキャラにすることができま
す。そして、その人物を主人公にして、ストーリーが展開するのです。
とくにダルシムやブランカなどは、マンガやアニメ、あるいは他のゲームでは、まず主
人公になり得ないキャラクターです。私が『ストII』をプレイしてまず感動したのが、ダ
ルシムのような特異な能力を持ったキャラクターを、操作できることでした。このあたり
は『餓狼伝説』と比較すれば一目瞭然です。『餓狼』では、特殊な能力を持つキャラは、
みな敵キャラでした(『ストII』と『餓狼』、あるいは『バーチャ』との比較は、長くな
りそうなのでまた後ほど)。
『ストII』ではそういう脇役・敵役的な人物も、主人公になるのです。つまり、彼らに
もそれぞれ戦う目的があって、しかもその目的を達成することが可能なのです。
したがって『ストII』では、さまざまなストーリーを楽しむことができます。リュウを
選んだらステロタイプかつストイックな格闘ストーリー、春麗を選んだらジャッキー・チ
ェンふう香港刑事ものアクション、ブランカを選んだら少年ジャンプ的なギャグマンガの
ノリ(あ、ダルシムやディージェイもそうかも)。荒唐無稽なキャラも多数存在しますが、
彼ら一人一人に、彼らなりのストーリーがあるのです。
現実の世界でもそうですよね。何人か仲間うちで集まると、そこにはまとめ役的な人も
いれば、まとまってるのをぶち壊すトラブルメーカーもいます。エッチな話をすごく嫌う
人もいれば、どんな話でも必ず下ネタに結びつける人もいます。無口な人もいれば、口か
ら先に生まれたような人もいます。浮いた噂があとを絶たない人もいれば、浮いた噂がま
ったく立たない人もいます(私だ)。
これはいじめ問題関連の報道などでよくいわれることですが、極端に個性的な人という
のは、今の日本の社会とか学校とかから、どうしても排除されがちです。とにかく周囲と
同じであることを要求される。でも、人間一人一人には、それぞれストーリーがあって、
それぞれ抱えているものがあります。だからそれぞれに個性があって然るべき。どんな個
性を持っている人でも、すべての人が、主人公になれるのです。
(あ、なんか、さだまさしさんの歌みたいな結論になっちゃった)
これって、『ときめきメモリアル』でも感じたことなんですよね。『ときメモ』には強
烈な個性を持つ女性が何人も登場しますが、それぞれにちゃあんとファンが存在している。
『アンジェリーク』の守護聖様にも、同じことがいえると思います。
今、自分の個性、性格、それから容姿、そういうものを自分の欠点と考えて、悩んでい
るみなさん。それらの“欠点”は、裏を返せばみんな“長所”であり、“魅力”でありま
す。無理に封じ込めてしまおうとせずに、それらをプラスに活用するように考えましょう。
プラス思考は体に良い。っと、これじゃ春山茂雄さんだ(小林充さん、ジョセフ・マーフ
ィーさんでも可)。
さて、だいぶ話が横道にそれてしまったので、このへんで元に戻します。よっこらしょ
っと。はい戻りました。
『信長』では、プレイヤーはさまざまな行動をとることができます。施し、開墾、徴兵、
訓練、同盟、忍者による破壊工作、etc.
『ウィザードリィ』でも、主人公たちの行動の自由度は高いです。地下4階までは、ア
イテムも何も使わずにずんずん移動できます。もっとも、本当にずんずん進んでいったら、
強い敵に遭って全滅しますから、進むかとどまるか、プレイヤーの判断が重要になってく
るわけです。
一方『ストII』では、戦う順番は選択できません。ゲームスタート時にランダムで決定
されます。プレイヤーがストーリーの過程を選択できるわけではありません。
しかし、プレイヤーが物語を「選択」することはできませんが、「想像(創造)」する
ことはできます。ゲーム中で用意されているのは主人公が戦う目的と、エンディング、そ
れと戦いの様子だけ。ストーリーの細部は、詳細に語られていません。
ですからストーリーの“すき間”を、想像(創造)する余地があるのです。
同人誌を作り易いゲームかもしれません。
エンディングのほうは『信長』と違って、各キャラ毎に用意されています。結末(オチ)
があるからプレイヤーは、ストーリーがちゃんと完結しているという印象を受けます。
『ストII』も、『信長』『ウィザードリィ』と同様、プレイヤーが「ドラマを作る」こ
とのできるゲームなのです。
さて最後に、『ストII』と『餓狼』と『バーチャ』と『鉄拳』の比較をひとつ。
『ストII』は、登場人物がホント個性に富んでます。しかも彼ら全員をプレイヤーキャ
ラにすることができます(厳密にいうと『ストIIダッシュ』になるまで四天王は使えなか
ったのですが、それでもダルシムやブランカでプレイできるというのは、当時は画期的な
ことでした)。
『餓狼伝説』は、『2』以降ユニークなプレイヤーキャラが増えましたが、『1』で使
えたのは、テリー、アンディ、東丈の3人だけ。奇妙なキャラはいるけれど、みな敵キャ
ラ。プレイヤーキャラの個性という面では、『ストII』にはちょっと及びませんでした。
しかし、世の中何が幸いするかわからないもの。アクが強くないのが良かったのか、3人
はアイドル的な人気を獲得。若い女性層を中心に、固定ファンがついたのでした。テリー
に関しては、コスプレし易そうな服装もウケたのかもしれません。
『バーチャファイター』では、各人の背負っている物語は、あまり重視していないよう
です。そのためか、意外と濃密な背景設定があるにもかかわらず、キャラ毎のエンディン
グはなし。ストーリーよりもゲーム中の動きで、各キャラの個性を表現しているといった
ところでしょうか。
しかし『鉄拳』になりますと、先祖返りというと語弊があるかもしれませんが、『バー
チャ』よりもキテレツな人物が多くなります。主人公的キャラの一八からして顔がコワい
し(笑)。そしてキャラ毎のエンディングがしっかり入っています(プレイステーション
版のみ)。
もちろん今挙げた以外にも、『ストII』にヒントを得たゲームは、数多く存在します。
なにしろ、“対戦格闘ゲーム”というジャンル自体、『ストII』がなければ存在しなか
ったわけですからね。
“対戦格闘ゲーム”の流行から、ゲーム界の内外に、いろんな現象が派生しました。対
戦スポット(ゲーセン)の隆盛、ゲーム名人(セガいうところの“鉄人”)の登場、同人
誌界でのジャンルとしての確立、格闘界とゲーム界の接近、初心者を排除する難易度の問
題、「待ちプレイ」問題、etc.etc.・・・
まさに『ストII』は、ゲーム界の歴史を動かしたゲームなのです。
余談
この文章を書くにあたって、スーパーファミコン版『スーパーストリートファイターII』
をプレイしたんですが・・・、
ブランカでプレイしてエレクトリックサンダーを出した途端に、窓の外からガラガラビ
シャン!
突然本物の雷が落ちてきたのでした。
ホントもう、びっくりしちゃった★
と最後は、神月摩由璃さんふうにシメてみました。
世の中には、すごいゲームが、あるんですね。次回も、どうぞ、お楽しみに!
『ストリートファイターII』
カプコン/アーケード(1991),スーパーファミコン(1992)
参考資料:
「ウィザードリィのすべて」ベニー松山著/JICC出版局(現宝島社)/1989
「電脳遊技考」山下章/電波新聞社/1990
「ザ・ベストゲーム」新声社(月刊ゲーメスト増刊No.60)/1991
「ゲーム年鑑」アスキー/1991
「HiPPON SUPER! 」1992年9月号/JICC出版局(現宝島社)
「ALL ABOUT 対戦格闘ゲーム」スタジオベントスタッフ編/電波新聞社/1993
「脳内革命」春山茂雄/サンマーク出版/1995
「プラス・イメージ成功法」小林充/三恵書房
「あなたはかならず成功する」マーフィー理論研究会/産能大学出版部/1993
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